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製造

AI でメーカーのアセットの利用率と生産の稼働時間を向上させる

2022年12月7日
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Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2022 年 11 月 15 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

現在、競争力を強化して、持続可能な成長と新しいサービスの提供を図るメーカーは、革新的な技術に賭けて、工場のデジタル化に向けて取り組んでいます。エネルギー コストの高騰、人件費の増加、原材料の不足といったマクロ経済的要因により、オペレーションの最適化と自動化について早急に対応する必要性に迫られています。

クラウドの機能が加速度的に成熟したおかげで、メーカーには前述の目標を達成するための実用的な手段が提供されるようになりました。メーカーは、予測メンテナンス、異常検出、アセット利用率の管理などの実用的なユースケースに AI と機械学習(ML)を導入するための新しい方法を見出しています。しかし、データ アクセシビリティ、インフラストラクチャ、テクノロジーに関する課題によって、メーカーの大規模な AI 採用が困難になっています。

Google Cloud は専用のツールとソリューションを作成することで、製造データを整理し、そのアクセス性と有用性を高めました。また、価値創出までの時間を短縮して、メーカーが重要な手段をすばやく講じることができるようにしました。今回の投稿では、メーカーが Google Cloud の製造ソリューションを使用して、ML 対応機能のトレーニング、デプロイ、その価値の抽出を行い、アセットの利用率とメンテナンスの必要性を予測する方法について実例をご紹介します。

機械学習による分析情報の取得はアクセス可能なデータから始まる

機械学習プロジェクトを成功させる最初のステップは、必要なデータを共通のリポジトリに統合することです。このために、Google Cloud は Litmus Automation と共同開発した工場向けエッジ プラットフォームである Manufacturing Connectを使用して、製造アセットに接続し、アセット テレメトリーを Pub/Sub にストリーミングします。

テレメトリー メッセージが Pub/Sub にパブリッシュされると、Dataflow は構造に基づいて各メッセージを特定し、Manufacturing Data Engine で事前構成された、対応する正規化と変換を適用します。処理されたメッセージはユーザー構成に基づいて Cloud StorageBigQueryCloud BigTable にルーティングされます。
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図 1. Manufacturing Data Engine を使用した機械学習のアーキテクチャ概要図

機械学習モデルをトレーニングするために、メーカーは Vertex AI AutoML を使用して、Manufacturing Data Engine に保存されているトレーニング データに基づいてノーコード モデルを構築できます。

次に、ユーザーは Vertex AI でバッチ予測ジョブをトリガーするか、AutoML モデルをエクスポートして Manufacturing Connect のエッジ コンポーネントでモデルを実行し、リアルタイム予測を行うことができます。モデルのデプロイ方法を問わず、予測と説明の結果は Manufacturing Data Engine に取り込まれ、Looker で分析、可視化できます。

アセットの状態を分類するための構成

次に示すシナリオは、架空の会社 Cymbal Materials に基づいたものです。この会社は、実在しないディスクリート製造企業で、10 か国以上で 50 を超える工場を運営しています。Cymbal Materials の製造プロセスのうち、90% はフライス加工を伴います。この処理は産業用コンピュータ数値制御(CNC)のフライス盤を使用して行われます。工場では定期的な保守チェックリストを実施していますが、想定外の不明な障害が時折発生します。一方、Cymbal Materials の工場労働者の多くは、工場内の人手不足や離職率の高さにより、障害を特定してトラブルシューティングする経験が欠如しています。そのため、Cymbal Materials は Google Cloud と連携し、Manufacturing Connect、Manufacturing Data EngineVertex AI を利用して、障害を特定し分析できる機械学習モデルを構築しています。

試験運用のために、Cymbal Materials は製造エンジニアとデータ サイエンティストからなるチームを結成し、工具摩耗検出の問題を解決する実現可能性を評価します。コンプライアンスの問題を回避するため、Cymbal Materials チームは、Kaggle でホストされている工具摩耗検出の公開データセットを最初に利用することにしました。このデータセットは、CNC フライス盤で 2 インチ × 2 インチ × 1.5 インチのワックス ブロックの加工テストを実施して収集したものです。また、4 基のモーター(X、Y、Z 軸およびスピンドル)からの測定値と、CNC フライス盤のプログラム値が含まれ、Cymbal Materials が CNC フライス盤向けに収集したデータにうまく対応しています。
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図 2. Manufacturing Data Engine を使用した機械学習のアーキテクチャ図

まず、Cymbal Materials のデータ サイエンティストは、Kaggle から工具摩耗検出データセットをダウンロードし、Cloud Storage にアップロードします。次に、Vertex AI を使用して以下を行います。

