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顧客事例

PIVOT: システム インフラを物理サーバーから Google Cloud に移行し、可用性・スケーラビリティの向上や運用負荷の軽減に成功

2023年9月29日
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Google Cloud Japan Team

ビジネス映像メディア「PIVOT」を運営する PIVOT株式会社(以下、PIVOT) では、「コンテンツの力で、経済と人を動かす」をビジョンとして掲げ、経済人の心と魂に訴えかけるコンテンツの提供に力を注いでいます。創業以来、IT システムをオンプレミスで構築してきた同社では、今後の事業拡大を見据えてシステム インフラの Google Cloud への移行を実施しました。このプロジェクトを担当した 2 名に話を伺いました。

利用しているサービス:
Cloud CDN, Compute Engine, Cloud SQL, Cloud Logging, Cloud Monitoring, Pub/Sub

利用しているソリューション:
Application Migration, High performance Computing

「安全性」「金額」「将来性」の 3 つの観点で Google Cloud の優位性を確認

PIVOT では、2022 年 3 月に iOS アプリをリリースして以来、国内のデータセンターに物理サーバーをホスティングし、そのうえでパートナー企業と共同で構築したシステムを使用して映像配信サービスを展開してきました。しかしビジネスが軌道に乗り、ユーザー数が増加したことにともなって、物理サーバーによる運用ではさまざまな課題が顕在化するようになってきました。

オンプレミスな物理サーバーは、万が一の事態でサーバーそのものが単一障害点になることに加えて、想定を超えたアクセスが発生した場合などにはその都度人的な対応が必要になるという問題があります。パッチの適用や脆弱性への対処などといったセキュリティ対策も、メンテナンス時間を設けて自前で行う必要があるため、可用性や運用負荷の面で大きな問題となっていました。それに加えて、オンプレミス環境はエンジニアの採用面でも不利に働くという懸念もありました。

ビジネスの成長期にある PIVOT では、これらの課題を早急に解消するために、システム インフラの全面的なクラウドへの移行を決定し、その移行先として Google Cloud を採用しました。使用するクラウド サービスの選定に当たっては、「安全性」「金額」そして「将来性」の 3 つの観点に基づいた総合的な評価を行い、その結果として Google Cloud の優位性を確認したとプロダクトマネージャーの蜂須賀 大貴氏は説明します。

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「弊社の用意した提案依頼に対して、Google Cloud からの提案は非常に魅力的なものでした。一番の決め手になったのは、スタートアップ向けの支援プログラムが充実していたことです。これには費用面のサポートが含まれていて、クラウドの利用コストが最小限に抑えられるのは大きな魅力でした。将来性についても、映像配信やメディア基盤としてのビジョンや、AI や機械学習などを活用した拡張性、そして YouTube や BigQuery など関連サービスとの親和性を高く評価しました。移行の安全性に関しては、経験のある老舗のパートナー企業にご対応いただいたことで、強い安心感がありました。これらの要素を総合的に判断し、Google Cloud の採用を決断しました。」

Google Cloud への移行で運用負荷の大幅な軽減を実感、今後のビジネスの成長にも対応できると確信

今回のプロジェクトでは、PIVOT における映像配信基盤を除くすべての基幹システムを Google Cloud 上で再構築しました。これには、コンテンツ配信を行うモバイルアプリやウェブサイトのバックエンドも含まれます。映像配信基盤についてはサードパーティの SaaS 型映像配信プラットフォームを利用していますが、動画ファイル以外の画像やメタデータなどは自社の Contents Management System(CMS)によって管理しています。

Google Cloud への移行では、Compute Engine を利用して、従来のオンプレミス環境からアーキテクチャを大きく変更しない方針を選択しました。これは、開発スピードと移行の安全性を最優先した結果だと蜂須賀氏は説明します。

「弊社の喫緊の課題は、いち早くオンプレミスを脱却することでした。そのため、クラウドに最適化した将来的なインフラ構成を念頭に置いたうえで、最初のフェーズではできるだけ既存のアーキテクチャを踏襲して素早く安全にクラウド移行を完了することを優先しました。」

ただし、この段階でもデータベースの Cloud SQL への移行や、Managed Instance Group(MIG)の利用による可用性およびスケーラビリティの向上など、クラウドを活かした要素の導入にはすでに着手していると、ソフトウェアエンジニアの黒澤 進伍氏は説明します。

