Cloud DNS は、さまざまな種類の一般公開ゾーンと 限定公開ゾーンをサポートしています。このドキュメントでは、さまざまなゾーンタイプとその使用条件について説明します。
転送ゾーン
Cloud DNS 転送ゾーンを使用すると、特定の限定公開ゾーン用に転送先ネームサーバーを構成できます。VPC ネットワークからの送信 DNS 転送を実装する方法の 1 つに、転送ゾーンの使用があります。
Cloud DNS 転送ゾーンは、特別なタイプの Cloud DNS 限定公開ゾーンです。ゾーン内にレコードを作成する代わりに、一連の転送先を指定します。各転送先は、VPC ネットワーク内に配置された DNS サーバーの IP アドレスか、Cloud VPN または Cloud Interconnect によって VPC ネットワークに接続されたオンプレミス ネットワーク内にある DNS サーバーの IP アドレスです。
転送先とルーティング方法
Cloud DNS は 3 つのタイプの転送先をサポートしており、接続用のルーティング方法(標準または限定公開)を提供します。
転送先 | 説明 | 標準ルーティングのサポート | 限定公開ルーティングのサポート | リクエスト元 |
---|---|---|---|---|
タイプ 1 | Google Cloud VM、または転送ゾーンの使用が許可されている同じ VPC ネットワーク内の内部パススルー ネットワーク ロードバランサの内部 IP アドレス。 | RFC 1918 の IP アドレスのみ - トラフィックは、常に承認済み VPC ネットワーク経由でルーティングされます。 | 内部 IP アドレス(RFC 1918 のプライベート アドレス、RFC 1918 以外のプライベート IP アドレス、またはプライベートで再利用された外部 IP アドレスなど、ただし禁止されている転送先の IP アドレスを除く) - トラフィックは常に承認済みの VPC ネットワーク経由でルーティングされます。 | 35.199.192.0/19 |
タイプ 2 | Cloud VPN または Cloud Interconnect を使用して、転送ゾーンのクエリが承認された VPC ネットワークに接続されている、オンプレミス システムの IP アドレス。 | RFC 1918 の IP アドレスのみ - トラフィックは、常に承認済み VPC ネットワーク経由でルーティングされます。 | 内部 IP アドレス(RFC 1918 のプライベート アドレス、RFC 1918 以外のプライベート IP アドレス、またはプライベートで再利用された外部 IP アドレスなど、ただし禁止されている転送先の IP アドレスを除く) - トラフィックは常に承認済みの VPC ネットワーク経由でルーティングされます。 | 35.199.192.0/19 |
タイプ 3 | インターネットからアクセス可能な DNS ネームサーバーの外部 IP アドレスまたは Google Cloud リソースの外部 IP アドレス(別の VPC ネットワークにある VM の外部 IP アドレスなど)。 | インターネット ルーティング可能な外部 IP アドレスのみ - トラフィックは、常にインターネットまたは Google Cloud リソースの外部 IP アドレスにルーティングされます。 | 限定公開ルーティングはサポートされていません。限定公開ルーティングがオフになっていることを確認してください。 | Google Public DNS ソース範囲 |
転送先を転送ゾーンに追加するときには、次の 2 つのルーティング方法のいずれかを選択できます。
標準ルーティング: 転送先が RFC 1918 IP アドレスであるかどうかに基づいて、認可済みの VPC ネットワークまたはインターネット経由でトラフィックをルーティングします。転送先が RFC 1918 IP アドレスの場合、Cloud DNS は転送先をタイプ 1 またはタイプ 2 転送先に分類し、リクエストを認可済みの VPC ネットワークを通じて転送します。転送先が RFC 1918 IP アドレスでない場合、Cloud DNS は転送先をタイプ 3 として分類し、転送先がインターネットにアクセスできることが必要となります。
限定公開ルーティング: 転送先の IP アドレスが RFC 1918 であるか否かにかかわらず、常に認可済みの VPC ネットワーク経由でトラフィックをルーティングします。したがって、タイプ 1 とタイプ 2 の転送先のみがサポートされます。
