DMM.com: これからのビジネスを担う動画配信サービスの提供と、データ分析基盤のモダナイズを Google Cloud で実施

合同会社DMM.com について

1998 年、当時、レンタルビデオ店を経営していた亀山敬司氏(現 会長 兼 最高経営責任者)がインターネット配信に先鞭をつけるべくビデオ通販・動画配信サイト(旧 DMM動画)を開始。その後、電子書籍からオンラインゲーム、金融サービスなどまで、動画配信にとどまらない多様なサービスを展開し、現在では 2022 年 12 月に新たにローンチした総合動画配信サービス「DMM TV」をはじめ、 60 を超えるサービスを提供している。従業員数は 1,890 名(2022 年 2 月時点)。

業種: メディア、エンターテイメント
地域: 日本

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DMM.com では Google Cloud の導入を積極的に進めています。「DMM TV」は主に Google Kubernetes Engine(GKE)を用いて構築し、データベースに Cloud Spanner を採用。ほぼ時を同じくして、全社データ分析基盤も BigQuery を中心とした新環境へ移行されました。

Google Cloud 導入の効果

  • GKE、Cloud Spanner 採用によって、DMM TV への急激なユーザー流入にも余裕で対応
  • データ分析基盤を BigQuery に移行させたことで、コストを抑えながら高速な分析が可能に
  • BI ツールを Looker にしたことで、非エンジニア層の利用が拡大。データの民主化を実現

動画配信サービスとデータ分析基盤を Google Cloud で刷新

マルチエンタメ・プラットフォームを目指し、動画配信事業を中心に幅広くサービスを展開する合同会社DMM.com(以下、DMM)が、Google Cloud の導入を積極的に進めています。直近では、新たな総合動画配信サービス「DMM TV」のインフラや、グループ全体のデータ分析基盤を Google Cloud で構築。その狙いと成果を、それぞれの構築に携わったエンジニアの皆さんに伺いました。

GKE、Cloud Spanner を駆使し基幹動画配信サービスを刷新

2022 年 12 月のサービス開始からわずか 2 週間で会員数が 30 万人、約 3 か月で 60 万人を突破して話題となっている DMM の新たなサブスクリプション型会員システム「DMMプレミアム」。その強力な牽引役となったのが同時にスタートした総合動画配信サービス「DMM TV」です。月額 550 円の「DMMプレミアム」会員になることで、アニメやバラエティ、舞台などを中心とした約 16 万本ものエンタメ コンテンツが見放題になるため、サービス初日から多くのファンがアクセスしました。本プロジェクトの立ち上げからその技術面を監督してきた同社テックリード室 奥野 慎吾氏は、オープン直後の猛アクセスに耐えられたのはプラットフォームを Google Cloud に移行したからだと言います。

「当時、DMM には DMM動画という 20 年以上運営してきた動画配信サービスがありましたが(DMM TV に統合されるかたちでサービス終了)、長い歴史を持つだけにかなりトラディショナルなアーキテクチャで動いており、人気コンテンツ配信時などのアクセス急増でサービスが不安定になることが少なくありませんでした。そこで今回、DMM TV の立ち上げを機に動画配信サービスの中でも EC 基盤のアーキテクチャを一新することにしました。」

DMM_architecture_01
<図を拡大>

上図は DMM TV の基本的なアーキテクチャです。その構成上の工夫について、デジタルコンテンツ本部 動画配信事業部の菅野 滉介氏、小林 辰彰氏は次のように説明します。

「DMM TV は主に GKE(Google Kubernetes Engine) を用いて構成されており、基本的な部分についてはそこまで変わったことはしていません。ただ、バックエンドの手前に Envoy Proxy を配置することで gRPC で行われている各サービス間の通信を負荷分散できるようにしたことは 1 つの工夫でした。そして何より大きかったのがデータベースに Cloud Spanner を採用したこと。これまでのシステムでは耐えきれなかったような急激なアクセス増にもしっかり追従してくれるので本当に助かっています。Cloud Spanner の導入は初めてだったのですが、Google Cloud の手厚いサポートのおかげで無事導入することができました。」(菅野氏)

「従来システムでは VM を増やすなど、突発的なスケールへの対応が大きな課題となっていましたが、GKE を採用することで解消されました。また、DMM TV 専用の負荷試験基盤は GKE Autopilot を用いて構築しています。これによってさまざまなパターンの高負荷試験を容易に実施できるようになったほか、負荷試験が終わればスケールインできるので、保守コストを大幅に下げることにも成功しています。」(小林氏)

今後は Cloud Spanner の設定をさらに改善し、パフォーマンスを保ったままコストダウンを図っていくことを予定しているとのことです。

BigQuery と Looker の組み合わせでデータの活用を劇的推進

DMM では DMM TV のローンチとほぼ時を同じくして、データ モダナイゼーション プロジェクトのもと、全社データ分析基盤も BigQuery を中心とした新環境へ移行させています。その理由は大きく 2 つありました。

「将来に向けたスケーラビリティ確保とデータ活用の推進を目的にデータ分析環境の移行を進めました。その点、Google Cloud は圧倒的なパフォーマンスを誇る BigQuery の存在や GA(Google アナリティクス)、GTM(Google タグマネージャー)との連携のしやすさで、他の選択肢を大きくリードしていました。」

「スケーラビリティ確保とデータ活用の推進を目的にデータ分析環境の移行を進めました。その点、Google Cloud は圧倒的なパフォーマンスを誇る BigQuery の存在や GA(Google アナリティクス)、GTM(Google タグマネージャー)との連携のしやすさで、他の選択肢を大きくリードしていました。」

