このガイドでは、以下の機能を有効にして、GKE Enterprise コマンドライン インターフェース(CLI)を使用して、新しい Google Cloud GKE クラスタに Anthos Service Mesh 1.4.10-asm.18 をインストールする方法を説明します。
- Anthos Service Mesh のオブザーバビリティ機能
- Anthos Service Mesh 認証局(Mesh CA)を含む Anthos Service Mesh のセキュリティ機能
- サポートされている Istio 機能
現在、GKE Enterprise CLI では、既存の GKE クラスタまたは GKE on VMware へのインストールをサポートしていません。
準備
このガイドでは、次のものが用意されていることを前提としています。
要件
GKE Enterprise の試用版ライセンスまたはサブスクリプションが必要です。詳細については、GKE Enterprise の料金ガイドをご覧ください。
GKE クラスタは次の要件を満たす必要があります。
- 少なくとも 4 つのノード。
- 最小のマシンタイプが 4 つの vCPU を備えた
e2-standard-4
。 - GKE の静的バージョンではなくリリース チャンネルを使用。
サービス メッシュに含めるには、サービスポートに名前を付ける必要があります。名前には、
name: protocol[-suffix]
の構文でポートのプロトコルを含める必要があります。角かっこは、ダッシュで始まるオプションの接尾辞です。詳細については、サービスポートの命名をご覧ください。Anthos Service Mesh を限定公開クラスタにインストールする場合に、自動サイドカー インジェクションを使用するには、ポート 9443 を開くファイアウォール ルールを追加する必要があります。ファイアウォール ルールを追加せず、自動サイドカー インジェクションを有効にすると、ワークロードのデプロイでエラーが発生します。ファイアウォール ルールの追加方法については、特定のユースケースに対するファイアウォール ルールの追加をご覧ください。
組織にサービス境界を作成した場合は、Mesh CA サービスを境界に追加する必要があります。詳細については、サービス境界へのメッシュ CA の追加をご覧ください。
制限事項
1 つの Google Cloud プロジェクトにインストールできる Anthos Service Mesh は 1 つだけです。1 つのプロジェクトで複数のメッシュ デプロイはサポートされていません。
証明書データ
Mesh CA からの証明書には、アプリケーションのサービスに関する次のデータが含まれます。
- Google Cloud プロジェクト ID。
- GKE 名前空間
- GKE サービス アカウント名
kpt
と Anthos CLI のインストール
GKE Enterprise CLI をインストールするには、kpt
を使用します。また、kpt
を使用して、GitHub に保存されている Anthos Service Mesh リソース構成ファイルをダウンロードして管理、カスタマイズします。構成ファイルには、特定の Google Cloud プロジェクトと GKE クラスタの情報のプレースホルダが含まれています。構成ファイルをカスタマイズした後、独自の GitHub リポジトリや他のソース管理システムに対して確認できます。
Google Cloud CLI で認証します。
gcloud auth login
Google Cloud プロジェクト ID を取得し、その環境変数を作成します。
export PROJECT_ID=
YOUR_PROJECT_ID
Google Cloud CLI のデフォルトのプロジェクト ID を設定します。
gcloud config set project ${PROJECT_ID}
新しいクラスタのゾーンまたはリージョンとマシンタイプを選択します。Anthos Service Mesh で必要最小限なマシンタイプは n1-standard-4 です。任意のリリース チャンネル オプションを使用できます。
シングルゾーン クラスタを作成する場合は、次のコマンドを実行して、使用可能な GCP ゾーンのリストを取得します。
gcloud compute zones list
リージョン クラスタを作成する場合は、次のコマンドを実行して、使用可能なリージョンのリストを取得します。
gcloud compute regions list
マシンタイプのリストを取得するには:
gcloud compute machine-types list | more
次の環境変数を作成します。
クラスタ名を設定します。
export CLUSTER_NAME=YOUR_CLUSTER_NAME
クラスタ名に使用できるのは、英小文字、数字、- のみです。先頭は英字、末尾は英数字を使用し、40 文字以下にする必要があります。
CLUSTER_LOCATION
をクラスタのゾーンまたはリージョンに設定します。export CLUSTER_LOCATION=YOUR_ZONE_OR_REGION
GKE Enterprise CLI をインストールしてコンポーネントを更新します。Cloud Shell を使用する場合は、次のコマンドに
sudo
を追加します。gcloud components install kpt anthoscli alpha
gcloud components update --version 292.0.0
必要に応じて、Anthos Service Mesh パッケージ用の新しいディレクトリを作成し、
cd
を実行します。Anthos Service Mesh パッケージを現在の作業ディレクトリにダウンロードします。
kpt pkg get \ https://github.com/GoogleCloudPlatform/anthos-service-mesh-packages.git/asm@release-1.4-asm .
