Google Cloud の SAP 用エージェントのプランニング ガイド

Google Cloud では、サポートとモニタリングのために、Compute Engine VM インスタンスと Bare Metal Solution サーバーで実行される SAP ワークロード用に SAP 用エージェントを提供しています。

SAP が求めているように、SAP からのサポートを利用し、SAP がサービスレベル契約(SLA)を達成できるようにするには、すべての Compute Engine VM インスタンスと SAP システムを使用する Bare Metal Solution サーバーに Google Cloud の SAP 用エージェントをインストールする必要があります。サポートの前提条件の詳細については、SAP Note 2456406 - Google Cloud Platform 上の SAP: サポートの前提条件をご覧ください。

Google Cloud の SAP 用エージェントのバージョン 3.5(最新)は、Google Cloud の SAP NetWeaver 用モニタリング エージェント バージョン 2、SAP HANA 用モニタリング エージェント バージョン 2、Cloud Storage の SAP HANA 用 Backint エージェントの後継です。したがって、Google Cloud の SAP 用エージェントのバージョン 3.5(最新)には、指標の収集に加えて、オプション機能(SAP HANA の Backint ベースのバックアップと復元)が含まれています。こうした機能を有効にすると、ワークロード マネージャーなどのプロダクトやサービスを SAP のワークロードに利用できます。

Bare Metal Solution サーバーで実行されている SAP システムの場合は、次のいずれかのデータベースに接続された SAP NetWeaver を実行するときに、Google Cloud の SAP 用エージェントが必要になります。

  • SAP HANA
  • SAP Adaptive Server Enterprise(ASE)
  • SAP MaxDB
  • IBM Db2

SAP システムと一緒にホストに Google Cloud の SAP 用エージェントをインストールします。エージェントのインストールと構成方法、インストールの検証方法、エージェントが期待どおりに動作していることを確認する方法については、以下をご覧ください。

Google Cloud が提供する次の「SAP 用」RHEL または SLES OS イメージを使用する場合、Google Cloud の SAP 用エージェントは OS イメージに含まれています。

  • RHEL: すべての「SAP 用」イメージ
  • SLES: SAP 用 SLES 15 SP4 以降のバージョン

サポートされている機能

Google Cloud の SAP 用エージェントのバージョン 3.5(最新)は、次の機能をサポートしています。

SAP Host Agent 指標の収集

Compute Engine VM または Bare Metal Solution サーバーにインストールされているエージェント インスタンスでは、SAP Host Agent 指標の収集がデフォルトで有効になっています。Google Cloud の SAP 用エージェントは、SAP が必須とするすべての情報を収集し、SAP Host Agent に送信します。これらの情報には次のような指標が含まれます。

  • CPU(CPU 使用率など)。
  • 永続ディスク ストレージ(ディスク スループットとレイテンシなど)。
  • メモリ(メモリ消費量など)
  • ネットワーク(ネットワーク帯域幅など)
  • 構成。ホストマシンとその環境に関する情報も含まれます。

Google Cloud の SAP 用エージェントによって収集される指標は SAP によって決められています。エージェントが収集する指標の詳細については、SAP Note 2469354 - Key Monitoring Metrics for SAP on IaaS Infrastructure をご覧ください。

SAP システムの検出

この機能はエージェントの中核となるものです。この機能により、SAP システムに関する情報と、そのシステムで使用される Google Cloud リソースに関する情報が収集されます。収集される情報には次のものが含まれます。

  • Google Cloud リソース(コンピューティング インスタンス、ディスク、ネットワーク、Cloud Load Balancing のロードバランサ、Filestore インスタンスなど)。たとえば、コンピューティング インスタンスのコンテキストでは、エージェントはインスタンス名やインスタンスのデプロイ先のリージョンなどの情報を収集します。
  • SAP システム内のアプリケーションとデータベース間の接続に関する情報。
  • SAP システムで使用される SAP 製品の名前とバージョン(オプション)。

