Google Cloud データベースで AI 開発エクスペリエンスを強化

Andi Gutmans
VP/GM, Data Cloud, Google Cloud
生成 AI は私たちの想像力をかきたて、あらゆる業界に変革をもたらす可能性を秘めています。その鍵を握っているのが、Gemini のような強力なモデルと、コンテキストに最も合ったエンタープライズ データの統合です。
Google Cloud は、生成 AI テクノロジー自体の提供だけでなく、それらのテクノロジーをオペレーショナル データベースに直接組み込むことで、この変革をリードしています。たとえば、ベクトル検索を備えた AlloyDB AI を導入して以来、Bigtable、Cloud SQL、Firestore、Memorystore、Spanner など、Google の他のすべてのデータベース サービスにこの機能を拡張してきました。
昨今、オペレーショナル データベースは、新しい AI エージェントやマルチモーダル アプリケーションで活用され、AI 機能を使用して既存のアプリケーションを強化しています。そこで、Google は、真に革新的で統合されたデータと AI の基盤を提供し、お客様が業界を再定義し、膨大なデータの課題に取り組み、画期的なイノベーションを推進できるよう取り組んでいます。
このたび、Google は、Google Cloud Next において、次のような新しいデータベース機能を発表しました。
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AlloyDB の生成 AI 機能と MCP を使用したエージェント プログラミング
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Firestore での MongoDB 互換
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拡張された Oracle サービスと SQL Server のモダナイゼーション ソリューション
AlloyDB の新しい生成 AI 機能と MCP を使用したエージェント プログラミング
エージェント ワークフローは、AI ベースのアプリケーションの主要なアーキテクチャ パターンとして台頭しており、データベースがその主要なコンポーネントとなります。優れたエージェントは、リアルタイム データを使用して、エージェントによる高品質な意思決定と行動を可能にし、推論の質を高めることができます。これをサポートするために、Google は AlloyDB の AI 機能に投資し、デベロッパーがインテリジェントなエージェントやアプリケーションを簡単に構築できるようにしています。
まず、Google Agentspace で AlloyDB の構造化データを検索できるようにしています。Agentspace は、Gemini の高度な推論に Google 品質の検索とエンタープライズ データを組み合わせたサービスです。これで、AlloyDB に保存されているすべてのデータを有効にでき、リアルタイムの構造化データと非構造化データを創造的な方法で組み合わせることができます。


図 1: AlloyDB AI のイノベーションと統合
2 つ目に、デベロッパーは、データベースに対するインターフェースの柔軟性を高めながら、安全性と正確性を維持したいと考えています。そこで昨年、AlloyDB での自然言語のサポートを発表しました。これにより、デベロッパーは SQL の場合と同様に自然言語でデータを正確にクエリするアプリケーションを構築できるようになりました。
Google はこれを繰り返し行ってきましたが、このたび、次世代の AlloyDB 自然言語をリリースしました。この技術により、AlloyDB の構造化データを安全かつ正確にクエリでき、アプリで自然言語のテキスト モダリティを使用できるようになります。
AlloyDB AI の自然言語は、データベース メタデータの解釈だけでなく、データベースにクエリを実行する際に、提供されたコンテキストを使用し、インタラクティブなインテントの明確化を行います。AlloyDB のパラメータ化されたセキュアビューを使用して、自然言語クエリでアクセスできるデータを定義できます。これにより、エージェント アプリと生成 AI アプリのセキュリティが強化されます。
3 つ目に、インテリジェントなアプリを構築するには、強力なベクトル検索が必要になります。2024 年に最先端の AlloyDB 向け Scalable Nearest Neighbor(ScaNN)インデックスをリリースして以来、AlloyDB のベクトル検索の導入は 7 倍近くに増加しています。そこで、AlloyDB の ScaNN インデックスの機能強化に加え、ベクトル検索、構造化フィルタ、結合にわたる最適化された SQL 機能を提供します。
これらの革新により、AlloyDB の ScaNN インデックスは、標準の PostgreSQL の Hierarchical Navigable Small World(HNSW)インデックスと比較して、最大 10 倍高速なフィルタ付きベクトル検索クエリを提供できるようになりました。
4 つ目に、Vertex AI と Google DeepMind との連携により、AlloyDB AI に 3 つの新しいモデルを導入しています。1 つは、Cross Attention の再ランク付けを使用してベクトル検索結果の関連性を向上させるモデル、2 つ目はテキスト、画像、動画をサポートするマルチモーダル エンベディング モデル、そして最新の Gemini エンベディング テキスト モデルです。その結果、画像やテキストなどの複数のモダリティにわたって、効率的かつ正確にアプリにインテリジェンスを簡単に追加できるようになりました。
5 つ目に、AI エクスペリエンスをアプリにさらに組み込むために、AlloyDB AI クエリエンジンを導入しました。AI クエリエンジンにより、開発者は SQL クエリ内で自然言語の表現や構文を自由に自然な方法で使用できます。画像や説明などの実世界のデータが必要となる「オーランドにあるファミリー向けのホテルを探して」といった自由な形式のテキストの質問を SQL クエリに直接埋め込めるようになりました。