タイプ 1 またはタイプ 2 の転送先にアクセスするために、Cloud DNS は DNS クライアントが配置されている、認可済みの VPC ネットワーク内のルートを使用します。これらのルートは、転送先への安全なパスを定義します。
タイプ 1 の転送先にトラフィックを送信するために、Cloud DNS では自動的に作成されたサブネット ルートが使用されます。応答するには、タイプ 1 の転送先は、Cloud DNS レスポンス用の特別なルーティング パスを使用します。
タイプ 2 の転送先にトラフィックを送信するために、Cloud DNS はカスタム動的ルートまたはカスタム静的ルート(ネットワーク タグを持つカスタム静的ルートを除く)を使用します。タイプ 2 の転送先が応答する際は、オンプレミス ネットワーク内のルートを使用します。
タイプ 1 転送先とタイプ 2 転送先のネットワーク要件の詳細については、転送先ネットワークの要件をご覧ください。
禁止された転送先の IP アドレス
Cloud DNS の転送先に次の IP アドレスは使用できません。
169.254.0.0/16
192.0.0.0/24
192.0.2.0/24
192.88.99.0/24
198.51.100.0/24
203.0.113.0/24
224.0.0.0/4
240.0.0.0/4
::1/128
::/128
2001:db8::/32
fe80::/10
fec0::/10
ff00::/8
転送先の選択順序
Cloud DNS では、転送ゾーンの転送先のリストを構成できます。
2 つ以上の転送先を構成すると、Cloud DNS は内部アルゴリズムを使用して転送先を選択します。このアルゴリズムでは、各転送先がランク付けされます。
リクエストを処理するため、Cloud DNS はまずランクが最も高い転送先に接続し、DNS クエリを試みます。このサーバーが応答しない場合、Cloud DNS はランクがその次に高い転送先にリクエストを再度試みます。応答する転送先がない場合、Cloud DNS は SERVFAIL レスポンスを合成します。
ランキング アルゴリズムは自動で、次の要因により転送先のランキングが増分されます。
- 転送先で処理された、成功した DNS レスポンスの数が多いほど増分されます。成功した DNS レスポンスには NXDOMAIN レスポンスが含まれます。
- 転送先との通信のレイテンシ(ラウンドトリップ時間)が少ないほど増分されます。
転送ゾーンの使用
VPC ネットワーク内の VM では、次の場合に Cloud DNS 転送ゾーンを使用できます。
VPC ネットワークで Cloud DNS 転送ゾーンを使用することが承認されている場合。転送ゾーンを使用するには、VPC ネットワークが同じ組織内にある限り、同じプロジェクト内またはプロジェクト間で複数の VPC ネットワークを承認できます。
VPC ネットワーク内の各 VM のゲスト オペレーティング システムが、VM のメタデータ サーバー
169.254.169.254
をネームサーバーとして使用している場合。
重複する転送ゾーン
Cloud DNS 転送ゾーンは Cloud DNS 限定公開マネージド ゾーンの一種であるため、重複する複数のゾーンを作成できます。前述のように構成された VM は、サフィックスが最も長いゾーンを使用して、名前解決順序に従ってレコードを解決します。詳しくは、重複するゾーンをご覧ください。
キャッシュと転送ゾーン
Cloud DNS は、Cloud DNS 転送ゾーンに送信されたクエリに対するレスポンスをキャッシュに保存します。Cloud DNS は、到達可能な転送先からキャッシュに保存したレスポンスを次の期間のうち短いほうの期間維持します。
- 60 秒
- レコードの有効期間(TTL)
転送ゾーンのすべての転送先が到達不能になった場合、Cloud DNS はそのゾーンで以前にリクエストされたレコードのキャッシュを各レコードの TTL の期間維持します。
代わりにピアリングを使用する場合
Cloud DNS は、推移的ルーティングを使用して転送先に接続することはできません。次のシナリオで無効な構成について検討します。
Cloud VPN または Cloud Interconnect を使用して、オンプレミス ネットワークを
vpc-net-a