収集される情報は、必須のエージェント機能(SAP Host Agent 指標の収集など)、有効にする他のエージェント機能、使用する Google Cloud サービス(Workload Manager の評価など)に提供されます。そのため、この機能は常に有効になっており、オフにすることはできません。

この機能でサポートされている構成は次のとおりです。

  • ブール値パラメータ enable_workload_discovery は、システムで実行されている SAP 製品の名前とバージョンをエージェントが収集するかどうかを指定します。デフォルトでは true に設定されます。
  • ブール値パラメータ enable_discovery は、収集された情報を Cloud Logging に送信するかどうかを指定します。Google Cloud プロジェクトで Workload Manager API を有効にしている場合、収集された情報は Workload Manager にも送信されます。デフォルトでは true に設定されます。

    Workload Manager に送信された情報を使用して、SAP ワークロードのオブザーバビリティを設定できます。エージェントが収集した情報を Workload Manager に送信しても、費用は発生しません。ただし、オブザーバビリティを有効にするために必要な Cloud Monitoring と Cloud Logging へのデータ送信には費用が発生します。料金など、Workload Manager の SAP 向けオブザーバビリティ サービスについては、SAP オブザーバビリティの概要をご覧ください。

エージェントの健全性指標の収集

Linux では、Google Cloud の SAP 用エージェントはホスト上のデーモン プロセスの状態を示す指標を収集できます。これは、エージェントのインストール後に有効にできるオプション機能です。

この機能は Windows ではサポートされていません。

健全性指標の収集を有効にして収集頻度を構成する手順については、エージェントの健全性指標の収集を構成するをご覧ください。

次の表に、エージェントが収集する健全性指標を示します。表に示す指標文字列には、workload.googleapis.com/ という接頭辞を付ける必要がありますが、この表のエントリでは省略しています。

指標 カテゴリ 説明
sap/agent/health SAP 用エージェントの指標 エージェントがアクティブに実行されているかどうかを示します。
  • true は、エージェントがアクティブであり、実行されていることを示します。
  • false は、エージェントが実行されていないことを示します。
sap/agent/cpu/utilization SAP 用エージェントの指標 エージェントのデーモン プロセスによる CPU 使用率。
sap/agent/memory/utilization SAP 用エージェントの指標 エージェントのデーモン プロセス別のメモリ使用率。

Process Monitoring 指標の収集

Google Cloud の SAP 用エージェントは、Linux 上の SAP アプリケーションとそのランタイム状態を示す Process Monitoring 指標を収集できます。これは、Google Cloud の SAP 用エージェントをインストールした後に有効にできるオプション機能です。

この機能は Windows ではサポートされていません。

Process Monitoring 指標で収集された情報は、SAP システムに関連する問題のトラブルシューティングに役立ちます。問題が発生した場合、Cloud カスタマーケアは、Process Monitoring 指標を使用して効率的に問題を解決できます。Process Monitoring 指標を使用して収集されたデータにより、SAP HANA 高可用性クラスタ構成のオブザーバビリティが提供されます。

全体的に、Process Monitoring 指標は変化が激しい指標です。この機能の詳細については、Google Cloud の SAP 用エージェントを使用したプロセスのモニタリングをご覧ください。

Workload Manager 評価指標の収集

Linux では、Google Cloud の SAP 用エージェントは Workload Manager の評価指標を収集できます。これにより、Workload Manager を使用して SAP ワークロードをベスト プラクティスに対して評価できます。

エージェント バージョン 3.2 以降では、この機能は新しいインストールに対してデフォルトで有効になっています。

この機能は Windows ではサポートされていません。

Workload Manager 評価指標で収集された情報は、SAP アプリケーション、データベース、高可用性の構成を確認する際に役立ちます。

Workload Manager 評価指標は変化が緩やかな指標であり、デフォルトでは 5 分ごとに収集されます。エージェント バージョン 3.2 以降では、エージェントを使用して Workload Manager の評価指標を収集しても追加料金は発生しません。