  • Vertex AI Workbench を使用して探索的データ分析を実施する

  • Vertex AI AutoML を使用して機械学習モデルをトレーニングする

  • 機械学習モデルをデプロイしてバッチ予測を実施し、エッジデプロイ用に AutoML モデルをエクスポートする

Vertex Explainable AI を使用して予測を解釈する
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図 3. Vertex AI AutoML モデルのパフォーマンス

AutoML 表形式モデルの優れたパフォーマンスを確認した後、Cymbal Materials のデータ サイエンティストは、AutoML モデルを使用して工場にある実際の CNC フライス盤テレメトリーで予測し、AutoML モデルの一般化可能性を検証することにしました。そこで、Cymbal Materials の 1 つの工場に Manufacturing Connect をデプロイし、1 台の CNC フライス盤のテレメトリーを Manufacturing Data Engine にストリーミングするように製造エンジニアに依頼します。

Manufacturing Connect には、250 以上の通信プロトコルの豊富なライブラリを介して製造アセットからデータを収集できるエッジ コンポーネントが含まれています。Manufacturing Connect のエッジ コンポーネントには組み込みの Node-RED と Docker ランタイムが付属し、これらはエッジでのカスタム ワークフローと機械学習モデルの実行をサポートしています。

Manufacturing Connect は定義済みの階層を使用して、アセットのテレメトリーと状態を Pub/Sub に push します。
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図 4. Manufacturing Connect のユーザー インターフェース

工場のオペレーション データが Pub/Sub に取り込まれたら、Cymbal Materials は Manufacturing Data Engine を使用して以下を行います。

  • 変化が緩やかなメタデータを使用してリアルタイムのオペレーション データを正規化、変換、コンテキスト化する

  • 過去のオペレーション データと予測結果を一括で取り込む

  • Cloud StorageBigQueryCloud BigTable にデータを動的にルーティングする

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図 5. Manufacturing Connect での Manufacturing Data Engine の構成

データ サイエンティストは、トレーニング済みの AutoML 表形式モデルと CNC フライス盤のリアルタイム テレメトリーを使用して、BigQuery で CNC フライス盤テレメトリーのバッチ予測ジョブをトリガーします。Cloud Storage に予測結果を出力するようにバッチ予測を構成して、バッチ予測ジョブの完了後に Manufacturing Data Engine で予測結果を一括で取り込めるようにします。

予測結果を利用するために、Cymbal Materials の製造エンジニアは Looker を使用してビジュアライゼーションを作成します。ここでは、ダッシュボードを使用して以下を行うことができます。

  • CNC フライス盤の実際および予測の工具状態を時系列に可視化する

  • 関連付けられる上位の特徴を要約して予測結果を説明する

  • アセットの予測された工具状態に基づいてアラートを作成する

  • サプライヤーに連絡するか、アセットのメンテナンスをスケジュールして、対処する

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図 6. Looker ダッシュボードに表示される CNC フライス盤の摩耗予測

エッジからクラウドまで、メーカーの生産効率を向上させる

工場のデジタル化による価値創出の取り組み全体を支援するため、メーカーは単純なビジュアリゼーションから予測 ML モデルまでの機能を求めています。ここで取り上げたような堅牢なソリューションを導入することは、エンジニアが工場のデータから分析情報を引き出すための近道になります。

製造データ向けの共通データ リポジトリ、業界をリードする機械学習プラットフォーム、汎用性の高いダッシュボード コンポーネントがあれば、メーカーのデジタル トランスフォーメーションを加速させることができます。

このソリューションは、産業環境において Google Cloud のデータ分析と人工知能の機能を最大限に引き出します。Manufacturing Connect は産業機械と Manufacturing Data Engine の間のリンクを作成します。Manufacturing Data Engine は、製造データが処理、正規化、コンテキスト化され、すぐに使用可能な形式で保存されるクラウド プラットフォームです。Vertex AI では Manufacturing Data Engine に保存されたデータを使用して、機械学習モデルを構築、デプロイ、スケーリングできます。Vertex AI には、ノーコードでモデルをトレーニングする AutoML や、コードファーストでカスタムモデルをトレーニングする Workbench が含まれています。

変化する顧客の期待に応えるためのメーカーの変革に Google Cloud がどのように役立つかについては、Google Cloud Next のメーカー向けプレイリストをご覧ください。

次のステップ

  1. Google Cloud の新しいメーカー向けソリューションのご紹介: スマート ファクトリーで従業員の作業をスマートに

  2. Manufacturing Data Engine | ソリューション | Google Cloud 

  3. GitHub - GoogleCloudPlatform/mfg-ml-examples


- Google Cloud、Cloud メーカー向けソリューション担当業界ソリューション アーキテクト Ka Wo Fong
Google Cloud、製造、工業、輸送担当グローバル テクニカル ディレクター Charlie Sheridan
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