という名前の VPC ネットワークに接続しました。VPC ネットワーク ピアリングを使用して VPC ネットワーク
vpc-net-a
をvpc-net-b
に接続しました。カスタムルートをエクスポートするようにvpc-net-a
を構成し、それらをインポートするようにvpc-net-b
を構成しました。vpc-net-a
が接続されているオンプレミス ネットワークに転送先がある転送ゾーンを作成しました。vpc-net-b
に対してその転送ゾーンの使用を承認しました。
このシナリオでは、vpc-net-b
からオンプレミス ネットワークへの接続があるにもかかわらず、転送先によって提供されるゾーンのレコードを解決できません。このエラーを実際に確認するために、vpc-net-b
の VM から次のテストを行います。
VM のメタデータ サーバー
169.254.169.254
に対して、転送ゾーンに定義されたレコードをクエリします。Cloud DNS では転送先への推移的ルーティングがサポートされていないため、このクエリは失敗します。転送ゾーンを使用するには、そのメタデータ サーバーを使用するように VM を構成する必要があります。転送先に対して同じレコードを直接クエリします。Cloud DNS はこのパスを使用しませんが、このクエリによって推移的接続が成功したことが確認できます。
この不具合を修正するには、Cloud DNS のピアリング ゾーンを使用します。
vpc-net-a
を転送先とするvpc-net-b
に対して承認される Cloud DNS ピアリング ゾーンを作成します。- 転送先がオンプレミス ネームサーバーである
vpc-net-a
に対して承認される転送ゾーンを作成します。
これらの手順は、任意の順序で行うことができます。これらの手順を完了すると、vpc-net-a
と vpc-net-b
の両方の Compute Engine インスタンスがオンプレミスの転送先をクエリできます。
転送ゾーンの作成方法については、転送ゾーンを作成するをご覧ください。
ピアリング ゾーン
ピアリング ゾーンは、異なる VPC ネットワーク内の Cloud DNS ゾーン間で DNS リクエストを送信できる Cloud DNS 限定公開ゾーンです。たとえば、ソフトウェア アズ サービス(SaaS)プロバイダは、Cloud DNS のマネージド DNS レコードに顧客がアクセスできるようにすることができます。
DNS ピアリングを提供するには、Cloud DNS の限定公開ピアリング ゾーンを作成し、そのゾーンの名前空間のレコードが利用可能な VPC ネットワークで DNS ルックアップを実行するように構成する必要があります。DNS ピアリング ゾーンがルックアップを実行する VPC ネットワークは、DNS プロデューサー ネットワークと呼ばれます。
ピアリング ゾーンは、ゾーン構成中に選択した VPC ネットワークにのみ表示されます。ピアリング ゾーンの使用を認可された VPC ネットワークは、DNS コンシューマ ネットワークと呼ばれます。
DNS コンシューマ ネットワーク内の Google Cloud リソースが承認された場合、DNS プロデューサー ネットワーク内に存在するかのように、ピアリング ゾーンの名前空間内のレコードを検索できます。ピアリング ゾーンの名前空間内のレコードの検索は、DNS プロデューサー ネットワークの名前解決順序に従います。
したがって、DNS コンシューマ ネットワーク内の Google Cloud リソースは、DNS プロデューサー ネットワークで利用可能な次のソースからゾーンの名前空間内のレコードを検索できます。
- DNS プロデューサー ネットワークによる使用が承認された Cloud DNS 限定公開マネージド ゾーン。
- DNS プロデューサー ネットワークによる使用が承認された Cloud DNS マネージド転送ゾーン。
- DNS プロデューサー ネットワーク内の Compute Engine の内部 DNS 名。
- DNS プロデューサー ネットワーク内で送信サーバー ポリシーが構成されている場合、代替ネームサーバー。
DNS ピアリングを使用すると、あるネットワーク(DNS コンシューマ ネットワーク)から別のネットワーク(DNS プロデューサー ネットワーク)に DNS リクエストを転送し、DNS ルックアップを実行できます。
DNS ピアリングの制限事項と要点
