NTT西日本:AI カメラとサーバーレス サービスを駆使し、リアルタイムな渋滞可視化とビッグデータ収集・活用を実現

西日本電信電話株式会社 について

1999 年の NTT 再編を経て設立された西日本エリアを業務区域とする電気通信事業者。約 38,000 名の従業員、30 府県にまたがる 200 以上の拠点を持ち、最先端の ICT を駆使し、「地域を元気にするビタミンのような存在をめざし」、通信サービスの提供だけに留まらない社会課題を解決するビジネスを展開している。

業種: 通信
地域: 日本
プロダクト: BigQuery, App Engine, Cloud Functions

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日本情報通信株式会社 について

(Google Cloud パートナー)
1985年、日本電信電話株式会社(NTT)と日本アイ・ビー・エム株式会社のジョイントベンチャーとして事業開始したシステムインテグレーター。Google Cloud プレミアム パートナーとしてGoogle Cloud およびGoogle Workspaceを取り扱い、かつそれぞれを連携させたクラウドネイティブ開発を提供している。

和歌山県高野町が抱えていた、観光シーズンの深刻な交通渋滞と COVID-19 禍における外国人観光客激減という課題の解消に向けた実証実験に Google Cloud を採用。AI カメラで取得した車両情報を収集・分析することで問題解決への道筋を示しています。

Google Cloud 導入の効果

  • 2 つのサーバーレスサービスを使い分けて効率的な AI 車両認証システムを素早くローコストに構築
  • さまざまな特性を持つ充実したプロダクトを組み合わせることで、急な要件変更にも対応できた
  • 素早く始められ、面倒な資産管理が不要なため、実証実験のための仕組みを手軽に構築できた

ビッグデータの収集・分析で観光戦略や地域ビジネスへ効果的にアプローチ

西日本電信電話株式会社(以下、NTT 西日本)は、電話やインターネットなどの通信サービスを通じ、多くの人々の日常生活を支え続けてきた企業です。そんな同社の取り組みのひとつに、最先端の ICT を活用し、観光やまちづくり、教育、農業など、さまざまな社会課題を解決するというものがあります。今回紹介する事例もそうした取り組みのひとつ。そこに Google Cloud がどのように活用されたのかをプロジェクトの中核メンバーの皆さんに語っていただきました。

Google Cloud は試行錯誤しながらの開発に強い

高野山金剛峯寺など数々の文化財・名所で知られる和歌山県高野町は、長らく観光シーズンの深刻な交通渋滞に悩まされており、民間交通会社との連携による車両流入軽減など、さまざまな対策を行っていましたが、どれも有効な対策になり得ていませんでした。また、その一方で 2020 年春以降のコロナ禍によって外国人観光客が激減。インバウンド需要に依存しない、新たな観光モデルの確立も急務になっていたと言います。

「そうした中、高野町と NTT 西日本、紀陽銀行、南海電鉄、和歌山大学ら、地域にゆかりのある企業が連携するかたちで『高野山観光ビッグデータ利活用検討研究会(以下、研究会)』を結成。観光データを取得・活用することで喫緊の課題となっている交通渋滞の解消および新たな観光モデルの確立に向けた実証実験を行うことになりました。我々の役割は、AI 車両認証システムの構築とそれを利用した交通渋滞発生状況の把握、観光客の来訪元拠点など属性推察に必要なデータの取得および提供となります。」(NTT 西日本 和歌山支店 ビジネス営業部 ビジネス推進担当 担当課長 地濃 弘樹氏)

この取り組みにおいて重要な役割を果たしたのが、町内に設置されたという AI カメラです。その活用について、本プロジェクトをマネジメントした NTT 西日本 ビジネス営業本部 エンタープライズビジネス営業部 ネットワーク&ソリューション推進担当 担当課長の尾谷 裕二郎氏はこう語ります。

「今回、来訪者の車両情報を取得するにあたり、町外から最大の観光スポットである高野山 奥之院に向かう 2 本の主要道路上に 3 つの AI カメラを設置しました。そして、ある車両が 2 つのカメラの前を通過した時間差を使って、渋滞の度合いを見極めるということを行っています。時間差が大きいほど 2 点間の通過に時間がかかった、つまり渋滞しているということです。また、車両情報からはどこから来たのかも読み取れますから、それらを分析していくことで観光戦略の立案に役立てることができます。」