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「データベースについては BigQuery ベースのデータ分析基盤との連携なども考慮して、このタイミングで Cloud SQL へ移行することを決断しました。Cloud SQL ではデータ分析基盤の BigQuery ともシームレスに連携が可能で、これはまさに Google Cloud ならではの効果だったと感じています。また、MIG の導入によって急激なトラフィックのスパイクに対してスムーズにスケールアウトできるようになり、運用面の負荷は大幅に軽減されました。デプロイの仕組みについても、以前はちょっとした修正でも本番環境に反映させるために何ステップも踏む必要がありました。Cloud Build を導入したことで継続的デリバリーを実現し、高い頻度でのデプロイが可能になりました。」

PIVOT のクラウド移行にかかった期間は、プロジェクトの開始からローンチまででわずか 3 か月。この移行が完了したことによって、同社の直近のビジネス目標にシステム側が耐えられる見込みが立ったと蜂須賀氏は語ります。

「PIVOT の主要な KGI(経営目標達成指標)の 1 つである YouTube チャンネルの登録者数については、2023 年 9 月で直近の目標としていた 100 万人に到達しました。この後は、今の YouTube 主体の体制から自社プロダクト主体の体制に切り替えていく計画で、アプリやウェブサイトのトラフィックは現在の 10 倍以上に膨れ上がる見込みです。そうした爆発的な増加に対しても、今回のアーキテクチャをベースにサーバーレス化などを進めれば、問題なく対応していけると確信しています。」

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プロジェクトは次のフェーズへ、マネージド サービスを活用した全体最適化を目指す

蜂須賀氏は、「今回のクラウド移行は弊社のインフラ再構築の "フェーズ 1" に当たります。これから、クラウドの価値を引き出して全体を最適化する "フェーズ 2" に入っていきます」と語ります。

「PIVOT では現在、インフラのクラウド移行と並行して新しいデータ分析基盤の構築を進めています。このデータ分析基盤は BigQuery をベースとしており、 動画配信プラットフォームや YouTube、 Google Analytics からデータを取得して BigQuery に連携し、分析に活用するといったことにチャレンジしています。まずは、これを今回構築したシステムと接続して、統合した形で運用できる状態にします。」(蜂須賀氏)

黒澤氏は、フェーズ 2 ではインフラの運用管理の手間をさらに削減するために、Cloud Run をはじめとしたマネージド サービスを積極的に活用していきたいと話します。

「インフラの運用に割ける人員は限られているので、自分たちで面倒を見る範囲は極力狭めていかなければなりません。マネージド サービスを活用すればインフラの運用を Google Cloud 側に任せられる部分が増え、PIVOT 側で行うことが減って、他の業務に集中できるようになります。長期的な視点では、クラウドを利用するシステムとして "あるべき姿" にしていくことが重要だと考えています。そのほうが運用の負荷が下がり、人材の採用という面でも有利ですから。」

蜂須賀氏は、現在の PIVOT のビジネスの成長スピードに追いつくために、プロダクトの開発スピードとリリース スピードをもっと上げていく必要があると語ります。

「プロダクト チームがビジネスを成長させるドライバになるためには、アーキテクチャやチーム体制などの改善を、常にスピード感を持ってやっていかなければなりません。単に新しい技術を選べばいいというわけではなくて、ビジネスの成長にどのように貢献できるかということを常に考える必要があります。そういう点で、Google Cloud はサービスの選択肢が充実しており、将来を見据えて私たちが目指す方向性とも合っていると考えています。」

採用理由にも挙げられているように、PIVOT では Google Cloud の採用にあたってスタートアップを支援する Google for Startups クラウド プログラムを利用しました。このプログラムをはじめとする Google Cloud のスタートアップ支援体制について、蜂須賀氏は次のように話しています。

「Google Cloud はスタートアップを支援する考え方が根本的に他社とは違うと感じています。困ったときに相談しやすい距離感で接していただいたり、他のパートナー企業と双方にメリットのある形で接点を作っていただくなど、スタートアップについて本当に大切に考えてくれているのがよくわかります。そういう点も含めて、Google Cloud チームのサポートには満足していますし、今後も良い関係を続けていけたらと思っています。」(蜂須賀氏)


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PIVOT株式会社
2021 年 6 月 1 日設立。PIVOT株式会社は、東洋経済オンライン、NewsPicks の編集長を歴任してきた佐々木 紀彦氏が立ち上げた 「新時代を創る人のための、ビジネス映像メディア」のスタートアップです。SaaS 企業とは少し経路の異なった「コンテンツ × プロダクト」の強さを基軸に、「ハリウッド × シリコンバレー」のような文化の融合を目指しています。

インタビュイー(写真右から)
・プロダクトマネージャー 蜂須賀 大貴 氏
・ソフトウェアエンジニア 黒澤 進伍 氏

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