DNS ピアリングを構成する場合、次の点に注意してください。
- DNS ピアリングは一方向の関係です。これにより、DNS コンシューマ ネットワーク内の Google Cloud リソースは、ピアリング ゾーンの名前空間内のレコードを、Google Cloud リソースが DNS プロデューサー ネットワーク内にあるかのように検索できます。
- DNS プロデューサー ネットワークとコンシューマ ネットワークは、VPC ネットワークである必要があります。
- 通常、DNS プロデューサー ネットワークとコンシューマ ネットワークは同じ組織に属しますが、組織間の DNS ピアリングもサポートされています。
- DNS ピアリングと VPC ネットワーク ピアリングは異なるサービスです。VPC ネットワーク ピアリングでは、DNS 情報が自動的に共有されません。DNS ピアリングは VPC ネットワーク ピアリングと組み合わせて使用できますが、VPC ネットワーク ピアリングは DNS ピアリングに必須ではありません。
- 推移的 DNS ピアリングはサポートされていますが、単一の推移的ホップを介した場合に限られます。つまり、3 つの VPC ネットワーク(中間のネットワークが推移的ホップとなる)の他に VPC ネットワークを含めることはできません。 たとえば、
vpc-net-b
を転送先とするピアリング ゾーンをvpc-net-a
に作成し、vpc-net-c
を転送先とするピアリング ゾーンをvpc-net-b
に作成できます。 - DNS ピアリングを使用して転送ゾーンをターゲットにする場合は、転送ゾーンがあるターゲット VPC ネットワークの VM、VLAN アタッチメント、または Cloud VPN トンネルが、DNS ピアリング ゾーンを使用するソース VM と同じリージョンに配置されている必要があります。この制限の詳細については、コンシューマ VPC ネットワーク内の VM からプロデューサー VPC ネットワークへのクエリ転送が機能しないをご覧ください。
ピアリング ゾーンの作成方法については、ピアリング ゾーンを作成するをご覧ください。
マネージド逆引き参照ゾーン
マネージド逆引き参照ゾーンは特別な属性を持つ限定公開ゾーンです。この属性により、Cloud DNS は、Compute Engine の DNS データに対して PTR 参照を実行します。
限定公開ゾーンの RFC 1918 アドレス用 PTR レコード
RFC 1918 アドレス用のカスタム PTR レコードを使用してリバース ルックアップを行うには、少なくとも次のいずれかと同程度に限定的な Cloud DNS 限定公開ゾーンを作成する必要があります。このようになるのは、名前解決の順序で説明している最長サフィックス マッチングが機能するからです。
ゾーンの例を次に示します。
10.in-addr.arpa.
168.192.in-addr.arpa.
16.172.in-addr.arpa.
、17.172.in-addr.arpa.
、...31.172.in-addr.arpa.
まで。
RFC 1918 アドレス用の Cloud DNS 限定公開ゾーンを作成すると、そのゾーンの VM 用に作成したカスタム PTR レコードは、内部 DNS が自動的に作成する PTR レコードによってオーバーライドされます。これは、内部 DNS PTR レコードが、上記にリストされている、より限定的なゾーンで作成されるためです。
たとえば、IP アドレスが 10.1.1.1
の VM に次の PTR レコードを使用して in-addr.arpa.
の限定公開マネージド ゾーンを作成するとします。
1.1.1.10.in-addr.arpa. -> test.example.domain
1.1.1.10.in-addr.arpa.
に対する PTR クエリには、これよりも限定的な 10.in-addr.arpa.
内部 DNS ゾーンが応答します。test.example.domain
の Cloud DNS 限定公開ゾーン内の PTR レコードは無視されます。
VM に対して自動的に作成される内部 DNS PTR レコードをオーバーライドするには、このセクションで提示しているゾーンの少なくとも 1 つと同程度に限定的な限定公開ゾーン内で、カスタム PTR レコードを作成してください。たとえば、10.in-addr.arpa.
