2025 年の Spanner: インテリジェントなマルチモデル AI アプリケーションを強化するイノベーション
Shubhankar Chatterjee
Group Product Manager
Piyush Mathur
Group Product Manager
※この投稿は米国時間 2026 年 1 月 29 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
Google は 10 年以上にわたり、常時稼働でほぼ無制限のスケーリングが可能なデータベースである Spanner を基盤として、Gmail、YouTube、Google フォトなどの世界規模のアプリケーションを支えてきました。現在、Spanner が処理する秒間クエリ数は 60 億以上(ピーク時)、データ量は 17 エクサバイトを超え、99.999% の可用性とグローバルな整合性を実現しています。
2025 年は、Google Cloud 上の Spannerにとって、大きな年でした。Walmart、Goldman Sachs、Palo Alto Networks、Mercado Libre などのお客様の要求の厳しいワークロードを Spanner が支えているからです。同時に、AI が中心となる時代において、データベースの役割は大きな変革を遂げつつあります。データベースは、受動的なデータ リポジトリとしての従来の機能を超えて進化し、インテリジェントなコンテキスト ハブになりつつあります。Spanner は現在、商品検索とレコメンデーション、不正行為の検出、ID の解決、自律型ネットワーク運用(ANO)などの主要なユースケースをサポートしています。
2026 年に向けて期待が高まるなか、昨年のハイライトをいくつか振り返ってみましょう。Google は 2025 年に、以下を達成しました。
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AI ワークロードの主要な基盤としての Spanner の位置付け
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運用データと分析データのギャップ解消
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移行の簡素化
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費用対効果の基準引き上げ
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エンタープライズ レベルの安全性とデータ保護の強化
おさらいしていきましょう。
マルチモデルをサポートする Spanner AI
真にインテリジェントな生成 AI アプリケーションを構築するために、複数のポイント ソリューションを組み合わせる必要はありません。こうした理由から Google は、2024 年に AI モデルへのコンテキスト提供を目指してベクトル、グラフ、リレーショナル データを統合しました。2025 年には、これらのマルチモデル機能を拡張し、グラフ、ベクトル、テキスト検索、そして Vertex AI との連携を含め、新しい機能を追加しました。
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AI 機能: Spanner を AI ファーストのデータベースにするために、複数の機能を導入しました。これには、自然言語クエリ用の ML.PREDICT、データベース向け MCP ツールボックス、Gemini CLI 用 Spanner 拡張機能、会話型データ エージェント、Spanner 用 Agent Development Kit などの組み込みの AI インテグレーションが含まれ、これらを併用することで、デベロッパーは Spanner を使用して高度なエージェント アプリケーションを構築できます。また、マルチモデル プラットフォームを拡張して、GraphRAG ユースケースでグラフにベクトル検索を活用するといった、高度な AI ユースケースに対応できるようにもなりました。最後に、Vertex RAG Engine では、データのインデックス作成と取得オペレーションに、RAG が管理するデータベースとして Spanner を使用できるようになりました。
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グラフの機能強化: Spanner Graph にスキーマレス データのサポートが追加されました。これにより、スキーマを変更しないでも、反復型開発と頻繁な更新が可能になりました。また、名前付きスキーマ オブジェクトと SQL ビューでグラフを構築し、アプリの重要な要素を整理してカプセル化できるようにもなりました。
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全文検索: enhance_query オプションにより、多数の関数に対する類義語の自動マッチとスペル修正が可能になるため、再現率を高めるために必要な手動チューニングの手間を省くことができます。
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近似最近傍(ANN): Google の ScaNN を使用した ANN は高速でスケーラブルなベクトル検索手法です。この検索手法は、高次元ベクトル検索の効率を重視して最適化されており、AI レコメンデーション システム、画像検索、セマンティック検索で不可欠です。2025 年には、ANN 検索の一般提供を発表しました。これにより、デベロッパーはベクトル エンベディングに対する高速な類似検索を実行できるようになり、大規模な整合性が重要となる生成 AI アプリケーションを支えています。
AI を活用した運用
2025 年には、デベロッパーがアプリケーションに Spanner を活用しやすくなるよう、AI を活用した複数の機能が強化されました。
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Spanner インデックス アドバイザー: インデックス アドバイザーは、クエリパターンを分析し、パフォーマンスと費用を最適化するために新しいインデックスをプロアクティブに提案します(または、使用されていないインデックスを特定します)。
