野村證券:投資情報アプリ『FINTOS!』を厳しい情報セキュリティ ガバナンスに準拠しつつ Google Cloud 上に構築
野村證券株式会社 について
野村證券を中核とする野村グループは、グローバル金融サービス・グループとして、世界 30 か国・地域を超えるグローバル・ネットワークを有している。営業、ホールセール、インベストメント・マネジメントという 3 つの部門が横断的に連携して、国内外のお客様に付加価値の高い商品・サービスを提供している。 2019 年 4 月に社内横断型組織として「未来共創カンパニー」を設立。投資情報アプリ『FINTOS!』のほか、資産管理アプリ『OneStock』といったデジタルサービスのリリースを活発化させている。従業員数は野村グループ全体で 26,647 名(2021 年 6 月末時点)
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(Google Cloud パートナー)
野村證券は、投資情報アプリ『FINTOS!(フィントス!)』の開発スピードの向上とサービス拡充の可能性を求めて Google Cloud を採用。VPC Service Controls を使い、最高レベルの情報セキュリティ ガバナンスに対応しています。
Google Cloud 導入の効果
- VPC Service Controls を利用することで、野村證券グループの厳しいガバナンスへも準拠
- GKE を利用することで、アプリケーション構成に大きく手を入れることなく緊急なリアーキテクチャリングにも対応
- BigQuery によるログ解析、Apigee X による外部連携など、今後に向けた取り組みにも道筋
デジタルサービスの柔軟な開発を実現
開発のスピード感とサービス拡充の可能性を求めて Google Cloud を採用
「国内有数のリサーチ力を誇る野村の確かな情報で、あなたの資産運用(株式投資)を強力にサポートします」というセールスコピーで多くの個人投資家を惹きつける投資情報アプリ『FINTOS!(フィントス!)』。その開発は野村證券の社内横断型組織「未来共創カンパニー」が行っています。未来共創カンパニーは 2019 年 4 月の設立後、『FINTOS!』のほか、資産管理アプリ『OneStock』など、積極的にデジタルサービスをリリースしているのですが、その狙いについて、カンパニーを率いる池田氏は次のように語ります。
「現在、野村證券は 120 兆円を超えるご資産をお預かりし、530 万口座を超える個人のお客様がいらっしゃいます。未来共創カンパニーは、そうしたお客様をはじめ、より幅広い方々に 24 時間 365 日寄り添うことができるデジタルサービスの充実を目的に設立されました。その使命のもと、まずは我々が対面で提供しているコアなサービスをデジタル化していくことにも取り組んでおり、『FINTOS!』はその成果の 1 つとなります。」(池田氏)
池田氏の言う野村證券のコアなサービスとは、個人投資家のカスタマー ジャーニー上にある資産管理、情報収集、そして取引の大きく 3 つ。その中で『FINTOS!』がカバーするのは情報収集のパートとなります。
「野村證券には 約 430 名の分析のプロ集団が主に機関投資家向けに作成したマーケット レポートが存在するのですが、これまでそれを個人投資家が目にすることはほとんどありませんでした。そうした情報を個人のお客様が必要とする時に、タイムリーにお届けできれば新たな価値を生み出せるのではないかと考えたのが『FINTOS!』が生まれた経緯です。また、当社とお取引のない、つまり口座を開設していただいていないお客様へサービスを届けるという狙いもありました。」(池田氏)
そんな『FINTOS!』を Google Cloud 上に構築したのはなぜか。未来共創カンパニー担当として池田氏と共にカンパニー運営を率いてきた藤井氏は、そのアイデアを温めていた時点で「直観的にクラウドで作るしかないと考えていた」そうです。
「『FINTOS!』で提供するマーケット レポートは創業当時からある機能ということもあって、非常にきっちりとした仕組みの中で日々制作されています。これを今以上のスピード感を持ってお客様へ提供していくには、既存の仕組みを工夫し、軽装備にやっていかねばなりません。そのための方法を探していく中で行き着いたのが Google Cloud でした。もちろん、他のパブリック クラウドも検討したのですが、利用動向の分析に BigQuery を活用したり、さまざまなサービスと連携していくために Apigee を利用したりという将来的な可能性を考えた結果、Google Cloud を選ぶのが得策だろうという結論に至りました。」(藤井氏)
「今以上のスピード感を持ってお客様へサービスを提供していくには、既存の仕組みを工夫し、軽装備にやっていかねばなりません。そのための方法を探していく中で行き着いたのが Google Cloud でした。利用動向の分析に BigQuery を活用したり、さまざまなサービスと連携していくために Apigee を利用したりという将来的な可能性を考えた結果、Google Cloud を選ぶのが得策だろうという結論に至りました。」
—野村證券株式会社 経営役 未来共創カンパニー担当 兼 コンテンツ・カンパニー担当 藤井 公房 氏VPC Service Controls を駆使してガバナンスへの緊急対応を実現
こうして 2019 年 9 月に『FINTOS!』を Google Cloud 上で運用していくプロジェクトを本格的に開始したのですが、その後、想定外のビジネス課題が発生し、サービスリリースまでの道のりは容易でなかったと言います。
「『FINTOS!』について、当初の構想ではレポートを配信する読書アプリというような建て付けで考えていました。しかし、開発を進めていく中で、社内法務担当からこれは金融商品取引法で言うところの投資助言業に当たるのではないかという指摘を受けたんです。そうなるとアプリにも証券取引アプリ同等のセキュリティ レベルと、法令への対応が求められることになります。」(藤井氏)
