スターツ出版:Windows Server で動作する Web サービスをそのまま Google Cloud に移行

スターツ出版株式会社 について

不動産会社を母体とするスターツグループの出版社として 1983 年に創業。女性向け月刊誌『OZmagazine(オズマガジン)』や、WEB メディア『OZmall(オズモール)』などを運営するメディアソリューション事業と、小説投稿サイト『野いちご』『Berry’s Cafe』を中心とした書籍コンテンツ事業を中核事業とする。現在の従業員数は 217 名(2020 年 12 月末日現在)。

業種: メディア、エンターテイメント
地域: 日本

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スターツ出版は人気 WEB メディア『OZmall』を、Windows Server 環境から Google Cloud へ移行しました。ピーク時に大きなアクセスがあってもサービスダウンすることなく乗り越え、ピーク経過後のスケールダウンでコスト パフォーマンスも発揮。システム全体のモダナイズにも取り組んでいます。

Google Cloud 導入の効果

  • Go To 施策に伴う大幅なアクセス増があったものの、年末をサーバーダウンせずに乗り越えた
  • ピーク時以外をスケールダウンすることで、サーバー全体のコストを大幅に削減
  • Google Cloud の活用を通じてシステムチームのモチベーションが大きく高まり、活性化

Google Cloud で Microsoft Windows アプリケーションを実行

スターツ出版が運営する WEB メディア『OZmall』は、グルメ、旅行、美容など幅広いジャンルを取り扱う予約サービスとしての一面も持ちます。特に編集部が読み物記事と連動する形で展開する「プレミアム予約」は誕生日やクリスマスなどの記念日をリッチに過ごしたいユーザーから大きな支持を集めています。しかし、それゆえにサーバーへの負担は大きく、サービスの安定稼働を難しくしていました。この問題を Google Cloud の導入でどのように乗り越えたのか、同社基盤システムグループの皆さんに話を伺いました。

親身なサポートと具体的な構成の提案、そして低コストが Google Cloud を選んだ理由

「ありがたいことにたくさんの方にご愛顧いただいている『OZmall』ですが、取り扱う情報・商品の性質上、年間トラフィックの半分くらいが 10~12 月に集中するというかなりピーキーなサービスという一面も持っています。特に 2016 年頃からその傾向が顕著で、ピーク時期はアクセス過多によりサーバーの稼働が不安定となり、サービス全体に影響してしまう危険性がありました。サービスの停止はユーザーだけでなく、予約サービスに掲載しているクライアントにも迷惑をかけてしまいますから、早急に解消する必要がありました。」

そう語るのは、SSC推進室 基盤システムグループのマネージャー。とは言え、当時の『OZmall』はオンプレミスで運用されており、トラフィックのピーク時に合わせてスケールするのは現実的ではありませんでした。そこでこの時はセキュリティなどの課題もあってプライベート クラウドへの移行を決断。しかし、準備期間を経て 2019 年に実際に移行してみたところ「期待した効果が見込めず、運用も楽にならなかった」(基盤システムグループ マネージャー)ことから、すぐにパブリック クラウドへの移行を検討し始めました。

「タイミング的にはプライベート クラウドに移行した直後ではあったのですが、すでにそういう時代だと感じていましたし、拡張性のことなどを考えると将来的なパブリック クラウドへの移行は必然だったと思います。」(SSC推進室 基盤システムグループ インフラ担当部長)

「Google Cloud の担当者は、弊社まで来て問題解決のための具体的な提案をしてくださいました。その心強さが選んだ理由の 1 つになっています。他社より 30% ほど安かったことや Partner Interconnect の存在も大きかったですね。」

スターツ出版株式会社 SSC推進室 基盤システムグループ マネージャー

さまざまなサービスを検討した結果、Google Cloud を選んだ理由について、基盤システムグループ マネージャーは次のように語ります。

「既存のオンプレミスと並行して動かすことになるので、それをどのように実現できるのか、パブリック クラウドで社内に求められるセキュリティ ポリシーを満たせるのか、障害対応体制はどの程度かを評価基準に選定を進めていましたが、結果的に当初は、既に会社として実績があるという視点で別のクラウド プラットフォームを選択しました。初期設計、見積りを済ませ、移行を始める直前までいったのですが、チームとしては初めてのパブリック クラウドだったこともあって、他の選択肢もきちんと検討しておこうと、ちょうど Google Cloud Next ’19 in Tokyo が開催されていたので、色々と情報を収集しに話を聞きに行ったんです。その中で特に気になっていたセキュリティとネットワークについて Google Cloud の方に質問をさせていただきました。すると、すぐに営業やエンジニアの皆さんが弊社に来てくださり、どのような構成にすれば問題を解決できるか 1 つずつ具体的に提案してくださいました。個人的にはその心強さが Google Cloud を選んだ理由の 1 つになっています。また Google Cloud の方が 30% ほど安く、 Partner Interconnect を利用して低コストかつ容易にオンプレミスと接続できたという点も大きかったですね。」