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スキーマに関する推奨事項(プレビュー版): スキーマ設計をスキャンしてホットスポット化しやすい主キーなどのアンチパターンがないかを確認し、本番環境で問題が発生する前に改善を提案するインテリジェントなツールです。
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Spanner CLI: gcloud に直接バンドルされた新しいコマンドライン インターフェース(CLI)で、この CLI により、既存のデベロッパー ワークフロー内で SQL の実行、セッションの管理、スクリプトの自動化が可能になります。
統合分析: サイロと複雑さを最小限に抑える
昨年、Google は複数の新機能によって運用データと分析データのギャップを埋めました。
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Spanner カラム型エンジン(プレビュー版): このエンジンを使用すると、Spanner のグローバルな整合性、高可用性、強力なトランザクション保証を維持しながら、大量の運用データをリアルタイムで自動的に分析できます。トランザクション ワークロードに影響を与えることはありません。Verisoul.ai は、偽アカウントの検出を自動化するオールインワン プラットフォームのプロバイダです。同社は Spanner と Spanner カラム型エンジンを活用して、低レイテンシのトランザクション書き込みと豊富な分析をサポートし、ユーザーに迅速なレスポンスを提供しています。
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「BigQuery でさらに向上」エコシステム: Spanner と BigQuery のインテグレーションを強化し、運用エンジンと分析エンジンを統合することでリアルタイムの分析情報を提供しています。
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Apache Iceberg のサポート: この機能により、データ アナリストは、BigQuery 上の Apache Iceberg テーブルと Spanner のライブデータの結合、および Iceberg データの Spanner へのエクスポートができます。これによって、リアルタイムの運用データ(Spanner から取得)をクエリして、その結果をキュレートされたデータ レイクハウス(Iceberg 内)と組み合わせることができます。
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Spanner 外部データセットのマテリアライズド ビュー: BigQuery の Spanner 外部データセットの一般提供を発表しました。これにより、BigQuery ユーザーは ETL を必要とせずに Spanner のライブ運用データをクエリできるようになりました。さらに、この機能を拡張して BigQuery マテリアライズド ビューと統合し、事前に計算されたクエリ結果に基づく超高速のレポート作成を実現しました。
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リバース ETL を使用した継続的クエリ(BigQuery から Spanner): BigQuery の継続的クエリ機能を Spanner へのリバース ETL と組み合わせることで、不正行為アラートや動的料金設定シグナルなどの計算された分析情報を BigQuery から Spanner にリアルタイムでストリーミングし、これらの分析情報を低レイテンシで提供できるようになりました。Fastweb + Vodafone は、まさにそれを実現しました。具体的には、両社はこの機能を活用し、Spanner を BigQuery と連携させたリアルタイムのサービング レイヤとして使用しました。
シンプルな移行
お客様は、99.999% の可用性、事実上無制限のスケーリング、低い運用上のオーバーヘッド、グローバルな整合性といったメリットを得るために、Spanner に移行することがよくあります。Google は 2025 年に、Cassandra と MySQL のワークロードを Spanner に簡単に移行できるようにしました。
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Cassandra インターフェース: Spanner の Cassandra インターフェースを使用すると、使い慣れた Cassandra ツールと構文を使用して、Spanner のフルマネージドで、スケーラブルかつ高可用性のインフラストラクチャを活用できます。既存の CQL アプリケーションを、ほぼ変更なしでリフト&シフトできます。
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MySQL の相互運用性: 80 個の MySQL 関数のライブラリをインストールできるようになりました。これにより、MySQL ワークロードを Spanner に移行するために必要なアプリケーションの変更を減らすことができます。
パフォーマンスと費用の改善
Spanner チームにとって、費用対効果の基準を継続的に引き上げることは、常に目指すべき目標です。2025 年に Google は、クエリのパフォーマンス向上と費用削減に役立つ複数の機能を導入しました。
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Repeatable Read 分離(プレビュー版): この新しい分離レベルでは、ロック管理のオーバーヘッドが削減されるため、読み取り / 書き込みの競合が少ないワークロードのレイテンシが改善されます。
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JSON インデックス作成機能: Spanner の全文検索と同じ基盤を使用する JSON インデックス作成機能は、構造やデータに関する事前定義がなくても、JSON に対する一般的なクエリを高速化します。これにより、デベロッパーはパフォーマンスを損なうことなく柔軟に作業できます。
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読み取りリース: 読み取りリースは、読み取り操作が大半を占める一般的なワークロードに対する書き込みパフォーマンスを多少犠牲にする代わりに、マルチリージョン構成の強整合性データの読み取りレイテンシを改善できます。