この機能の詳細については、Google Cloud の SAP 用エージェントを使用した Workload Manager の評価をご覧ください。

SAP HANA モニタリング指標の収集

Linux では、Google Cloud の SAP 用エージェントは SAP HANA インスタンスから指標を収集し、Cloud Monitoring に送信できます。Google Cloud の SAP 用エージェントのこのオプション機能は、Google Cloud の SAP HANA 用モニタリング エージェント バージョン 2 の後継です。

この機能は Windows ではサポートされていません。

SAP HANA モニタリング指標は、SAP HANA インスタンスと基盤となるインフラストラクチャのパフォーマンス、可用性、健全性を可視化します。これらの指標の使用例を次に示します。

  • メモリ使用率に関連する指標は、キャパシティ プランニングに利用でき、また、メモリベースの SAP HANA ライセンスの管理にも役立ちます。
  • SAP HANA モニタリング指標を Compute Engine 指標と関連付けることで、使用状況とパフォーマンスの傾向を特定できます。
  • カスタム指標を収集するカスタムクエリを定義すると、SAP HANA インスタンスに関する詳細な分析情報を取得できます。
  • Cloud Monitoring では、SAP HANA モニタリング指標を可視化するダッシュボードを作成し、指標のしきい値に基づくアラートを設定できます。

SAP HANA モニタリング指標は変化が緩やかな指標で、デフォルトでは、有効にすると 5 分ごとに収集されます。

この機能の詳細については、Google Cloud の SAP 用エージェントを使用した SAP HANA のモニタリングをご覧ください。

SAP HANA の Backint ベースのバックアップと復元

Google Cloud の SAP 用エージェントのこの機能を使用すると、Google Cloud、Bare Metal Solution、オンプレミス、その他のクラウド プロバイダで実行されている SAP HANA システムのバックアップと復元のオペレーションを実行できます。

エージェントのこの機能は SAP HANA と統合されているため、SAP ネイティブのバックアップと復元機能を使用して、Cloud Storage から直接バックアップの保存や取得を行うことができます。

この機能の詳細については、SAP HANA の Backint ベースのバックアップと復元をご覧ください。

SAP HANA のディスク スナップショット ベースのバックアップと復元

Google Cloud の SAP 用エージェントのこの機能では、Compute Engine VM インスタンスで実行されている SAP HANA システムのディスク スナップショットを使用して、バックアップと復元のオペレーションを実行できます。

この機能の詳細については、SAP HANA のディスク スナップショット ベースのバックアップと復元をご覧ください。

ワークロードのパフォーマンス診断

Google Cloud で実行される SAP ワークロードのパフォーマンスの問題をカスタマーケアがトラブルシューティングできるように、Google Cloud の SAP 用エージェントにはパフォーマンス診断ツールが組み込まれています。この機能は、エージェントのバージョン 3.4 から利用できます。

このツールを使用して、次の診断を実行できます。オンデマンド診断は呼び出す必要がありますが、ゲスト OS 診断などのデフォルト診断は常に実行されます。これらの診断をすべて 1 回の実行で行うこともできます。

診断タイプ 実行モード 説明
入出力診断 オンデマンド これは、フレキシブル I/O テスター(FIO)ツールを使用して行われます。このツールは、ストレージ システムの I/O 機能に対してストレステストを行うことができ、ワークロードをシミュレートしてディスクやネットワーク ファイル システムなどの基盤となるインフラストラクチャのパフォーマンスを評価することもできます。FIO の詳細については、フレキシブル I/O テスター(FIO)をご覧ください。
バックアップ診断 オンデマンド SAP HANA ワークロードの Backint ベースのバックアップと復元オペレーションのパフォーマンスをテストします。これには、ネットワーク接続のテストと、エージェントの Backint 機能で使用するために構成した Cloud Storage バケットへのアクセステストが含まれます。詳細については、自己診断をご覧ください。また、gsutil perfdiag 診断も実行します。
ゲスト OS 診断 デフォルト Compute Engine ベアメタル インスタンスで実行されているワークロードに対して、このツールはゲスト OS が SAP ワークロードを最適に実行するように構成されているかどうかを確認します。これを行うには、configureinstance -check コマンドを実行します。詳細については、ベアメタル インスタンスでゲスト OS を構成するをご覧ください。

