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顧客事例

Sansan:フルマネージドと機械学習のメリットを生かしアナログな請求書処理のデジタル化を実現

2022年3月2日
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Google Cloud Japan Team

「出会いからイノベーションを生み出す」というミッションのもと、「ビジネスインフラになる」というビジョンを掲げ、生活を支える電気やガス、水道のようなインフラとなるサービスを提供することで、顧客企業のビジネス変革を支援することを目指す Sansan株式会社(以下、Sansan)。2020 年 5 月よりサービスの提供を開始したクラウド請求書受領サービス Bill One の開発基盤として、また請求書を機械学習により解析し、OCR でテキスト化する機能の実現に Google Cloud を採用しています。このプロジェクトについて、CTO、および 3 名のエンジニアに話を伺いました。

利用している Google Cloud ソリューション

サーバーレス コンピューティング

利用している Google Cloud サービス

App EngineCloud RunCloud FunctionsCloud SQLCloud StorageCloud TasksGoogle Cloud ArmorAPI ゲートウェイCloud LoggingCloud TraceCloud MonitoringError ReportingVision APIプレミアム サポート

新規事業成功の鍵は開発スピードと柔軟な組織体制に対応できるプラットフォーム

「Sansan の強みは、新たな市場を創出できることです。2007 年に営業DXサービス Sansan から事業をスタートし、2012 年にキャリアプロフィール Eight、2020 年に Bill One をリリースするなど、マルチ プロダクトというキーワードで事業を急速に拡大しています。テクノロジーの観点では、技術の進化の予測が難しい中でプロダクトを適切なタイミングで開発していくことを目的に、常に多くの選択肢を持っておきたいという思いからマルチクラウド戦略を推進しています。会社の成長は新規事業の成功が鍵であり、新規事業の成功には開発スピードと柔軟な組織体制に対応できるプラットフォームが必要なことから Bill One の開発に Google Cloud を採用しています」と話すのは、執行役員 / CTO の藤倉氏です。

Bill One のコンセプトは、「請求書受領から、月次決算を加速する」こと。請求書の発行元は、郵送や PDF ファイルのメール添付、またはアップロードなど、これまでどおりの形式、方法で、送り先を Bill One に変更するだけで、データ化された請求書を Bill One がワンストップで受領し、専用データベースで一元管理できます。現在、有料契約件数は 575 件(2021 年 11 月末現在)。2020 年 5 月のサービス開始から著しい成長を遂げ、現在の月次経常収益は前年同期比で 10 倍以上となっています。

Bill One の開発 / 運用プラットフォームとして、Google Cloud が採用された背景には、運用負荷を低減して開発に集中すること、マルチクラウドを推進すること、先進技術にチャレンジすることの 3 つがありました。技術本部 Bill One Engineering Unit の加藤氏は、次のように話します。

「新規事業は、限られた人的リソースで、どれだけ開発に時間をかけられるかが成功の鍵になります。フルマネージドの Cloud Run は、インフラ管理が不要で、運用専任エンジニアがいなくても、アプリケーション開発担当エンジニアだけで運用できるので運用負荷を軽減でき、機能の開発に集中できます。当時は主に他社のクラウド サービスを使っていたので、マルチクラウド化し今後の選択肢を広げる意味でも Google Cloud にチャレンジしたいと思っていました。BigQuery や Google Kubernetes Engine(GKE)など、ウェブ開発をする上で魅力的なプロダクトが多かったことも Google Cloud を採用したいと思った理由でした。」

Bill One では、請求書の PDF ファイルは Cloud Storage に保管されています。また、本番環境でエラーが発生したときに通知することを目的に Error Reporting を、複数のサービスを横断的に管理するために Cloud Logging を採用することで運用を効率化しています。そのほか、WAF(Web Application Firewall)としてGoogle Cloud Armor、API 管理に API ゲートウェイなども利用しています。

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加藤氏は、「事業が拡大していくとパフォーマンスの懸念が出てきやすいですが、Google Cloud ではスケールしやすいので頼りになります。昼間に利用されることが多いというプロダクトの特性もありますが、安定して稼働しているので夜中にサービスが止まってオンコールで呼び出されることもありません。また、Google Cloud のサポートは、相談すると迅速かつ的確な回答がもらえるので助かっています。今後の機能改善においても、同様のサポートを期待しています」と話しています。

