LIXIL:BigQuery を中心としたデータ活用基盤 LIXIL Data Platform を構築、"データ活用の民主化" を推進

株式会社LIXIL について

2011 年にトステムや INAX といった、国内の主要な建材・設備機器メーカー 5 社が統合する形で設立。以降、GROHE、American Standard といった世界的ブランドを傘下に収め、現在は世界 150 か国以上で 5 万 6,097 人の従業員(2021 年 3 月時点の連結従業員数)を要するグローバル企業に成長している。

業種: 製造
地域: 日本

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LIXIL は専門知識のない従業員でもデータを扱える "データ活用の民主化" を目指し、BigQuery を中心としたデータ活用基盤『LIXIL Data Platform』を構築。Google Cloud 各種機能を最大限に活用し、グローバルで運用可能なデータ連携アーキテクチャを実現しています。

Google Cloud 導入の効果

  • 誰もが手軽に LDP に蓄積されているデータを検索できるようになり、データの活用が加速
  • これまでのシステムでは不可能だった大規模なデータ分析が可能になり、課題の解決が促進
  • マネージド サービスを中心にシステムを構築したことで少ない人員での開発・運用を実現

マネージドな仕組みがチームの負担を大きく低減

これまでも Google Cloud を有効活用してきた株式会社LIXIL(以下、LIXIL)。これからの新時代に向け、さまざまな先進的な取り組みを行っている同社ですが、中でも注目すべき取り組みが、BigQuery を中心としたデータ活用基盤『LIXIL Data Platform(以下、LDP)』です。"データ活用の民主化" を掲げ、2021 年 5 月に正式運用開始されたこの仕組みが、今、どのように LIXIL を変えようとしているのかを聞いてきました。

マネージド サービスの活用でハイ パフォーマンスと運用コスト低減を両立

「LDP とは、Google Cloud の最新技術を活用したクラウド型のデータ統合基盤『Big Data Core』と、専門知識のない従業員でもそれらのデータを扱えるようにするツール『Data Analysis』をパッケージにした、すべての LIXIL 従業員がデータを自ら扱えるようにする "データ活用の民主化" を実現するためのソリューションです。現在、SAP やメインフレームなどの基幹システム、Web アプリケーション サーバー、生産設備、IoT のログデータにいたるまで、さまざまなシステムから日々データが蓄積され、LIXIL の標準データ基盤として活用されています。」

そう語ってくれたのは、同社Digital部門 デジタルテクノロジーリーダーの栗本浩佑氏。栗本氏は LDP を構築した理由について、次のように説明します。

「この意思決定をスピード感をもって推進していくためには、各従業員が必要な時に必要なデータを自ら利用可能な状態にしていける環境が必要だと考えました。」

株式会社LIXIL Digital部門 デジタルテクノロジーリーダー  栗本 浩佑 氏

「新型コロナウイルス感染症拡大の影響で世界中でニューノーマルな市場ができあがりつつあり、今後はコロナ流行以前に培った経験やビジネス感覚が通用しなくなる可能性があります。そうした中では経験則ではなく、事実に基づくデータドリブンな意思決定が必要です。この意思決定をスピード感をもって推進していくためには、各従業員が必要な時に必要なデータを自ら利用可能な状態にしていける環境が必要だと考えました。」

LDP を Google Cloud 上に構築したのは、すでにマーケティング部門などで活用実績* のあった BigQuery の存在が大きかったからだと栗本氏は言います。「LIXIL 内での活用実績と成果の実体験を踏まえて LDP でも BigQuery を中心にシステムを設計しました。BigQuery ならではの強力なパフォーマンスならば、従業員の誰もが手軽に分析できる仕組みを構築できると考えました。」