このツールの出力は、ツールで収集するように指定した診断情報を含む ZIP ファイルです。

このツールを使用して診断情報を収集し、カスタマーケアと共有する方法については、SAP ワークロードのパフォーマンスに関する診断情報を収集するをご覧ください。

料金

Google Cloud の SAP 用エージェントは無料でインストールして実行できます。ただし、Cloud Monitoring への指標データの読み取りと書き込みによって発生する料金については、お客様の負担となります。

エージェントの Backint 機能に関連する料金情報については、月額費用の見積もりをご覧ください。

エージェントによって収集された指標については、Monitoring で次のように課金されます。

  • 毎月の無料 API 割り当てを超えた Cloud Monitoring API 読み取り呼び出し。
  • 取り込まれたバイト数で測定される指標(指標の取り込み量が毎月の無料の割り当て量を超過した場合)。

Monitoring における取り込みとは、Monitoring に時系列データを書き込むプロセスのことです。各時系列には、いくつかのデータポイントが含まれており、そうしたデータポイントが取り込み料金の基礎になります。料金については、Monitoring の料金をご覧ください。

Monitoring の一般的なコンセプトについては、指標、時系列、リソースをご覧ください。

月額費用の見積もり

このセクションでは、API 読み取り呼び出しと取り込みバイト数で課金される指標データを収集する際の月額費用を見積もる方法について説明します。Google Cloud の SAP 用エージェントの Backint 機能を使用して SAP HANA のバックアップと復元を行う際の費用を見積もるには、1 か月の費用の見積もりをご覧ください。

このセクションの例では、2022 年 12 月現在の Monitoring の料金を使用しています。この例は、計算方法を説明するためのものです。包括的な見積もりには、料金計算ツールを使用してください。

次の表に、エージェントの必須機能とオプション機能に対する月額費用の見積もりを示します。費用の見積もりに関する詳細な手順については、SAP Host Agent の指標Process Monitoring 指標SAP HANA モニタリング指標をご覧ください。

機能 タイプ VM インスタンスの数 費用($)
SAP Host Agent 指標の収集 必須 100 $209
Process Monitoring 指標の収集 省略可 100 $564.81
SAP HANA モニタリング指標の収集 省略可 500 $280.30

API 読み取り呼び出しで課金される指標の料金の例

次の例は、SAP Host Agent の指標など、API の読み取り呼び出しで課金される指標データの収集にかかる費用の見積もり方法を示しています。

SAP Host Agent の指標

たとえば、毎月いくつかの API 読み取り呼び出しを行っている複数の Compute Engine VM インスタンスがあるシナリオを考えます。このシナリオで変化する値は次のとおりです。

  • VM インスタンスが API 読み取り呼び出しを行うレート。
  • Compute Engine VM インスタンスの数。

この費用の見積もりでは 1 か月を約 43,800 分とします。

60 × 730 時間(365 日 ÷ 12 か月 × 24 時間)

VM インスタンスで API 読み取り呼び出しが 5 回/分の頻度で行われているとします。

1 つの VM インスタンスが 1 か月に 5 回/分の頻度で行う API 読み取り呼び出し数は合計で 219,000 回(43,800 × 5)になります。

100 個の VM インスタンスがあるとします。

  • 1 か月あたりの API 読み取り呼び出しの合計数: 21,900,000

    (219,000 x 100)