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階層型ストレージ: 階層型ストレージを活用すると、同じインスタンス内で SSD ストレージと HDD ストレージを使用できるため、データ ライフサイクルの費用を効率的に管理できます。すべての管理は構成を通じて行われ、データにアクセスするために使用する API を変更する必要はありません。この機能は、古いデータを低コストの HDD ストレージ(最大約 80% 安価)に移動し、新しいデータは高パフォーマンスの SSD に自動的に保持します。
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マネージド オートスケーラー: マネージド オートスケーラーの一般提供を発表し、読み取り専用レプリカを読み取り / 書き込みレプリカとは別にスケールできるように機能を強化しました。これにより、トラフィック パターンに基づいて費用を最適化しながら、読み取りパフォーマンスが向上しました。
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手動分割点: Spanner はシャーディングを自動化して、インスタンス内のノード間で作業を分散しますが、トラフィック パターンは Google よりもお客様の方がよくご存じの場合があります。新しい分割点 API を使用すると、期間限定セールやゲームのリリースなど、予想されるトラフィック急増に合わせてデータを「ウォームアップ」または事前分割しておけるため、トラフィックに即座に対処できます。
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クエリ オプティマイザー: 新しいデフォルトのクエリ オプティマイザー(バージョン 8)には、自動化された拡張機能が多数導入されたほか、結合戦略とインデックスの使用が最適化され、クエリのパフォーマンスと予測可能性が向上しました。
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多重化されたセッション と遅延デコード: 主要な SDK(Java、Go)で多重化されたセッションをデフォルトで有効にし、スループットとリソース使用率を大幅に向上させました。また、パーティション分割されたクエリに対して遅延デコードでクライアント ライブラリを最適化し、アプリケーションが大幅に少ないメモリ使用量で大規模なデータセットを処理できるようにしました。さらに、新しい組み込みのクライアント指標により、アプリケーションのデータベース パフォーマンスをきめ細かく把握できます。
エンタープライズ レベルの安全性の水準を引き上げる
特に金融サービス、小売、ヘルスケアなどの業界のお客様にとって、信頼性は絶対条件です。今年、Google は、あらゆるシステムで最も予測不可能な要素である人為的ミスからのデータ保護を強化する、追加の「セーフティ ネット」を導入しました。
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削除からの保護機能: 誤ってデータを削除すると、致命的な事態が生じる場合があります。Google は、本番環境の安全対策としてスキーマ オブジェクトの削除からの保護機能を導入しました。これは、重要なテーブル、インデックス、列が誤って削除されるという運用上のミスを防ぐ役割を果たします。
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デフォルトのバックアップ スケジュールによるゼロタッチ コンプライアンス: データ保護は手動のチェックリストに委ねるべきではありません。データベースが作成された瞬間に復元のベースラインが確保されるよう、デフォルトのバックアップ スケジュールを導入しました。これにより、バックアップを忘れるリスクを最小限に抑え、ワークロードを初日から組織のガバナンスとコンプライアンスの基準に準拠させることができます。
受賞歴と評価
Google は、お客様のニーズと業界のトレンドに基づいて Spanner を強化し続けていますが、その取り組みが業界で認められることは常に素晴らしいことです。実際、2025 年に以下のような評価を受けました。
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Spanner は、Gartner Magic Quadrant のクラウド データベース管理システム(DBMS)部門のリーダーに選ばれたほか、2025 年の 「Critical Capabilities for Operational Databases」レポートの軽量トランザクション ユースケースで第 1 位(すべてのカテゴリで上位 3 位)にランク付けされ、「OLTP トランザクション」で AWS Aurora を抑えて第 2 位を獲得しました。
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技術的なパフォーマンスのほかに、2025 年 3 月の Forrester Total Economic Impact™(TEI)調査では、Spanner がもたらす大きなビジネス価値が検証されました。その調査によると、代表的なモデル組織は 3 年間で 132% の ROI と 774 万ドルの総利益を達成し、投資回収期間はわずか 9 か月でした。
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また、Google は「リレーショナル データ マネジメントを再考し、グローバル規模で外部整合性のある直列化可能性を実現した」ことが評価され、2025 ACM SIGMOD Systems Award を受賞しました。
今後の対応
Google は、2025 年にお客様に提供してきたイノベーションを誇りに思っており、お客様が Spanner で構築する革新的なソリューションを楽しみにしています。このイノベーションはまだ始まったばかりであり、2026 年にはさらに多くの魅力的な機能の提供が予定されていることは言うまでもありません。
Spanner の独自性や使用例について詳しくは、こちらをご覧ください。
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- グループ プロダクト マネージャー、Shubhankar Chatterjee
- グループ プロダクト マネージャー、Piyush Mathur