99.9% という高精度を実現する請求書のデータ化で Vision API を採用

Bill One では、名刺のデータ化で培ったテクノロジーとオペレーションによって 99.9% という高い精度で請求書のデータ化を実現しています。この開発 / 運用プラットフォームにも、Google Cloud を採用。Cloud Run 上の OCR 機能から Vision API を呼び出したり、App Engine スタンダード環境で OCR 機能を補助したりしています。OCR 機能は、以前は App Engine フレキシブル環境で動作していましたが、Cloud Run に移行することでスケールの高速化を実現しました。また、Cloud Logging や Cloud Trace、Cloud Monitoring、Error Reporting などを活用することで、システム開発が専門ではない研究員も開発に加わることができる工夫をしています。

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請求書をデジタル化する機械学習に Vision API が採用されたのは、営業DXサービス Sansan の開発での経験やノウハウがあったことが背景にあります。特に、どのような文書画像であっても、高い精度でテキスト化できることが評価されています。技術本部 研究開発部 Arcグループの島氏は、次のように話します。

「ほかの OCR 機能も試してみたのですが、精度や使い勝手の面で Vision API の方が優れていました。簡単、お手軽にアプリケーションを開発でき、複雑な設定をすることなく、アプリケーション開発の知識だけでインフラを運用できるのも便利です。開発中に分からないことがあっても、プレミアム サポートを利用することで、問題解決までスムーズに導いてもらえるので助かっています。」

GUI が分かりやすく、直感的に操作することができたことも Vision API をはじめとする Google Cloud のプロダクトを採用したメリットの 1 つです。例えば Cloud Run の画面では、どのようなエラーが発生しているのか、コンテナやメモリの状態はどのようになっているのかなどが表示されるので状況を一目で把握することができます。

技術本部 研究開発部 Arcグループの西原氏は、「重い画像処理があると実行時間がかかってしまいますが、Cloud Trace を使うことで、どの処理に時間がかかっているのかを研究員が容易に特定することができ、ピンポイントでアルゴリズムを改善することができます」と話しています。

全社、部門ごとのデータ分析と全社横断的なガバナンス管理の両立で BigQuery に期待

今後、Sansan では、プロダクト本体の開発はもちろん、全社横断的なデータ分析基盤でも Google Cloud を活用していく計画です。分析の対象が全社、または、プロダクトや部門によって求められるスピード感や優先順位が異なるため、よりインパクトの大きい取り組みとなります。データストアやデータレイクはそれぞれに持ち、ガバナンスは全社横断的に管理する 2 段階の構成によるアクセス権の厳密なコントロールが必要になります。そのための基盤として、BigQuery をはじめとする Google Cloud のプロダクトに期待が寄せられています。

藤倉氏は、「Google Cloud は、データの取り回しに魅力を感じています。データ分析基盤の実現では、Google Cloud のサポートが重要です。当初は、Google Cloud の導入に関して、手探りで実施してきた背景がありますが、当時から丁寧に寄り添ってサポート、支援をしてもらえました。直近では、より一層の支援を期待してプレミアム サポートを利用していますが、ビジネス チャットを使って気軽に問い合わせをすることができ、迅速なレスポンスがもらえるので本当に満足しています。今後も最新動向やイベントの情報などの提供に期待しています」と話しています。


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Sansan株式会社

2007 年 6 月に設立。「出会いからイノベーションを生み出す」というミッションに基づき、営業DXサービスの「Sansan」、キャリアプロフィールの「Eight」、クラウド請求書受領サービスの「Bill One」など、企業やビジネス パーソンのさまざまな DX ニーズに応えるマルチプロダクトの企画、開発、販売を事業として国内外で展開。NPO 支援、緑化支援、教育支援など、本業を通じて社会課題を解決する CSV(Creating Shared Value)活動にも取り組んでいる。

インタビュイー(写真左から)

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・執行役員 / CTO

 藤倉 成太 氏

・技術本部 Bill One Engineering Unit

 加藤 耕太 氏

・技術本部 研究開発部 Arcグループ

 島 貴宏 氏

・技術本部 研究開発部 Arcグループ

 西原 康貴 氏


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