  • 無料割り当て後の 1 か月あたりの API 読み取り呼び出し数: 20,900,000

    (21,900,000 - 1,000,000 = 20,900,000)

  • 100 個の VM インスタンスの 1 か月あたりのおよその費用: $209

    (20,900,000 ÷ 1,000)× 0.01

読み取り回数 レート($/1,000 読み取り) 費用($)
無料割り当て量/月 1,000,000 0.00 $0.00
課金対象のログ 20,900,000 0.01 $209
合計 21,900,000 $209

取り込みバイト数で課金される指標の料金の例

以下の例では、Process Monitoring 指標、SAP HANA モニタリング指標など、取り込まれたバイト数で課金される指標データの収集費用の見積もり方法を示します。

Process Monitoring 指標

毎月いくつかの指標からデータを書き込んでいる複数の Compute Engine VM インスタンスがあるシナリオを考えます。このシナリオで変化する値は次のとおりです。

  • 指標データの書き込みレート
  • 指標の数。
  • Compute Engine VM インスタンスの数。

この費用の見積もりで、収集されている約 15 個の Process Monitoring 指標のうち、11 個は変化が緩やかな指標、4 個は変化が激しい指標であるとします。また、1 か月を約 43,800 分とします。

60 × 730 時間(365 日 ÷ 12 か月 × 24 時間)

変化が激しい 1 つの指標に対して、1 個のデータポイント/5 秒、つまり 12 個のデータポイント/分のレートでデータを 1 か月間書き込みます。

変化が緩やかな指標 1 つに対して、1 個のデータポイント/30 秒、つまり 2 個のデータポイント/分のレートでデータを 1 か月間書き込みます。

  • 変化が激しい指標のデータポイントの合計は、525,600(43,800 分 × 12 データポイント)
  • 変化が緩やかな指標データポイントの合計は 87,600(43,800 分 × 2 データポイント)
  • 変化が激しい各指標の取り込み量の合計:
    • 4,204,800 バイト(525,600 データポイント × 8 バイト)
    • 4.01000977 MiB(4,204,800 バイト ÷ 1,048,576 バイト/MiB)
  • 変化が緩やかな指標の取り込み量の合計:
    • 7,00,800 バイト(87,600 データポイント × 8 バイト)
    • これは 0.66833496 MiB(7,00,800 ÷ 1,048,576 バイト/MiB)です

100 個の VM インスタンスがあり、それぞれが 15 個の指標を書き込んでいるとします。

  • 変化が激しい指標の月間取り込み量の合計: 1604.03908 MiB

    変化が激しい 1 つの指標に対して 4.01000977 MiB × 400(100 VM インスタンス × 4 指標)

  • 変化の緩やかな指標の月間取り込みの合計: 735.168456 MiB

    変化が緩やかな 1 つの指標に対して 0.66833496 MiB × 1100(100 VM インスタンス × 11 指標)

  • 月間取り込みの合計: 2,339.207536 MiB

    変化が激しい指標の月間取り込み量の合計 + 変化が少ない指標の月間取り込み量の合計

  • 100 個の VM インスタンスの 1 か月あたりの概算費用: $564.81

    (2339.207536 - 150) × 0.258

取り込み量(MiB) 単価($/MiB) 費用($)
無料割り当て量/月 150 0.00 $0.00
課金対象 21,89.207536 0.258 $564.81
合計 2339.207536 $564.81

SAP HANA モニタリング指標

毎月 SAP HANA データベースへのクエリによってデータを書き込んでいる複数の Compute Engine VM インスタンスがあるシナリオについて考えてみましょう。このシナリオで変化する値は次のとおりです。

  • 指標データの書き込みレート。
  • クエリの数。
  • クエリごとに収集された指標の数。
  • デプロイされた Compute Engine VM インスタンスの数。
  • VM インスタンスあたりの SAP HANA データベース デプロイの数。

