このページでは、ボリューム スナップショットを使用して Persistent Disk ストレージをバックアップおよび復元する方法について説明します。
概要については、Kubernetes のボリューム スナップショットについての記事をご覧ください。
要件
GKE でボリューム スナップショットを使用するには、次の要件を満たす必要があります。
スナップショットをサポートする CSI ドライバを使用します。in-tree の Persistent Disk ドライバはスナップショットをサポートしていません。スナップショットを作成して管理するには、基盤となる
PersistentVolumeClaim
(PVC)と同じ CSI ドライバを使用する必要があります。Persistent Disk(PD)ボリューム スナップショットの場合は、Compute Engine Persistent Disk の CSI ドライバを使用します。GKE バージョン 1.18.10-gke.2100 以降、またはバージョン 1.19.3-gke.2100 を実行する新しい Linux クラスタには、Compute Engine Persistent Disk の CSI ドライバがデフォルトでインストールされます。また、既存のクラスタで Compute Engine Persistent Disk の CSI ドライバを有効にすることもできます。
スナップショットをサポートするすべての CSI ドライバの一覧については、Kubernetes ドキュメントの Drivers にある Other Features の列をご覧ください。
コントロール プレーンのバージョン 1.17 以降を使用します。Compute Engine Persistent Disk の CSI ドライバを使用するには、
VolumeSnapshot
で GKE バージョン 1.17.6-gke.4 以降を使用します。
- スナップショットに使用する既存の
PersistentVolumeClaim
が必要です。スナップショット ソースに使用するPersistentVolume
は、CSI ドライバによって管理される必要があります。CSI ドライバを使用しているかどうかを確認するには、PersistentVolume
仕様のcsi
セクションでdriver: pd.csi.storage.gke.io
またはfilestore.csi.storage.gke.io
が指定されているかをチェックします。以降のセクションで説明するように、PersistentVolume
が CSI ドライバによって動的にプロビジョニングされていれば、CSI ドライバによって管理されています。
制限事項
Compute Engine でのディスク スナップショットの作成に関する制限はすべて GKE にも適用されます。
ベスト プラクティス
GKE で Persistent Disk Volume
のスナップショットを使用する場合は、Compute Engine のディスク スナップショットのベスト プラクティスに従ってください。
始める前に
始める前に、次の作業が完了していることを確認してください。
- Google Kubernetes Engine API を有効にする。 Google Kubernetes Engine API の有効化
- このタスクに Google Cloud CLI を使用する場合は、gcloud CLI をインストールして初期化する。すでに gcloud CLI をインストールしている場合は、
gcloud components update
を実行して最新のバージョンを取得する。
ボリューム スナップショットの作成と使用
このドキュメントの例では、次の作業を行う方法について説明します。
PersistentVolumeClaim
とDeployment
を作成する。Deployment
が使用するPersistentVolume
にファイルを追加する。VolumeSnapshotClass
を作成してスナップショットを構成する。PersistentVolume
のボリューム スナップショットを作成する。- テストファイルを削除する。
- 作成したスナップショットに
PersistentVolume
を復元する。 - 復元が機能していることを確認する。
ボリューム スナップショットを使用するには、次の手順を完了する必要があります。
VolumeSnapshotClass
オブジェクトを作成して、スナップショットの CSI ドライバと削除ポリシーを指定します。VolumeSnapshot
オブジェクトを作成して、既存のPersistentVolumeClaim
のスナップショットをリクエストします。PersistentVolumeClaim
内のVolumeSnapshot
を参照して、そのスナップショットにボリュームを復元するか、スナップショットを使用して新しいボリュームを作成します。
PersistentVolumeClaim
と Deployment
を作成する
PersistentVolumeClaim
オブジェクトを作成するには、次のマニフェストをmy-pvc.yaml
として保存します。Persistent Disk
apiVersion: v1 kind: PersistentVolumeClaim metadata: name: my-pvc spec: storageClassName: standard-rwo accessModes: - ReadWriteOnce resources: requests: storage: 1Gi
この例では、Compute Engine Persistent Disk の CSI ドライバとともにデフォルトでインストールされた
standard-rwo
ストレージ クラスを使用します。詳細については、Compute Engine Persistent Disk の CSI ドライバの使用に関する記事をご覧ください。spec.storageClassName
には、サポートされている CSI ドライバを使用するストレージ クラスを指定できます。次のようにマニフェストを適用します。
kubectl apply -f my-pvc.yaml
Deployment
を作成するには、次のマニフェストをmy-deployment.yaml