この際、AI カメラから取得したデータを蓄積・分析するプラットフォームには Google Cloud を採用。オンプレミスも含めてさまざまな選択肢がある中、Google Cloud を選んだ理由について、本プロジェクトの開発実務を担当した日本情報通信株式会社 データ&アナリティクス事業本部 クラウドイノベーション部 第2グループ グループ長の水津幸太氏、同、第1グループの多田祥基氏は次のように説明してくれました。

「BigQuery や Google アナリティクス、Firebase Analytics など、データ収集・分析のためのさまざまなプロダクトを持つ Google Cloud は将来性という意味でも極めて魅力的な選択肢。観光戦略や地域ビジネスへ効果的にアプローチできそうだと感じました。」

日本情報通信株式会社 データ&アナリティクス事業本部 クラウドイノベーション部 第2グループ 水津 幸太 氏

「今回の取り組みではインバウンドに依存しない新たな観光モデルの確率を目的のひとつに掲げていますが、私たちは現在の苦境が永遠に続くとは考えていません。ゆくゆくは 新型コロナウイルス感染症の脅威が去り、再び外国の方々がこの世界遺産に訪れるようになる未来がやってくると信じています。そして、その時に必要になるのが、来訪者属性に合わせた観光施策の策定・実施など、さらなるデータの利活用です。そう考えた時、BigQuery や Google アナリティクス、Firebase Analytics など、データ収集・分析のためのさまざまなプロダクトを持つ Google Cloud は将来性という意味でも極めて魅力的な選択肢。観光戦略や地域ビジネスへ効果的にアプローチできそうだと感じました。」(水津氏)

「その上で、この取り組みでは交通という状況によって処理量が大きく変化するデータをリアルタイムに取り扱う必要があったこと、データの分析やその過程の処理部の構築において試行錯誤を重ねていく必要性が予想されました。その点、Google Cloud にはマネージドサービスやサーバーレスサービスのラインアップが充実しており、特定のサービスに縛られることなく、要求や特性に合わせたものを切り替えたり、組み合わせたりできます。こうした柔軟さは、今回のような試行錯誤による要件の変更が予想されるケースではとても魅力的に感じましたし、実際大いに役立ちました。」(多田氏)

「Google Cloud にはマネージドサービスやサーバーレスサービスのラインアップが充実しており、特定のサービスに縛られることなく、要求や特性に合わせたものを切り替えたり、組み合わせたりできます。こうした柔軟さは、今回のような試行錯誤による要件の変更が予想されるケースではとても魅力的に感じましたし、実際大いに役立ちました。」

日本情報通信株式会社 データ&アナリティクス事業本部 クラウドイノベーション部 第1グループ 多田 祥基 氏

これに加え尾谷氏は、パブリッククラウド特有のすぐに使い始められ、面倒な資産管理などの必要がないことも実証実験のような短期間で終えるケースには向いていたと言います。さらにAPI 開発に適した FaaS やスケーラブルなストレージ、AP 開発基盤や BI ツールが充実していたこと、観光客や研究会の関係者に向けた情報発信に求められるセキュリティ性能の高さも Google Cloud を選んだ理由だと説明してくれました。

Cloud Functions と AppEngine を適材適所で使い分け

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<図を拡大>

上図は今回のシステムがどのように構築されているかをまとめたものです。ここでポイントとなるのは、AI カメラから車両情報を受け取るデータ受信部には Cloud Functions を、2 か所の AI カメラで撮影された車両情報のペアリングと、その経過時間を元に交通状況(渋滞)の集計を行う後処理部分では AppEngine を、とサーバーレス サービスを使い分けていること。