デフォルトでは、Google Cloud の SAP 用エージェントには、SAP HANA モニタリング機能の一部として 12 個の組み込みクエリがあります。エージェントは、各 SAP HANA データベース インスタンスで 300 秒に 1 回これらのクエリを実行します(これがデフォルトのサンプリング間隔です)。これらの 12 個のクエリにより、合計 37 個の指標が生成されます。各 VM インスタンスが 1 つの SAP HANA データベースのみをホストするとします。各 VM は 300 秒ごとに合計 37 個の指標を書き込みます。

この費用の見積もりでは、1 か月を約 43,800 分とします。

60 × 730 時間(365 日 ÷ 12 か月 × 24 時間)

1 つの指標で、1 個のデータポイント/300 秒、つまり 0.2 個のデータポイント/分のレートでデータを 1 か月間書き込みます。

  • 合計データポイント: 8,760(43,800 分 × 0.2 個のデータポイント)
  • 取り込まれる総量:
    • 70,080 バイト(8,760 データポイント × 8 バイト)
    • 0.0668335 MiB(70,080 バイト ÷ 1,048,576 バイト/MiB)

500 個の VM インスタンスがあり、それぞれが 37 個の指標を書き込んでいるとします。

  • 毎月の取り込みの合計: 1236.419678 MiB

    1 つの指標に 0.0668335 MiB × 18,500(500 個の VM インスタンス × 37 個の指標)

  • 500 個の VM インスタンスの 1 か月あたりの概算費用: $280.30

    (1236.419678 - 150) × 0.258

取り込み量(MiB) 単価($/MiB) 費用($)
無料割り当て量/月 150 0.00 $0.00
課金対象のログ 1,086.419678 0.258 $280.30
合計 1,236.419678 $280.30

エージェントにより消費されるリソース

SAP 用の Google Cloud エージェントが指標の収集に使用するリソースを評価するため、このセクションでは次の仕様の Google Cloud のテストシステムでのエージェントの使用例と使用されるリソースを示します。

  • マシンタイプ: n2-highmem-64
  • VM にアタッチされている永続ストレージ ディスクのタイプ: SSD 永続ディスク(pd-ssd
  • VM インスタンスで実行されている SAP システム: SAP HANA の 1 つのインスタンスと SAP NetWeaver の 2 つのインスタンス。

次の表の情報は指針であり、お客様のエージェントのインスタンスが消費するリソースとは異なる場合があることに注意してください。

例 1 例 2 例 3 例 4
VM ランタイム 24 時間 24 時間 24 時間 24 時間
SAP Host Agent の指標の収集が有効になっているか? いいえ* いいえ*
Process Monitoring の指標の収集が有効になっているか? はい。デフォルトの 5 秒間隔です。 はい。デフォルトの 5 秒間隔です。 × ×
Workload Manager 評価指標の収集が有効になっているか? はい はい ×
SAP HANA モニタリング指標の収集は有効になっているかま? いいえ × はい。デフォルトの 300 秒間隔です。
CPU 使用率 1 vCPU で 1 分あたり 520 ミリ秒未満。vCPU を追加しても、この値は変わりません。 1 vCPU で 1 分あたり 500 ミリ秒未満。vCPU を追加しても、この値は変わりません。 1 vCPU で 1 分あたり 30 ミリ秒未満。vCPU を追加しても、この値は変わりません。 1 vCPU コアで 1 分あたり 20 ミリ秒未満。vCPU を追加しても、この値は変わりません。
メモリ使用量 40 MB 未満 50 MB 未満 40 MB 未満 29 MB 未満
ディスク書き込み 70 KB/分未満 70 KB/分未満 6 KB/分未満 5 KB/分未満
ディスク読み取り ゼロ ゼロ ゼロ ゼロ
ネットワーク使用量(安定状態) 2 MB/分未満 2 MB/分未満 600 バイト/分未満 1 MB/分未満

