このトピックでは、Microsoft® Azure Kubernetes Service(AKS)で Apigee ハイブリッドに対してマルチリージョン デプロイを設定する方法について説明します。
マルチリージョン デプロイのトポロジには次のものがあります。
- アクティブ - アクティブ: 複数の地理的ロケーションにアプリケーションをデプロイし、それらのデプロイで API レスポンスのレイテンシを低く抑える必要がある場合。クライアントに最も近い複数の地理的ロケーションにハイブリッドをデプロイすることもできます。例: 米国西海岸、米国東海岸、ヨーロッパ、APAC。
- アクティブ - パッシブ: プライマリ リージョンとフェイルオーバー リージョンまたは障害復旧リージョンがある場合。
次の図に示すように、マルチリージョン ハイブリッド デプロイのリージョンは Cassandra を介して通信します。
前提条件
複数リージョンにハイブリッドを構成する前に、次の前提条件を満たす必要があります。
- クラスタの設定手順に進む前に、ハイブリッド インストール ガイドで Google Cloud や組織構成などの前提条件を確認してください。
詳細については、Kubernetes のドキュメントをご覧ください。
各リージョンに仮想ネットワークを作成する
マルチリージョン デプロイ用の仮想ネットワークを作成します。たとえば、次のコマンドでは米国中部リージョンと米国東部リージョンにネットワークを作成します。
次のコマンドを実行して、米国東部リージョンに my-hybrid-rg-vnet
という名前の仮想ネットワークを作成します。
az network vnet create \ --name my-hybrid-rg-vnet \ --location eastus \ --resource-group my-hybrid-rg \ --address-prefixes 120.38.1.0/24 \ --subnet-name my-hybrid-rg-vnet-subnet \ --subnet-prefix 120.38.1.0/26
次のコマンドを実行して、米国中部リージョンに my-hybrid-rg-vnet-ext01
という名前の仮想ネットワークを作成します。
az network vnet create \ --name my-hybrid-rg-vnet-ext01 \ --location centralus \ --resource-group my-hybrid-rg \ --address-prefixes 192.138.0.0/24 \ --subnet-name my-hybrid-rg-vnet-ext01-subnet \ --subnet-prefix 192.138.0.0/26
ネットワーク ピアリングを作成する
仮想ネットワーク間にネットワーク ピアリングを作成します。
仮想ネットワーク ID を取得する
仮想ネットワーク ID 間のピアリングが確立されます。az network vnet show コマンドを使用して各仮想ネットワークの ID を取得し、その ID を変数に格納します。
最初の仮想ネットワーク(my-hybrid-rg-vnet
)の ID を取得します。
vNet1Id=$(az network vnet show \ --resource-group my-hybrid-rg \ --name my-hybrid-rg-vnet \ --query id --out tsv)
2 番目の仮想ネットワーク(my-hybrid-rg-vnet-ext01
)の ID を取得します。
vNet2Id=$(az network vnet show \ --resource-group my-hybrid-rg \ --name my-hybrid-rg-vnet-ext01 \ --query id \ --out tsv)
最初の仮想ネットワークから 2 番目の仮想ネットワークへのピアリングを作成する
仮想ネットワーク ID を使用すると、次の例に示すように、最初の仮想ネットワーク(my-hybrid-rg-vnet
)から 2 番目の仮想ネットワーク(my-hybrid-rg-vnet-ext01
)へのピアリングを作成できます。
az network vnet peering create \ --name my-hybrid-rg-vnet1-peering \ # The name of the virtual network peering. --resource-group my-hybrid-rg \ --vnet-name my-hybrid-rg-vnet \ # The virtual network name. --remote-vnet $vNet2Id \ # Resource ID of the remote virtual network. --allow-vnet-access
コマンドの出力で、peeringState
が nitiated 状態になっていることに注意してください。I2 番目の仮想ネットワークから最初の仮想ネットワークへのピアリングを作成するまで、ピアリングは Initiated 状態のままです。
{ ... "peeringState": "Initiated", ... }
2 番目の仮想ネットワークから最初の仮想ネットワークへのピアリングを作成する
コマンドの例:
