株式会社LIXIL の導入事例:BigQuery を中心に構築したプライベート DMP でリアル来客も含めたお客さまの行動を分析・活用
Google Cloud Japan Team
広告効果の向上や、店舗誘導の効率アップにはプライベート DMP の導入が効果的です。株式会社LIXIL は、それを、BigQuery をフル活用することで実現。BigQuery やアナリティクス 360 などの Google プロダクトに、レコメンド エンジンなどの外部サービスを見事に連携させ、理想的なデータ分析基盤の構築に成功しました。その鍵となる工夫などを、同社エンジニア、栗本さんが語ります。
利用している Google Cloud Platform サービス
BigQuery、BigQuery ML(ベータ版)、Cloud Datalab など写真
- エンジニア 栗本 浩佑氏
ひと手間かけて BigQuery 上のユーザー識別子を統一し、分析精度を向上
建築材料から、玄関・窓まわり、水まわり設備まで、家づくりにおいて、今やなくてはならない存在となっている株式会社LIXIL。その Web サイトには月間約 200 万人もの人々が訪れます。「お客さまが LIXIL の Web サイトにやってくる理由はそれぞれ大きく異なります。Web 上でキッチンやトイレなどの LIXIL 商品の性能や機能を調べたい方、近くのショールームで実際の商品に触ってみたい方、見積りを取りたい方、商品を設置する工務店を探したい方といった具合です。そのため、Web サイトにはお客さま一人ひとりの状況に合わせて、適切なタイミングで、最適なコンテンツに誘導する必要があります。これらの課題を解決するために、我々は BigQuery を中心としたプライベート DMP(Data Management Platform)の構築を行いました。」(栗本さん)
LIXIL のプライベート DMP の構成は上図の通り。ここでポイントとなるのが、アナリティクス 360 の BigQuery エクスポート機能を使って BigQuery に蓄積されたアクセスログに “とある工夫” を施すことだったと栗本さんは言います。
「アナリティクス 360 から、BigQuery へのエクスポート時、アクセスログの中の『clientId』が、これをハッシュ化した『fullVisitorId』に変更されます。そのままだとアナリティクス 360 と BigQuery で共通の ID を使った分析ができなくなってしまうため、アナリティクス 360 のカスタム ディメンションに『clientId』を保存することで、この問題を解決しているのです。同時に、レコメンド エンジンにもアナリティクス 360 の『clientId』を連携。これによって、3 つのサービス全てで、『clientId』を共通のユーザー識別子として利用できるようにしています。」(栗本さん)
またお客さまのリアルなショールーム来館については、店頭で実施するアンケート システムとアナリティクス 360 を連携させることで、こちらも『clientId』と紐付け。これによって、Web 上での行動・閲覧履歴だけでなく、実際の行動も加えた分析をできるようにしています。
「実際の運用に際しては、蓄積されたアクセスログをデータ アナリストが、BigQuery ML や、Cloud Datalab といったツールを使って分析し、『clientId』に対して『キッチン ユーザー』『トイレ ユーザー』『リフォーム ユーザー』というような属性を付与します。これをユーザー リストとしてまとめて、広告管理者やウェブ担当者が利用。それぞれの属性に合わせた最適な広告配信などを行うことにより、無差別に同じコンテンツを展開するのと比べて、コンバージョン レートや集客効率を高めることができました。」(栗本さん)
開発のしやすさだけでなく、未経験者がすぐに使いこなせる敷居の低さも GCP の魅力
BigQuery の導入効果について、栗本さんは次のように語ります。「まずはコストですね。BigQuery では従量課金制を選択しているので、初期投資を最小限に抑えることができます。その後、必要に応じて規模を拡大していけることも大きなメリット。API や SDK(Software Development Kit)がとても充実しており、必要に応じて外部サービスと連携させやすい点も気に入っています。そして何より速度ですね。何十 、何百 GB などの大きなデータにクエリを投げた際のレスポンスが抜群に速いなと実感しています。」(栗本さん)
加えて、エンジニアでなくとも、データ ポータル(旧名称:Data Studio)など BI ツールを使うことですぐに、データの分析・ビジュアライズができるようになることも評価しているとのこと。
「データ ポータルでは日々のパフォーマンスを可視化したレポート作成を自動化したりするのに使っています。他の BI ツールと比べて操作がかなり直観的なので、初心者でもすぐに使えるようになるのも大きな魅力です。実際、弊社でも、新卒で入ってきた未経験の新入社員が半年くらいで、ばりばりと使いこなしています。」(栗本さん)
こうしてひとまずの完成を見た、LIXIL のプライベート DMP ですが、栗本さん曰く「随時拡張していくので、本当の意味で “完成” することはないだろう。」とのことです。
「現在は、Cloud Bigtable のようなパフォーマンスが良く、スケールに優れたプロダクトを使って、弊社の商品を全個体識別できるデータベースを作成中です。また、今後は、AutoML Vision を使った、商品の画像認識も実現したいと考えています。我々の取り扱い商品の中にはサッシなど、ぱっと見で型番特定が難しいものが多いのですが、これを写真で判断できるようになったら、お客さまにとっても、工務店さんにとっても便利だな、と。」(栗本さん)
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