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LDP のアーキテクチャは 3 つのコンポーネントから構成されています。 1 つ目は、同社の既存システムに存在する各種データを LDP に統合するためのインターフェースを提供する『データレイク』、2 つ目は、それらのデータを厳格な権限管理の下で分析・活用できるようにする『データウェアハウス』、3 つ目は、手元のファイルを LDP にアップロードして、自由に分析できるようにするための『ワークスペース』です。これらを組み合わせたデータ活用基盤である LDP で、 LIXIL は "データ活用の民主化" を強力に推進しようとしています。

この基本的な機能に加えて、LIXIL が独自に開発した社内向け Web アプリケーションが『LDP データ検索サイト』です。 「『LDP データ検索サイト』は BigQuery に保存されている全てのデータを瞬時に検索できる仕組みです。ある従業員がデータ分析を行うに際して、LDP にどういうデータが存在するのか、そのデータのオーナーが誰なのかを簡単に検索できるようにしました。必要なデータを見つけた後のデータ利用申請や承認フローもこのシステムに統合されています。」(栗本氏)

lixil_ldp_1

「"トイレ" や "サッシ"、"売上" といったキーワードだけでなく、データオーナーの名前やメールアドレスなど、複数の切り口で目的のデータにたどり着くための工夫がされている点もポイントです。」(Digital部門 システム開発運用統括部 システムインフラ部 原田氏)

同社ではこれまでもデータカタログを公開する取り組みが存在しましたが、データがカタログに反映されるまでに時間がかかってしまったり、手作業による継続的なメンテナンスが難しいという問題がありました。その点、 Data Catalog では、BigQuery で View が作成されると即座にカタログに反映されるため、メンテナンス コストを最小限に抑えたデータカタログの仕組みを作ることができたと言います。

「LDP のアーキテクチャは、利用者が増えてもパフォーマンスが下がらず、かつ運用コストも上がらない設計にこだわりました。現在、LDP は主に私と原田の 2 名で運用していますが、実は彼女は今年で 2 年目という新人。このプロジェクトに参加するまで Google Cloud に触ったことがなく IT に関するバックグラウンドもありませんでした。このメンバーでエンタープライズ規模のデータ基盤を運用できている事については、もちろん彼女が勉強熱心ということもあるのですが、Google Cloud のマネージドな仕組みがチームの負担を大きく低減させていることは疑いようもありません。」(栗本氏)

「Google Cloud はすべてが 1 つのプラットフォームで完結できるため、学習すべき範囲を Google Cloud だけに絞り込む事ができました。何も知らないところからのスタートでしたが、ドキュメントやサポートも充実していて学習はしやすかったです。現在はそうした経験を活かすかたちで LDP の普及に取り組んでおり、従業員向けに配布しているマニュアルでも数式を使わず手順のみを記載するなど、取りかかりやすく、興味を持ってもらえるように工夫しています。」(原田氏)

BigQuery の高性能がこれまでの不可能を可能にした

LDP の活用により着実に "データ活用の民主化" を進めている LIXIL ですが、BigQuery のハイ パフォーマンスによって、これまでできなかったようなデータ分析を行えるようになったことも大きな成果の 1 つだと言います。

「その象徴的な事例として紹介させていただきたいのが、営業プロセスの効率化に向けた取り組みです。LIXIL では数年前にガイドラインを策定し、標準的な営業プロセスを推進しています。しかし、結果だけを見ると試算通りの成果を出し切れていないという現実がありました。またこれらを分析するためのデータ ボリュームが非常に大きく、従来のシステムでは処理能力の問題から正確に分析をすることができていませんでした。今回 LDP を活用することで、従来システムの処理能力に左右されることのない高速な処理が可能になり、これまで見えなかったような営業担当者個別の詳細な分析を実現することができました。今後は、この分析結果を踏まえた具体的な営業プロセスの改善にも取り組んでいく予定です。」(栗本氏)

