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リテール

検索からカートへ: AlloyDB AI を使用した Target の検索バーの刷新

2025年9月11日
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Vishal Vaibhav

Principal Engineer, Target

Melissa Ludack

VP of Data Sciences, Target

※この投稿は米国時間 2025 年 9 月 4 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

編集者注: Target は、膨大な数の取り扱い商品から、顧客が購入を希望する商品をより直感的に見つけることができるよう、デジタル検索エクスペリエンスのモダナイズに着手しました。デジタル検索エクスペリエンスのモダナイズのため、同社はフィルタ条件を組み合わせたベクトル検索と AlloyDB AI を活用したハイブリッド検索でプラットフォームを再構築しました。その結果、より高速でスマートかつ復元力に優れた検索エクスペリエンスが実現しました。これまでに商品検索の関連性が 20% 向上し、パフォーマンスと顧客満足度で目に目る成果をあげています。


Target.com の検索バーは、多くの場合、お客様がショッピング ジャーニーで最初に使用する機能です。好奇心と利便性が交わる場所であり、Target にとって、単なる商品検索をパーソナライズされた関連性の高い検索に変え、お客様にシームレスなショッピング体験を提供できる絶好の機会でもあります。

Google の検索エンジニアリング チームは、検索バーの機能改善に真摯に取り組んでいます。お客様がお探しの商品だけでなく、必要だとお気づきでなかった商品も見つけていただきたいと考えました。

それには、検索機能を根本から見直す必要がありました。

検索結果の関連性を高め、ロングテールの発見をサポートし、行き詰まりを減らして、より直感的でパーソナライズされた結果を提供することを目指しました。

パーソナライズと規模の限界を押し広げながら、当社のデジタル エクスペリエンスを支えるシステムの再評価を始めました。その過程で、従来の検索とセマンティック検索を組み合わせたハイブリッドな手法を使用し、AlloyDB AI で構築された強力な新しい基盤に支えられた検索機能を再考するに至りました。

ハイブリッド検索で、カートと購買目的が結びつく

小売検索は難しいものです。お客様が求めている商品の検索には、ときに曖昧な表現が使われることもあります。そのような曖昧な表現と、常に変化する膨大な数の取り扱い商品を照合する必要があります。生成 AI によってお客様とブランドの関わり方が大きく変化している今、従来のキーワード検索だけでは限界があります。

そこで Gooigle は、従来のキーワード マッチングとベクトル エンベディングによるセマンティック検索を組み合わせたハイブリッド検索プラットフォームを構築しました。精度を確保する正確な字句一致と、関連性を確保する文脈理解という、2 つの利点を兼ね備えています。ただ、ハイブリッド検索には技術的な課題もあります。特に、規模を拡大したときにパフォーマンスをどう維持するかが重要です。

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図 1: ハイブリッド検索は 2 つの強力なアプローチを組み合わせ、お客様が最も関連性の高い検索結果を得られるようにします

AI 活用型検索に最適なデータベースの選び方

目標は、自然言語の検索クエリに対して、意味的に関連性の高い結果を表示すること。さらに価格、ブランド、在庫状況などの構造化されたフィルタを適用し、利用ピーク時でもパーソナライズされた検索結果を迅速に提供することでした。そこで必要となったのは、膨大な商品カタログをリアルタイムでフィルタ付きベクトル検索でき、ピーク時でもミリ秒レベルの応答速度を維持できる、次世代ハイブリッド検索プラットフォームを支えるデータベースでした。

そのため、セマンティック検索の柔軟性とキーワード検索の精度を融合して関連性の高い結果を提供する、マルチインデックス設計を採用しました。また、検索機能に加え、「マルチチャネル関連性フレームワーク」を開発しました。商品の新規性や季節性、パーソナライズといったシグナルを捉え、状況に応じてランキングを柔軟に調整します。

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図 2: Target における開発中サービスのアーキテクチャ概要

類似したワークロードにも別のデータベースを使っていましたが、大量のフィルタ付き近似最近傍(ANN)検索を処理するには、大幅なチューニングが必要でした。当社の目標が拡大するにつれ、より柔軟でスケーラブルなバックエンドの必要性が明らかになりました。さらに、最高品質の結果をできるだけ短いレイテンシで提供することも求められました。この問題を Google に相談し、この分野での最先端の取り組みを一緒に探りました。もちろん、検索といえば Google です。

AlloyDB for PostgreSQL は、Google.com 検索の基盤となる技術が Google Cloud に組み込まれており、あらゆる組織が大規模でも質の高いエクスペリエンスを構築できる点で際立っています。また、PostgreSQL 互換性、統合されたベクトル検索、ScaNN インデックス、ネイティブ SQL フィルタリングをフルマネージド サービスとして提供しています。この組み合わせにより、スタックを統合してアーキテクチャを簡素化し、開発を加速できました。現在、AlloyDB は当社検索システムの中核を担っており、季節的なトラフィックの急増だけでなく、日々の膨大なお客様検索セッションにもスムーズに対応しながら、低レイテンシのハイブリッド検索を実現し、より関連性の高い結果を提供しています。