として保存します。apiVersion: apps/v1 kind: Deployment metadata: name: hello-app spec: selector: matchLabels: app: hello-app template: metadata: labels: app: hello-app spec: containers: - name: hello-app image: google/cloud-sdk:slim args: [ "sleep", "3600" ] volumeMounts: - name: sdk-volume mountPath: /usr/share/hello/ volumes: - name: sdk-volume persistentVolumeClaim: claimName: my-pvc
次のようにマニフェストを適用します。
kubectl apply -f my-deployment.yaml
Deployment
のステータスを確認します。kubectl get deployment hello-app
Deployment
の準備が完了するまでに時間がかかることがあります。次のような出力が表示されるまで、上記のコマンドを実行します。NAME READY UP-TO-DATE AVAILABLE AGE hello-app 1/1 1 1 2m55s
ボリュームにテストファイルを追加する
Deployment
のPods
を一覧表示します。kubectl get pods -l app=hello-app
出力は次のようになります。
NAME READY STATUS RESTARTS AGE hello-app-6d7b457c7d-vl4jr 1/1 Running 0 2m56s
Pod
にテストファイルを作成します。kubectl exec POD_NAME \ -- sh -c 'echo "Hello World!" > /usr/share/hello/hello.txt'
POD_NAME
は、Pod
の名前に置き換えます。ファイルが存在することを確認します。
kubectl exec POD_NAME \ -- sh -c 'cat /usr/share/hello/hello.txt'
出力は次のようになります。
Hello World!
VolumeSnapshotClass
オブジェクトを作成する
VolumeSnapshotClass
オブジェクトを作成して、ボリューム スナップショットの CSI ドライバと deletionPolicy
を指定します。VolumeSnapshot
オブジェクトの作成時に VolumeSnapshotClass
オブジェクトを参照できます。
次のマニフェストを
volumesnapshotclass.yaml
として保存します。Persistent Disk
バージョン 1.21 以降を実行しているクラスタには、
v1
API バージョンを使用します。apiVersion: snapshot.storage.k8s.io/v1 kind: VolumeSnapshotClass metadata: name: my-snapshotclass driver: pd.csi.storage.gke.io deletionPolicy: Delete
この例では以下の情報が表示されます。
driver
フィールドは、スナップショットをプロビジョニングするために CSI ドライバによって使用されます。この例で、pd.csi.storage.gke.io
は Compute Engine Persistent Disk の CSI ドライバを使用します。deletionPolicy
フィールドは、バインドされたVolumeSnapshot
オブジェクトの削除時に、VolumeSnapshotContent
オブジェクトとその基盤となるスナップショットを GKE でどのように処理するかを指示します。VolumeSnapshotContent
オブジェクトと基盤となるスナップショットを削除するには、Delete
を指定します。VolumeSnapshotContent
とその基盤となるスナップショットを保持する場合は、Retain
を指定します。カスタムのストレージ ロケーションを使用するには、
storage-locations
パラメータをスナップショット クラスに追加します。このパラメータを使用するには、クラスタでバージョン 1.21 以降を使用する必要があります。apiVersion: snapshot.storage.k8s.io/v1 kind: VolumeSnapshotClass metadata: name: my-snapshotclass parameters: storage-locations: us-east2 driver: pd.csi.storage.gke.io deletionPolicy: Delete
ディスク イメージを作成するには、
parameters
フィールドに次の行を追加します。parameters: snapshot-type: images image-family: IMAGE_FAMILY
IMAGE_FAMILY
は、目的のイメージ ファミリーの名前(preloaded-data
など)に置き換えます。
次のようにマニフェストを適用します。
kubectl apply -f volumesnapshotclass.yaml
VolumeSnapshot
を作成する
VolumeSnapshot
オブジェクトは、既存の PersistentVolumeClaim
オブジェクトのスナップショットのリクエストです。VolumeSnapshot
オブジェクトを作成すると、GKE はオブジェクトを自動的に作成し、VolumeSnapshotContent
オブジェクト(PersistentVolume
オブジェクトなどのクラスタ内のリソース)とバインドします。
次のマニフェストを
volumesnapshot.yaml
として保存します。apiVersion: snapshot.storage.k8s.io/v1 kind: VolumeSnapshot metadata: name: my-snapshot spec: volumeSnapshotClassName: my-snapshotclass source: persistentVolumeClaimName: my-pvc
次のようにマニフェストを適用します。
kubectl apply -f volumesnapshot.yaml
Volume
スナップショットを作成すると、GKE によって対応するVolumeSnapshotContent
オブジェクトがクラスタ内に作成されます。このオブジェクトには、VolumeSnapshot
