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ストレージとデータ転送

Backup and DR サービスにより、費用対効果の高い SAP HANA の保護を実現

2025年1月9日
Ghanshyam Patel

Cloud Architect

Jeff O'Connor

Solutions Engineer

※この投稿は米国時間 2024 年 12 月 7 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

多くの企業にとって、SAP HANA データベースは SAP ビジネス アプリケーションの心臓部であり、業務を推進するミッション クリティカルなデータのリポジトリです。しかし、災害発生時にはどうなるでしょうか?

SAP HANA システムの保護には複数の選択肢があります。一般的な方法としては、高可用性を実現する HANA システム レプリケーション(HSR)やバックアップ用の Backint が挙げられます。しかし、障害復旧(DR)戦略を準備することは非常に重要ですが、過度に複雑で高価なものを選ぶ必要はありません。HSR は迅速な復元を提供しますが、多額の投資が必要です。多くの SAP デプロイでは、コールド DR 戦略を採用することで、費用対効果と目標復旧時間(RTO)の最適なバランスを取ることができます。

コールド DR とは、バックアップ プランのバックアップ プランだとお考えください。コールド DR は、災害発生時にのみ起動される非稼働環境を維持することで、費用を最小限に抑えます。これにより、ホット DR やウォーム DR に比べて RTO が長くなる半面、費用を大幅に削減できるというのが従来の認識でした。これで十分だと判断される場合も多いものの、RTO の改善とさらなる費用削減を多くの企業が求めています。

Backint をストレージ(Persistent Disk Cloud Storage など)と組み合わせると、セカンダリ ロケーションへのデータ転送が可能になり、効果的なコールド DR ソリューションとして利用できます。ただし、Backint DR に使用すると、特に大規模なデータベースの場合、復元にかかる時間が長くなり、ストレージ費用が増加する可能性があります。Google Cloud は、コールド DR の費用対効果とフル DR ソリューションの迅速な復元の両方に対応するソリューションとして、Backup and DR サービス Persistent DiskPD)スナップショットのインテグレーションを提供しています。この革新的なアプローチにより、永久増分バックアップと HANA セーブポイントを活用し、SAP HANA 環境を保護できます。

Google Cloud での SAP の障害復旧を再考

Backup and DR は、エンタープライズ向けのバックアップおよび復元ソリューションで、Google Compute Engine で実行されるクラウドベースのワークロードと直接統合できます。Backup and DR は、仮想マシン(VM)、ファイル システム、複数の SAP データベース(HANAASEMaxDBIQ)、OracleMicrosoft SQL ServerDb2 のバックアップ機能と復元機能を備えています。バックアップ プランを作成し、バックアップを実行する時間、バックアップを保持する期間、バックアップを保存する場所(リージョン / マルチリージョン)およびストレージ階層を設定できるほか、データベースのログのバックアップ間隔を指定して、目標復旧時点(RPO)を短くすることもできます。

最近の Backup and DR 機能では、SAP HANA データベースに Persistent DiskPD)スナップショットを統合できます。この重要な機能強化により、これらの PD スナップショットが SAP HANA セーブポイントと統合され、データベースの整合性を確保できるようになりました。データベースのバックアップ スケジュールを設定すると、SAP HANA ノードで実行されている Backup and DR エージェントはデータベースに対し、セーブポイント イメージをトリガーするよう指示します。このイメージでは、変更されたすべてのデータがページの形式でストレージに書き込まれます。このインテグレーションのもう一つの利点として、データのコピープロセスがストレージ側で行われることが挙げられます。データベースやオペレーティング システムが使用しているのと同じネットワーク インターフェースを介してバックアップ データをコピーする必要がなくなります。その結果、アクティブなバックアップ中も、本番環境のワークロードがコンピューティング リソースとネットワーク リソースを保持できます。

バックアップが完了すると、Backup and DR サービスが Google Cloud Storage API から PD スナップショットをトリガーします。これにより、イメージはディスクにキャプチャされ、必要に応じてログを切り捨てることもできます。このスナップショットはすべて「永久増分」方式で、データベースと整合性のあるバックアップです。また、ログを使用して、ある時点に(HANA PD スナップショット イメージから)復元することもできます。

このプロセスでは、SAP HANA セーブポイントとのインテグレーションが重要です。セーブポイントは SAP HANA API 呼び出しで、その主な用途は、復元の再起動時間を短縮し、低 RTO を実現することです。これを実現できるのは、システムの起動時に、ログの処理を最初からではなく、最後のセーブポイント位置から開始すればよいためです。セーブポイントは、トランザクションの整合性を確保するために、データベースのすべてのプロセス(SAP HANA サービスと呼ばれます)とインスタンスで調整されます。

PD スナップショットを使用した HANA セーブポイント バックアップ シーケンスは、以下のように要約できます。

  • エージェントに HANA セーブポイントを開始するよう指示する

  • PD スナップショットを開始し、「Uploading」状態になるまで待つ(秒単位)

  • エージェントに HANA セーブポイントを閉じるよう指示する

  • PD スナップショットが「Ready」状態になるまで待つ(分単位)

  • 失効時間を過ぎたディスク上のすべてのログを失効させる

  • レポート作成と監査用にバックアップのカタログを作成する

また、セーブポイントのスナップショットとは別に、ログのバックアップを定期的に行うよう設定することもできます。これらのログは別のディスクに保存され、PD スナップショットを使用してもバックアップされるため、ポイントインタイム リカバリが可能となります。