大規模なフィルタ付きベクトル検索

ユーザーは「20 ドル以下の環境に優しい水筒」や「幼児用の冬ジャケット」といった検索をよく行います。こうしたクエリには、セマンティックなニュアンスに加えて、価格、カテゴリ、ブランド、サイズ、店舗での在庫状況などの条件が組み合わされています。AlloyDB を使えば、ベクトル類似性と SQL フィルタを組み合わせたハイブリッド クエリを、スピードや関連性を維持しながら簡単に実行できます。

最適化されたフィルタ付きベクトル検索適応型クエリ フィルタリングなど、AlloyDB AI の最近のイノベーションにより、次のような効果が得られました。

  • 以前のスタックと比べて最大 10 倍の高速化

  • 商品検索の関連性が 20% 向上

  • 「結果なし」クエリの件数が半減

こうした改善は、業務全体に広がっています。ベクトルクエリのレスポンス タイムが 60% 短縮され、ユーザー エクスペリエンスが大きく向上しました。トラフィックが集中するイベント期間中でも、AlloyDB は 99.99% を超える稼働率を安定して維持し、重要な瞬間にデジタル ストアフロントが需要に対応できるという安心をもたらしています。検索は外部向けのミッション クリティカル サービスであるため、当社では複数リージョンに複数の AlloyDB クラスタをデプロイし、さらに高い実効的な信頼性を確保しています。信頼性の向上によって運用インシデントも減少し、エンジニアリング チームは実験や新機能の提供に多くの時間を注げるようになりました。

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図 3: Target は AlloyDB AI により、構造化データと非構造化データを SQL やベクトル検索と組み合わせて活用できるようになりました。たとえば、検索エクスペリエンスの向上により、今では季節に合ったスタイル(例: 長袖)が 1 ページ目に表示されます。

AlloyDB のクラウド ファーストのアーキテクチャと機能により、日々の膨大なフィルタ付きベクトルクエリを処理し、数千から数万人規模の同時ユーザーを柔軟にサポートできます。しかも、オーバープロビジョニングに頼ったり、パフォーマンスを犠牲にしたりする必要はありません。

AlloyDB AI でよりスマートな検索を構築

何より魅力的なのは、イテレーションを素早く行えることです。AlloyDB のマネージド インフラストラクチャと PostgreSQL 互換性により、スピーディに動きながら、新しいランキング モデル、季節ロジック、さらに次のような AI ネイティブ機能を試せます。

  • SQL でのセマンティック ランキング: クエリの意図に対する関連性に基づいて検索結果の優先順位を付けることができます。

  • 自然言語のサポート: 今後のインターフェースでは、お客様が自然に話すように検索できるようになります。もう厳格なフィルタやプルダウンに縛られる必要はありません。

AlloyDB は、最先端の ScaNN ベクトル インデックスに加えて、最先端のモデルや自然言語も備えています。さらに AlloyDB に組み込まれた AI への Google の取り組みとリーダーシップにより、当社は AI とデータ分野全体の進化のスピードに合わせて、自信を持ってサービスを進化させていけます。

次のステージへ: Target の今後の展望

Target の検索は、これまで以上にダイナミックなものへと進化しています。それは、お客様が必要なときに必要なものを、必要な方法で見つけられるようサポートする、スマートなマルチモーダル基盤です。お客様はデバイス、言語、フォーマットをまたいでご利用になるため、当社はシームレスでスマートなエクスペリエンスをお届けします。

AlloyDB AI と Google Cloud の急速に進化するデータと AI のスタックにより、当社はお客様の期待を常に上回り、よりパーソナライズされた楽しいショッピング体験を毎日自信を持ってお届けしてまいります。


Google Cloud エンジニアリング担当バイス プレジデント、Amit Ganesh からのメッセージ:

Target の事例は、企業がすでに AlloyDB AI を活用して検索体験を変革していることを示す代表例です。Vishal が説明したように、フィルタ付きベクトル検索は、関連性とスケールの新たな可能性を実現しています。Google Cloud では、AlloyDB AI の機能を継続的に拡張し、よりスマートでエージェント主導のマルチモーダル アプリケーションを後押ししています。以下がその新機能です。

  • Agentspace 統合: 開発者は、構造化データと自然言語推論を組み合わせて AlloyDB をリアルタイムでクエリする AI エージェントを構築できるようになりました。

  • AlloyDB 自然言語: アプリケーションは、インタラクティブな曖昧さ回避と強力なプライバシー管理に支えられた自然な英語(またはフランス語を含む 250 以上の言語)で構造化データを安全にクエリできます。

  • ベクトル検索の強化: AlloyDB の ScaNN インデックスとアダプティブ クエリ フィルタリングにより、フィルタ付きベクトル検索が最大 10 倍高速化されました。

  • AI クエリ エンジン: SQL 開発者は自然言語表現を使って、Gemini モデルの推論をクエリに直接組み込むことができます

  • 新たに 3 つのモデルをサポート: AlloyDB AI が、Gemini のテキスト エンベディング モデル、クロスアテンション リランカー、ビジョンとテキストを共有ベクトル空間に統合するマルチモーダル モデルに対応しました。

これらの機能は、Target のように商品発見を改善する場合でも、新しいエージェントベースのインターフェースを新たに構築する場合でも、イノベーションを加速するために設計されています。

詳細:

ー Target、プリンシパル エンジニア、Vishal Vaibhav 氏

ー Target、データ サイエンス担当バイス プレジデント、Melissa Ludack 氏

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