ランタイム サービスのスケーリングと自動スケーリング

Kubernetes で実行されるほとんどのサービスは、コマンドラインまたは構成のオーバーライドでスケーリングできます。Apigee ハイブリッド ランタイム サービスのスケーリング パラメータは、overrides.yaml ファイルで設定できます。

サービス 実装方法 スケーリング
Cassandra ApigeeDatastore(CRD) Cassandra のスケーリングをご覧ください。
Ingress / LoadBalancer Deployment

ingressGateways.replicaCountMiningressGateways.replicaCountMax でスケーリングを管理します。

Logger DaemonSet すべてのノードで DaemonSet が Pod のレプリカを管理します。そのため、Pod 自体をスケーリングすると DaemonSet もスケーリングされます。
MART
Apigee Connect
Watcher
ApigeeOrganization(CRD)

構成でスケーリングするには、martwatcherconnectAgent スタンザに対する Deployment の replicaCountMin 構成プロパティの値を増やします。例:

mart:
 replicaCountMax: 2
 replicaCountMin: 1

watcher:
 replicaCountMax: 2
 replicaCountMin: 1

connectAgent:
 replicaCountMax: 2
 replicaCountMin: 1

これらの Deployment では自動スケーリングに HorizontalPodAutoscaler が使用されます。Deployment オブジェクトの targetCPUUtilizationPercentage プロパティにスケールアップのしきい値を設定します。この値を超えると、Kubernetes によって replicaCountMax の値に達するまで Pod が追加されます。

構成プロパティの設定の詳細については、ランタイム プレーン コンポーネントを管理するをご覧ください。

Runtime
Synchronizer
UDCA
ApigeeEnvironment(CRD) 構成でスケーリングするには、オーバーライド ファイルで udcasynchronizerruntime スタンザに対する replicaCountMin プロパティの値を増やします。次に例を示します。
synchronizer:
 replicaCountMax: 10
 replicaCountMin: 1

runtime:
 replicaCountMax: 10
 replicaCountMin: 1

udca:
 replicaCountMax: 10
 replicaCountMin: 1

注: これらの変更は、オーバーライド ファイル内のすべての環境に適用されます。環境ごとにスケーリングをカスタマイズする場合は、後述の高度な構成をご覧ください。

これらの Deployment では自動スケーリングに HorizontalPodAutoscaler が使用されます。Deployment オブジェクトの targetCPUUtilizationPercentage プロパティにスケールアップのしきい値を設定します。この値を超えると、Kubernetes によって replicaCountMax の値に達するまで Pod が追加されます。

構成プロパティの設定の詳細については、ランタイム プレーン コンポーネントを管理するをご覧ください。

高度な構成

状況によっては、高度なスケーリング オプションを使用する必要が生じることがあります。次のような場合です。

  • 環境ごとに異なるスケーリング オプションを設定する。たとえば、env1 の minReplica が 5 で、env2 の minReplica が 2 の場合など。
  • 環境内のコンポーネントごとに異なるスケーリング オプションを設定する。たとえば、udca コンポーネントの maxReplica が 5 で、synchronizer コンポーネントの maxReplica が 2 の場合です。

次の例では、kubernetes patch コマンドを使用して runtime コンポーネントの maxReplicas プロパティを変更する方法を示します。

  1. 次のコマンドで、使用する環境変数を作成します。
    export ENV=my-environment-name
    export NAMESPACE=apigee  #the namespace where apigee is deployed
    export COMPONENT=runtime #can be udca or synchronizer
    export MAX_REPLICAS=2
    export MIN_REPLICAS=1
  2. パッチを適用します。この例では、PATH 内に kubectl があることを前提としています。
    kubectl patch apigeeenvironment -n $NAMESPACE \
      $(kubectl get apigeeenvironments -n $NAMESPACE -o jsonpath='{.items[?(@.spec.name == "'$ENV'" )]..metadata.name}') \
      --patch "$(echo -e "spec:\n  components:\n    $COMPONENT:\n      autoScaler:\n        maxReplicas: $MAX_REPLICAS\n        minReplicas: $MIN_REPLICAS")" \
      --type merge
    
  3. 変更を確認します:
    kubectl get hpa -n $NAMESPACE
    

環境に基づくスケーリング

デフォルトでは、スケーリングは組織レベルで記述されます。次の例に示すように、overrides.yaml ファイルで環境固有のスケーリングを指定することで、デフォルト設定をオーバーライドできます。

envs:
  # Apigee environment name
  - name: test
    components:
    # Environment-specific scaling override
    # Otherwise, uses scaling defined at the respective root component
     runtime:
      replicaCountMin: 2
      replicaCountMax: 20
  

指標に基づくスケーリング

指標に基づくスケーリングでは、ランタイムが CPU とアプリケーション指標を使用して apigee-runtime Pod をスケーリングできます。Kubernetes HorizontalPodAutoscaler(HPA)API は、hpaBehavior フィールドを使用して、ターゲット サービスのスケールアップとスケールダウンの動作を構成します。指標に基づくスケーリングは、ハイブリッド デプロイの他のコンポーネントでは使用できません。