オペレーティング システムのバックアップ

オペレーティング システムのバックアップについてはどうでしょうか?Backup and DR では、起動可能な OS PD スナップショットのほか、Compute Engine VM に直接アタッチされている他のディスクの PD スナップショットも選択的に作成できます。これらのバックアップ イメージも、コールド DR を目的として、同じリージョンまたはマルチリージョンのロケーションに保存できます。

その後、HANA データベースをローカル VM または障害復旧(DR)リージョンに復元できます。この柔軟性により、DR リージョンを開発やテストなどのさまざまな目的に使用できるようになるほか、真のコールド DR リージョンを維持して費用対効果を高めることも可能です。

Backup and DR では、ネットワーク、ファイアウォール ルール、その他の依存関係を事前構成できるため、DR の設定が簡素化されます。その後、DR リージョンでバックアップ アプライアンスを迅速にプロビジョニングし、VM、データベース、ログを含む環境全体を復元できます。

このアプローチにより、ホット、ウォーム、コールドのそれぞれの費用、RPORTO の影響を考慮して、自社のニーズに最適な DR 戦略を自由に選択できます。

Backup and DR PD スナップショットを使用する主な利点の一つとして、従来の DR 手法と比較して費用を大幅に削減できることが挙げられます。フル バックアップの必要性をなくし、永久増分スナップショットを活用することで、Google のテストでは、ストレージ費用を最大 50% 削減できることがわかりました。さらに、Backup and DR でコールド DR リージョンを使用すると、従来のファイルへのバックアップ手法と比較して、ストレージ消費量を 30% 以上削減できることがわかりました。

この方法を使用するメリット

Google Cloud Backup and DR を使用して SAP HANA 環境を保護すると、以下の多くのメリットが得られます。

  • バックアップのパフォーマンス(スループット)向上 - HANA サーバーのエージェントではなくストレージ レイヤでデータ転送を処理

  • TCO の削減 - 定期的なフル バックアップを廃止

  • I/O の削減 - バックアップ ウィンドウの間、時間のかかるデータベースの読み取りと書き込みを回避することで、Backint の定期的なフル バックアップ イベントと比較して SAP HANA サーバーの I/O を削減

  • 操作の簡素化 - オンボーディング ウィザードを使用できるほか、ソースホスト上での追加のストレージ プロビジョニングの管理が不要

  • 復旧時間の短縮(ローカルまたは DR - PD スナップショットは VM ストレージ サブシステムにネイティブに復元(顧客ネットワーク経由でコピーされない)。HANA PD スナップショットからのログを使用して、ポイントインタイム リカバリが可能。セーブポイントを取得する頻度を上げるため、数時間ごとにスケジューリングすることで、復元時のログの復旧時間をさらに短縮

  • データの復元力 - HANA PD スナップショットはリージョンまたはマルチリージョンのロケーションに保存

  • 低費用の DR - VM とデータベースのバックアップ イメージは(リージョンまたはマルチリージョンの PD スナップショットによって)DR リージョンにすでにレプリケートされているため、VM を起動してから、SAP HANA データベースを復元する時点を選択し、短期間待つだけで復元が完了

Persistent Disk の非同期レプリケーションを選択すべきケース

Backup and DR は多くのお客様にとって包括的ソリューションとなりますが、お客様の特定のニーズや好みによっては、別のアプローチが必要となる場合もあります。たとえば、SAP アプリケーションにレプリケーション機能が組み込まれていない場合や、ディスクレベルでデータをレプリケートする必要がある場合は、代わりに Persistent Disk の非同期レプリケーションを利用できます。このアプローチでは、レプリケートされたディスクを使用して DR リージョンで新しい VM をスピンアップし、復元プロセスを迅速化できます。

PD 非同期レプリケーションのインフラストラクチャ レベルのレプリケーションはアプリケーションに依存しないため、レプリケーション機能が組み込まれていないアプリケーションに最適です。また、料金が発生するのはレプリケートされたデータのストレージ使用量のみであるため、費用対効果にも優れています。さらに、レプリケーションの頻度をカスタマイズして費用と RPO のバランスを取ることができる柔軟性も備えています。

PD 非同期レプリケーションの設定に興味があり、Terraform 内でこれを設定したい場合は、私たちの同僚が作成した Terraform のサンプルをご確認ください。このサンプルでは、多数の Compute Engine VM のフェイルオーバーとフェイルバックのシナリオでテストを行う方法をご紹介しています。

SAP の障害復旧を管理する

Google Cloud Backup and DR PD 非同期レプリケーションを活用することで、Google Cloud 上の SAP デプロイメント向けの堅牢かつ費用対効果の高いコールド DR ソリューションを構築できます。これにより、データ保護の面で妥協することなく費用を最小限に抑え、予期しない障害に直面しても落ち着いて対応できます。

Google Cloud 上の SAP の詳細をご覧になるとともに、お客様のクラウド移行において、Google Cloud コンサルティングがお客様の学習、ソリューションの構築、運用を支援し、お客様を成功に導く方法をご確認ください。

-クラウド アーキテクト Ghanshyam Patel

-ソリューション エンジニア Jeff O'Connor

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