合同会社DMM.com マーケティング本部 データ戦略部 データインフラグループ マネージャー 藤井 亮太 氏

そう説明するのは、このプロジェクトを舵取りしたマーケティング本部 データ戦略部 藤井 亮太氏。藤井氏は、従来のデータ分析基盤からの移行をスマートに行えていることも Google Cloud 導入の大きなメリットだったと言います。

「従来のデータ分析基盤はさまざまな業務と深く連携しており今すぐになくすことはできません。そのため、当面は新基盤上に従来基盤のコピーを作る方法で共存させています。ただし、弊社の取り扱うデータは膨大なものになるため、フルスキャンするたびにデータを入れ直しているとコストがとんでもないことになってしまいます。そこで今回は、データの変更を検知し、Pub/Sub を用いて更新部分だけを BigQuery に反映するというかたちを取りました。データの整合性についても、個々のデータをハッシュ化して比較することで担保するように工夫しています。」

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<図を拡大>

なお、DMM TV で用いている Cloud Spanner からのデータ転送には Change Stream を利用。これによって、DMM TV の運営・開発サイドがリアルタイムに視聴ログなどのデータを確認、分析できる環境を低コストに実現できたのも、大きな改善点の 1 つだと藤井氏は評価します。

その上で、「新しいデータ分析基盤を導入することで、データの民主化という点でも大きな進歩があった」と評価するのはマーケティング本部 データ戦略部の千葉 健太氏と柳原 太郎氏。今回の取り組みでは新たに BI ツールとして Looker を採用し、非エンジニア層への利用拡大を追求しています。

「Looker 導入後は非アナリストでも手軽にデータ分析を行えるようになり、データ活用が劇的に進んだと実感しています。また、データ定義をコードで管理できるようになりデータガバナンスを厳密に効かせられるようになったことも大きなメリットだと考えています。」(千葉氏)

「DMMプレミアムの開始に際しては、効率的な運用に向けて私たちの方でダッシュボードをいくつも用意したのですが、一部のユーザーが自分の業務に使いやすいようカスタマイズするという動きが起きています。これは従来環境ではなかった現象です。」(柳原氏)

また、柳原氏はさらにアドホックなデータ抽出依頼への対応についても「BigQuery ならクエリを投げて返ってきた結果をボタン 1 つでスプレッドシートに吐き出せるので、それを共有するだけで済む点がとても気に入っています。」とその使い勝手の良さを強調します。

ローンチから現在まで、大きなトラブルは起こっていない

DMM TV の EC 基盤とデータ分析基盤を同時に一新することになった DMM。サービス開始から数か月が経過した今、奥野氏と藤井氏は、その成果を次のように評価します。

「まずは Google さんのご支援もいただきつつ無事にローンチすることができたこと。また、今回 Google Cloud で刷新した EC 基盤に関してはローンチ後 1 度も大きな障害もなく安定運用できていることが最大の成果。Google Cloud は次々と新しいコンポーネントや機能が追加されるので、それらを活用しながら、DMM TV をより効率的に運用していけるようにしたいですね。」

合同会社DMM.com テックリード室 第1グループマネージャー 奥野 慎吾 氏

「まずは Google さんのご支援もいただきつつ無事にローンチすることができたこと。また、今回 Google Cloud で刷新した EC 基盤に関してはローンチ後 1 度も大きな障害もなく安定運用できていることが最大の成果。Google Cloud は次々と新しいコンポーネントや機能が追加されるので、それらを活用しながら、DMM TV をより効率的に運用していけるようにしたいですね。もちろん、DMM TV 以外の事業についても Google Cloud 導入で改善できることは多いと思いますので、それらも検討していきたいです。これから DMMプレミアムおよび DMM TV をより良いサービスに盛り上げてくれる仲間を募集しています。菅野と小林が率いる SREチームやその他のポジションでも採用を加速させています。DMM insideで各チームでの開発秘話の連載が始まっていますので、採用情報とあわせてぜひチェックしてください。」(奥野氏)

「データ分析基盤が抱えていた課題の解決については今回、ある程度の成果を出せたと考えています。今後は、GA や GTM などとの連携をさらに進め、広告の最適化などを実現していきたいですね。Google Cloud にはそうした連携をさらにテクニカルに実現していくための機能強化を期待しています。」(藤井氏)

インタビュイー

DMM Interviewees Photo
(写真 上段右から)
・テックリード室 第1グループマネージャー 奥野 慎吾 氏
・デジタルコンテンツ本部 動画配信事業部 DMM TV SREチーム リーダー 菅野 滉介 氏
・マーケティング本部 データ戦略部 データプランニンググループ マネージャー 千葉 健太 氏
(写真 下段左から)
・マーケティング本部 データ戦略部 データインフラグループ マネージャー 藤井 亮太 氏
・デジタルコンテンツ本部 動画配信事業部 DMM TV SREチーム エンジニア 小林 辰彰 氏
・マーケティング本部 データ戦略部 柳原 太郎 氏

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事例制作:2023

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合同会社DMM.com について

1998 年、当時、レンタルビデオ店を経営していた亀山敬司氏(現 会長 兼 最高経営責任者)がインターネット配信に先鞭をつけるべくビデオ通販・動画配信サイト(旧 DMM動画)を開始。その後、電子書籍からオンラインゲーム、金融サービスなどまで、動画配信にとどまらない多様なサービスを展開し、現在では 2022 年 12 月に新たにローンチした総合動画配信サービス「DMM TV」をはじめ、 60 を超えるサービスを提供している。従業員数は 1,890 名(2022 年 2 月時点)。

業種: メディア、エンターテイメント
地域: 日本