用途別にモデルを使い分ける非効率を解消。単一エンドポイントで最適解を導き出すサービスを提供
Google Cloud の採用でトラフィック集中時もレスポンスの安定性と高いスループットを確保
マネージドサービスで GPU の運用負荷を軽減し、自動ロードバランシングやスケーリングを実現
6〜7 種類の代表的なベンチマークで、既存の主要な AI モデルを上回る SOTA スコアを達成
Sakana AI は、Gemini Enterprise Agent Platform を基盤に採用し、複数の AI モデルを協調させて集合知を引き出す、マルチ エージェント システム「Sakana Fugu」を 6 か月で開発。主要な AI を上回るパフォーマンスも実現しました。
目覚ましい技術進化が続く生成 AI。その分野において異彩を放っているのが、日本発のスタートアップ、Sakana AI株式会社(以下、Sakana AI)です。同社は巨大な単一モデルに頼らず、複数の AI モデルを協調させて「集合知」を引き出すという独自のアプローチで、斬新な生成 AI の研究開発を推進。2026 年 6 月には、Google Cloud を運用基盤に据えたマルチ エージェント オーケストレーション システム、「Sakana Fugu」をローンチしています。今回はプロジェクトの中心となった 3 名のサイエンティストに、開発の舞台裏を聞きました。
現在の生成 AI 技術は、LLM(大規模言語モデル)の容量を拡大する方向で世界中で開発が続いています。そのような中、Sakana AI は社名の由来でもある「小さな魚が集まって 1 匹の大きな魚のように振る舞う生態」や、進化の原理にインスピレーションを受け、複数の AI モデルを動的に組み合わせる独自の研究を推進。2026 年 4 月には、「Sakana Fugu」のコア テクノロジーとなる AI モデルを発表しています。プロジェクトを率いたチーフ サイエンティストの Yujin Tang 氏は、開発の背景をこう振り返ります。
「私たちは Google、OpenAI、Anthropic といった主要な企業が提供する AI モデルと同等、またはそれを上回る性能を持つ基盤モデルを開発することを目指してきました。しかし、自分たちですべての基礎研究をゼロから行うのは、現実的でも効率的でもありません。そこで Sakana AI では、オープンソースやクローズド ソースの API サービスとして提供されているモデルを協調させ、タスクをより効率的に処理できる『Sakana Fugu』を開発しました。原点となったのは、2025 年 1 月に『Nature Machine Intelligence』誌に論文として寄稿した、『進化的モデルマージ(基盤モデル群の融合・活用)』(※1)という手法です。」

このようなモデル開発は、市場の潜在的なニーズに応え、新たな事業の展開を可能にするものでもありました。
「現在の LLM は、あるモデルはコーディングに強く、別のモデルは経済分野に強いというように、得意分野が分かれています。そのためユーザーは用途に応じて AI を使い分けなければならず、非効率な作業を強いられていました。しかし『Sakana Fugu』を利用すれば、ユーザーは単一のエンドポイントを呼び出すだけで、背後にある多様な AI にアクセスして最適な回答を得られます。このシステムをサブスクリプション モデルとして提供することは、世界中の AI 研究者やエンジニア、企業、ビジネス パーソンなどのニーズに応えつつ、新たなビジネスを展開するという意義も持っていました。」(Tang 氏)
現在の LLM は、あるモデルはコーディングに強く、別のモデルは経済分野に強いというように、得意分野が分かれています。そのためユーザーは用途に応じて AI を使い分けなければならず、非効率な作業を強いられていました。しかし『Sakana Fugu』を利用すれば、ユーザーは単一のエンドポイントを呼び出すだけで、背後にある多様な AI にアクセスして最適な回答を得られます。
Yujin Tang(ユージン タン)氏
Sakana AI株式会社
チーフ サイエンティスト
「Sakana Fugu」の特徴は、単に既存の AI を決まったパターンで組み合わせるのではなく、クエリの複雑さに応じて最適なモデルと処理を選択する「オーケストレーション」機能にあります。学習を担当した Stefan Nielsen 氏は、その動作原理を次のように説明します。