オブジェクトのスナップショットとバインディングが格納されます。VolumeSnapshotContents
オブジェクトを直接操作することはありません。GKE が
VolumeSnapshotContents
オブジェクトを作成したことを確認します。kubectl get volumesnapshotcontents
出力は次のようになります。
NAME AGE snapcontent-cee5fb1f-5427-11ea-a53c-42010a1000da 55s
Volume
スナップショットのコンテンツが作成されると、VolumeSnapshotClass
で指定した CSI ドライバによって、対応するストレージ システムにスナップショットが作成されます。GKE がストレージ システムにスナップショットを作成し、クラスタ上の VolumeSnapshot
オブジェクトにバインドすると、スナップショットが使用できるようになります。ステータスを確認するには、次のコマンドを実行します。
kubectl get volumesnapshot \
-o custom-columns='NAME:.metadata.name,READY:.status.readyToUse'
スナップショットを使用できる場合は、出力は次のようになります。
NAME READY
my-snapshot true
テストファイルを削除します。
作成したテストファイルを削除します。
kubectl exec POD_NAME \ -- sh -c 'rm /usr/share/hello/hello.txt'
ファイルが存在していないことを確認します。
kubectl exec POD_NAME \ -- sh -c 'cat /usr/share/hello/hello.txt'
出力は次のようになります。
cat: /usr/share/hello/hello.txt: No such file or directory
ボリューム スナップショットを復元する
PersistentVolumeClaim
の VolumeSnapshot
を参照して、既存のボリュームのデータで新しいボリュームをプロビジョニングできます。また、ボリュームをスナップショットでキャプチャした状態に復元することもできます。
PersistentVolumeClaim
で VolumeSnapshot
を参照するには、PersistentVolumeClaim
に dataSource
フィールドを追加します。VolumeSnapshotContents
がディスク イメージとスナップショットのどちらを参照する場合も、同じプロセスが使用されます。
この例では、新しい PersistentVolumeClaim
で作成した VolumeSnapshot
を参照して、新しいクレームを使用するように Deployment
を更新します。
次のようなディスクまたはイメージのスナップショットを使用していることを確認します。
- ディスクのスナップショット: スナップショットの作成の頻度が高く、復元の頻度は低い。
- イメージのスナップショット: スナップショットの作成の頻繁が低く、復元の頻度は高い。また、イメージのスナップショットは、ディスクのスナップショットよりも作成に時間がかかることがあります。
詳細については、スナップショット頻度の上限をご覧ください。スナップショットのタイプを把握していると、問題のトラブルシューティングに役立ちます。
VolumeSnapshot
を調べます。kubectl describe volumesnapshot SNAPSHOT_NAME
volumeSnapshotClassName
フィールドには、スナップショット クラスを指定します。kubectl describe volumesnapshotclass SNAPSHOT_CLASS_NAME
snapshot-type
パラメータでsnapshots
またはimages
を指定します。指定しない場合のデフォルトはsnapshots
です。スナップショット クラスが存在しない場合(たとえば、スナップショットが静的に作成された場合)、
VolumeSnapshotContents
を調べます。sh kubectl describe volumesnapshotcontents SNAPSHOT_CONTENTS_NAME
出力のスナップショット ハンドルの形式を見れば、スナップショットのタイプがわかります。 *projects/PROJECT_NAME/global/snapshots/SNAPSHOT_NAME
: ディスクのスナップショットprojects/PROJECT_NAME/global/images/IMAGE_NAME
: イメージのスナップショット
次のマニフェストを
pvc-restore.yaml
として保存します。Persistent Disk
apiVersion: v1 kind: PersistentVolumeClaim metadata: name: pvc-restore spec: dataSource: name: my-snapshot kind: VolumeSnapshot apiGroup: snapshot.storage.k8s.io storageClassName: standard-rwo accessModes: - ReadWriteOnce resources: requests: storage: 1Gi
次のようにマニフェストを適用します。
kubectl apply -f pvc-restore.yaml
新しい
PersistentVolumeClaim
を使用するようにmy-deployment.yaml
ファイルを更新します。... volumes: - name: my-volume persistentVolumeClaim: claimName: pvc-restore
更新されたマニフェストを適用します。
kubectl apply -f my-deployment.yaml
スナップショットが正常に復元されたことを確認する
更新された
Deployment
用に GKE が作成する新しいPod
の名前を取得します。kubectl get pods -l app=hello-app
テストファイルが存在することを確認します。
kubectl exec NEW_POD_NAME \
-- sh -c 'cat /usr/share/hello/hello.txt'
NEW_POD_NAME
は、GKE が作成した新しい Pod
の名前に置き換えます。
出力は次のようになります。
Hello World!
