Extensible Service Proxy の起動オプション

Extensible Service Proxy(ESP)は、Cloud Endpoints で API 管理機能を提供できるようにする NGINX ベースのプロキシです。ESP を構成するには、ESP Docker コンテナを起動するときにオプションを指定します。ESP コンテナは起動時に start_esp という名前のスクリプトを実行します。このスクリプトは指定されたオプションを使用して NGINX 構成ファイルを作成し、ESP を起動します。

docker run コマンドで ESP 起動オプションを指定します。次に例を示します。

sudo docker run \
    --detach \
    DOCKER_ARGUMENTS \
    gcr.io/endpoints-release/endpoints-runtime:1 \
    --service=SERVICE_NAME \
    --rollout_strategy=managed \
    --backend=YOUR_API_CONTAINER_NAME:8080

ESP を Kubernetes にデプロイする場合は、デプロイメント マニフェスト ファイル内の args フィールドで起動オプションを指定します。次に例を示します。

containers:
- name: esp
  image: gcr.io/endpoints-release/endpoints-runtime:1
  args: [
    "--http_port=8081",
    "--backend=127.0.0.1:8080",
    "--service=SERVICE_NAME",
    "--rollout_strategy=managed"
  ]

次の表に、ESP の起動オプションを記載します。

短縮オプション 詳細オプション 説明
-s SERVICE_NAME --service SERVICE_NAME Endpoints サービスの名前を設定します。
-R ROLLOUT_STRATEGY --rollout_strategy ROLLOUT_STRATEGY

ESP バージョン 1.7.0 以降で使用できます。managed または fixed を指定します。--rollout_strategy=managed オプションを指定すると、デプロイ済みの最新のサービス構成を使用するように ESP が構成されます。このオプションを指定すると、新しいサービス構成をデプロイしてから 5 分以内に ESP が変更を検出し、自動的に使用します。ESP が特定の構成 ID でなく、このオプションを使用するようにしてください。--rollout_strategymanaged に設定した場合、--version オプションを指定する必要はありません。

-v CONFIG_ID --version CONFIG_ID ESP がサービス構成 ID を使用するように設定します。このオプションの設定に必要な情報については、サービス名と構成 ID を取得するをご覧ください。--rollout_strategy=fixed を指定する場合、または --rollout_strategy オプションを含めない場合は、--version オプションを含めて構成 ID を指定する必要があります。この場合、新しい Endpoints 構成をデプロイするたびに、新しい構成 ID を使用して ESP を再起動する必要があります。
-p HTTP1_PORT --http_port HTTP1_PORT ESP が公開する HTTP/1.x 接続用ポートを設定します。1
-P HTTP2_PORT --http2_port HTTP2_PORT ESP が公開する HTTP/2 接続用ポートを設定します。1
-S SSL_PORT --ssl_port SSL_PORT ESP が公開する HTTPS 接続用ポートを設定します。1
-a BACKEND --backend BACKEND HTTP/1.x アプリケーション バックエンド サーバーのアドレスを設定します。バックエンド アドレスのデフォルト値は http://127.0.0.1:8081 です。
プロトコル プレフィックスを指定できます。たとえば、次のようになります。
--backend=https://127.0.0.1:8000
プロトコル プレフィックスを指定しない場合、デフォルトの http が使用されます。
バックエンド サーバーがコンテナ内の Compute Engine で実行されている場合は、コンテナ名とポートを指定できます。次に例を示します。
--backend=my-api-container:8000
-N STATUS_PORT --status_port STATUS_PORT ステータス ポートを設定します(デフォルト: 8090)。
なし --disable_cloud_trace_auto_sampling デフォルトでは、ESP は 1,000 個あたり 1 個のリクエストをサンプリングします。あるいは、10 秒ごとに 1 個のリクエストが Cloud Trace で有効になります。こうした自動サンプリングを無効にするには、このフラグを設定します。このフラグ値に関係なく、Cloud Trace は、トレース コンテキストを含むリクエストの HTTP ヘッダーで有効にできます。詳細については、API のトレースをご覧ください。
-n NGINX_CONFIG --nginx_config NGINX_CONFIG カスタム NGINX 構成ファイルの場所を設定します。このオプションを指定すると、ESP は指定された構成ファイルを取得してからすぐに、指定されたカスタム構成ファイルで NGINX を起動します。 詳細については、GKE のカスタム nginx 構成の使用をご覧ください。
-k SERVICE_ACCOUNT_KEY --service_account_key SERVICE_ACCOUNT_KEY サービス アカウント認証情報の JSON ファイルを設定します。指定されている場合、ESP はサービス アカウントを使用して、Service Infrastructure API を呼び出すためのアクセス トークンを生成します。このオプションを指定する必要があるのは、ローカル デスクトップ、Kubernetes、あるいは別のクラウド プロバイダなど、Google Cloud 以外のプラットフォームで ESP を実行しているときだけです。詳細については、サービス アカウントの作成をご覧ください。
-z HEALTHZ_PATH --healthz HEALTHZ_PATH アプリケーション バックエンドと同じポートにヘルスチェックのエンドポイントを定義します。たとえば、-z healthz は、リクエストをバックエンドに転送する代わりに、ロケーション /healthz に対する ESP 戻りコードを 200 にします。デフォルト: 使用されません。
なし --dns DNS_RESOLVER DNS リゾルバを指定します。たとえば、--dns 169.254.169.254 は GCP メタデータ サーバーを DNS リゾルバとして使用します。指定しない場合、デフォルトは 8.8.8.8 になります。