既存の Windows Server 環境を Compute Engine 上で動かし移行を実現

なお、基盤システムグループ マネージャーが語るパブリック クラウドへの「不安」の 1 つに、『OZmall』のサービスが Windows Server 上の IIS(Internet Information Services)上で動作する .NET アプリケーションとして運用されていたことが挙げられます。Compute Engine は Windows Server インスタンスの作成をサポートしていますが、本当に同じように動作するか、当時は知見もノウハウもありませんでした。

「そこでとにかく実際にやってみようと、Windows Server インスタンスを立ててサービスに組み込み、徐々にクラウド マイグレーションしていくという方式を採りました。そうしたところ、思いのほかすんなり動いてくれたんです。ネットワーク周り、特に外部との接続部分では苦労があったのですが、Google Cloud の環境構築自体はとても楽で、そのまま移行の方向に話が進んでいったように記憶しています。」(基盤システムグループ マネージャー)

ネットワーク周りの苦労については、基盤システムグループ インフラ担当部長と、同チームのエンジニアは次のように当時を振り返ります。

「オンプレミスでは 1 台の物理サーバーに複数の IP アドレスを割り振って、複数サイトを運用するといった使い方がわりと定番の作法だと思うのですが、それをクラウドでやろうとすると、そもそもの設計思想の違いもあり上手くいきません。複数の IP アドレスを割り振るところまではできるのですが、その後、 Cloud Load Balancing を使ってロード バランシングをしようとすると、Cloud Load Balancing は基本的に VM 単位で負荷分散を行うために、ひとつの VM に構築した複数のサイトに対してリクエストを振り分けることができなかったため、間に Nginx を挟み込み、独自にロード バランシングするようにしました。今回の取り組みではここが最も苦労しましたね。」(基盤システムグループ インフラ担当部長)

「そのほか、個人的にはヘルスチェック周りの苦労も印象に残っています。今回は 1 つのサーバーに複数のアプリケーションが載っているので、サーバーではなく、アプリケーションに対してヘルスチェックを行わねばなりません。そこで、ヘルスチェック URL の末尾にクエリ ストリングを付けて、その持ち込んだクエリ ストリングを利用して、NGINX の先のサーバーに対してヘルスチェックを行っています。こういうやり方があるというのはとても面白い発見でした。」(基盤システムグループ エンジニア)

そしてもう 1 つ、大きな課題となっていたのがセキュリティです。スターツ出版ではグループポリシーとして WAF(Web Application Firewall)の設置を義務付けており、それをパブリック クラウド上でどのように実現するかも「不安」の 1 つだったそうです。

「選択肢の 1 つとしてクラウド型の WAF があることは知っていましたが、予算的に見合わないところがあり、それ以外の解決方法を模索していたところ、Google Cloud の方から Google Cloud Armor を紹介していただきました。他の選択肢も検討しましたが、Google Cloud Armor のマネージドという点にメリットを感じ、採択しています。ちなみに、今回の Google Cloud 導入にはその点で絶大な実績を持つクラウドエース株式会社の支援サービス『Cloud Booster』を使わせていただいているのですが、ルールのひな形作りや検証にご尽力いただき、スムーズな導入が実現できました。これに限らず、クラウドエースにはあらゆる点で協力いただいています。彼らの支援がなければ、次にやってくる繁忙期までの移行は不可能だったのではないでしょうか。」(基盤システムグループ マネージャー)

「今後は VPC Service ControlsAccess Context Manager などもしっかり使いこなして、さらにセキュリティを高めていこうと考えています。」(基盤システムグループ エンジニア)

こうした「不安」を乗り越え、2020 年 9 月には『OZmall』の Google Cloud 移行が完了。その成果について基盤システムグループのマネージャーは次のように語ってくれました。

「2020 年末には Go To トラベル、Go To イートといった施策があったこともあり、これまで以上に大きなアクセスがあったのですが、Google Cloud のおかげでピーク時にもサービスダウンすることなく年末を乗り越えることができました。また、ピーク経過後はスケールダウンしてコストを抑えることもできています。」

なお、基盤システムグループでは『OZmall』に加え、電子書籍サービスの Google Cloud 移行も進めており、こちらも 2021 年初頭に無事、移行を完了しています。その上で、基盤システムグループのマネージャーは「成果」はそれだけに留まらないと言います。

「今回の取り組みを通して開発メンバーのモチベーションが大きく高まっており、システムチーム全体が大きく活性化されました。本プロジェクトの担当エンジニアは Google Cloud の資格を 2 つも取得したほど。今後は、Google Cloud ならではのマネージド サービスをより積極的に活用するなど、システム全体のモダナイズに取り組んでいく予定です。」

インタビュイー

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スターツ出版株式会社 SSC推進室 基盤システムグループ
・インフラ担当部長
・マネージャー
・エンジニア

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事例制作:2021

利用しているソリューション:
Google 上の Microsoft および Windows アプリケーション

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不動産会社を母体とするスターツグループの出版社として 1983 年に創業。女性向け月刊誌『OZmagazine(オズマガジン)』や、WEB メディア『OZmall(オズモール)』などを運営するメディアソリューション事業と、小説投稿サイト『野いちご』『Berry’s Cafe』を中心とした書籍コンテンツ事業を中核事業とする。現在の従業員数は 217 名(2020 年 12 月末日現在)。

業種: メディア、エンターテイメント
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