* ここでは、リソースの消費をテストすることのみを目的としているため、SAP Host Agent の指標収集を無効にしています。SAP Host Agent 指標の収集は SAP によって義務付けられているため、無効にしないでください。

エージェント ログは INFO レベルに設定されています。

サポートされているオペレーティング システム

Google Cloud の SAP 用エージェントは、SAP NetWeaver と SAP HANA でサポートされているすべてのオペレーティング システムに対応しています。詳細については、SAP NetWeaver でサポートされているオペレーティング システムのリストSAP HANA でサポートされているオペレーティング システムのリストをご覧ください。

認証とアクセス

Google Cloud の SAP 用エージェントを使用するには、Google Cloud での認証と Google Cloud リソースへのアクセスに、Identity and Access Management(IAM)のサービス アカウントが必要です。

サービス アカウントに割り当てられている IAM ロールによって、エージェントがアクセスできる Google Cloud リソースが決まります。

既存のサービス アカウントやデフォルトのサービス アカウントを使用する場合を除き、Google Cloud プロジェクトでサービス アカウントを作成し、サービス アカウントに 1 つ以上のロールを割り当てる必要があります。

サービス アカウントを指定する

エージェントが Compute Engine VM インスタンスで実行されている場合、エージェントはデフォルトでホスト VM のサービス アカウントを使用します。ホスト VM サービス アカウントは、通常、自分や同僚が作成した制限されたロールを持つサービス アカウントですが、代わりに、デフォルトで幅広い権限を持つ Compute Engine のデフォルト サービス アカウントを使用することもできます。

エージェントが Compute Engine VM インスタンスで実行されていない場合は、JSON サービス アカウント キーを使用してサービス アカウントを作成する必要があります。詳細については、サービス アカウントを設定するをご覧ください。

サービス アカウント、ロール、権限の詳細については、以下をご覧ください。

必要な IAM のロール

新しいサービス アカウント、既存のサービス アカウント、デフォルトのサービス アカウントのどのアカウントを使用する場合でも、サービス アカウントには、エージェントに必要な権限を付与するロールを含める必要があります。

機能 必要な IAM のロール
SAP Host Agent の指標の収集

VM インスタンスで SAP Host Agent の指標を収集するには、次の IAM 事前定義ロールが必要です。

Bare Metal Solution サーバーで SAP Host Agent の指標を収集する場合、エージェントは Google Cloud APIs にアクセスしないため、IAM サービス アカウントや権限は必要ありません。

Workload Manager 評価指標の収集

次の IAM 事前定義ロールが必要です。

Process Monitoring 指標または SAP HANA モニタリング指標の収集

次の IAM 事前定義ロールが必要です。

SAP HANA の Backint ベースのバックアップと復元

Google Cloud APIs へのアクセス

Compute Engine では、すべての Cloud APIs に完全アクセス権を使用できるように VM インスタンスを構成し、インスタンス サービス アカウントの IAM 権限のみを使用して Google Cloud リソースへのアクセスを制限することをおすすめします。詳細については、ユーザー管理のサービス アカウントを使用する VM を作成するをご覧ください。

VM インスタンス上の Cloud APIs へのアクセスを制限する場合:

  • SAP Host Agent の指標を収集するために、Google Cloud の SAP 用エージェントは、ホスト VM インスタンスに対して次の最小の Google Cloud API アクセス スコープを必要とします。
    • Compute Engine: 読み取り専用
    • Stackdriver Monitoring API: 読み取り専用
  • Workload Manager 評価指標の収集、または Secret Manager からの認証情報の取得を行うには、Cloud Platform アクセス スコープを有効にする必要があります。
  • Process Monitoring 指標、または SAP HANA モニタリング指標を収集するには、ホスト VM インスタンスのアクセス スコープに、Google Cloud プロジェクトに指標データを公開するための書き込みアクセス権が含まれている必要があります。新しい Compute Engine VM インスタンスを作成すると、書き込みアクセス スコープ https://www.googleapis.com/auth/monitoring.write が自動的に構成されます。
  • エージェントを使用して SAP HANA のバックアップと復元のオペレーションを実行するために必要な Cloud APIs については、Cloud APIs とメタデータ サーバーへのアクセスを有効にするをご覧ください。