スケーリングは次の指標に基づいて調整できます。

指標 測定 考慮事項
serverNioTaskWaitTime http レイヤでのプロキシ リクエストのランタイム インスタンスにおける、処理キューの平均待機時間(ミリ秒)。 この指標は、プロキシのリクエストとレスポンスの数とペイロード サイズの影響を測定します。
serverMainTaskWaitTime ランタイム インスタンスでプロキシ リクエストがポリシーを処理する、処理キューの平均待機時間(ミリ秒)。 この指標は、プロキシのリクエスト フローに接続されたポリシーの複雑さの影響を測定します。

overrides.yamlruntime スタンザでの次の例は、ハイブリッド実装で apigee-runtime Pod をスケーリングするための標準パラメータ(と許可された範囲)を示しています。

hpaMetrics:
      serverMainTaskWaitTime: 400M (300M to 450M)
      serverNioTaskWaitTime: 400M (300M to 450M)
      targetCPUUtilizationPercentage: 75
    hpaBehavior:
      scaleDown:
        percent:
          periodSeconds: 60 (30 - 180)
          value: 20 (5 - 50)
        pods:
          periodSeconds: 60 (30 - 180)
          value: 2 (1 - 15)
        selectPolicy: Min
        stabilizationWindowSeconds: 120 (60 - 300)
      scaleUp:
        percent:
          periodSeconds: 60 (30 - 120)
          value: 20 (5 - 100)
        pods:
          periodSeconds: 60 (30 - 120)
          value: 4 (2 - 15)
        selectPolicy: Max
        stabilizationWindowSeconds: 30 (30 - 120)
  

より積極的なスケーリングを構成する

スケールアップ ポリシーの percentpods の値を大きくすると、より積極的なスケールアップ ポリシーになります。同様に、scaleDownpercentpods の値を大きくすると、積極的なスケールダウン ポリシーになります。例:

hpaMetrics:
    serverMainTaskWaitTime: 400M
    serverNioTaskWaitTime: 400M
    targetCPUUtilizationPercentage: 75
  hpaBehavior:
    scaleDown:
      percent:
        periodSeconds: 60
        value: 20
      pods:
        periodSeconds: 60
        value: 4
      selectPolicy: Min
      stabilizationWindowSeconds: 120
    scaleUp:
      percent:
        periodSeconds: 60
        value: 30
      pods:
        periodSeconds: 60
        value: 5
      selectPolicy: Max
      stabilizationWindowSeconds: 30

上記の例では、scaleDown.pods.value5 に、scaleUp.percent.value 30 に、scaleUp.pods.value5 に増えています。

あまり積極的でないスケーリングを構成する

hpaBehavior 構成値を減らすことで、あまり積極的でないスケールアップとスケールダウンのポリシーを実装することもできます。例:

hpaMetrics:
    serverMainTaskWaitTime: 400M
    serverNioTaskWaitTime: 400M
    targetCPUUtilizationPercentage: 75
  hpaBehavior:
    scaleDown:
      percent:
        periodSeconds: 60
        value: 10
      pods:
        periodSeconds: 60
        value: 1
      selectPolicy: Min
      stabilizationWindowSeconds: 180
    scaleUp:
      percent:
        periodSeconds: 60
        value: 20
      pods:
        periodSeconds: 60
        value: 4
      selectPolicy: Max
      stabilizationWindowSeconds: 30

上記の例では、scaleDown.percent.value10 に、scaleDown.pods.value1 に減少し、scaleUp.stablizationWindowSeconds180 に増加しています。

hpaBehavior フィールドを使用した指標に基づくスケーリングの詳細については、スケーリング ポリシーをご覧ください。

指標に基づくスケーリングを無効にする

指標に基づくスケーリングはデフォルトで有効になっており、完全に無効にすることはできませんが、指標に基づくスケーリングがトリガーされないレベルに指標しきい値を構成できます。その結果、スケーリング動作は CPU に基づくスケーリングと同じになります。たとえば、次の構成を使用すると、指標に基づくスケーリングがトリガーされなくなります。

hpaMetrics:
      serverMainTaskWaitTime: 4000M
      serverNioTaskWaitTime: 4000M
      targetCPUUtilizationPercentage: 75
    hpaBehavior:
      scaleDown:
        percent:
          periodSeconds: 60
          value: 10
        pods:
          periodSeconds: 60
          value: 1
        selectPolicy: Min
        stabilizationWindowSeconds: 180
      scaleUp:
        percent:
          periodSeconds: 60
          value: 20
        pods:
          periodSeconds: 60
          value: 4
        selectPolicy: Max
        stabilizationWindowSeconds: 30

トラブルシューティング

このセクションでは、スケーリングと自動スケーリングの構成の際に発生する可能性がある一般的なエラーのトラブルシューティング方法について説明します。

HPA で指標の値に unknown が表示される

指標に基づくスケーリングが機能せず、HPA に unknown が指標値として表示される場合は、次のコマンドを使用して HPA 出力を確認します。

kubectl describe hpa HPA_NAME

コマンドを実行する際は、HPA_NAME を、表示する HPA の名前に置き換えてください。

出力には、サービスの CPU ターゲットと利用率が表示され、指標に基づくスケーリングがない場合でも CPU スケーリングが機能することが示されます。複数のパラメータを使用した HPA の動作については、複数メトリクスでのスケーリングをご覧ください。