このチュートリアルでは、BigQuery ML のバイナリ ロジスティック回帰モデルを使用して、ユーザー属性データに基づいて個人の収入の範囲を予測します。バイナリ ロジスティック回帰モデルは、値が 2 つのカテゴリのいずれかに該当するかどうか(この場合は、個人の年収が $50,000 を上回っているか下回っているか)を予測します。
このチュートリアルでは、bigquery-public-data.ml_datasets.census_adult_income
データセットを使用します。このデータセットには、2000 年と 2010 年の米国居住者のユーザー属性と収入情報が含まれています。
目標
このチュートリアルでは、次のタスクを実行します。- ロジスティック回帰モデルを作成する。
- モデルを評価する。
- モデルを使用して予測する。
- モデルによって生成される結果を説明する。
費用
このチュートリアルでは、Google Cloud の課金対象となるコンポーネントを使用します。これには次のコンポーネントが含まれます。
- BigQuery
- BigQuery ML
BigQuery の費用の詳細については、BigQuery の料金ページをご覧ください。
BigQuery ML の費用の詳細については、BigQuery ML の料金をご覧ください。
始める前に
-
In the Google Cloud console, on the project selector page, select or create a Google Cloud project.
-
Make sure that billing is enabled for your Google Cloud project.
-
Enable the BigQuery API.
必要な権限
BigQuery ML を使用してモデルを作成するには、次の IAM 権限が必要です。
bigquery.jobs.create
bigquery.models.create
bigquery.models.getData
bigquery.models.updateData
bigquery.models.updateMetadata
推論を実行するには、次の権限が必要です。
- モデルに対する
bigquery.models.getData
bigquery.jobs.create
はじめに
ML の一般的な問題は、ラベルと呼ばれる 2 つのタイプのいずれかにデータを分類することです。たとえば、販売店は特定の顧客が新しい製品を購入するかどうかを、その顧客に関するその他の情報に基づいて予測したい場合があります。この場合、2 つのラベルは will buy
と won't buy
になります。販売店は、1 つの列が両方のラベルを表し、顧客のロケーション、以前の購入、報告された好みなどの顧客情報を含むデータセットを構築できます。販売店は、この顧客情報を使用するバイナリ ロジスティック回帰モデルを使用して、各顧客を最もよく表すラベルを予測できます。
このチュートリアルでは、米国国勢調査の回答者のユーザー属性に基づいて、その回答者の収入が 2 つの範囲のどちらに分類されるかを予測するバイナリ ロジスティック回帰モデルを作成します。
データセットを作成する
モデルを格納する BigQuery データセットを作成します。
Google Cloud コンソールで [BigQuery] ページに移動します。
[エクスプローラ] ペインで、プロジェクト名をクリックします。
「アクションを表示」> [データセットを作成] をクリックします。
[データセットを作成する] ページで、次の操作を行います。
[データセット ID] に「
census
」と入力します。[ロケーション タイプ] で [マルチリージョン] を選択してから、[US(米国の複数のリージョン)] を選択します。
一般公開データセットは
US
マルチリージョンに保存されています。わかりやすくするため、データセットを同じロケーションに保存します。残りのデフォルトの設定は変更せず、[データセットを作成] をクリックします。
データを検討する
データセットを確認して、ロジスティック回帰モデルのトレーニング データとして使用する列を特定します。census_adult_income
テーブルから 100 行を選択します。
SQL
Google Cloud コンソールで [BigQuery] ページに移動します。
クエリエディタで、次の GoogleSQL クエリを実行します。
SELECT age, workclass, marital_status, education_num, occupation, hours_per_week, income_bracket, functional_weight FROM `bigquery-public-data.ml_datasets.census_adult_income` LIMIT 100;
結果は次のようになります。
BigQuery DataFrames
このサンプルを試す前に、BigQuery DataFrames を使用した BigQuery クイックスタートの手順に沿って BigQuery DataFrames を設定してください。詳細については、BigQuery DataFrames のリファレンス ドキュメントをご覧ください。