Compute Engine VM インスタンスでエージェントが実行されていない場合は、Google Cloud APIs への接続を確立する必要があります。詳細については、オンプレミス ホスト用の限定公開の Google アクセスの構成をご覧ください。

Monitoring の指標

Process Monitoring 指標と SAP HANA モニタリング指標の場合、Google Cloud の SAP 用エージェントは、SAP システムから取得したデータをカスタム指標データとして Monitoring に送信します。データを送信するために、エージェントは Monitoring API を使用します。この API は、Google Cloud プロジェクトの作成時にデフォルトで有効になります。

Monitoring については、Monitoring の概要をご覧ください。

Monitoring で指標データを確認する

Google Cloud の SAP 用エージェントからの指標データは、Monitoring が受信するとすぐに確認できます。収集されたデータを可視化するには Metrics Explorer を使用します。Monitoring で指標データを確認する方法については、Google Cloud の SAP 用エージェントの運用ガイドをご覧ください。

収集したデータを Monitoring で可視化する方法については、以下をご覧ください。

GitHub のダッシュボード定義

GitHub には、Google Cloud の SAP 用エージェントによって収集された指標を Cloud Monitoring で可視化するのに役立つカスタム ダッシュボードの定義があります。詳しくは以下をご覧ください。

アラート通知

定義したしきい値に指標が達したときにアラートを受けるには、Monitoring でアラート通知を構成します。

詳細については、アラートの概要をご覧ください。

自動インストール

Google Cloud インフラストラクチャのデプロイを自動化するために Google Cloud が提供している Terraform 構成ファイルを使用すると、Google Cloud の SAP 用エージェントはデプロイ プロセスの一部として自動的にインストールされます。この処理は、SAP Host Agent の指標を収集するための SAP の要件を満たすために行います。

Google Cloud の SAP 用エージェントを手動でインストールして構成する手順については、以下をご覧ください。

GitHub の Google Cloud の SAP 用エージェントのコードベース

企業のセキュリティ要件で必要な場合は、Google Cloud の SAP 用エージェントのソースコードを確認できます。エージェントのコードベースは、GoogleCloudPlatform/sapagent にある読み取り専用の GitHub リポジトリ google-cloud-sap-agent で入手できます。

サポート

Google Cloud のインフラストラクチャやサービスに関する問題については、カスタマーケアにお問い合わせください。連絡先は、Google Cloud コンソールのサポートの概要ページで確認できます。カスタマーケアが SAP システムに問題があると判断した場合は、SAP サポートをご案内します。

SAP プロダクト関連の問題については、SAP サポートでサポート リクエストを送信してください。SAP はサポート チケットを評価し、Google Cloud インフラストラクチャの問題と判断した場合は、そのチケットをシステム内の適切な Google Cloud コンポーネント(BC-OP-LNX-GOOGLE または BC-OP-NT-GOOGLE)に転送します。

サポート要件

SAP システムと、そのシステムが使用する Google Cloud のインフラストラクチャおよびサービスに対するサポートを受けるには、サポートプランの最小限の要件を満たす必要があります。

Google Cloud での SAP に関する最小限のサポート要件について詳しくは、以下をご覧ください。

診断情報を収集する

Google Cloud の SAP 用エージェントに関連する問題の解決についてカスタマーケアにお問い合わせになる前に、関連するすべての診断情報(特にエージェントのサポート バンドル)を収集することをおすすめします。

エージェントの診断情報の収集について詳しくは、Google Cloud の SAP 用エージェントの診断情報をご覧ください。

次のステップ