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顧客事例

株式会社イーシーキューブ:Google Kubernetes Engine でもっと自由な EC サイトを

2019年12月9日
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Google Cloud Japan Team

「EC に色を」というコンセプトで、世の中の EC サイトを、もっと多様な面白い世界にすることを目指す株式会社イーシーキューブ。オープンソース ソフトウェア(OSS)の「EC-CUBE」を基盤とした、クラウド環境で動作する共創型クラウド EC プラットフォーム「ec-cube.co」の開発と、クラウド ビジネスの展開による新たな可能性について、取締役社長 CEO 金 陽信 氏、および CTO 奥 清隆 氏 に話を伺いました。 

利用している Google Cloud Platform サービス:Google Kubernetes EngineCloud StorageCloud DNSStackdriverBigQueryCloud Pub/Sub

Kubernetes を”安心して使える” Google Kubernetes Engine

『EC-CUBE』は、株式会社イーシーキューブ(以下、イーシーキューブ)により「リアル店舗のようにネットショップにも個性を」というコンセプトで開発された OSS の本格的なネットショップ構築システムです。『EC-CUBE』 のウェブサイトから無償でダウンロードして、小規模なショップから大規模なショップまで、機能的にも、デザイン的にも、思いどおりのショップを構築できます。ウェブ制作の知識があれば、カスタマイズも自由で、足りない機能は 800 種以上あるプラグインをストアから追加できます。

取締役社長 CEO の金陽信さんは、「『EC-CUBE』は、より多くの人に使ってもらうこと、EC サイト構築のハードルを下げることを目的に OSS として公開しています。そして、コミュニティを重視しています。テクノロジーは、いろいろな人と交わることで面白くなると思っているので、日本全国 150 社以上の EC 構築パートナー企業や、各地のユーザー コミュニティをつなぎ、支援することで、ともに成長していくことを目指しています」と話します。

「ショッピングモール型の EC プラットフォームでは、データはプラットフォーマーに握られてしまいます。『EC-CUBE』は、データを自由に活用でき、使うのを止めることも自由。ユーザーは自由であるべきです。オープンだからこそできる自由さが、他社には実現できない強みです」(金さん)

その一方で、イーシーキューブとしてのビジネスの拡大を加速させるためには、OSS だけでは限界がありました。OSS として、誰でも自由に利用できる『EC-CUBE』のメリットを生かしながら、利用者がシステムを構築することなく、商売に注力できる仕組みが必要になる、そこで、インストールや監視、メンテナンス、バージョンアップが不要な SaaS でありながらカスタマイズも可能な『ec-cube.co』の開発に着手します。

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「自由というキーワードから語る場合、『ec-cube.co』はインフラを自由にできないという制約がありますが、まず『ec-cube.co』からスタートして、インフラやカスタマイズの自由度が高い OSS 版 に切り替えることも可能。2019 年 4 月より、本格的にサービスの提供を開始したのですが、すでに約 100 店舗が稼働しています。」(金さん)

『ec-cube.co』の開発当初のポイントとなったのは次の 2 点。

まず、前提条件として OSS 版 と同じパッケージで実現することが必要でしたが、『EC-CUBE』 はマルチテナント対応ではありません。そこで、クラウド上に複数の『EC-CUBE』を立ち上げて、それを一元管理する仕組みで対応しました。

また、「ある日、突然、テレビなどのメディアで紹介され、アクセスが急増することも十分想定される」(金さん)ことから、容易にスケールできる仕組みも必須でした。CTO の奥清隆さんは、「コンテナを利用してスケールさせ、オーケストレーションする仕組みを構築することが有効になると考えました。必然的に、Kubernetes を使わなければ管理が難しいと思いました」と当初を振り返ります。

また、現段階で開発されている『ec-cube.co』は、マイクロサービス化されていませんが、Kubernetes の機能が、必要とする要件にマッチしていたことに加え、今後計画しているサービス提供で、マイクロサービス化が必要になる可能性を視野に入れ、Kubernetes を使った開発を選択したと言います。「Kubernetes を一番安心して使えるのは、Google Kubernetes Engine(GKE)であると判断しました。」(奥さん)

スムーズな実装で、本来の機能開発の課題に集中

『ec-cube.co』のシステム構成は、GKE をメインに使い、バックアップ用に Cloud Storage、ドメイン管理に Cloud DNS を利用しています。現状では、コンテナ上で OSS のデータベースを動かしていますが、将来的には Cloud SQL に移行することも検討しているとのこと。 

開発にあたっては、アプリケーション開発のエンジニアが多く、インフラ開発の知識が少なかったことから、開発チームに Kubernetes の使い方を浸透させることに少し苦労したようですが、奥さんは、「Kubernetes は、ある意味インフラの知識を凝縮した技術なので、GKE を学ぶことでインフラの知識を学ぶことができました」と話します。また、ほとんどの仕組みが GKE で完結でき、使いやすいこともエンジニアには好評。「技術的な苦労よりも、どのような機能を実現するか、という本来の課題に集中できました」(奥さん)

2018 年末の PoC から、2019 年 2 月末のサービス開始まで、1 ~ 2 か月という短期間で精度の向上を実現させたイーシーキューブ。現在も、機能追加やコスト削減のための改善を続けています。金さんは、「初めての Kubernetes の活用で、もう少し苦労するかと思いましたが、GKE の利用で予想以上にすんなり実装できました。」と話します。

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また、GKE を採用した効果を奥さんは、「GKE を使わずに『ec-cube.co』を実現しようとすると、複数のツールを組み合わせなければなりません。すべての機能がそろっている GKE は本当に便利でした。また、アプリはもちろん、バッチ処理も使い慣れたプログラミング言語で実装できます。ログの収集や監視、通知などでは、Stackdriver を使っています。当初、Stackdriver の存在を知らなかったのですが、Google Cloud の担当者に話を聞いて、GKE との連携も含め、“これを求めていた”と思いました」と話しています。

今後、イーシーキューブでは、『ec-cube.co』のサービスを安定させ、より安全に使える仕組みに改善していく計画です。奥さんは、「コンテナをサーバーレスで利用できる Cloud Run の導入を検討しています。Cloud Run を利用することで、小規模な店舗であれば、より低コストで、簡単に『ec-cube.co』を運用することができます。また、いろいろなサイトが立ち上がり、ログもかなり蓄積されているので、機械学習を使ったデータ解析にも興味があります」と話します。 

「今後は、売れる仕組みを提供するのはもちろん、どうしたら売れるか、という発想も含めて提供していきたいと思っています。1 つの店舗では気づけないことでも、3 万 5,000 店舗を展開している我々だから気づけることもあります。BigQuery にデータを蓄積し、機械学習で解析する仕組みも有効活用しながら、利用者が 本業である商いにより専念できるよう、支援をしていきます」(金さん)


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写真左から

・取締役社長 CEO 金 陽信 氏

・CTO 奥 清隆 氏

株式会社イーシーキューブ

2018 年 10 月に株式会社イルグルムより独立し、EC オープン プラットフォームの開発・提供を事業として設立。「オープンなテクノロジーとコミュニティで、みんながワクワクするショッピング体験を創り出す」というビジョンに基づき、2006 年より日本発のオープンソースの EC 構築システム「EC-CUBE」を提供。日本国内だけでも 3 万 5,000 店舗以上、年間流通総額 2,100 億円、180 万ダウンロードを突破。2019 年 2 月には、EC-CUBE の SaaS 版となる共創型クラウド EC プラットフォーム「ec-cube.co」の提供も開始している。


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