牛肉はどこに?サンパウロの農業供給局はその答えを Cloud SQL for SQL Server で得ることが可能に
Michel Martins da Silva
Director of Systems Management, São Paulo State Secretariat of Agriculture and Supply
Roseani Moraes Pereira
Dept. Director of User Support and Service, São Paulo State Secretariat of Agriculture and Supply
※この投稿は米国時間 2025 年 2 月 15 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
サンパウロと聞くと、多くの人はビジネスや文化を思い浮かべるでしょう。牛肉や鶏肉を思い浮かべることはまれです。しかし、サンパウロ州は南半球最大の都市を擁するだけでなく、世界第 2 位の農産物輸出国であるブラジルにおいて食肉生産量が 2 番目に多い州でもあります。サンパウロ州農業供給局(SAA-SP)は、ブラジル経済にとってのアグリビジネスの重要性を踏まえ、同州ひいては国全体のアグリビジネスの発展に重要な役割を果たしています。
SAA-SP は、食料、繊維、バイオエネルギーのサステナブルな生産を推進するというミッションの下、複数の地域の地方生産者にサポート(技術支援、調査、農業防衛、市場への流通などのサポート)を提供しています。さらに、全住民の食料安全保障の確保、農作物の品質のモニタリング、栄養指導活動の推進も担っています。
世界の食料システムが進化し、ますます複雑になる中、組織の関心は、食料安全保障とサステナビリティに関する目標の達成を後押しするテクノロジーに向けられています。SAA-SP に関して言えば、増大する機密データを安全に管理し、重要なシステムを 24 時間 365 日利用できるようにする必要があります。こうしたシステムには、Rural Environmental Registry(あらゆる地方資産の登記が義務付けられている電子登記簿)、GEDAVE(家畜と農作物をモニタリングするための管理システム)などがあります。
システムがいかに複雑かを説明するために、例を挙げましょう。家禽生産の管理は GEDAVE でコントロールされており、ヒナは生後 24 時間以内に 1 羽ずつ新しい場所に移す必要があります。食品の安全性を確保するには、このプロセス全体を厳格に文書化しなければなりません。
老朽化した IT インフラストラクチャを刷新するだけでなく、安全で信頼できる食糧供給源を求める人々が世界中で増え続けているという問題にも目を向けるのであれば、今こそ最も重要なシステムの一部をモダナイズすべきだと SAA-SP は考えました。
増大する負荷:
私たちのチームは、SAA-SP の情報技術コーディネーション組織の一部であるシステム管理部門において、SAA-SP にとって非常に重要なシステムである GEDAVE の運用を担当しています。GEDAVE は、サンパウロ州全体の家畜と農作物の健康状態を管理、モニタリングする役割を担っています。
GEDAVE では、家畜の移動、農作物の生産、農薬の使用、ワクチン接種、病害虫駆除といったサンパウロの農業に関するさまざまな情報を記録、管理しています。また、農作物の取引に不可欠な動物輸送ガイド(GTA)や原産地植物検疫証明書(CFO)などの書類の発行も GEDAVE で支援しています。
GEDAVE のバックエンドは Java で開発され、SQL Server データベースに接続されています。このデータベースには、地方の生産者に関する機密情報(生産データ、管理戦略、財務情報など)が含まれています。これまでこのデータベースはオンプレミスでホストされていたため、次のような問題が立て続けに発生していました。
-
データベースを最新の状態に維持することが困難: オンプレミス環境でパッチとセキュリティ アップデートを適用する作業には時間と計画が必要なため、一定期間システムが利用できない状態になり、SAA-SP のサービスに頼る生産者に直接的な影響を及ぼしていました。
-
定期的なバックアップの実行プロセスが複雑: 確実なバックアップを定期的に行ってデータ セキュリティを確保することは、オンプレミス環境では複雑で手間のかかるプロセスでした。
-
高可用性の確保が困難: オンプレミス データベースの高可用性を維持するには、冗長で複雑なインフラストラクチャに投資しなければならず、管理のコストと複雑さが増大していました。
さらに SAA-SP は、生産者が市場の需要に応え、輸出に向けた品質管理や内部での生産のモニタリングといった複雑な問題に対処できるように、これらのシステムを 24 時間 365 日利用できるようにする必要がありました。
データ セキュリティも重要でした。なぜなら、家畜群の種類、ワクチン接種戦略、害虫駆除などの情報は機密性が高く、厳格に保護する必要があるからです。
イノベーションの種をまく:
SAA-SP はこうした課題に対処するため、データ インフラストラクチャをモダナイズすることにしました。そこで選択したのが、Google Cloud です。Google Cloud Platform の優れたパフォーマンスなら、アプリケーションの可用性と効率を確保できると考えたのです。また、その管理のしやすさによってデータベース管理が簡素化され、IT チームが他の優先業務に専念できるようになることも期待しました。
