リファレンス アーキテクチャ: Google Cloud Platform 上の SAP S/4HANA

概要

このドキュメントは、SAP S/4HANA をデプロイするためのプラットフォームとして Google Cloud を検討されている次の方を対象としています。

  • SAP テクニカル アーキテクト
  • クラウド アーキテクト
  • SAP Basis 管理者
  • エンタープライズ アーキテクト

このドキュメントでは、導入前に考慮すべき問題や、SAP Notes など、デプロイの参考になるドキュメントのリンクも紹介します。

Google Cloud は、SAP HANA での SAP S/4HANA の実行に適した SAP 認定のインフラストラクチャを提供します。費用対効果と信頼性が高く、安全で高性能なプラットフォームを提供します。Google Cloud でサポートされている SAP ソリューションの詳細については、Google Cloud での SAP をご覧ください。

ライセンス

SAP を利用している場合は、既存のライセンスを使用して、お客様所有ライセンスの使用(BYOL)モデルで Google Cloud に SAP Business Suite をデプロイできます。Google Cloud は、本番環境と非本番環境の両方のユースケースで BYOL モデルをサポートします。オペレーティング システムのライセンスは、Compute Engine の料金に含まれています。独自の OS イメージやライセンスも使用できます。

サイジング

実装タイプに基づいて、いくつかのサイジング オプションが利用可能です。新しい環境に実装する場合、SAP Quick Sizer ツールの使用をおすすめします。詳細については、SAP の Sizing ページをご覧ください。SAP では、現在のオンプレミス ソリューションを Google Cloud に移行するための特定のソリューションとツールを用意しています(たとえば、Find Certified IaaS PlatformsSAP Applications on Google Cloud: Supported Products and Google VM types をご覧ください)。これらのツールやソリューション用に T シャツサイズ ガイドも提供しています。SAP と Google Cloud では、IOPS(1 秒あたりの入出力操作)を測定するために使用する単位が異なります。SAP サイジング要件を Google Cloud インフラストラクチャに適切にサイジングするには、SI(システム インテグレータ)パートナーにご相談ください。

SAP では、既存のシステムを SAP ECC から S/4HANA に移行する前に、SAP note 1872170、Business Suite on HANA and S/4HANA sizing report の説明に従って /SDF/HDB_SIZING レポートを実行することを推奨しています。このサイジング レポートは、ソースシステムの現在のメモリと処理の状況を分析し、S/4HANA への移行に必要な情報を提供します。

サポートされているマシンタイプ

Google Cloud には、S/4HANA をデプロイするときにサイジング要件を満たすことが SAP によって認定されている Compute Engine インスタンス タイプが用意されています。Google Cloud のサイジングとサポートされているマシンタイプの詳細については、以下のページをご覧ください。

Google Cloud 上の SAP HANA にカスタム マシンタイプを使用することも SAP で認定されています。6.5 以上の vCPU / メモリの比率を維持している限り、vCPU が 64 個未満の SAP HANA インスタンスを実行できます。

SAP アプリケーション用に認定されている Compute Engine 仮想マシンの SAPS 番号については、認定されている Compute Engine のマシンタイプをご覧ください。

SAP のウェブサイトでは、SAP HANA の Google Cloud 構成の認定リストも提供されています。詳細については、SAP HANA Hardware DirectoryFind Certified IaaS Platforms ページをご覧ください。

S/4HANA のディスクとファイル システム

Google Cloud には次のストレージ タイプがあります。

  • 標準(HDD)永続ディスク: 大型デバイス用の低コストのブロック ストレージ。
  • SSD 永続ディスク: 高速で信頼性の高いブロック ストレージ。高い IOPS と低いレイテンシを実現するように設計されています。
  • ローカル SSD。高性能のローカル ブロック ストレージ。
  • Cloud Storage バケット。手頃な料金のオブジェクト ストレージ。

詳しくは、ストレージ オプションをご覧ください。

Google Cloud の永続ディスクは、高い耐久性を実現するように設計されています。データの整合性を確保するため、データを冗長的に保存します。1 つの永続ディスクには最大で 64 TB まで保存できるため、ディスクアレイを管理しなくても、大きな論理ボリュームを作成できます。永続ディスクでは、データを保護するために自動的に暗号化が行われます。

Compute Engine インスタンスを作成すると、オペレーティング システムを含む単一ルートの永続ディスクがデフォルトで割り当てられます。インスタンスには、必要に応じてストレージ オプションを追加できます。SAP を実装する場合は永続ディスクの使用をおすすめします。永続ディスクは持続性が高く、Compute インスタンスがローカルマシン上の物理ディスクのようにアクセスできるためです。