また、LIXIL で取り扱う製品について、特定のパーツが生産終了になることの影響を洗い出す作業にも BigQuery のパフォーマンスが役立っています。

「ある製品にどのようなパーツが使われているかをリストアップするのは簡単なのですが、その逆、あるパーツを使っている製品がどれだけあるかを検索するのは、我々が扱っている製品の膨大さもあってシステムに大変な負荷がかかります。LIXIL ではこの処理を数か月に一度実施する必要がありますが、既存システムの処理能力の問題もあり、毎回多くの工数が発生していました。これらの処理基盤を LDP に移行したところ、 処理時間が従来の 1/5 程度になり、商品開発部門の工数を大幅に削減する事ができました。今回はパイロット ケースとして特定の商品のみを対象としましたが、今後は他の商品にも拡大させ、より大きな成果を挙げていきたいと考えています。」(栗本氏)

Google Cloud の各種機能を最大限活用しグローバルで運用可能なデータ連携アーキテクチャを実現

LIXILのデータソースはオンプレミスやデータセンター、クラウド、工場など、グローバルのさまざまな場所に点在しています。 これらのデータを LDP に集約する為には、適切なネットワーク経路と、スケール可能で使いやすい汎用的なデータ連携の仕組みが必要でした。

「LDP では、Cloud Interconnect と各国の IP/MPLS サービスを活用することでグローバルに存在するデータソースから直接 LDP にデータを連携する事が可能です。Cloud Functions や Cloud Workflow など、Google Cloud の各種サービスを組み合わせる事によって、イベント ドリブンにデータ連携が実行されるサーバーレス データパイプラインの仕組みが実現できました」と栗本氏は言います。

llixil_dp_system_architecture
<図を拡大>

さらに LDP では BigQuery ML を活用し、機械学習を Google スプレッドシートから簡単に扱えるようにした『LDP AIKit』を独自に開発。"AI 活用の民主化" に向け、従業員が普段使いのツールとして機械学習をビジネスに活用できるような仕組みの整備を進めています。

「これは独自に開発した Google スプレッドシートのアドオンで、Apps Script で開発されています。BigQuery ML の機能が利用されており、機械学習の基本的パターンの回帰、分類、クラスタリングに対応しています。在庫・需要予測や広告コストのシミュレーション、社員食堂の利用者数予測など、さまざまな用途に活用できる事が特徴です。予測値を出すにあたって、専門的なチューニングが不要という点が BigQuery ML の良いところ。今後社内での活用事例を広げていきたいと考えています。」(栗本氏)

lixil_AIKit
*画像内のデータはダミーです

現在、LDP の利用者数は約 400 名。毎月、順調に利用者数を増やしているそうですが、今後はそれをさらに加速させていきたいと言います。

「LDP は LIXIL 従業員がデータを自由に扱えるようにする、"データ活用の民主化" を実現するためのソリューション。BigQuery などの Google Cloud プロダクトを駆使し、皆がデータドリブンで仕事をしているような環境を作り出していきたいです。」

株式会社LIXIL Digital部門 デジタルテクノロジーリーダー 栗本 浩佑 氏

「当面の目標は全従業員の約 10% である 3,000 名が毎月なんらかの形で LDP を利用する状況を生み出すこと。2~3 年かけて啓蒙していき、皆がデータドリブンに仕事をしているような環境を作り出していきたいです。」(栗本氏)

インタビュイー

lixil_interviewees
(右から)
株式会社LIXIL
・Digital部門 デジタルテクノロジーリーダー 栗本 浩佑 氏
・Digital部門 システム開発運用統括部 システムインフラ部 原田 華帆 氏

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事例制作:2021

利用しているソリューション:
スマート アナリティクス

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2011 年にトステムや INAX といった、国内の主要な建材・設備機器メーカー 5 社が統合する形で設立。以降、GROHE、American Standard といった世界的ブランドを傘下に収め、現在は世界 150 か国以上で 5 万 6,097 人の従業員(2021 年 3 月時点の連結従業員数)を要するグローバル企業に成長している。

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