az network vnet peering create \ --name my-hybrid-rg-vnet2-peering \ # The name of the virtual network peering. --resource-group my-hybrid-rg \ --vnet-name my-hybrid-rg-vnet-ext01 \ # The virtual network name. --remote-vnet $vNet1Id \ # Resource ID of the remote virtual network. --allow-vnet-access
コマンドの出力で、peeringState
が Connected 状態になっていることに注意してください。また、Azure で、最初と 2 番目の仮想ネットワークのピアリングのピアリング状態が Connected に変更されます。
{ ... "peeringState": "Connected", ... }
次のコマンドでも、my-hybrid-rg-vnet1-peering
から my-hybrid-rg-vnet2-peering
へのピアリング状態が Connected に変更されていることを確認できます。
az network vnet peering show \ --name my-hybrid-rg-vnet1-peering \ --resource-group my-hybrid-rg \ --vnet-name my-hybrid-rg-vnet \ --query peeringState
予想される出力:
Connected
マルチリージョン クラスタを作成する
異なる CIDR ブロックを持つ複数のリージョンに Kubernetes クラスタを設定します。ステップ 1: クラスタを作成するもご覧ください。以前に作成したロケーションと仮想ネットワーク名を使用します。
すべてのリージョンの Kubernetes クラスタ間で Cassandra ポート 7000 と 7001 を開きます(トラブルシューティング中にバックアップ オプションとして 7000 を使用できます)。
マルチリージョン シードホストを構成する
このセクションでは、既存の Cassandra クラスタを新しいリージョンに拡張する方法について説明します。この設定によって、新しいリージョンがクラスタをブートストラップし、既存のデータセンターに参加できるようになります。この構成がないと、マルチリージョンの Kubernetes クラスタが相互に認識できません。
- シード名を取得する前に、kubectl コンテキストを元のクラスタに設定します。
kubectl config use-context original-cluster-name
次の
kubectl
コマンドを実行して、現在のリージョンの Cassandra のシードホスト アドレスを特定します。シードホスト アドレスによって、新しいリージョン インスタンスは最初の起動時に元のクラスタを検索し、クラスタのトポロジを学習できます。シードホスト アドレスは、クラスタ内のコンタクト ポイントとなります。
kubectl get pods -o wide -n apigee | grep apigee-cassandra apigee-cassandra-default-0 1/1 Running 0 4d17h 120.38.1.9 aks-agentpool-21207753-vmss000000
- 前のコマンドで返された IP の中からマルチリージョン シードホストにするものを決めます。この例では、単一ノードの Cassandra クラスタのみが動作しており、シードホストは
120.38.1.9
です。 - データセンター 2 で、オーバーライド ファイルのコピーを作成します。新しいファイルの名前にはクラスタ名を含めます。例:
overrides_your_cluster_name.yaml
- データセンター 2 の
overrides_your_cluster_name.yaml
で、cassandra.multiRegionSeedHost
とcassandra.datacenter
を構成します。ここでmultiRegionSeedHost
は、前のコマンドで返された IP の一つです。cassandra: multiRegionSeedHost: seed_host_IP datacenter: data_center_name rack: rack_name
次に例を示します。
cassandra: multiRegionSeedHost: 120.38.1.9 datacenter: "centralus" rack: "ra-1"
- 新しいデータセンター / リージョンで、ハイブリッドをインストールする前に、最初のリージョンで設定したものと同じ TLS 証明書と認証情報を
overrides_your_cluster_name.yaml
で設定します。
新しいリージョンを設定する
シードホストを構成したら、新しいリージョンを設定できます。
新しいリージョンを設定するには:
- 証明書を既存のクラスタから新しいクラスタにコピーします。新しい CA ルートは、Cassandra などのハイブリッド コンポーネントによって mTLS に使用されます。したがって、クラスタ全体で一貫した証明書を使用することが不可欠です。
- コンテキストを元の名前空間に設定します。
kubectl config use-context original-cluster-name
- 現在の名前空間の構成をファイルにエクスポートします。
$ kubectl get namespace
-o yaml > apigee-namespace.yaml apigee-ca
Secret をファイルにエクスポートします。kubectl -n cert-manager get secret apigee-ca -o yaml > apigee-ca.yaml
- コンテキストを新しいリージョンのクラスタ名に設定します。