「『Sakana Fugu』はスポーツに例えるなら、さまざまな選手(AI モデル)やフォーメーション(組み合わせ)、戦術(タスク処理)を対戦相手(クエリ)に応じて使い分けるコーチのような存在です。つまり『AI のチームを指揮する AI』として『集合知』にアクセスし、個々のモデルを上回るパフォーマンスを発揮できるシステムになっています。実現にあたっては、モデルの選択を最適化する『進化戦略』と、モデルの連携方法を学習する『強化学習』を実施しました。いずれも 2026 年の国際学会 ICLR で発表した研究成果です(※2)。また、学習過程でモデルが自分自身を呼び出す手法を組み込み、『推論時スケーリング』も可能にしています。」

専用設計のアーキテクチャも奏功し、「Sakana Fugu」ではモデル間の遷移を感じさせないほどシームレスな利用環境が確保されています。
「今回のサービス ローンチでは、私たちは推論速度を重視した『Fugu』と、高いパフォーマンスを発揮する『Fugu Ultra』という 2 つのバリエーションを用意しました。これらのシステムではコーディングや対話能力などに卓越した Gemini も、動的に呼び出すフロンティア モデルの 1 つとして中核に組み込まれています。」(Nielsen 氏)
「オーケストレーション」を通じて、個々のモデルを上回る結果を引き出す。この難しい要件を実現するために選ばれたのが、Google Cloud です。もともと Sakana AI は Google や Google DeepMind 出身のエンジニアを中心に設立されたため、Google Cloud が採用されたのは自然な流れでした。しかし、インフラ設計を担当した Qi Sun 氏は、運用プラットフォームとしての適性の高さを再認識したと強調します。
「インフラ構築における最優先事項は、常に高品質なレスポンスを時間通りに返せる安定性の確保です。一方で、可能な限り多くの処理ができる、非常に高いスループットも重視していました。Google Cloud は、これらの要件をしっかり満たしています。さらに述べれば、『Sakana Fugu』では、Gemini をはじめとする各モデルを同一基盤上でフレキシブルに統合・連携できることが不可欠となります。この点、Gemini Enterprise Agent Platform は GPU をホスティングしつつ、マネージド サービスで管理や運用の負荷も軽減してくれるので最適でした。」

Sun 氏は、サービス構築に必要な各種ツールが十全に揃っていたことも、採用理由に挙げています。
「『Sakana Fugu』は、フロントエンド層、中間処理層、モデル層という 3 つのレイヤーで構成されています。フロントエンドでは Cloud Armor や Model Armor で不適切な入力や DDoS 攻撃からモデルを保護し、ランタイム セキュリティを確保。Firebase によるユーザーの認証と保護、API キーの管理などを実施しています。中間処理層は、基盤モデルの呼び出しやログとキャッシュの処理、BigQuery へのデータ書き込みなどを担当。そしてシステムのコアにあたるモデル層が、クエリに応じて最適な処理を行います。Cloud Run と Gemini Enterprise Agent Platform は、自動でロード バランシングとスケーリングをする機能も備えており、どのようなリクエストが来てもすぐに対応できます。」
今回のサービス ローンチでは、私たちは推論速度を重視した『Fugu』と、高いパフォーマンスを発揮する『Fugu Ultra』という 2 つのバリエーションを用意しました。これらのシステムではコーディングや対話能力などに卓越した Gemini も、動的に呼び出すフロンティア モデルの 1 つとして中核に組み込まれています。
Stefan Nielsen(ステファン ニールセン)氏
Sakana AI株式会社
リサーチ サイエンティスト
2025 年 10 月に始動した開発プロジェクトは、2026 年 4 月に完了。6 か月という短期間で実装にこぎつけています。Tang 氏によれば、それを支えたのが Google Cloud によるサポートでした。
「彼らとは毎週のようにミーティングを行うだけでなく、専用のチャット スペースでも密にコミュニケーションをとっていました。質問に応じて、各専門分野に最も詳しいエキスパートを連れてきてもらったり、事前に理想的なユースケースやベスト プラクティスを示してもらえたりしたのも助かりました。通常のように、ドキュメントを頼りにソリューションを探していたなら、開発は数週間から数か月単位で遅れていたと思います。」
サポートは GPU ワークロードにおける Cloud Run、Gemini Enterprise Agent Platform、Google Kubernetes Engine(GKE)の使い分けといった設計判断から、スケーラビリティの確保、権限管理の効率化といった詳細にも及びました。