1 これらのポートは省略可能ですが、指定する場合はそれぞれ異なるポートにする必要があります。ポート オプションを指定しない場合、ESP は HTTP/1.x 接続をポート 8080 で受け入れます。HTTPS 接続では、ESP は TLS シークレットが /etc/nginx/ssl/nginx.crt/etc/nginx/ssl/nginx.key にあるものと想定します。

コマンドラインの呼び出し例

以下の例に、いくつかのコマンドライン引数を使用する方法を示します。

ESP を起動して、受信リクエストを HTTP/1.x ポート 80 と HTTPS ポート 443 で処理し、それらのリクエストを 127.0.0.1:8000 にある API バックエンドに送信する場合:

sudo docker run \
    --detach \
    DOCKER_ARGUMENTS \
    gcr.io/endpoints-release/endpoints-runtime:1
     --service=echo-api.endpoints.example-project-12345.cloud.goog \
        --rollout_strategy=managed \
        --http_port=80 \
        --ssl_port=443 \
        --backend=127.0.0.1:8000

ESP をカスタム NGINX 構成で起動し、サービス アカウント認証情報ファイルを使用してサービス構成を取得してサービス コントロールに接続する場合:

sudo docker run \
    --detach \
    --volume=$HOME/Downloads:/esp \
    DOCKER_ARGUMENTS \
    gcr.io/endpoints-release/endpoints-runtime:1 \
    --service=echo-api.endpoints.example-project-12345.cloud.goog \
    --rollout_strategy=managed \
    --service_account_key=/esp/serviceaccount.json \
    --nginx_config=/esp/nginx.conf
    

Docker フラグ --volume または --mount を使用して、ESP の Docker コンテナ内のボリュームとして、サービス アカウントの秘密鍵とカスタム NGINX 構成ファイルを含む JSON ファイルをマウントする必要があります。上記の例では、ローカル PC の $HOME/Downloads ディレクトリをコンテナ内の esp ディレクトリにマッピングしています。サービス アカウントの秘密鍵ファイルを保存すると、通常は Downloads ディレクトリにダウンロードされます。必要に応じて、秘密鍵ファイルを別のディレクトリにコピーできます。詳細については、Docker のデータの管理をご覧ください。

ESP に CORS サポートを追加する

使用可能な CORS サポート オプションの説明については、CORS のサポートをご覧ください。このセクションでは、ESP 起動フラグを使用して CORS をサポートすることについて説明します。

ESP で CORS サポートを有効にするには、--cors_preset オプションを追加してその値を basic または cors_with_regex のいずれかに設定します。--cors_preset=basic または --cors_preset=cors_with_regex を設定すると、ESP は次のように動作します。

  • すべての場所のパスで同じ CORS ポリシーが適用されていると想定します。
  • 単純なリクエストプリフライト HTTP OPTIONS リクエストの両方に応答します。
  • プリフライト OPTIONS リクエストの結果を最大 20 日間(1,728,000 秒)キャッシュに保存します。
  • レスポンス ヘッダーを次の値に設定します。

    Access-Control-Allow-Origin: *
    Access-Control-Allow-Methods: GET, POST, PUT, PATCH, DELETE, OPTIONS
    Access-Control-Allow-Headers: DNT,User-Agent,X-Requested-With,If-Modified-Since,Cache-Control,Content-Type,Range,Authorization
    Access-Control-Expose-Headers: Content-Length,Content-Range

Access-Control-Allow-Origin のデフォルト値をオーバーライドするには、次のいずれかのオプションを指定します。

オプション 説明
--cors_allow_origin --cors_preset=basic と一緒に使用して、Access-Control-Allow-Origin に特定のオリジンを設定します。
例:
--cors_preset=basic
--cors_allow_origin=http://example.com
--cors_allow_origin_regex --cors_preset=cors_with_regex と一緒に使用します。正規表現を使用して Access-Control-Allow-Origin を設定できます。
例:
--cors_preset=cors_with_regex
--cors_allow_origin_regex=^https?://.+\.example\.com$

上記の例の正規表現では、http または https を使用するオリジンと example.com のすべてのサブドメインが許可されます。

--cors_preset=basic または --cors_preset=cors_with_regex を設定して CORS を有効にした後に、次の 1 つ以上のオプションを指定すると、他のレスポンス ヘッダーのデフォルト値をオーバーライドできます。

オプション 説明
--cors_allow_methods Access-Control-Allow-Methods を指定の HTTP メソッドに設定します。対象とする HTTP メソッドを、各 HTTP メソッドをカンマで区切った文字列として指定します。
例:
--cors_preset=basic
--cors_allow_methods=GET,POST,PUT,OPTIONS
--cors_allow_headers Access-Control-Allow-Headers を指定の HTTP ヘッダーに設定します。対象とする HTTP ヘッダーを、各 HTTP ヘッダーをカンマで区切った文字列として指定します。
例:
--cors_preset=basic
--cors_allow_headers=Origin,Content-Type,Accept
--cors_allow_credentials レスポンスに Access-Control-Allow-Credentials ヘッダーを追加し、値 true を設定します。デフォルトでは、Access-Control-Allow-Credentials ヘッダーはレスポンスに含まれません。
例:
--cors_preset=basic
--cors_allow_credentials
--cors_expose_headers Access-Control-Expose-Headers を特定のヘッダーに設定します。レスポンスの一部として公開可能なヘッダーを指定します。対象とするヘッダーを、各ヘッダーをカンマで区切った文字列として指定します。
例:
--cors_preset=basic
--cors_expose_headers=Content-Length

ESP CORS 起動オプションがアプリケーションのニーズに合わない場合は、アプリケーションに必要な CORS サポートを含めたカスタム nginx.conf ファイルを作成できます。詳細については、CORS をサポートするカスタム nginx.conf の作成をご覧ください。

次のステップ

以下の内容について学習します。