コンテンツに移動
データベース

Spanner を活用して復元力のあるバンキング サービス プラットフォームを構築した Current の事例

2024年12月25日
Trevor Marshall

CTO and co-founder, Current

Join us at Google Cloud Next

Early bird pricing available now through Feb 14th.

Register

※この投稿は米国時間 2024 年 12 月 6 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

編集者注: フィンテック革命の中心的存在である Current の使命は、毎月の給与がすべて生活費に消えてしまう多数のアメリカ人の財務状況に変革をもたらすことです。誰もが最新の金融ツールを利用できるべきであるという信念に基づいて設立された Current は、デジタル時代における金融機関の役割を再定義しています。同社の成功の中心にあるのが、Google Cloud を基盤とするクラウドネイティブ インフラストラクチャと Spanner です。Spanner Google のグローバルに分散されたデータベースであり、ほぼ無制限のスケーリングが可能で、Current のコア プラットフォームの土台となっています。


1 億人以上のアメリカ人が、収入の範囲内で生活することに困難を抱えています。連邦準備制度理事会の推定によれば、低所得層のアメリカ人の 23% が銀行口座を持っていません。こうしたアメリカ人のニーズに対応するために誕生した Current は、従来の金融機関の預金や引き出しではなく、支払いを重視した独自のビジネスモデルを採用しています。当社は、年齢や収入にかかわらず、すべてのアメリカ人が金融サービスを簡単に利用できるようにするソリューションを提供しています。

独自のバンキング コア テクノロジーを基盤とし、サードパーティ プロバイダへの依存を最小限に抑えた革新的なアプローチにより、会員の直近のニーズに合わせた金融ソリューションを迅速に展開することができています。さらに重要な点は、これらのソリューションが柔軟性に優れており、今後も会員のニーズと足並みを揃えて進化できるということです。

卓越したエクスペリエンスの提供という使命を達成するうえで大きな課題となっていたのが、金融サービスのためのスケーラビリティに優れた堅牢な技術基盤の構築でした。この課題に対処するために開発したのが、当社のプラットフォームを支える最先端のコア バンキング システムです。このコアシステムの柱は、ユーザー、商品、決済、ゲートウェイなどの会員エンティティすべてを管理するユーザーグラフ サービスです。

銀行口座を開設せず不利益を被っているアメリカ人の多くは、資金が不足しているだけではなく、金融機関を信用していません。こうした人々の信用を得て、ビジネスを獲得するには、安全かつシームレスで信頼性の高いサービスが必要になることはわかっていました。

クラウドネイティブなコア プラットフォームと Spanner

当社の以前のセルフホスト型グラフ データベース ソリューションには、クラウドネイティブ機能と水平方向のスケーラビリティが欠けていました。この限界を乗り越えるために、マネージド永続性レイヤに戦略的に移行したところ、リスク管理体制が大幅に改善されました。特定の時点への復元やマルチリージョンの冗長性などの機能により、復元力が向上し、目標復旧時間(RTO)が短縮され、目標復旧時点(RPO)が改善されました。さらに、手間をかけず簡単にスケールできるため、クラウド予算と運用効率を最適化できました。

このクラウドネイティブ プラットフォームには、一貫性のある書き込み、水平方向のスケーラビリティ、負荷がかかったときの低レイテンシの読み取り、マルチリージョン フェイルオーバーが可能なデータベース ソリューションが必要です。当社ではすでに Google Cloud を広範囲で活用していたため、そのデータベース ソリューションを優先して検討しました。Spanner は、当社の要件すべてを満たしてくれる、理想的なソリューションでした。一貫性のある書き込みと水平方向のスケーラビリティに対応しており、大きな負荷がかかったときも低レイテンシの読み取りを維持できます。そのシームレスなスケーラビリティ(特に、コンピューティング リソースとストレージ リソースの分離)は、変化の激しいお客様の環境に適応するうえで重要なものでした。

この堅牢でスケーラブルなインフラストラクチャを採用したおかげで、会員の信用を得て維持するために不可欠な、信頼性の高く、効率的な金融サービスを提供できています。Current は、数百万人ものアメリカ人のお客様から継続的な信頼を得て、メインの金融機関として利用されています。サードパーティのデータベースから Spanner に移行した経験は、グローバルにスケーラブルな可用性の高いデータベースへの移行を簡単かつシームレスに行えることを証明してくれました。コンピューティングとストレージを別々にスケールできる Spanner 独自の機能は、変化の激しいユーザーベースの管理に欠かせません。

Spanner への戦略的な移行においては、先行書き込みコミットログを採用してシームレスな引き継ぎを実現しました。読み取りの移行を優先し、その精度を確認してから書き込みにシフトすることで、リスクを最小限に抑え、効率を最大化できました。このプロセスにより、ダウンタイムがゼロになり、カットオーバーによる損失もゼロになりました。具体的には、まず読み取りをサービスごとに Spanner に移行し、精度を確認してから、最後に書き込みを移行しました。

Spanner を利用したユーザーグラフ サービスは、当社の金融プラットフォームに不可欠な整合性、信頼性、スケーラビリティをもたらしてくれました。おかげで、数百万人のお客様に信頼性の高いサービスを提供しつつ、さらに既存のサービスと将来のサービスを拡張していくことができるという自信が深まりました。

揺るぎない信頼性と運用効率の向上

Spanner によって復元力が劇的に改善され、RTO RPO 10 分の 1 以下に減らすことができ、所要時間がわずか 1 時間に短縮されました。Spanner のデータ復元プロセスは効率的で、今では数回クリックするだけでデータを復元できます。運用管理が楽になり、チームにかかるメンテナンスの負担も大幅に軽減されました。1 秒あたり約 5,000 件のトランザクションを処理する Spanner のパフォーマンスとスケーラビリティに、感銘を受け続けています。

さらに、Spanner に移行してから、可用性に影響するインシデントが減少し、ついにゼロになりました。そうしたインシデントが発生した場合、資金の引き出しや支払いなどの重要なバンキング機能が停止するおそれがあります。その結果、顧客満足度が低下し、顧客離れの可能性が高まるだけでなく、問題解決のための運用コストが増加してしまいます。会員の継続的な信用を獲得し、顧客維持率を高め、開発者の作業環境を改善するには、このようなインシデントをなくすことが重要です。

Google Cloud による金融ソリューションの復元力の強化

この先、当社のプラットフォームがさらに進化し、会員の移り変わるニーズを満たす革新的な金融ソリューションを提供し続ける、という未来を思い描いています。Spanner をコア プラットフォームの基盤とすること(言わば「コアのコア」)で、復元力と信頼性の高いプラットフォームを構築し、さらに多くのアメリカ人の財務状況を改善できると確信しています。

利用開始方法

-CurrentCTO / 共同創業者 Trevor Marshall 

投稿先