の限定公開ゾーン内で次の PTR レコードを作成すると、このレコードにより、自動的に生成されるレコード 1.1.1.10.in-addr.arpa. -> test.example.domain
がオーバーライドされます。
ネットワーク ブロックの一部のみをオーバーライドする必要がある場合は、より限定的な逆引きの Cloud DNS 限定公開ゾーンを作成できます。たとえば、IP アドレスが 10.5.0.0/16
アドレス範囲にある VM 用に自動的に作成される内部 DNS PTR レコードを特定の PTR レコードでオーバーライドする場合、5.10.in-addr.arpa.
の限定公開ゾーンを使用して、それらのレコードを保持できます。
マネージド逆引き参照ゾーンの作成方法については、マネージド逆引き参照ゾーンを作成するをご覧ください。
重複するゾーン
2 つのゾーンのうち、1 つのゾーンの起点のドメイン名がもう一方のゾーンの起点と同一であるか、その起点のサブドメインである場合、これらは互いに重複しています。次に例を示します。
gcp.example.com
のゾーンとgcp.example.com
の別のゾーンは、ドメイン名が同一であるため重複します。dev.gcp.example.com
のゾーンとgcp.example.com
のゾーンは、dev.gcp.example.com
がgcp.example.com
のサブドメインであるため重複します。
重複するゾーンのルール
Cloud DNS では、重複するゾーンに対して次のルールが適用されます。 * 重複する一般公開ゾーン同士は、同じ Cloud DNS ネームサーバー上に存在できません。重複ゾーンを作成すると、Cloud DNS はそれらを別のネームサーバーに配置しようとします。それができない場合、Cloud DNS は重複するゾーンを作成できません。
- 限定公開ゾーンは、一般公開ゾーンと重複できます。
また、スコープの VPC ネットワークが異なる限定公開ゾーン同士も重複が可能です。たとえば、2 つの VPC ネットワークが、それぞれ、ゾーン
gcp.example.com
内にdatabase.gcp.example.com
というデータベース VM を持つことができます。database.gcp.example.com
に対するクエリは、それぞれの VPC ネットワークに対して承認されたゾーンに定義されているゾーンレコードに応じて異なる回答を受け取ります。1 つのゾーンが他のゾーンのサブドメインでない限り、同じ VPC ネットワークからアクセス可能な 2 つの限定公開ゾーンは同一の起点を持つことはできません。メタデータ サーバーは、最長サフィックス マッチングを使用して、特定のゾーン内のレコードをクエリする起点を決定します。
クエリ解決の例
名前解決順序で説明しているように、Google Cloud は Cloud DNS ゾーンを解決します。特定のレコードのクエリするゾーンを決定するとき、Cloud DNS はリクエストされたレコードとできるだけ多く一致するゾーンを探そうとします(最長サフィックス マッチング)。
送信サーバー ポリシーで代替ネームサーバーを指定しない限り、Google Cloud はまず、VPC ネットワークに対して承認された限定公開ゾーン(または転送ゾーンかピアリング ゾーン)でレコードを探し、その後、一般公開ゾーンでレコードを探します。 次の例は、メタデータ サーバーが DNS レコードを照会するときに使用する順序を示しています。これらの例では、gcp.example.com
と dev.gcp.example.com
という 2 つの限定公開ゾーンを作成し、同じ VPC ネットワークからアクセスできることを前提としています。Google Cloud は、VPC ネットワーク内の VM からの DNS クエリを次のように処理します。
VPC ネットワークに対して承認された
example.com
の限定公開ゾーンがないため、メタデータ サーバーは一般公開ネームサーバーを使用してmyapp.example.com.
(末尾のドットに注意)のレコードを解決します。Compute Engine VM からdig
を使用して、VM のデフォルトのネームサーバーにクエリを実行します。dig myapp.example.com.