次の表に、Google Cloud 上の SAP HANA と ABAP の Linux ディレクトリ構造を示します。

SAP HANA ディレクトリ構造 ストレージの種類
/usr/sap SSD 永続ディスク
/hana/data SSD 永続ディスク
/hana/log SSD 永続ディスク
/hana/shared SSD 永続ディスク
/hanabackup 標準永続ディスク(HDD)
ABAP ディレクトリ構造 ストレージの種類
/sapmnt 標準永続ディスク(HDD)
/usr/sap/ 標準永続ディスク(HDD)

デプロイ

SAP S/4HANA は、次の技術コンポーネントで構成されています。

  • SAP HANA。
  • PAS - プライマリ アプリケーション サーバー。
    • SAP システムの最初または唯一のアプリケーション サーバー。
  • AAS - 追加のアプリケーション サーバー。
    • 通常、アプリケーション レベルの負荷分散用にデプロイされます。アプリケーション レイヤで高可用性を実現するため、複数の AAS をインストールできます。いずれかのアプリケーション サーバーが停止した場合、そのアプリケーション サーバーに接続しているユーザー セッションはすべて終了しますが、ユーザーは環境内の他の関連する AAS に再度ログインできます。
  • SAP NetWeaver Gateway。
  • Fiori フロントエンド。
  • WD - Web Dispatcher(オプション)。
    • アプリケーションの種類に基づいて、HTTP / HTTPS リクエストを PAS または AAS に分散するインテリジェントなソフトウェア ロードバランサ。

デプロイモデル

S/4HANA は、集中デプロイまたは分散デプロイのいずれかのモデルで Google Cloud にデプロイできます。

集中デプロイ

集中デプロイでは、S/4HANA と SAP HANA データベースを同じ Compute Engine インスタンスにインストールできます。サンドボックス環境や開発環境など、本番環境以外の環境では、この方法をおすすめします。

次の図は、集中デプロイモデルでの S/4HANA のリファレンス アーキテクチャを示しています。SAP ASCS、PAS、WD、HANA はすべて同じインスタンスにインストールされています。

この図では、単一の VM 上に ASCS、PAS、Web Dispatcher、HANA が存在しています。

分散デプロイ

分散デプロイでは、コンポーネントを別々の Compute Engine インスタンスにインストールできます。本番環境や、トランザクション処理の負荷が高く、多くのコンピューティング能力を必要とする環境では、この方法をおすすめします。

次の図は、分散デプロイモデルでの S/4HANA のリファレンス アーキテクチャを示しています。SAP ASCS、PAS、WD、HANA はすべて別のインスタンスにインストールされています。

この図では、Web Dispatcher、Fiori、S/4 PAS、ASCS、HANA がすべて別の VM 上に存在しています。

集中デプロイモデルでも分散デプロイモデルでも、SAP HANA のインストールにはデプロイ スクリプトを使用します。詳細については、SAP HANA デプロイガイドをご覧ください。

負荷分散に関する注意事項

分散 S/4HANA 環境では負荷分散が必須です。また、SAP アプリケーション レイヤを使用して、アプリケーションの負荷分散を構成できます。

高可用性と障害復旧

高可用性(HA)と障害復旧(DR)は、障害が発生した場合のビジネス継続性を実現する技術、エンジニアリング プラクティス、設計原則から構成されます。このアプローチでは、単一障害点を排除して、システムまたはコンポーネントの停止後に運用を迅速に再開し、ビジネスの中断を最小限に抑えます。障害復旧は、障害が発生したコンポーネントが原因で停止した後に、オペレーションを復元し、再開することを意味します。

たとえば、次のような HA および DR ツールがあります。

もう少し詳しく説明しましょう。

ゾーン間での Linux クラスタリング: ゾーン間で Linux クラスタを設定すると、特定のリージョンのコンポーネント障害からクラスタを保護できます。Linux クラスタをゾーン間でデプロイするには、アクティブ / パッシブ構成またはアクティブ / アクティブ構成を使用します。いずれの場合も、2 つの Compute Engine インスタンスを別々のゾーンに設定し、それぞれに独自の SAP HANA データベースを設定します。

  • アクティブ / パッシブ構成: 一方のインスタンスをクラスタのプライマリ ノード(アクティブ)として構成し、もう一方をセカンダリ ノード(パッシブ)として構成します。次の図のように、プライマリに障害が発生すると、SAP HANA システム レプリケーション(SR)を使用してセカンダリノードに処理が引き継がれます。HANA SR の構成と設定の詳細については、HANA System Replication をご覧ください。

SAP HANA HA クラスタは 1 つの GCP リージョンにあります。非同期レプリケーションでは、別のリージョンにある単一の HANA システムが最新の状態に保持されます