この機能の中核を担うのは、業界をリードする基盤モデルを活用したセマンティック オペレーターで、AlloyDB AI クエリエンジンで従来のリレーショナル オペレーターと並行して実行されます。
これらの AlloyDB 機能の多くはプレビュー版で利用可能で、今すぐこちらから登録してご利用いただけます。
「Target では、オンライン検索エクスペリエンスの改善を目的として AlloyDB を使用しました。構造化データと非構造化データを組み合わせる機能を使用したところ、自然言語検索クエリの精度が 20% も向上しました。」- Target、インフラストラクチャおよびサイバーセキュリティ担当バイス プレジデント、Visagan Subburayalu 氏
最後に、データベース向け MCP ツールボックス(旧データベース向け生成 AI ツールボックス)で Model Context Protocol(MCP)がサポートされるようになりました。MCP は、AI エージェントとエンタープライズ データベースとのシームレスな接続を可能にするため、カスタムコードが不要となります。データベース向け MCP ツールボックスは、PostgreSQL、MySQL、AlloyDB、Spanner、Cloud SQL(PostgreSQL、MySQL、SQL Server 用)、Neo4j、Dgraph などの複数のデータベースをサポートするオープンソース(Apache 2.0)サーバーです。ボイラープレート コードを削減して開発を簡素化し、OAuth2 と OIDC によってセキュリティを強化し、OpenTelemetry を統合してエンドツーエンドのオブザーバビリティを実現します。コードはオープンソース化されているため、任意のデータベースを自由に追加できます。
Firestore の MongoDB 互換性により、ドキュメント データベースが大きく前進
MongoDB インテグレーションのオープンソース エコシステムを使用できる機能など、半構造化された JSON データの保存やクエリを実行する、人気の MongoDB API とクエリ言語のアジリティは、開発者から高く評価されています。そのため、お客様は、これらのワークロードの構築とデプロイの方法について、より多くの選択肢を求めています。
本日は、MongoDB 互換の Firestore のプレビュー版のリリースをお知らせします。Google Cloud がゼロから構築したこのサービスは、デベロッパーの皆さまに要求の厳しいドキュメント データベース ワークロードのための追加の選択肢を提供します。MongoDB API との互換性は、月間 60 万人を超えるアクティブな開発者からなる Firestore の既存のコミュニティから強く求められていた機能です。
今回のリリースにより、Firestore の開発者は、MongoDB の API ポータビリティと、これまで活用していた Firestore の機能の一部を活用できるようになります。これらの機能には、強整合性、事実上無制限のスケーラビリティ、業界最高水準の可用性(最大 99.999% の SLA)、1 桁ミリ秒の読み取りレイテンシ パフォーマンスを備えたマルチリージョン レプリケーションが含まれ、基盤となるデータベース インフラストラクチャの管理について心配する必要はありません。
さらに、既存の MongoDB アプリケーション コード、ドライバ、Firestore サービスとのインテグレーションも使用できます。MongoDB と互換性のある Firestore では、事前のコミットメントなしで使用した分だけを支払う、お客様に優しいサーバーレスの料金モデルをご用意しています。
Google はパートナー エコシステムに対して真摯に向き合い、Google Cloud Marketplace で MongoDB Atlas をこれからもサポートします。今回のリリースは、アプリケーションを構築する際にデベロッパーが利用できる選択肢を増やすことを目的としています。こちらから今すぐご利用いただけます。
「Firestore に移行してから、開発者の生産性が 55% 向上し、サービスの信頼性も改善されました。また、300 億件のドキュメントや 1 秒あたり 25 万件以上のリクエストを処理できる規模までシームレスにスケールできるようになりました。Firestore は完全なサーバーレスで、事実上無制限のスケーラビリティを備えているため、基盤となるデータベース インフラストラクチャの管理を心配する必要がなくなり、データベースの DevOps から解放されました。その結果、当社のお客様にとって重要となるプロダクトの革新に集中できるようになりました。」と HighLevel のエンジニアリング担当ディレクターである Karan Agarwal 氏は述べています。
Oracle サービスの範囲の拡大と SQL Server モダナイゼーション ソリューション
昨年、Google は Oracle Database@Google Cloud を発表しました。これは、4 つのグローバル リージョンで利用可能で、お客様は Oracle ワークロードを移行し、BigQuery、Vertex AI、Gemini 基盤モデルなどの業界をリードする Google のデータと AI の機能を使用してそれらのワークロードをモダナイズできます。
このたび Google は、Oracle Base Database Service をサポートすることを発表いたします。このサービスは、クラウドで Oracle データベースを柔軟かつ制御可能な方法で実行できるようにするものです。また、Oracle Exadata X11M の一般提供も発表いたします。最新世代の Oracle Exadata プラットフォームを Google Cloud に導入し、顧客管理の暗号鍵(CMEK)などのエンタープライズ向けの追加機能を提供します。
Google は Oracle 向けのグローバル インフラストラクチャへの投資を継続しており、これらのサービスは 20 か所の Google Cloud ロケーションにネイティブにデプロイされています。