「Google Cloud の担当チームは、Firestore のスケーリング制限や Cloud Logging のデータ制限といった、本番の運用で直面する課題をうまく回避する方法も一緒に考えてくれました。私たちも Terraform を導入し、運用の再現性と整合性を担保しつつ、IAM 権限を含む環境を、すべてコードで管理できる体制を整えました。」(Tang 氏)
こうして開発された「Sakana Fugu」は、社内の研究者やエンジニアが、リサーチ、コード作成、アイデアの創出などの幅広い業務で活用。すでに高い評価を得ています。
「定量的な成果としては、代表的な 6〜7 種類のベンチマークで、主要な AI モデルを上回る SOTA(最高水準)のスコアを記録したことも挙げられます。Google Cloud のダッシュボードを活用して、システムを精緻にモニタリングしたことも改善につながりました。細部を見直した結果、キャッシュ ヒット率は 5% 向上しています。」(Tang 氏)
約 2 か月に及ぶ PoC(概念実証)を経て、Sakana AI は 2026 年 6 月に有料の AI 開発プラットフォームである「Sakana Fugu」の提供を開始。このサービス実装は、グローバルなレベルでもすでに大きな注目を集めつつあります。最後に Tang 氏は、開発プロジェクトを総括しつつ、今後への展望を語ってくれました。
「今回のプロジェクトでは、やはり Gemini Enterprise Agent Platform が非常に役立ちました。BigQuery からデータを取得し、Model Garden を柔軟に活用するフローを、エンタープライズ クラスの安定した環境で構築できるからです。『Sakana Fugu』は、Sakana AI のさまざまな製品を支えるコア テクノロジーとなっていく予定です。生成 AI の可能性を探りながら、社会の幅広い分野に貢献していくためにも、今後も Google Cloud と連携しながら、独自の技術開発を続けていきたいと考えています。」
『Sakana Fugu』では、Gemini をはじめとする各モデルを同一基盤上でフレキシブルに統合・連携できることが不可欠となります。この点、Gemini Enterprise Agent Platform は GPU をホスティングしつつ、マネージド サービスで管理や運用の負荷も軽減してくれるので最適でした。
Qi Sun(チー サン)氏
Sakana AI株式会社
リサーチ サイエンティスト
※1 Akiba, Shing, Tang, Sun, Ha. Evolutionary optimization of model merging recipes. Nature Machine Intelligence 2025. https://doi.org/10.1038/s42256-024-00975-8
※2 Xu, Sun, Schwendeman, Nielsen, Cetin, Tang. TRINITY: An Evolved LLM Coordinator. ICLR 2026. https://arxiv.org/abs/2512.04695. Nielsen, Cetin, Schwendeman, Sun, Xu, Tang. Learning to Orchestrate Agents in Natural Language with the Conductor. ICLR 2026. https://arxiv.org/abs/2512.04388
(事例制作: 2026 年 6 月)

世界トップクラスの AI 研究者が集まり、2023 年 7 月に日本で設立。自然界の生物や進化の仕組みに着想を得た「進化的モデルマージ」を提唱。巨大な単一モデルに頼らない、効率的かつ省エネルギーな AI システムの研究・開発に強みを持つ。その独創的な理論とテクノロジーは注目を集め、世界の名だたる企業から出資を受ける。創業 1 年足らず、日本最速でユニコーン企業となった。
業種: テクノロジー
地域: 日本
利用しているサービス: Gemini, Gemini Enterprise Agent Platform, Cloud Run, Cloud SQL, Memorystore for Redis, BigQuery, Cloud Armor, Cloud Load Balancing, Identity Platform, Cloud Scheduler, Cloud Logging, 生成 AI