MDE と ABAP SDK for Google Cloud を使用して施設管理を自動化する
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2023 年 11 月 1 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
Google Cloud のお客様の多くは、複数の製造施設を運営しており、頻繁に機械のメンテナンスを行ったり、生産のダウンタイムを短縮したりすることで、費用を削減する方法や、効率を向上させる方法を常に模索しています。
これまで、製造現場のアセットのモニタリングやメンテナンスは、ほとんどが手作業で事後対応の面倒なプロセスでした。Google Cloud は、AI と ML のポートフォリオを活用してこのプロセスを支援します。現在、センサーは機械から運用データを収集し、Google Cloud にストリーミングしています。Google Cloud に取り込まれたデータを使用して、機械学習や統計計算でパターンを特定し、メンテナンスの問題を予測することで、問題が発生する前に解決することも可能になりました。このソリューション パターンは、予測メンテナンスとして知られています。施設管理者は、予測メンテナンスに基づくテクニカル ソリューションを活用することで、機械や設備が故障する前に、その異常を検知できるようになります。また、施設管理者は、予測メンテナンスを活用することで、設備が稼働している時間を避けて都合の良いときにメンテナンスをスケジュールできるため、時間と費用を大幅に節約できます。
巨大なデータセットの生産データを大規模に分析することは、常に困難が伴います。特に、生産パイプラインの何千ものアセットに関わる複数の生産施設のデータがある場合はなおさらです。この課題を解決するために、Manufacturing Data Engine は、メーカーがエンドツーエンドで製造現場のビジネス プロセスを管理できるように設計されています。
Manufacturing Data Engine
Manufacturing Data Engine(MDE)は、製造データの取り込み、処理、コンテキスト化、保管、利用を加速、簡素化、強化するスケーラブルなソリューションで、モニタリング、分析、ML のユースケースに対応しています。このコンポーネント スイートによって、Google Cloud の分析機能や AI 機能を活用して変革を加速するメーカーを支援します。
上記のアーキテクチャには以下が含まれます。
- Manufacturing Connect: 工場での連携を支えるプロダクトとして、エッジ ワークロードをサポートし、Google Cloud とデバイスを統合します。250 以上のマシン プロトコルの豊富なライブラリを介して、ほぼすべての製造アセットと迅速に接続できます。
- Manufacturing Data Engine: 工場データの処理、コンテキスト化、保存を行います。組み込まれたデータの正規化およびコンテキスト拡充機能により、工場に最適化されたデータ レイクハウスをストレージとして、共通のデータモデルを提供します。
- カスタマイズ可能な事前定義された分析: ビジネス インサイトとセルフサービス型の分析のために、カスタマイズ可能なダッシュボードと「メタモデル」を提供します。
- AI を活用した業務の最適化: Vertex AI などの Google Cloud ツールとのインテグレーションや、AI ユースケースのポートフォリオを活用し、価値を大規模に引き出します。
メーカーを対象とした SAP プロダクト
エンタープライズ リソース プランニング(ERP)ソフトウェアの大手ベンダーである SAP と Google Cloud は長年にわたるパートナーであり、BigQuery、Vertex AI、Cloud Pub/Sub などの Google のサービスを活用して、ビジネス領域全体でお客様のビジネス変革を支援してきました。SAP は、メーカー向けに SAP Plant Maintenance を提供しており、設備点検、通知、是正メンテナンス、予測メンテナンス、修理といったメンテナンス業務の管理を支援しています。
ABAP SDK for Google Cloud
ABAP SDK for Google Cloud は、SAP と Google Cloud のサービス間で双方向のリアルタイム インテグレーションを実現します。SAP デベロッパーは、ABAP SDK for Google Cloud を使用することで、Vertex AI、Document AI、Translation AI、Pub/Sub などの Google Cloud サービスと SAP アプリケーションを統合できます。ABAP SDK によって、デジタル トランスフォーメーションを加速し、ビジネスの目標をより速く達成できます。
両方のソリューションの長所を組み合わせる
Plant Maintenance のビジネス プロセスを SAP 上で運用しているメーカーは、Google Cloud の MDE と ABAP SDK for Google Cloud の機能を組み合わせることで、製造現場のアセット用に予測メンテナンスを実装できます。自動車メーカーを例に考えてみましょう。このメーカーは、塗装や組み立ての作業に入る前に、サンドブラスト マシンで金属部品を洗浄しており、組み立てラインの中断につながる可能性がある異常がないかどうか、ブラストマシンのモーターの状態をモニタリングしたいと考えています。
- MDE は、モーターに取り付けられた振動センサーからシャフトの振動の形式でセンサーデータのストリームを受信でき、振動ストリームの異常パターンを検出する ML モデルを構築できます。
- ML モデルによって異常が検出されると、MDE でイベントがトリガーされ、設備情報を含む通知が Cloud Pub/Sub トピックにパブリッシュされます。
- SAP の自動化プログラムがバックグラウンドで定期的に実行され、ABAP SDK for Google Cloud を使用して、Cloud Pub/Sub から設備情報をネイティブに取り込み、SAP で Plant Maintenance のオーダーを作成します。
- SAP のビジネス ユーザーがオーダーの処理を開始します。ABAP SDK for Google Cloud を活用して、現在のオーダー ステータスを別の Cloud Pub/Sub トピックにパブリッシュするように ABAP ロジックを記述できます。このトピックは、BigQuery データセットへの情報ソースとして使用できます。
- ダッシュボードは、BigQuery データセットに基づいて施設管理者向けに設計でき、以下のような指標の追跡に使用できます。
- メンテナンス オーダーのリアルタイムのステータス
- オーダーの遅延の可視性
結論と展望
製造データを SAP のようなエンタープライズ ソフトウェアに統合することで、製造現場の業務の可視性がかつてないほど高くなり、以下のことが可能になります。
- メンテナンス スケジュールを計画および最適化することで、ダウンタイムを削減する。ダウンタイムは、年間売上高の約 11% の損失に相当する可能性がある(リンク)
- 組み立てラインの中断や高価な修理につながるような致命的な故障を回避する
- 生産ラインのサイクルタイムを効率化する
MDE は、製造現場のデータを効率的に合理化し、収集する機会を提供します。一方、ABAP SDK for Google Cloud は、SAP システムに製造に関するインサイトをもたらす可能性を広げます。お客様は、同様のソリューション パターンに従って、Google Cloud の他のソリューションやサービスを SAP システムでネイティブに利用でき、ABAP SDK for Google Cloud はそのインテグレーションを可能にします。また、パートナーは SDK を使用して、これらのインテグレーション パターンをパッケージ化されたソリューションに変換できます。
Google Cloud の Manufacturing Data Engine と ABAP SDK for Google Cloud の詳細を確認し、今すぐ新たな一歩を踏み出しましょう。
ー Google Cloud、SAP カスタマー エンジニア Manas Srivastava
ー Google Cloud、SAP アプリケーション エンジニア Devesh Singh