これを基盤として、Google エコシステムの機能と Oracle Database@Google Cloud に存在するビジネスデータを統合することで、お客様は最先端のエージェント アプリケーションの開発を加速できるようになりました。詳しくは、こちらのパートナー ブログをご覧ください。
「Banco Actinver は、革新的な金融ソリューションをお客様に提供することに尽力しています。Oracle データベースのセキュリティとパフォーマンスを Google Cloud のデータ分析ツールや AI ツールと組み合わせることで、マーケット トレンドに関するきめ細かい分析情報を得ることができ、この情報を活用してサービスを強化し、パーソナライズされたエクスペリエンスをお客様に提供しています。」Banco Actinver CIO、Jorge Fernandez 氏
多くの組織が、高額で扱いにくいライセンスから脱却するために、SQL Server への依存を減らそうとしています。お客様が求めているのは、ワークロードを AI 対応の最新データベースに移行するための自動化された方法です。
このたび、Database Migration Service(DMS)で Cloud SQL と AlloyDB の SQL Server から PostgreSQL への移行がサポートされるようになったことを発表いたします。
この新機能は、セルフマネージドとクラウドマネージドの両方の SQL Server サービスの移行をサポートするとともに、幅広い SQL Server エディションとバージョンの移行をサポートし、データベースのモダナイゼーション戦略を完全に実行できるようにします。
DMS ではオンライン データ移行が提供されており、アルゴリズムと特別にトレーニングされた Gemini モデルの組み合わせを利用するスキーマとコード変換エンジンを備えています。これらはすべて、Transact-SQL コードや DATETIME などの SQL Server 固有のデータ型を PostgreSQL の同等のものに変換するなど、最も難しい移行ステップを自動化するように設計されています。
他にも、データベースに関して Next で以下のような発表が行われています。
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Cloud SQL と AlloyDB は C4A インスタンスで利用できます。C4A インスタンスは、クラウド用にカスタムビルドされた Google 初の Arm ベース CPU である Google Axion プロセッサをベースにしています。これらのインスタンスは、N シリーズのマシンと比較して、50% 近い費用対効果の向上を実現し、Amazon の同等の Graviton4 ベースのサービスと比較して、最大 2 倍のスループットを実現します。詳しくはこちらをご覧ください。
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データベース センターは、AI を活用した統合フリート管理ソリューションであり、一般提供が開始され、Google のポートフォリオにあるすべてのデータベースをサポートしています。今回のリリースでは、より充実した指標と実用的な推奨事項が提供され、ユーザーはデータベース フリートのパフォーマンスと信頼性を最適化できます。
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Spanner ベクトル検索 の一般提供が開始されました。これは、SQL、グラフ、Key-Value、全文検索の各モダリティと連携するように設計されており、最も要求の厳しい AI ワークロードを実質的に無制限のスケールで処理できます。
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Graph Visualization for Spannerの一般提供が開始されました。この機能により、ユーザーはグラフデータから有益な情報を視覚的に探索できるようになります。特定のノードと関係を詳しく調べ、関連するデータのサブセットをフィルタして強調表示し、直感的なナビゲーションを通じてグラフを探索できます。
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Aiven for AlloyDB Omni の一般提供が開始されました。これは、Google のパートナーである Aiven が提供する、AWS、Azure、Google Cloud で実行されるフルマネージドの AlloyDB Omni サービスです。
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プレビュー版の Bigtable の継続的マテリアライズド ビューは、デベロッパー エクスペリエンスを強化し、即時レポートと分析情報に依存する最新のアプリケーションのリアルタイム更新を簡素化します。
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Memorystore for Valkey の一般提供が開始され、7.2 と 8.0 のエンジン バージョンをサポートしています。Memorystore for Valkey 8.0 であれば、Memorystore for Redis Cluster との比較で最大 2 倍の秒間クエリ数(QPS)を、マイクロ秒単位のレイテンシで実現でき、最適化されたメモリ効率と優れた信頼性をお客様に提供します。
Google Cloud によるデータの未来
今後もお客様のためにイノベーションを続けてまいります。Google Cloud は、生成 AI の取り組みをあらゆる段階でサポートする、インテリジェントで統合されたオープンデータ プラットフォームを提供しています。
Google Cloud データベースの詳細をご確認ください。Cloud SQL、AlloyDB、Spanner の無料トライアルを開始できます。
-エンジニアリング、データベース、分析担当ゼネラル マネージャー兼バイス プレジデント、Andi Gutmans