このモダナイゼーションの第一歩として、SAA-SP は SQL Server データベースを Google Cloud 上の Cloud SQL for SQL Server に移行しました。Cloud SQL for SQL Server を選んだ最大の決め手は、簡単に高可用性(HA)を実現できることです。複雑な構成を行わなくても、数回クリックするだけで、データベースの自動レプリケーションと自動フェイルオーバーを構成できました。これによって障害発生時にサービスの継続性を維持し、SLA に準拠できるようになりました。Cloud SQL for SQL Server への移行に関しても、SAA-SP の業務への影響を最小限に抑えながら、迅速かつ簡単に行うことができました。
この戦略的変更は数々のメリットをもたらし、Java アプリケーションをよりスケーラブルで安全な最新のデータベース環境に接続できるようになったのです。
成功を摘み取る:
-
アップデートの簡素化: Cloud SQL for SQL Server では簡単にパッチとアップデートを適用できるため、ダウンタイムを最低限に留め、最新バージョンのソフトウェアでシステムを常に保護された状態に保つことができます。
-
自動バックアップ: このサービスには自動のマネージド バックアップ機能が備わっているため、データ セキュリティを確保し、障害発生時にはデータを復旧できます。
-
高可用性を簡単に実現: Cloud SQL for SQL Server によって高可用性の構成が簡素化されたため、IT チームの労力を軽減し、サービスの SLA に準拠できるようになりました。
-
セキュリティの強化: Cloud SQL for SQL Server では保存データと転送中データが暗号化されるため、不正アクセスから SAA-SP の機密情報を保護できます。
-
オンデマンドのスケーラビリティ: 需要に応じて Cloud SQL for SQL Server リソースを調整できるため、ピーク時でも Java アプリケーションの最適なパフォーマンスを確保できます。
-
イノベーションに注力: SAA-SP の IT チームは、データ インフラストラクチャの管理を気にすることなく、Java アプリケーションの新機能の開発といった戦略的プロジェクトに注力できるようになりました。
-
IT コストの削減: Cloud SQL for SQL Server に移行したことで、オンプレミス データベースを維持するためのハードウェアとソフトウェアに投資する必要がなくなったため、運用コストを削減できました。
Cloud SQL for SQL Server で農業におけるイノベーションの未来を耕す:
Cloud SQL for SQL Server への移行という戦略的な決定により、SAA-SP はオンプレミスのデータ マネジメントで発生していた課題を克服し、重要なシステムの可用性、セキュリティ、スケーラビリティを確保できました。このプロジェクトの成功を決定づけた要因は、高可用性を簡単に実現できたこと、そして移行が容易であったことです。
しかし、それ以上に重要なことは、Cloud SQL によって SAA-SP にイノベーションがもたらされたことです。生成 AI の統合への扉が開かれ、より積極的で効率的な分析と意思決定が可能になりました。たとえば、SAA-SP では Looker で Gemini を活用して、Cloud SQL でホストされているリアルタイムのデータ分析情報を経営幹部に提供し、データドリブンな意思決定を促進しています。
さらに SAA-SP は、Gemini を活用したデータベースを使ってお客様を支援しており、お客様が AI を活用してデータベースのパフォーマンスとメンテナンスを強化できるようにしています。
SAA-SP では、引き続きインフラストラクチャとサービスのモダナイゼーションを進めるために以下を実施する予定です。
-
マイクロサービスへの移行: システムの柔軟性、スケーラビリティ、容量を拡大するため、マイクロサービスをベースとした更新バージョンのアプリケーションをリリースします。
-
生成 AI を活用したデータ分析: 生成 AI を活用して予測分析を実行し、Cloud SQL for SQL Server データからリアルタイムの分析情報を取得できるようにして、農業セクターにおける戦略的な意思決定を支援します。
-
Gemini を活用したデータ マネジメント: Gemini を活用してデータの管理と分析を容易にし、関連情報を抽出して、複雑なデータを簡単に利用できるようにします。
SAA-SP は分析の進歩を取り入れながらインテリジェントな運用管理に移行したことで、農業セクターにおけるテクノロジーとイノベーションの基準としての地位を確固たるものとしました。こうして、サンパウロ全体のアグリビジネスの発展を推進し、さらに世界中のアグリビジネスの道標としての役割を果たしています。
使ってみる:
-
Cloud SQL for SQL Server によってどのようにアプリケーションのパフォーマンスを強化し、可用性を維持できるのかをご確認ください。
-
Ford や Visual Research などの他の企業が Cloud SQL for SQL Server を使ってどのようにワークロードをモダナイズし、優れたパフォーマンスとコスト削減を実現しているのかをご覧ください。
-
Cloud SQL を活用してみたいとお考えの方は、今すぐ無料トライアルをお試しください。
-サンパウロ州農業供給局システム管理担当ディレクター、Michel Martins da Silva 氏
-サンパウロ州農業供給局ユーザー サポートおよびサービス部門ディレクター、Roseani Moraes Pereira 氏