SAP MaxDB プランニング ガイド

このガイドでは、Google Cloud 上で SAP MaxDB が機能する仕組みの概要と、新しい SAP MaxDB システムの実装を計画する際に使用できる詳細情報について説明します。

SAP MaxDB を Google Cloud にデプロイする方法については、以下を参照してください。

SAP MaxDB に関する SAP の詳細については、SAP ヘルプポータルにある SAP MaxDB ライブラリをご覧ください。

Google Cloud の基礎

Google Cloud は、クラウドベースの多くのサービスとプロダクトから構成されています。Google Cloud 上で SAP プロダクトを実行する場合は、主に Compute Engine および Cloud Storage から提供される IaaS ベースのサービスと、ツールなどのプラットフォーム全体の機能を使用します。

重要なコンセプトと用語については、Google Cloud Platform の概要をご覧ください。このガイドでは、わかりやすく説明するため、この概要の情報を一部利用しています。

エンタープライズ規模の企業が Google Cloud を利用する場合の考慮事項の概要については、Google Cloud アーキテクチャ フレームワークをご覧ください。

Google Cloud の操作

Google Cloud では、クラウド上のプラットフォームとリソースを操作する際に、主に次の 3 つの方法を使用できます。

  • ウェブベースのユーザー インターフェースである Google Cloud コンソール。
  • gcloud コマンドライン ツール。Google Cloud コンソールが備えている機能のスーパーセットです。
  • サービスへのアクセス、リソースの管理のための API を提供するクライアント ライブラリ。クライアント ライブラリは、オリジナルのツールを作成する際に便利です。

Google Cloud サービス

SAP のデプロイでは通常、次の Google Cloud サービスの一部またはすべてが使用されます。

サービス 説明
VPC ネットワーキング VM インスタンスを相互に接続します。また、インスタンスをインターネットに接続します。各インスタンスは、1 つのグローバル IP 範囲を持つレガシー ネットワークのメンバー、または推奨されるサブネット ネットワークのメンバーです。後者の場合、インスタンスは、より大規模なネットワークを構成する単一サブネットワークのメンバーです。1 つのネットワークが複数の Google Cloud プロジェクトにまたがることはできませんが、1 つの Google Cloud プロジェクトが複数のネットワークを使用することはできます。
Compute Engine 選択されたオペレーティング システムとソフトウェア スタックで VM を作成し、管理します。
永続ディスクと Hyperdisk

Compute Engine の永続ディスクと Hyperdisk を使用できます。

  • 永続ディスクには、標準ハードディスク ドライブ(HDD)またはソリッド ステート ドライブ(SSD)を使用できます。バランス永続ディスクと SSD 永続ディスクの場合、PD 非同期レプリケーションにより、2 つの Google Cloud リージョン間で SAP データの非同期レプリケーションが行われます。
  • Hyperdisk は、SSD 永続ディスクよりも高い最大 IOPS とスループットのオプションを提供します。
Google Cloud コンソール Compute Engine リソースを管理するブラウザベースのツール。テンプレートを使って、必要な Compute Engine リソースとインスタンスをすべて定義できます。Google Cloud コンソールが自動的にリソースを作成し、依存関係を検出するので、リソースを個別に作成して構成する必要はありません。また、依存関係を指定する必要もありません。
Cloud Storage レプリケーション機能で SAP データベースのバックアップを Cloud Storage に保管することで、耐久性と信頼性を高めることができます。
Cloud Monitoring Compute Engine、ネットワーク、永続ディスクのデプロイ状況、パフォーマンス、稼働時間、健全性を視覚的に確認できます。

Monitoring は、Google Cloud から指標、イベント、メタデータを収集し、これらの分析結果をダッシュボード、グラフ、アラートを通じて提供します。Monitoring で、コンピューティング指標を無料でモニタリングできます。
IAM Google Cloud リソースの権限を一元管理できます。VM と永続ディスクの作成、変更、削除、ネットワークの作成と変更など、VM に対するコントロール プレーンの処理を実行できるユーザーを制御します。

料金と割り当て

料金計算ツールを使用すると、使用料金を概算できます。料金の詳細については、Compute Engine の料金Cloud Storage の料金Google Cloud Observability の料金をご覧ください。

Google Cloud リソースには割り当てが適用されます。ハイ CPU またはハイメモリのマシンを使用する場合、割り当て量の追加リクエストが必要になる場合があります。詳細については、Compute Engine のリソース割り当てをご覧ください。