「当初は受信したデータに AppEngine で編集処理を施し BigQuery に流すといったシンプルな形を想定していました。しかしながらディスカッションをしていく中で、利用者のことを考えると渋滞情報はリアルタイムに見られた方が良いだろう、より正確に渋滞を検知するにはこういう処理をした方が良いなど、どんどん話が膨らんでいったんです。そこで、呼び出し回数は多いが処理自体はストレートなデータ受信部については、Google Cloud のサーバーレス サービスの中でも立ち上がりが軽く、速い処理に向いている Cloud Functions を使うかたちに変更しました。対して後工程には当初予定通り AppEngine を利用しています。AppEngine は Cloud Functions と比べて立ち上がりなどがやや重いサービスなのですが、スピンアップ後は長時間スピンダウンすることなく稼働し続けるという特徴があります。それと、ペアリングという過去データの突合をリアルタイムに処理する部分にキャッシュを利用したいという事情から AppEngine が最適と判断しました。もちろん、AppEngine もサーバーレスといえども条件が揃えばダウンする可能性はあるのですが、スピンアップ時に再キャッシュするなどサーバーレスの特性を意識しロジックを工夫しています。」(多田氏)

こうした工夫を盛り込み、2021 年 10 月から 2 か月の期間限定で実証実験がスタート。交通渋滞については無事、リアルタイムな情報提供を実現でき、高野町の関係者はもちろんのこと、観光客や地域住民からも高い評価を受けました。また、もうひとつの目的であった新規観光モデル確立のためのデータ分析についても満足できる成果が得られたと言います。

「得られたデータを分析することでさまざまなことが分かりました。たとえば、来訪者の大多数は和歌山あるいは大阪からのお客さまだったのですが、実は同じ真言宗が根強く信仰されており、弘法大師空海の生誕地と言われる四国からのお客さまも多く、宗教的な観点からの呼び込みが有効なのではないかという気付きがありました。ほか、関東からのお客さまがまだまだ少なく、たとえば東京の交通機関に広告を打っていくことでその高いポテンシャルを掘り起こせるのではないかなど、今後の施策に向けたさまざまな仮説を立てているところです。なお、取得したデータを共有している和歌山大学の教授からは、非常に面白く貴重なデータなのでぜひオープンデータにするべきだというお言葉もいただいています。

今回、地域におけるデータを収集・活用するという取り組みに初めて挑戦したのですが、その手応えは想像以上に大きく、有効性をはっきり確認することができました。特に当初、データ活用に懐疑的だった方々に同様の認識を持っていただけたのは大きかったと考えています。そういう意味でも本当に有意義な実証実験でした。」(NTT 西日本 和歌山支店 ビジネス営業部 ビジネス推進担当 主査 隅坂 将大氏)

「今後は取得データを充実させ、さらなるデータの蓄積と利活用を推進していきたいと考えています。ビッグデータ分析により、地域の魅力を活かした新たな体験コンテンツ開発や、来訪者満足度の高い周遊施策の展開に繋げ、持続的な地域発展に貢献していきたいですね。」(地濃氏)

「今後は取得データを充実させ、更なるデータの蓄積と利活用を推進していきたいと考えています。ビッグデータ分析により、地域の魅力を活かした、新たな体験コンテンツ開発や、来訪者満足度の高い周遊施策の展開に繋げ、持続的な地域発展に貢献していきたいですね。」

NTT 西日本 和歌山支店 ビジネス営業部 ビジネス推進担当 担当課長 地濃 弘樹 氏

インタビュイー

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(写真 左から)
西日本電信電話株式会社
・ビジネス営業本部 エンタープライズビジネス営業部
 ネットワーク&ソリューション推進担当 担当課長 尾谷 裕二郎 氏
・和歌山支店 ビジネス営業部 ビジネス推進担当 主査 隅坂 将大 氏
・和歌山支店 ビジネス営業部 ビジネス推進担当 担当課長 地濃 弘樹 氏
日本情報通信株式会社
・データ&アナリティクス事業本部 クラウドイノベーション部
 第1グループ 多田 祥基 氏
・データ&アナリティクス事業本部 クラウドイノベーション部
 第2グループ グループ長 水津 幸太 氏

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事例制作:2022

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地域: 日本

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1985年、日本電信電話株式会社(NTT)と日本アイ・ビー・エム株式会社のジョイントベンチャーとして事業開始したシステムインテグレーター。Google Cloud プレミアム パートナーとしてGoogle Cloud およびGoogle Workspaceを取り扱い、かつそれぞれを連携させたクラウドネイティブ開発を提供している。