デフォルトでは、
kpt pkg get
コマンドはパッケージ ファイルのコンピューティング ゾーンを現在の構成に合わせて入力します。構成ファイルに次の値を設定します。
プロジェクト ID を設定します。
kpt cfg set asm gcloud.core.project ${PROJECT_ID}
クラスタ名を設定します。
kpt cfg set asm cluster-name ${CLUSTER_NAME}
デフォルトのゾーンまたはリージョンを設定します。
kpt cfg set asm gcloud.compute.zone ${CLUSTER_LOCATION}
必要に応じて、リリース チャンネルをデフォルトの
REGULAR
から変更します。次のコマンドで、YOUR_CHANNEL
をSTABLE
またはRAPID
に置き換えます。kpt cfg set asm gcloud.container.cluster.releaseChannel YOUR_CHANNEL
各チャネルの説明については、利用可能なチャネルをご覧ください。
Anthos Service Mesh を新しいクラスタにインストールする
次のコマンドを実行して新しいクラスタを作成し、カスタマイズした Anthos Service Mesh 構成ファイルを使用して Anthos Service Mesh をインストールします。
anthoscli apply -f asm
デプロイが完了するまで待ちます。
kubectl wait --for=condition=available --timeout=600s deployment --all -n istio-system
出力:
deployment.extensions/istio-galley condition met deployment.extensions/istio-ingressgateway condition met deployment.extensions/istio-pilot condition met deployment.extensions/istio-sidecar-injector condition met deployment.extensions/promsd condition met
コントロール プレーン コンポーネントを確認する
istio-system
のコントロール プレーン Pod が稼働していることを確認します。
kubectl get pod -n istio-system
出力は次のようになります。
NAME READY STATUS RESTARTS AGE istio-galley-5c65896ff7-m2pls 2/2 Running 0 18m istio-ingressgateway-587cd459f-q6hqt 2/2 Running 0 18m istio-nodeagent-74w69 1/1 Running 0 18m istio-nodeagent-7524w 1/1 Running 0 18m istio-nodeagent-7652w 1/1 Running 0 18m istio-nodeagent-7948w 1/1 Running 0 18m istio-pilot-9db77b99f-7wfb6 2/2 Running 0 18m istio-sidecar-injector-69c4d9f875-dt8rn 1/1 Running 0 18m promsd-55f464d964-lqs7w 2/2 Running 0 18m
クラスタ内の各ノードの istio-nodeagent
のインスタンスが表示されます。Citadel OSS Istio コンポーネントを置き換える Mesh CA は、サービス メッシュで実行されているワークロードの mTLS 証明書を発行するノード エージェントを作成します。
Mesh CA が機能していることを確認します。
kubectl get pods -n istio-system -l app=istio-nodeagent \
--output=jsonpath={.items..metadata.name} -o yaml | grep CA_ADDR -A 1
予想される出力: meshca.googleapis.com:443.
クラスタの登録
Google Cloud コンソールで統合ユーザー インターフェースにアクセスするには、クラスタをプロジェクトのフリートに登録する必要があります。フリートは、Google Cloud 外のクラスタを含むクラスタとそのワークロードを表示して管理するために統合された方法を提供します。
Google Cloud のサービス アカウントと鍵ファイルを作成する
クラスタを登録するには、サービス アカウントの認証情報を含む JSON ファイルが必要です。最小権限の原則に従い、登録するクラスタごとに個別のサービス アカウントを作成することをおすすめします。
サービス アカウントとキーファイルを作成するには:
サービス アカウントの名前を選択して、その環境変数を作成します。
export SERVICE_ACCOUNT_NAME=SERVICE_ACCOUNT_NAME
サービス アカウントを作成します。
gcloud iam service-accounts create ${SERVICE_ACCOUNT_NAME}
プロジェクトのサービス アカウントをすべて一覧表示して、サービス アカウントが作成されたことを確認します。
gcloud iam service-accounts list
サービス アカウントに gkehub.connect IAM ロールをバインドします。
gcloud projects add-iam-policy-binding ${PROJECT_ID} \ --member="serviceAccount:${SERVICE_ACCOUNT_NAME}@${PROJECT_ID}.iam.gserviceaccount.com" \ --role="roles/gkehub.connect"
JSON ファイルを保存するローカル ファイルパスの環境変数を作成します。ファイル名にサービス アカウント名とプロジェクト ID を使用することをおすすめします(例:
/tmp/creds/${SERVICE_ACCOUNT_NAME}-${PROJECT_ID}.json
)。export SERVICE_ACCOUNT_KEY_PATH=LOCAL_KEY_PATH
サービス アカウントの秘密鍵の JSON ファイルをダウンロードします。
gcloud iam service-accounts keys create ${SERVICE_ACCOUNT_KEY_PATH} \ --iam-account=${SERVICE_ACCOUNT_NAME}@${PROJECT_ID}.iam.gserviceaccount.com
クラスタを登録する
次のコマンドを使用して、MEMBERSHIP_NAME
を Hub に登録されているクラスタを一意に識別する名前に置き換えます。
gcloud container hub memberships register MEMBERSHIP_NAME \ --gke-cluster=${CLUSTER_LOCATION}/${CLUSTER_NAME} \ --service-account-key-file=${SERVICE_ACCOUNT_KEY_PATH}
次のような出力が返されます。
kubeconfig entry generated for CLUSTER_NAME. Waiting for membership to be created...done. Created a new membership [projects/PROJECT_ID/locations/global/memberships/MEMBERSHIP_NAME] for the cluster [MEMBERSHIP_NAME] Generating the Connect Agent manifest... Deploying the Connect Agent on cluster [MEMBERSHIP_NAME] in namespace [gke-connect]... Deployed the Connect Agent on cluster [MEMBERSHIP_NAME] in namespace [gke-connect]. Finished registering the cluster [MEMBERSHIP_NAME] with the Hub.