コンプライアンスと主権管理

データ所在地、アクセス制御、サポート担当者、規制要件に準拠して SAP ワークロードを実行する必要がある場合は、クラウド エクスペリエンスの質を損なうことなく、Google Cloud でセキュリティとコンプライアンスを確保したワークロードを実行できるサービスである、Assured Workloads の使用を計画する必要があります。詳細については、Google Cloud 上の SAP のコンプライアンスと主権管理をご覧ください。

デプロイ アーキテクチャ

Google Cloud の基本的な単一ノード SAP MaxDB のインストール済み環境は、次のコンポーネントで構成されています。

  • SAP MaxDB データベースを実行している 1 台の Compute Engine VM。
  • 3~4 個の接続された永続ディスク ドライブ。

    ドライブ コンテンツ Linux Windows
    データベース インスタンスのルート ディレクトリ /sapdb/[DBSID] MaxDB (D:)
    データベース データファイル /sapdb/[DBSID]/sapdata MaxDB Data (E:)
    データベースのトランザクション ログ /sapdb/[DBSID]/saplog MaxDB Log (L:)
    データベースのバックアップ(オプション) /maxdbbackup Backup (X:)

必要に応じて、次のようにインストール環境を拡張できます。

  • 次のような NetWeaver ディレクトリ。

    • /usr/sap(Linux の場合)または SAP (S:)(Windows の場合)
    • /sapmnt(Linux の場合)または Pagefile (P:)(Windows の場合)
  • NAT ゲートウェイ。NAT ゲートウェイを使用すると、VM とインターネットの直接接続は拒否しながら、VM にインターネット接続を提供できます。また、この VM を踏み台インスタンスとして構成し、プライベート サブネット上の他の VM との SSH 接続を確立することもできます。詳細については、NAT ゲートウェイと踏み台インスタンスをご覧ください。

ユースケースによっては、追加のデバイスやデータベースが必要になる場合があります。詳細については、SAP ヘルプポータルで MaxDB のドキュメントをご覧ください。

リソース要件

Google Cloud での SAP MaxDB の実行は、多くの点で独自のデータセンターでの実行と似ています。データセンターの場合と同様、コンピューティング リソース、ストレージ、ネットワークのキャパシティについて検討する必要があります。詳細については、SAP Note 2456432 - SAP Applications on Google Cloud: Supported Products and Google Cloud machine types をご覧ください。

VM 構成

SAP MaxDB は、カスタムタイプを含むすべての Compute Engine マシンタイプで動作が保証されています。ただし、SAP NetWeaver または Application Server Central Services(ASCS)と同じ VM で MaxDB を実行する場合、SAP NetWeaver でサポートされている VM を使用する必要があります。SAP NetWeaver がサポートする VM の一覧については、SAP NetWeaver プランニング ガイドをご覧ください。

Google Cloud で使用できるすべてのマシンタイプとそのユースケースについては、Compute Engine ドキュメントのマシンタイプをご覧ください。

CPU 構成

MaxDB に選択する vCPU の数は、アプリケーションの負荷とパフォーマンス目標によって異なります。SAP MaxDB のインストールには、2 つ以上の vCPU を割り当てる必要があります。最高のパフォーマンスを得るには、パフォーマンス目標が達成されるまで vCPU の数と永続ディスクのサイズを調整します。MaxDB に関する SAP の追加情報については、SAP ヘルプポータルをご覧ください。

メモリ構成

SAP MaxDB システムに割り当てるメモリは、ユースケースによって異なります。ユースケースに最適なメモリ容量は、実行するクエリの複雑さ、データのサイズ、並列処理の量、期待されるパフォーマンス レベルによって異なります。

MaxDB に関する SAP の追加情報については、SAP ヘルプポータルをご覧ください。

ストレージ構成

デフォルトでは、それぞれの Compute Engine VM に、オペレーティング システムを含む小規模なルート永続ディスクが設定されています。データベースのデータ、ログ、データベースのバックアップ(必要な場合)に追加のディスクをプロビジョニングします。