  • アクティブ / アクティブ構成(読み取り可能): 両方のインスタンスをアクティブに構成しますが、セカンダリ ノードは読み取り専用になります。この設定は、ログリプレイの継続をベースにしています。仮想 IP(VIP)は、現在の読み取り/書き込みノードを参照するように構成されます。

  • 詳細については、SAP HANA 高可用性と障害復旧プランニング ガイド をご覧ください。

ライブ マイグレーション: Compute Engine は、ホストシステム イベント(ソフトウェアやハードウェアの更新など)が発生した場合でも、Compute Engine インスタンスの稼働が継続します。このようなイベントが発生した場合、Compute Engine は実行中のインスタンスを同じゾーン内の別のホストにライブ マイグレーションします。実行中のインスタンスを再起動する必要はありません。このメカニズムは、元のインスタンスの VM 状態を複製するため、新しいインスタンスが起動すると、元のインスタンスのメモリが読み込まれています。

ライブ マイグレーションが行われなかった場合(これはまれなケースです)、障害の発生した仮想マシンは同じゾーン内の新しいハードウェアで自動的に再起動されます。

詳細については、ライブ マイグレーションをご覧ください。

バックアップと復元

システム クラッシュ、データ破損などの問題が発生した場合に復旧できるように、アプリケーション サーバーとデータベースのバックアップを定期的に作成する必要があります。

バックアップ

Google Cloud 上での SAP HANA データのバックアップには、次のようなオプションがあります。

  • SAP 認定の Cloud Storage Backint agent for SAP HANA(Backint エージェント)を使用して Cloud Storage に直接バックアップします。
  • 永続ディスクにバックアップしてから、そのバックアップを Cloud Storage にアップロードします。
  • Compute Engine スナップショット機能を使用して、/hanabackup ディレクトリを含むディスク全体のスナップショットを作成します。

Cloud Storage Backint agent for SAP HANA

Backint エージェントは、SAP HANA ネイティブのバックアップと復元機能と統合されているため、Cloud Storage に直接バックアップすることや、Cloud Storage から直接復元することができ、バックアップ用の永続ディスク ストレージは必要ありません。詳細については、SAP HANA オペレーション ガイドをご覧ください。

Cloud Storage Backint agent for SAP HANA の SAP 認定については、SAP Note 2031547 をご覧ください。

次の図は、Backint エージェントを使用した場合のバックアップのフローを示しています。

図は、Backint エージェントが Cloud Storage に直接バックアップする SAP HANA を示しています

永続ディスクへのバックアップ

ネイティブの SAP HANA バックアップ / 復元機能と Compute Engine 永続ディスクを使用すると、Cloud Storage バケットにバックアップを長期間保存しておくことができます。

通常のオペレーションでは、SAP HANA は定期的にメモリからディスクにデータを自動保存します。さらに、すべてのデータ変更は REDO ログエントリに取得されます。コミットされた各データベース トランザクションの後に、REDO ログエントリがディスクに書き込まれます。

SAP HANA 2.0 以降では、SAP HANA コックピットを使用して SAP HANA をバックアップします。

次の図は、SAP HANA のバックアップ機能のフローを示しています。

バックアップは永続ディスク上に作成されてから Cloud Storage に保存されます

スナップショットを使用した永続ディスクのバックアップ

バックアップ戦略に追加できるもう 1 つのオプションとして、Compute Engine の永続ディスク スナップショット機能を使用してディスク全体のスナップショットを作成できます。たとえば、障害復旧シナリオで使用するバックアップ ディレクトリ ディスクのスケジュールされたスナップショットを作成できます。アプリケーションの整合性を保つために、ターゲット ボリュームに変更が加えられていないときにスナップショットを作成します。スナップショットはブロックレベルで発生します。

最初のスナップショットの後の各スナップショットは増分スナップショットとなり、次の図に示すように、増分ブロック変更のみが保存されます。

この図は、永続ディスク上の HANA データの完全なスナップショットと増分スナップショットを示しています。

復元

SAP HANA の復元ツールは、最新の時点または特定の時点まで復元でき、これらのツールを使用して新しいシステムに復元するか、データベースのコピーを作成できます。バックアップはデータベースの稼働中に実行できることと異なり、復元ツールはデータベースが停止している間のみ使用できます。復元オプションは次のとおりです。状況に応じて適切なものを選択してください。

  • 次のいずれかのリソースを使用して、最新の状態に復元します。
    • 完全バックアップまたはスナップショット。
    • ログのバックアップ。
    • まだ使用可能な REDO ログエントリ。
  • 過去のある時点に復元します。
  • 指定した完全バックアップに復元します。

デプロイ前に確認が必要な SAP Note

Google Cloud に SAP S/4HANA をデプロイする前に、以下の SAP Note をお読みください。SAP 製品の導入を始める前に、SAP Marketplace で最新の製品インストール ガイドとリリースノートを必ずご確認ください。