BigQuery に対する認証を行うには、アプリケーションのデフォルト認証情報を設定します。詳細については、ローカル開発環境の ADC を設定するをご覧ください。
クエリ結果から、census_adult_income
テーブルの income_bracket
列には <=50K
または >50K
の 2 つの値のどちらかしかないことがわかります。functional_weight
列は、国勢調査機関が特定の行に対応すると考えている人数です。この列の値は、特定の行の income_bracket
の値とは無関係に見えます。
サンプルデータを準備する
このチュートリアルでは、次の属性に基づいて国勢調査回答者の収入を予測します。
- 年齢
- 業務のタイプ
- 配偶者の有無
- 教育水準
- 職業
- 週あたりの労働時間
この予測を作成するには、census_adult_income
テーブルにある国勢調査の回答者に関するデータから情報を抽出します。特徴列を選択します。
education_num
: 回答者の教育水準を表します。workclass
: 回答者が従事している業務の種類を表します。
データが重複している列を除外します。例:
education
。education
とeducation_num
が同じデータを異なる形式で表現しているため。
functional_weight
列から派生した新しい dataframe
列を作成して、データをトレーニング セット、評価セット、予測セットに分割します。モデルのトレーニング用にデータソースの 80% にラベルを付け、残りの 20% のデータを評価と予測用に予約します。
SQL
サンプルデータを準備するには、トレーニング データを格納するビューを作成します。このビューは、このチュートリアルの後半の CREATE MODEL
ステートメントで使用されます。
サンプルデータを準備するクエリを実行します。
Google Cloud コンソールで [BigQuery] ページに移動します。
[クエリエディタ] ペインで、次のクエリを実行します。
CREATE OR REPLACE VIEW `census.input_data` AS SELECT age, workclass, marital_status, education_num, occupation, hours_per_week, income_bracket, CASE WHEN MOD(functional_weight, 10) < 8 THEN 'training' WHEN MOD(functional_weight, 10) = 8 THEN 'evaluation' WHEN MOD(functional_weight, 10) = 9 THEN 'prediction' END AS dataframe FROM `bigquery-public-data.ml_datasets.census_adult_income`
[エクスプローラ] ペインで
census
データセットを開き、input_data
ビューを見つけます。ビュー名をクリックして情報ペインを開きます。ビュースキーマが [スキーマ] タブに表示されます。
BigQuery DataFrames
input_data
という DataFrame
を作成します。このチュートリアルの後半では、input_data
を使用して、モデルをトレーニングおよび評価し、予測を行います。
このサンプルを試す前に、BigQuery DataFrames を使用した BigQuery クイックスタートの手順に沿って BigQuery DataFrames を設定してください。詳細については、BigQuery DataFrames のリファレンス ドキュメントをご覧ください。
BigQuery に対する認証を行うには、アプリケーションのデフォルト認証情報を設定します。詳細については、ローカル開発環境の ADC を設定するをご覧ください。
ロジスティック回帰モデルを作成する
前のセクションでラベルを付けたトレーニング データを使用して、ロジスティック回帰モデルを作成します。
SQL
CREATE MODEL
ステートメントを使用し、モデルタイプに LOGISTIC_REG
を指定します。
CREATE MODEL
ステートメントについては、次の点に注意してください。
input_label_cols
オプションは、SELECT
ステートメントでラベル列として使用する列を指定します。ここで、ラベル列はincome_bracket
であるため、モデルはその行の他の値に基づいて、特定の行に対してincome_bracket
の 2 つの値のどちらに分類される可能性が高いかを学習します。ロジスティック回帰モデルがバイナリかマルチクラスかを指定する必要はありません。BigQuery は、ラベル列の一意の値の数に基づいて、トレーニングするモデルのタイプを決定できます。
トレーニング データ内のクラスラベルのバランスを取るために、
auto_class_weights
オプションはTRUE
に設定されています。デフォルトでは、トレーニング データは重み付けされません。トレーニング データ内のラベルが不均衡である場合、モデルは最も出現回数の多いラベルクラスをより重視して予測するように学習することがあります。この場合、データセット内の回答者の大多数は低い方の収入階層に属します。このため、低い方の収入階層を過度に重視して予測するモデルになる可能性があります。クラスの重みは、各クラスの頻度に反比例した重みを計算して、クラスラベルのバランスを取ります。SELECT