ログボリュームに対して高性能の永続ディスクを使用し、パフォーマンス目標に応じてデータ ボリュームも使用してください。

SAP MaxDB の永続ディスク オプションについて詳しくは、永続ディスクをご覧ください。

SAP からの追加情報。

サポートされている SAP MaxDB のバージョンと機能

SAP MaxDB バージョン 7.9.09 以降は、Google Cloud での使用が SAP によって認定されています。

SAP では、Google Cloud での次のバージョンの SAP liveCache と SAP Content Server の使用も認定されています。

  • SAP LC/LCAPPS 10.0 SP 39 以降の SAP liveCache テクノロジー(EhP 4 for SAP SCM 7.0 以降用の liveCache 7.9.09.09 および LCA-Build 39 を含む)
  • Internet Information Services 10(IIS)を使用している Windows での SAP Content Server 6.50
  • Apache Web Server 2.4.x を使用している Linux での SAP Content Server 6.50

liveCache のサポート対象バージョンの詳細については、SAP Note 2074842 をご覧ください。

Google Cloud でサポートされている SAP 製品の詳細については、SAP Note 2456432 - SAP Applications on Google Cloud: Supported Products and Google Cloud machine types をご覧ください。

サポートされているオペレーティング システム

SAP MaxDB は、Google Cloud の次のオペレーティング システムで実行できます。

  • Red Hat Enterprise Linux(RHEL)
  • SUSE Linux Enterprise Server(SLES)
  • Windows Server

MaxDB で使用できるオペレーティング システムのバージョンについては、SAP Product Availability Matrix をご覧ください。

Compute Engine では、Google Cloud 用の拡張機能を含む公開イメージとして Linux および Windows オペレーティング システムが提供されます。Compute Engine イメージの詳細については、イメージをご覧ください。

デプロイに関する考慮事項

リージョンとゾーン

VM をデプロイするときに、リージョンとゾーンを選択する必要があります。リージョンとは、リソースを実行できる特定の地理的な場所で、データセンターのロケーションに対応します。各リージョンには 1 つ以上のゾーンがあります。

事前に構成されたディスク イメージやディスク スナップショットなどのグローバル リソースは、リージョンやゾーンを越えてアクセスできます。静的外部 IP アドレスなどのリージョン リソースには、同じリージョン内のリソースのみがアクセスできます。VM やディスクなどのゾーンリソースには、同じゾーン内のリソースのみがアクセスできます。

Google Cloud のリージョンとゾーン

VM のリージョンとゾーンを選択する場合は、次の点に注意してください。

  • ユーザーとユーザーの内部リソースの場所(データセンターや企業ネットワークなど)。レイテンシを短縮するには、ユーザーやリソースに近いロケーションを選択します。
  • 他の SAP リソースのロケーション。SAP アプリケーションとデータベースは同じゾーンに配置する必要があります。

永続ディスク

永続ディスクは長期的なブロック ストレージ デバイスであり、パソコンやサーバーの物理ディスクと同じように機能します。

Compute Engine には、さまざまな種類の永続ディスクが用意されています。種類ごとにパフォーマンス特性が異なります。Google Cloud は、永続ディスクの基盤となるハードウェアを管理して、データの冗長性を保証し、パフォーマンスを最適化しています。

次のいずれかの Compute Engine 永続ディスクを使用できます。

  • 標準永続ディスク(pd-standard: 順次読み取り / 書き込みオペレーションを処理するのに効率的かつ経済的な、標準ハードディスク ドライブ(HDD)を基盤とするブロック ストレージですが、1 秒あたりのランダム入出力オペレーション(IOPS)量が多い処理には不向きです。
  • SSD(pd-ssd: ソリッド ステート ドライブ(SSD)を基盤とする信頼性の高い、高性能なブロック ストレージを提供します。
  • バランス(pd-balanced: 費用対効果と信頼性に優れた SSD ベースのブロック ストレージを提供します。
  • エクストリーム(pd-extreme: 大規模な Compute Engine マシンタイプの場合、pd-ssd よりも最大 IOPS とスループットが高くなります。詳細については、エクストリーム永続ディスクをご覧ください。

SSD とバランス永続ディスクのパフォーマンスはサイズに合わせて自動的にスケーリングするので、既存の永続ディスクのサイズを変更するか、VM に永続ディスクを追加して、パフォーマンスを調整できます。

使用している VM の種類と、そこに含まれる vCPU の数も、永続ディスクのパフォーマンスに影響します。

永続ディスクは VM とは独立して存在するため、VM を削除した後であっても、永続ディスクを切断または移動してデータを保持できます。

Compute Engine 永続ディスクの種類、パフォーマンス特性、それらの使用方法について詳しくは、Compute Engine のドキュメントをご覧ください。

ローカル SSD(非永続)