詳細については、メタデータ サーバーを使用して DNS 名を照会するをご覧ください。
メタデータ サーバーは、承認済みの限定公開ゾーン
gcp.example.com
を使用してレコードmyapp.gcp.example.com
を解決します。これは、リクエストされたレコード名と使用可能な限定公開ゾーンに共通する最長のサフィックスがgcp.example.com
であるからです。限定公開ゾーンにmyapp.gcp.example.com
のレコードが定義されていない場合、一般公開ゾーンgcp.example.com
にmyapp.gcp.example.com
のレコードが定義されていても、NXDOMAIN
が返されます。同様に、
myapp.dev.gcp.example.com
に対するクエリは、承認済みの限定公開ゾーンdev.gcp.example.com
のレコードに従って解決されます。dev.gcp.example.com
ゾーンにmyapp.dev.gcp.example.com
のレコードが定義されていない場合、別の限定公開ゾーンまたは一般公開ゾーンにmyapp.dev.gcp.example.com
のレコードが定義されていても、NXDOMAIN
が返されます。リクエストされた DNS レコードと使用可能な限定公開ゾーンの中で
gcp.example.com
が共通の最長サフィックスとなるため、myapp.prod.gcp.example.com
のクエリは限定公開ゾーンgcp.example.com
のレコードに従って解決されます。
スプリット ホライズン DNS の例
スプリット ホライズン DNS 構成では、一般公開ゾーンと限定公開ゾーンの組み合わせを使用できます。限定公開ゾーンを使用すると、承認済みの VPC ネットワーク内の VM からの、同じレコードへのクエリに対して、異なるレスポンスを定義できます。スプリット ホライズン DNS は、発信元の VPC ネットワークに応じて同じ DNS クエリに異なるレコードを提供する必要がある場合に便利です。
例として次のスプリット ホライズンを検討します。
- 一般公開ゾーン
gcp.example.com
を作成し、Cloud DNS ネームサーバーを使用するようにその登録事業者を構成しました。 - 限定公開ゾーン
gcp.example.com
を作成し、VPC ネットワークに対してこのゾーンへのアクセスを承認しました。
限定公開ゾーンでは、次の表に示すように単一のレコードを作成しました。
レコード | タイプ | TTL(秒) | データ |
---|---|---|---|
myrecord1.gcp.example.com | A | 5 | 10.128.1.35 |
一般公開ゾーンにレコードを 2 つ作成しました。
レコード | タイプ | TTL(秒) | データ |
---|---|---|---|
myrecord1.gcp.example.com | A | 5 | 104.198.6.142 |
myrecord2.gcp.example.com | A | 50 | 104.198.7.145 |
次のクエリは、ここで説明するとおりに解決されます。
- VPC ネットワークの VM からの
myrecord1.gcp.example.com
に対するクエリは10.128.1.35
を返します。 - インターネットからの
myrecord1.gcp.example.com
に対するクエリは104.198.6.142
を返します。 - VPC ネットワークの VM からの
myrecord2.gcp.example.com
に対するクエリは、限定公開ゾーンgcp.example.com
にmyrecord2.gcp.example.com
のレコードがないため、NXDOMAIN
エラーを返します。 - インターネットからの
myrecord2.gcp.example.com
に対するクエリは104.198.7.145
を返します。
クロス プロジェクト バインディング
プロジェクト間のバインディングを使用すると、VPC ネットワーク全体の DNS 名前空間の所有権とは無関係に、サービス プロジェクトの DNS 名前空間の所有権を保持できます。
一般的な共有 VPC 設定では、サービス プロジェクトが仮想マシン(VM)アプリケーションまたはサービスの所有権を持っていますが、VPC ネットワークとネットワーク インフラストラクチャの所有権はホスト プロジェクトが所有します。多くの場合、VPC ネットワークの名前空間から DNS 名前空間が作成され、サービス プロジェクトのリソースと一致します。このような設定では、各サービス プロジェクトの DNS 名前空間の管理を各サービス プロジェクトの管理者(多くは別の部門または事業)に委任するほうが便利です。プロジェクト間のバインディングを使用すると、サービス プロジェクトの DNS 名前空間の所有権と VPC ネットワーク全体の DNS 名前空間の所有権を分離できます。