このサービス アカウント キーは、creds-gcp
という名前のシークレットとして gke-connect
名前空間に保存されます。
クラスタの登録の詳細については、Connect のドキュメントでクラスタの登録をご覧ください。
Pod のセキュリティ ポリシーを有効にする
サービス メッシュのセキュリティを最適化するには、Pod のセキュリティ ポリシーを有効にすることをおすすめします。
サイドカー プロキシの挿入
Anthos Service Mesh は、サイドカー プロキシを使用してネットワークのセキュリティ、信頼性、オブザーバビリティを強化します。Anthos Service Mesh では、これらの機能がアプリケーションのプライマリ コンテナから抽出され、同じ Pod 内の個別のコンテナとして提供される共通のプロセス外プロキシに実装されます。
ワークロードをデプロイする前に、Anthos Service Mesh がトラフィックをモニタリングおよび保護できるように、サイドカー プロキシ インジェクションを構成します。自動サイドカー インジェクションは、次のように 1 つのコマンドで有効にできます。
kubectl label namespace NAMESPACE istio-injection=enabled --overwrite
ここで、NAMESPACE
はアプリケーションのサービスの名前空間の名前です。名前空間を明示的に作成していない場合は default
です。
詳細については、サイドカー プロキシの挿入をご覧ください。
Anthos の [サービス メッシュ] ページの表示
サイドカー プロキシが挿入されたクラスタにワークロードをデプロイすると、Google Cloud コンソールの Anthos の [サービス メッシュ] ページで、Anthos Service Mesh が提供するすべてのオブザーバビリティ機能を確認できます。ワークロードをデプロイした後、Google Cloud コンソールにテレメトリー データが表示されるまでに 1~2 分ほどかかることがあります。
Google Cloud コンソールでの Anthos Service Mesh へのアクセスは、Identity and Access Management(IAM)によって制御されます。Anthos Service Mesh ページにアクセスするには、プロジェクト オーナーがユーザーに対して、プロジェクト編集者または閲覧者のロール、または、より限定的なロール(Google Cloud コンソールでの Anthos Service Mesh に対するアクセス制御を参照)を付与する必要があります。
Google Cloud コンソールで、[Anthos Service Mesh] に移動します。
メニューバーのプルダウン リストから Google Cloud プロジェクトを選択します。
複数のサービス メッシュがある場合は、[サービス メッシュ] プルダウン リストからメッシュを選択します。
詳細については、Google Cloud コンソールでの Anthos Service Mesh の確認をご覧ください。
Anthos Service Mesh ページに加えて、サービスに関連する指標(特定のサービスで受信したリクエストの数など)が Cloud Monitoring に送信され、Metrics Explorer に表示されます。
指標を表示するには:
Google Cloud コンソールで、[Monitoring] ページに移動します。
[リソース] > [Metrics Explorer] を選択します。
指標の完全なリストについては、Cloud Monitoring のドキュメントの Istio 指標をご覧ください。
kpt
を使用したサンプルのインストール
必要に応じて、kpt
を使用して Hipster サンプルをクラスタにインストールできます。
サンプルをダウンロードします。
kpt pkg get \ https://github.com/GoogleCloudPlatform/microservices-demo.git/release \ hipster-demo
自動サイドカー インジェクションを有効にします。
kubectl label namespace default istio-injection=enabled
サンプルをクラスタにデプロイします。
kubectl apply -f hipster-demo
サンプルを実行したところで、次に Google Cloud コンソールで Anthos Service Mesh を調べます。トポロジグラフにメッシュ内のサービスが表示されるまでに、最長で 5 分間を要する場合があります。
確認が終わったら、Hipster サンプルを削除します。
kubectl delete -f hipster-demo