Google Cloud では、ローカル SSD ディスク ドライブも提供されています。ローカル SSD は永続ディスクにはない利点がいくつかありますが、SAP MaxDB システムの一部として使用しないでください。ローカル SSD が接続されている VM インスタンスを停止して、再起動することはできません。

NAT ゲートウェイと踏み台インスタンス

VM を完全に内部的なものにすることがセキュリティ ポリシーの要件となっている場合、ネットワーク上で NAT プロキシを手動で設定し、対応するルートを設定する必要があります。これにより、VM とインターネットとの接続が可能となります。SSH を使用して完全な内部 VM インスタンスに直接接続することはできません。このような内部マシンに接続するには、外部 IP アドレスを持つ踏み台インスタンスを設定し、そのアドレスからトンネル接続を行う必要があります。外部 IP アドレスを持たない VM に他の VM から到達するには、その VM が同じネットワーク上にあるか、マネージド VPN ゲートウェイを経由する必要があります。ネットワーク内の VM を、受信接続(踏み台インスタンス)または下りネットワーク(NAT ゲートウェイ)用の信頼できるリレーとしてプロビジョニングできます。このような接続の設定が不要な透過的な接続を行うには、マネージド VPN ゲートウェイ リソースを使用します。

受信接続に踏み台インスタンスを使用する

踏み台インスタンスは、ネットワーク(プライベート ネットワーク内に VM を含む)と外部とのエントリ ポイントを提供します。このインスタンスで要塞化や監査を一元的に行うことができます。また、インターネットからの受信 SSH 通信を有効または無効にするために、このインスタンスを起動または停止できます。

SSH シナリオの踏み台インスタンス

最初に踏み台インスタンスに接続することで、外部 IP アドレスを持たない VM への SSH アクセスを確立できます。踏み台インスタンスの完全な強化は、本ガイドの範囲外ですが、最初に実施する対策としては次のものがあります。

  • 踏み台インスタンスと通信できるソース IP の CIDR 範囲を制限します。
  • 踏み台インスタンスからのみプライベート VM への SSH トラフィックを許可するように、ファイアウォール ルールを構成します。

デフォルトで、VM 上の SSH が認証で秘密鍵を使用するように構成されます。踏み台インスタンスを使用する場合、まず踏み台インスタンスにログインし、次にターゲット プライベート VM にログインします。このように 2 段階でログインを行うため、ターゲット VM の秘密鍵を踏み台インスタンスに保存する代わりに、SSH エージェント転送を使用してターゲット VM に接続する必要があります。これは、踏み台インスタンスとターゲット VM に同じ鍵ペアを使用する場合でも必要です。踏み台インスタンスは、鍵ペアの公開鍵にしか直接アクセスできないためです。

下り(外向き)トラフィックに NAT ゲートウェイを使用する

VM に外部 IP アドレスが割り当てられていない場合、他の Google Cloud サービスを含む外部サービスに直接接続することはできません。これらの VM がインターネット上のサービスに到達できるようにするには、NAT ゲートウェイをセットアップして構成します。NAT ゲートウェイは、ネットワーク上の他の VM の代わりにトラフィックを転送する VM です。ネットワークごとに NAT ゲートウェイを 1 つ構成する必要があります。1 つの VM の NAT ゲートウェイでは、複数の VM で高スループットのトラフィック処理を実現できないため、可用性は高いといえません。NAT ゲートウェイとして機能するように VM を設定する方法については、Linux 向け SAP MaxDB デプロイガイドまたは Windows 向け SAP MaxDB デプロイガイドをご覧ください。

カスタム イメージ

システムが稼働したらカスタム イメージを作成できます。これらのイメージは、ルート永続ディスクの状態を変更したときに作成する必要があります。こうすることで、その新しい状態を簡単に復元できるようになります。作成したカスタム イメージの管理方法についても計画を立てる必要があります。詳細については、イメージ管理のベスト プラクティスをご覧ください。

ユーザー ID とリソース アクセス

Google Cloud で SAP デプロイのセキュリティを計画する場合は、次の情報を確認する必要があります。

  • Google Cloud プロジェクトの Google Cloud リソースにアクセスすることを必要とするユーザー アカウントとアプリケーション
  • プロジェクト内で、各ユーザーがアクセスする必要のある特定の Google Cloud リソース

プリンシパルとして Google アカウント ID をプロジェクトに追加して、各ユーザーをプロジェクトに追加する必要があります。Google Cloud リソースを使用するアプリケーション プログラムについては、プロジェクト内のプログラムのユーザー ID を指定するサービス アカウントを作成します。