ステートメントは、トレーニング データを含むinput_data
ビューをクエリします。WHERE
句はinput_data
の行をフィルタリングし、トレーニング データとしてラベル付けされた行のみがモデルのトレーニングに使用されるようにします。
ロジスティック回帰モデルを作成するクエリを実行します。
Google Cloud コンソールで [BigQuery] ページに移動します。
[クエリエディタ] ペインで、次のクエリを実行します。
CREATE OR REPLACE MODEL `census.census_model` OPTIONS ( model_type='LOGISTIC_REG', auto_class_weights=TRUE, data_split_method='NO_SPLIT', input_label_cols=['income_bracket'], max_iterations=15) AS SELECT * EXCEPT(dataframe) FROM `census.input_data` WHERE dataframe = 'training'
[エクスプローラ] ペインで、
census
データセットを開き、[モデル] フォルダを開きます。census_model モデルをクリックして、情報ペインを開きます。
[スキーマ] タブをクリックします。モデルスキーマには、BigQuery ML がロジスティック回帰の実行に使用した属性がリストされます。スキーマは次のようになります。
BigQuery DataFrames
fit
メソッドを使用してモデルをトレーニングし、to_gbq
メソッドを使用してモデルをデータセットに保存します。
このサンプルを試す前に、BigQuery DataFrames を使用した BigQuery クイックスタートの手順に沿って BigQuery DataFrames を設定してください。詳細については、BigQuery DataFrames のリファレンス ドキュメントをご覧ください。
BigQuery に対する認証を行うには、アプリケーションのデフォルト認証情報を設定します。詳細については、ローカル開発環境の ADC を設定するをご覧ください。
モデルのパフォーマンスを評価する
モデルを作成したら、実際のデータに対するモデルのパフォーマンスを評価します。
SQL
ML.EVALUATE
関数は、モデルによって生成された予測値を実際のデータに照らして評価します。
入力では、ML.EVALUATE
関数はトレーニング済みモデルと、dataframe
列の値が evaluation
である input_data
ビューの行を取得します。この関数は、モデルに関する統計を単一行で返します。
ML.EVALUATE
クエリを実行します。
Google Cloud コンソールで [BigQuery] ページに移動します。
[クエリエディタ] ペインで、次のクエリを実行します。
SELECT * FROM ML.EVALUATE (MODEL `census.census_model`, ( SELECT * FROM `census.input_data` WHERE dataframe = 'evaluation' ) )
結果は次のようになります。
BigQuery DataFrames
score
メソッドを使用して、実際のデータに照らしてモデルを評価します。
このサンプルを試す前に、BigQuery DataFrames を使用した BigQuery クイックスタートの手順に沿って BigQuery DataFrames を設定してください。詳細については、BigQuery DataFrames のリファレンス ドキュメントをご覧ください。
BigQuery に対する認証を行うには、アプリケーションのデフォルト認証情報を設定します。詳細については、ローカル開発環境の ADC を設定するをご覧ください。
Google Cloud コンソールのモデルの情報ペインで、トレーニング中に計算された評価指標を確認することもできます。
収入階層を予測する
モデルを使用して、特定の回答者が属する可能性の高い収入階層を特定します。
SQL
ML.PREDICT
関数を使用して、可能性のある収入階層を予測します。トレーニング済みモデルと、dataframe
列の値が prediction
である input_data
ビューの行を入力します。
ML.PREDICT
クエリを実行します。
Google Cloud コンソールで [BigQuery] ページに移動します。
[クエリエディタ] ペインで、次のクエリを実行します。
SELECT * FROM ML.PREDICT (MODEL `census.census_model`, ( SELECT * FROM `census.input_data` WHERE dataframe = 'prediction' ) )
結果は次のようになります。
predicted_income_bracket
は income_bracket
の予測値です。
BigQuery DataFrames
predict
メソッドを使用して、可能性のある収入階層を予測します。
このサンプルを試す前に、BigQuery DataFrames を使用した BigQuery クイックスタートの手順に沿って BigQuery DataFrames を設定してください。詳細については、BigQuery DataFrames のリファレンス ドキュメントをご覧ください。