また、『FINTOS!』の開発を取り仕切ったプロジェクトマネージャー、金谷氏は当時を次のように振り返ります。
「『FINTOS! 』が投資助言業に該当することがわかり、その上でコンプライアンス部門との CIA 評価、機密性(Confidentiality)、完全性(Integrity)、可用性(Availability)を協議した結果、本システムで取り扱う情報の機密性が『高』であると判断されました。この結果最高レベルの対応が必要ということが確定し、大幅な設計変更をすることになりました。」(金谷氏)
「設計変更前の『FINTOS!』は App Engine を中心に、ほぼフル サーバーレスという攻めた構成になっていたのですが、これを大きく見直し、野村證券の厳しい情報セキュリティ ガバナンスに準拠できるようなかたちにリアーキテクチャリングしていくことになりました。」
そう語るのは、未来共創カンパニーをサポートするかたちで『FINTOS!』開発に携わっていたクラウドエースの CTO 高野氏。ガバナンスの中で、それまで中核を担っていた App Engine の利用ができなくなってしまったのです。そこで高野氏は Google Cloud の他のプロダクトを活用してインフラ部分に手を入れ、『FINTOS!』のアプリケーション構成には大きく手を入れずにガバナンスに準拠することにしました。
「具体的には、それまで App Engine で動かそうとしていた部分を GKE(Google Kubernetes Engine)に載せ替え、 VPC Service Controls と VPC Firewall で境界防護をかけていこう、と。実はこうなったタイミングで、ゼロから作り直すべきではないかという議論もあったのですが、VPC Service Controls に対応した Google Cloud プロダクトであれば、そのまま活かせることがわかったのは大きかったです。また、VPC Service Controls を使ったことでロギングやモニタリングなど、クラウドのコンソール表示をガバナンスに違反しない形で利用できるというのも大きなメリットだったと考えています。なお、当時は利用を断念した App Engine ですが、現在の仕様であれば App Engine あるいは Clour Run を利用してさらに効率的に開発を進められるのではないかと考えています。」(高野氏)
「主にインフラ部分で対応していただけたので、私が担当していたアプリケーション部分についてはそこまで大きな変更はなかったのですが、App Engine から GKE というかなり大きな変更があったにも関わらず、特に大きな影響がなかったのには感心しました。CI/CD でデプロイして本番リリースするまでの流れが非常にスムーズで、エンジニアが開発だけに注力できるのは Google Cloud の大きな魅力の一つだと思います。」(クラウドエース 西澤氏)
こうした苦難を乗り越え、2021 年 2 月、ついに『FINTOS!』Android 版がリリース(iOS 版は同年 7 月リリース)されました。しかしこれはゴールではなくスタートであると池田氏は言います。
「デジタル サービスの良いところは、今後はユーザーの皆さまがどのように使ってくださっているのかを確認しながらサービスを良くしていけること。Google Cloud では従来のオンプレミス上ではできないことができますから、それらを駆使して、我々のデジタル サービスの有り様をどんどん変えていきたいと考えています。」
—野村ホールディングス株式会社 執行役員 未来共創カンパニー長 池田 肇 氏「デジタル サービスの良いところは、今後はユーザーの皆さまがどのように使ってくださっているのかを確認しながらサービスを良くしていけること。Google Cloud では従来のオンプレミス上ではできないことができますから、それらを駆使して、我々のデジタル サービスの有り様をどんどん変えていきたいと考えています。大変なこともありましたが(笑)、そういうことができるというのが分かったという意味でも、意義のあるプロジェクトでしたね。今、我々は、"デジタル・ファイナンシャル・アドバイザー"、つまりお客様がデジタル上で完結することができる金融サービスの構築を目標として掲げているのですが、その第一歩目を踏み出せたかなと思っています。」(池田氏)
「もちろん、そのためには有料ユーザーを増やし、安定したビジネスとして走らせていく必要があります。今後は Google アナリティクスを利用して利用状況をリアルに把握したり、BigQuery を駆使して多様なログを瞬時に解析して迅速な経営判断やユーザー体験の向上に活用していくといった取り組みが重要になるでしょう。」(藤井氏)
「もう 1 つ重要なのが、今後、サービス自体を機能部品として外部に提供していく仕組みを整えていくこと。そのための API をマネジメントする仕組みとして、先日、Apigee X を正式採用することが決定しました。UI が圧倒的に使いやすく、可用性も高いことが選定のポイント。具体的な動きはこれからなのですが、期待しています。」(金谷氏)
インタビュイー
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事例制作:2021
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野村證券を中核とする野村グループは、グローバル金融サービス・グループとして、世界 30 か国・地域を超えるグローバル・ネットワークを有している。営業、ホールセール、インベストメント・マネジメントという 3 つの部門が横断的に連携して、国内外のお客様に付加価値の高い商品・サービスを提供している。 2019 年 4 月に社内横断型組織として「未来共創カンパニー」を設立。投資情報アプリ『FINTOS!』のほか、資産管理アプリ『OneStock』といったデジタルサービスのリリースを活発化させている。従業員数は野村グループ全体で 26,647 名(2021 年 6 月末時点)
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