Compute Engine VM には独自のサービス アカウントがあります。VM サービス アカウントにプログラムが必要とするリソース権限があれば、VM で実行されるプログラムは VM サービス アカウントを使用できます。

各ユーザーが使用する必要がある Google Cloud リソースを特定したら、リソース固有のロールをユーザーに割り当て、各リソースの使用権限をユーザーごとに付与します。IAM が各リソースに付与する事前定義ロールを確認し、ユーザーのタスクまたは機能の完了に必要な最低限の権限を持つロールをユーザーに割り当てます。

IAM の事前定義ロールよりも詳細に、または厳格に権限を制御する必要がある場合は、カスタムロールを作成します。

SAP プログラムが Google Cloud で必要とする IAM のロールについて詳しくは、Google Cloud 上での SAP プログラム向け Identity and Access Management をご覧ください。

Google Cloud 上の SAP の Identity and Access Management の概要については、Google Cloud 上の SAP 用 Identity and Access Management の概要をご覧ください。

ネットワーキングとネットワーク セキュリティ

ネットワークとセキュリティを計画する際は、以降のセクションの情報を参考にしてください。

最小権限モデル

最前線の防御策としてまず行うべきことは、ファイアウォールを使用してネットワークと VM にアクセスできるユーザーを制限することです。デフォルトでは、アクセスを許可するルールを作成しない限り、VM へのトラフィックはすべてファイアウォールによってブロックされます。他の VM からのトラフィックについても同様です。例外は、各プロジェクトで自動的に作成され、デフォルトのファイアウォール ルールが設定されているデフォルト ネットワークです。

ファイアウォール ルールを作成することで、特定のポートセットに対するアクセスを特定の送信元 IP アドレスからのトラフィックに制限できます。このとき、最小権限モデルに従って特定の IP アドレス、プロトコル、ポートへのアクセスのみを許可し、不要なアクセスを防ぐ必要があります。たとえば、踏み台インスタンスを常に設定し、そのインスタンスからのみ SAP NetWeaver システムへの SSH 接続を許可する必要があります。

アクセス管理

実装を計画する前に、Google Cloud でのアクセス管理の方法を理解しておく必要があります。次のことを決める必要があります。

  • Google Cloud でリソースを整理する方法
  • リソースへのアクセスを許可するチームメンバー
  • 各チームメンバーの権限
  • サービスやアプリケーションが使用するサービス アカウントと、その場合に付与する権限のレベル

まず、Cloud Platform のリソース階層について理解しましょう。さまざまなリソース コンテナとその関連性、アクセス境界がどこに作成されるかを理解しておく必要があります。

Identity and Access Management(IAM)では、Google Cloud リソースの権限を一元管理できます。誰がどのリソースにアクセスできるのかを定義することで、アクセス制御を管理できます。たとえば、VM、永続ディスク、ネットワークの作成や変更など、SAP インスタンスに対するコントロール プレーンの処理を実行できるユーザーを制御できます。

IAM の詳細については、IAM の概要をご覧ください。

Compute Engine での IAM の概要については、アクセス制御オプションをご覧ください。

IAM ロールは、ユーザーに権限を付与する重要な機能です。ロールとそれによって付与される権限の詳細については、Identity and Access Management のロールをご覧ください。

アプリケーションやサービスに権限を付与するときに Google Cloud のサービス アカウントを使用できます。Compute Engine 内でサービス アカウントがどのように機能するか理解しておく必要があります。詳細については、サービス アカウントをご覧ください。

カスタム ネットワークとファイアウォール ルール

ネットワークを使用して、ネットワークに接続している VM のゲートウェイ IP とネットワーク範囲を定義できます。すべての Compute Engine ネットワークは IPv4 プロトコルを使用します。すべての Google Cloud プロジェクトには、事前設定された構成とファイアウォール ルールを持つデフォルト ネットワークが用意されていますが、最小権限モデルに基づいてカスタム サブネットワークとファイアウォール ルールを追加する必要があります。デフォルトでは、新たに作成されたネットワークにはファイアウォール ルールがありません。つまり、このネットワークにはアクセスできません。

要件によっては、サブネットワークを追加してネットワークの一部を分離しなければならないこともあります。詳細については、サブネットワークをご覧ください。

ファイアウォール ルールは、ネットワーク全体とネットワーク内のすべての VM に適用されます。同じネットワーク内の VM 間またはサブネットワーク間のトラフィックを許可するファイアウォール ルールを追加できます。タグを使用して、特定のターゲット VM に適用されるようにファイアウォールを構成することもできます。