既存のスナップショットをインポートする
現在のクラスタの外部で作成された既存のボリューム スナップショットを使用して、VolumeSnapshotContents
オブジェクトを手動でプロビジョニングできます。たとえば、別のクラスタに作成された別の Google Cloud リソースのスナップショットで GKE のボリュームを更新できます。
スナップショットの名前を探します。
Google Cloud コンソール
Google Cloud CLI
次のコマンドを実行します。
gcloud compute snapshots list
出力は次のようになります。
NAME DISK_SIZE_GB SRC_DISK STATUS snapshot-5e6af474-cbcc-49ed-b53f-32262959a0a0 1 us-central1-b/disks/pvc-69f80fca-bb06-4519-9e7d-b26f45c1f4aa READY
次の
VolumeSnapshot
マニフェストをrestored-snapshot.yaml
として保存します。apiVersion: snapshot.storage.k8s.io/v1 kind: VolumeSnapshot metadata: name: restored-snapshot spec: volumeSnapshotClassName: my-snapshotclass source: volumeSnapshotContentName: restored-snapshot-content
次のようにマニフェストを適用します。
kubectl apply -f restored-snapshot.yaml
次の
VolumeSnapshotContent
マニフェストをrestored-snapshot-content.yaml
として保存します。snapshotHandle
フィールドは、プロジェクト ID とスナップショット名に置き換えます。双方向のバインディングを有効にするには、volumeSnapshotRef.name
とvolumeSnapshotRef.namespace
の両方が、以前に作成したVolumeSnapshot
を参照している必要があります。apiVersion: snapshot.storage.k8s.io/v1 kind: VolumeSnapshotContent metadata: name: restored-snapshot-content spec: deletionPolicy: Retain driver: pd.csi.storage.gke.io source: snapshotHandle: projects/PROJECT_ID/global/snapshots/SNAPSHOT_NAME volumeSnapshotRef: kind: VolumeSnapshot name: restored-snapshot namespace: default
次のようにマニフェストを適用します。
kubectl apply -f restored-snapshot-content.yaml
次の
PersistentVolumeClaim
マニフェストをrestored-pvc.yaml
として保存します。Kubernetes ストレージ コントローラは、restored-snapshot
という名前のVolumeSnapshot
を探し、データソースとしてPersistentVolume
を見つけるか、動的に作成しようとします。その後、Pod でこの PVC を使用して、復元されたデータにアクセスできます。apiVersion: v1 kind: PersistentVolumeClaim metadata: name: restored-pvc spec: dataSource: name: restored-snapshot kind: VolumeSnapshot apiGroup: snapshot.storage.k8s.io storageClassName: standard-rwo accessModes: - ReadWriteOnce resources: requests: storage: 1Gi
次のようにマニフェストを適用します。
kubectl apply -f restored-pvc.yaml
次の
Pod
マニフェストをrestored-pod.yaml
として保存し、PersistentVolumeClaim
を参照します。CSI ドライバがPersistentVolume
をプロビジョニングし、スナップショットで更新します。apiVersion: v1 kind: Pod metadata: name: restored-pod spec: containers: - name: busybox image: busybox args: - sleep - "3600" volumeMounts: - name: source-data mountPath: /demo/data volumes: - name: source-data persistentVolumeClaim: claimName: restored-pvc readOnly: false
次のようにマニフェストを適用します。
kubectl apply -f restored-pod.yaml
ファイルが復元されたことを確認します。
kubectl exec restored-pod -- sh -c 'cat /demo/data/hello.txt'
クリーンアップ
このページで使用したリソースについて、Google Cloud アカウントに課金されないようにするには、次の操作を行います。
VolumeSnapshot
を削除します。kubectl delete volumesnapshot my-snapshot
VolumeSnapshotClass
を削除します。kubectl delete volumesnapshotclass my-snapshotclass
Deployment
を削除します。kubectl delete deployments hello-app
PersistentVolumeClaim
オブジェクトを削除します。kubectl delete pvc my-pvc pvc-restore
次のステップ
- Kubernetes ボリューム スナップショットのドキュメントを読む。
- ボリュームの拡張について学習する。
- CSI ドライバを手動でインストールする方法を学習する。
- GKE のブロック ストレージ(Persistent Disk)について学習する。