BigQuery に対する認証を行うには、アプリケーションのデフォルト認証情報を設定します。詳細については、ローカル開発環境の ADC を設定するをご覧ください。
予測結果について説明する
モデルがこれらの予測結果を生成する理由を理解するには、ML.EXPLAIN_PREDICT
関数を使用します。
ML.EXPLAIN_PREDICT
は、ML.PREDICT
関数の拡張バージョンです。ML.EXPLAIN_PREDICT
は、予測結果だけでなく、予測結果の説明に使用する追加の列も出力します。実際には、ML.PREDICT
の代わりに ML.EXPLAIN_PREDICT
を実行できます。詳細については、BigQuery ML Explainable AI の概要をご覧ください。
ML.EXPLAIN_PREDICT
クエリを実行します。
Google Cloud コンソールで [BigQuery] ページに移動します。
[クエリエディタ] ペインで、次のクエリを実行します。
SELECT * FROM ML.EXPLAIN_PREDICT(MODEL `census.census_model`, ( SELECT * FROM `census.input_data` WHERE dataframe = 'evaluation'), STRUCT(3 as top_k_features))
結果は次のようになります。
ロジスティック回帰モデルでは、Shapley 値を使用して、モデル内の各特徴の特徴アトリビューション値を生成します。クエリで top_k_features
が 3
に設定されているため、ML.EXPLAIN_PREDICT
は input_data
ビューの行ごとに上位 3 つの特徴アトリビューションを出力します。これらのアトリビューションは、アトリビューションの絶対値の降順で並べ替えられます。この例の 1 行目では、特徴 hours_per_week
が予測全体に最も大きく影響していますが、2 行目では、occupation
が予測全体に最も大きく影響しています。
モデルをグローバルに説明する
一般的に収入階層を決定するうえで最も重要な特徴を特定するには、ML.GLOBAL_EXPLAIN
関数を使用します。ML.GLOBAL_EXPLAIN
を使用するには、ENABLE_GLOBAL_EXPLAIN
オプションを TRUE
に設定してモデルを再トレーニングする必要があります。
モデルを再トレーニングしてグローバルな説明を取得します。
Google Cloud コンソールで [BigQuery] ページに移動します。
クエリエディタで、次のクエリを実行してモデルを再トレーニングします。
CREATE OR REPLACE MODEL `census.census_model` OPTIONS ( model_type='LOGISTIC_REG', auto_class_weights=TRUE, enable_global_explain=TRUE, input_label_cols=['income_bracket'] ) AS SELECT * EXCEPT(dataframe) FROM `census.input_data` WHERE dataframe = 'training'
クエリエディタで次のクエリを実行して、グローバルな説明を取得します。
SELECT * FROM ML.GLOBAL_EXPLAIN(MODEL `census.census_model`)
結果は次のようになります。
クリーンアップ
このチュートリアルで使用したリソースについて、Google Cloud アカウントに課金されないようにするには、リソースを含むプロジェクトを削除するか、プロジェクトを維持して個々のリソースを削除します。
データセットを削除する
プロジェクトを削除すると、プロジェクト内のデータセットとテーブルがすべて削除されます。プロジェクトを再利用する場合は、このチュートリアルで作成したデータセットを削除できます。
必要に応じて、Google Cloud コンソールで [BigQuery] ページを開きます。
ナビゲーションで、作成した census データセットをクリックします。
ウィンドウの右側にある [データセットを削除] をクリックします。この操作を行うと、データセットとモデルが削除されます。
[データセットの削除] ダイアログ ボックスでデータセットの名前(
census
)を入力して、[削除] をクリックします。
プロジェクトを削除する
プロジェクトを削除するには:
- In the Google Cloud console, go to the Manage resources page.
- In the project list, select the project that you want to delete, and then click Delete.
- In the dialog, type the project ID, and then click Shut down to delete the project.
次のステップ
- BigQuery ML の概要で BigQuery ML の概要を確認する。
CREATE MODEL
構文ページでモデルの作成方法を確認する。