次の図は、DNS ピアリングを使用した一般的な共有 VPC 設定を示しています。
次の図は、プロジェクト間のバインディングを使用した設定を示しています。Cloud DNS では、各サービス プロジェクトが独自の DNS ゾーンを作成して所有できますが、それでもホスト プロジェクトが所有する共有ネットワークにバインドされています。これにより、DNS ゾーン管理者には、自律性が高まり、権限の境界がより正確になります。
プロジェクト間のバインディングには次の機能があります。
- サービス プロジェクトの管理者とユーザーが独自の DNS ゾーンを作成して管理できます。
- プレースホルダ VPC ネットワークを作成する必要はありません。
- ホスト プロジェクトの管理者は、サービス プロジェクトを管理する必要がありません。
- IAM ロールは引き続きプロジェクト レベルで適用されます。
- すべての DNS ゾーンは共有 VPC ネットワークに直接関連付けられます。
- 多対多の DNS 解決がすぐに利用可能。共有 VPC ネットワークのどの VM も関連付けられたゾーンを解決できます。
- 推移的なホップ上限はありません。ハブ アンド スポーク設計で管理できます。
クロス プロジェクト バインディングを有効にしてゾーンを作成する方法については、プロジェクト間のバインディング ゾーンを作成するをご覧ください。
ゾーン Cloud DNS ゾーン
ゾーン Cloud DNS を使用すると、Google Cloud ゾーンのみを対象とする限定公開 DNS ゾーンを作成できます。クラスタ スコープを選択すると、GKE 用のゾーン Cloud DNS ゾーンが作成されます。
デフォルトの Cloud DNS サービスは本来グローバルであり、DNS 名は VPC ネットワーク全体で可視になります。この構成では、サービスがグローバルな停止にさらされることになります。ゾーン Cloud DNS は、各 Google Cloud ゾーンに存在する新しいプライベート Cloud DNS サービスです。障害発生ドメインはその Google Cloud ゾーンの内部に包含されます。グローバルな停止が発生しても、ゾーン Cloud DNS の限定公開ゾーンは影響を受けません。Google Cloud ゾーンが停止したとしても、影響が及ぶ範囲は、その特定の Google Cloud ゾーンと、その Google Cloud ゾーン内の Cloud DNS ゾーンのみです。ゾーンのサービス内で作成されたリソースは、その Google Cloud ゾーンのみで可視になることに注意してください。
ゾーンの Cloud DNS クラスタ スコープ ゾーンを構成する方法については、ゾーンの GKE クラスタ スコープ ゾーンを構成するをご覧ください。
ゾーン Cloud DNS のサポート
次の表に、ゾーン Cloud DNS サービスでサポートされている Cloud DNS のリソースと機能を示します。
リソースまたは機能 | グローバル Cloud DNS で利用可能か | ゾーン Cloud DNS で利用可能か |
---|---|---|
一般公開マネージド ゾーン | ||
限定公開マネージド ゾーン(ネットワークまたは VPC スコープ) | ||
限定公開マネージド ゾーン(GKE スコープ) | ||
転送ゾーン1 | ||
ピアリング ゾーン | ||
マネージド逆引きゾーン | ||
変更の作成、またはレコードの管理2 | ||
Service Directory ゾーン | ||
ポリシー | ||
レスポンス ポリシー(ネットワーク スコープ) | ||
レスポンス ポリシー(GKE クラスタ スコープ) | ||
レスポンス ポリシー ルール |
1 ゾーン Cloud DNS では、GKE クラスタをスコープとする転送ゾーンのみがサポートされます。
2 GKE コントローラは再起動時にレコードへの変更を上書きします。
ゾーン Cloud DNS ゾーンの料金
ゾーン Cloud DNS ゾーンとレスポンス ポリシーの料金は、対応するグローバル版の場合と同じです。
次のステップ
- マネージド ゾーンを操作するには、ゾーンの作成、変更、削除をご覧ください。
- Cloud DNS の使用時に発生する可能性のある一般的な問題の解決策については、トラブルシューティングをご覧ください。
- Cloud DNS の概要については、Cloud DNS の概要をご覧ください。