SAP NetWeaver などの一部の SAP プロダクトでは、特定のポートへのアクセスが必要になります。SAP が定義しているポートへのアクセスを許可するファイアウォール ルールを追加してください。

ルート

ルートは、1 つのネットワークに関連付けられるグローバル リソースです。ユーザーが作成したルートは、ネットワーク内のすべての VM に適用されます。つまり、外部 IP アドレスを使用せずに、同じネットワーク内の VM 間またはサブネットワーク間のトラフィックを転送するルートを追加できます。

インターネット リソースへの外部アクセスの場合、外部 IP アドレスを指定せずに VM を起動し、別の仮想マシンを NAT ゲートウェイとして構成します。この構成では、SAP インスタンスへのルートとして NAT ゲートウェイを追加する必要があります。詳細については、NAT ゲートウェイと踏み台インスタンスをご覧ください。

Cloud VPN

Cloud VPN を使用することで、IPsec を使用する VPN 接続を介して、既存のネットワークを Google Cloud に安全に接続できます。2 つのネットワーク間のトラフィックは、一方の VPN ゲートウェイで暗号化され、もう一方の VPN ゲートウェイで復号されます。これにより、インターネットでデータをやり取りする際もデータが保護されます。ルート上のインスタンス タグを使用すると、トラフィックを VPN に送信する VM を動的に制御できます。Cloud VPN トンネルは、固定の月額料金に標準の下り(外向き)料金が加算されて課金されます。同じプロジェクト内で 2 つのネットワークを接続しても、標準の下り(外向き)料金が適用されることに注意してください。詳細については、Cloud VPN の概要VPN の作成をご覧ください。

Cloud Storage バケットの保護

Cloud Storage を使用してデータとログのバックアップをホストする場合、転送中のデータを保護するため、VM から Cloud Storage へのデータ送信に必ず TLS(HTTPS)を使用してください。Cloud Storage は、保存データを自動的に暗号化します。独自の鍵管理システムを使用している場合は、独自の暗号鍵を指定できます。

Google Cloud 上の SAP 環境については、次の追加セキュリティ リソースをご覧ください。

バックアップと復元

最悪の事態が発生した場合のシステムの復旧方法を計画しておく必要があります。Google Cloud で障害復旧を計画する方法に関する一般的なガイダンスについては、次の情報をご覧ください。

ライセンス

このセクションでは、ライセンス要件について説明します。

SAP のライセンス

Google Cloud で SAP MaxDB を稼働するには、BYOL(お客様所有ライセンスの使用)が必要です。詳細情報

SAP ライセンスの詳細については、SAP にお問い合わせください。

オペレーティング システムのライセンス

Compute Engine では、SLES、RHEL、Windows Server のライセンスを取得する方法が 2 つあります。

  • 従量課金制ライセンスの場合、Compute Engine VM の 1 時間あたりの料金にライセンス料が含まれます。ライセンスは Google が管理しています。1 時間あたりの料金は高くなりますが、必要に応じて料金を増減できる完全な柔軟性があります。これは、SLES、RHEL、Windows Server を含む Google Cloud パブリック イメージで採用されているライセンス モデルです。

  • BYOL の場合、ライセンス料が含まれていないため、Compute Engine VM の料金は低くなります。既存のライセンスを移行するか、独自のライセンスを購入する必要があります。この場合、前払いとなるため、料金の柔軟性は低くなります。

サポート

Google Cloud のインフラストラクチャやサービスに関する問題については、カスタマーケアにお問い合わせください。連絡先は、Google Cloud コンソールのサポートの概要ページで確認できます。カスタマーケアが SAP システムに問題があると判断した場合は、SAP サポートをご案内します。

SAP プロダクト関連の問題については、SAP サポートでサポート リクエストを送信してください。SAP はサポート チケットを評価し、Google Cloud インフラストラクチャの問題と判断した場合は、そのチケットを Google Cloud コンポーネントの BC-OP-LNX-GOOGLE または BC-OP-NT-GOOGLE に転送します。

サポート要件

SAP システムと、そのシステムが使用する Google Cloud のインフラストラクチャおよびサービスに対するサポートを受けるには、サポートプランの最小限の要件を満たす必要があります。

Google Cloud での SAP に関する最小限のサポート要件について詳しくは、以下をご覧ください。

SAP ヘルプポータルで SAP MaxDB に関する情報を調べることもできます。

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