kubectl config use-context new-cluster-name
- 新しいクラスタに名前空間の構成をインポートします。新しいリージョンで別の名前空間を使用する場合は、ファイル内の「namespace」を必ず更新してください。
kubectl apply -f apigee-namespace.yaml
新しいクラスタに Secret をインポートします。
kubectl -n cert-manager apply -f apigee-ca.yaml
- コンテキストを元の名前空間に設定します。
- 新しいリージョンにハイブリッドをインストールします。前のセクションで説明したように、
overrides_your_cluster_name.yaml
ファイルでは、最初のリージョンで構成したものと同じ TLS 証明書を指定してください。次の 2 つのコマンドを実行して、ハイブリッドを新しいリージョンにインストールします。
apigeectl init -f overrides_your_cluster_name.yaml
apigeectl apply -f overrides_your_cluster_name.yaml
- 新しいデータセンターのすべてのノードで
nodetool rebuild
を順次実行します。データサイズに応じて数分から数時間かかることがあります。kubectl exec apigee-cassandra-default-0 -n apigee -- nodetool rebuild -- dc-1
- ログで再ビルドプロセスを確認します。また、
nodetool status
コマンドを使用してデータサイズを確認します。kubectl logs apigee-cassandra-default-0 -f -n apigee
次に、ログエントリの例を示します。
INFO 01:42:24 rebuild from dc: dc-1, (All keyspaces), (All tokens) INFO 01:42:24 [Stream #3a04e810-580d-11e9-a5aa-67071bf82889] Executing streaming plan for Rebuild INFO 01:42:24 [Stream #3a04e810-580d-11e9-a5aa-67071bf82889] Starting streaming to /10.12.1.45 INFO 01:42:25 [Stream #3a04e810-580d-11e9-a5aa-67071bf82889, ID#0] Beginning stream session with /10.12.1.45 INFO 01:42:25 [Stream #3a04e810-580d-11e9-a5aa-67071bf82889] Starting streaming to /10.12.4.36 INFO 01:42:25 [Stream #3a04e810-580d-11e9-a5aa-67071bf82889 ID#0] Prepare completed. Receiving 1 files(0.432KiB), sending 0 files(0.000KiB) INFO 01:42:25 [Stream #3a04e810-580d-11e9-a5aa-67071bf82889] Session with /10.12.1.45 is complete INFO 01:42:25 [Stream #3a04e810-580d-11e9-a5aa-67071bf82889, ID#0] Beginning stream session with /10.12.4.36 INFO 01:42:25 [Stream #3a04e810-580d-11e9-a5aa-67071bf82889] Starting streaming to /10.12.5.22 INFO 01:42:26 [Stream #3a04e810-580d-11e9-a5aa-67071bf82889 ID#0] Prepare completed. Receiving 1 files(0.693KiB), sending 0 files(0.000KiB) INFO 01:42:26 [Stream #3a04e810-580d-11e9-a5aa-67071bf82889] Session with /10.12.4.36 is complete INFO 01:42:26 [Stream #3a04e810-580d-11e9-a5aa-67071bf82889, ID#0] Beginning stream session with /10.12.5.22 INFO 01:42:26 [Stream #3a04e810-580d-11e9-a5aa-67071bf82889 ID#0] Prepare completed. Receiving 3 files(0.720KiB), sending 0 files(0.000KiB) INFO 01:42:26 [Stream #3a04e810-580d-11e9-a5aa-67071bf82889] Session with /10.12.5.22 is complete INFO 01:42:26 [Stream #3a04e810-580d-11e9-a5aa-67071bf82889] All sessions completed
- シードホストを更新します。
overrides-DC_name.yaml
からmultiRegionSeedHost: 10.0.0.11
を削除してから再度適用します。apigeectl apply -f overrides-DC_name.yaml