コンテンツに移動
顧客事例

タイミー: BigQuery と Looker を軸にデータ基盤を構築、カスタマー サクセスを充実させ急成長を実現

2025年1月28日
https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/hero_image_timee_horizontal.max-2500x2500.jpg
Google Cloud Japan Team

株式会社タイミーは、空き時間を利用して単発や短時間のアルバイトをすぐに探せる「タイミー」を開発。 "スキマバイトサービス" と呼ばれる新たな求人マッチング事業を確立し、右肩上がりの成長を続けてきました。同社ではデータ基盤として BigQuery を、分析・可視化ツールとして Looker を導入し、業務効率化と全社的なデータの利活用、そしてカスタマー サクセスの充実による事業拡大を実現しています。データ基盤の構築や運用を担当する 3 名に、急成長の理由と先進的なデータ利活用戦略、そして今後のビジョンについて伺いました。

利用しているサービス:
BigQuery, Looker など

利用しているソリューション:
クラウドへのデータ移行, ビジネス インテリジェンスのモダナイゼーション

BigQuery と Looker でデータ基盤を整備し、業務の効率化と拡張性を確保

「一人ひとりの時間を豊かに」というビジョンのもと、株式会社タイミーは「働きたい時間」と「働いてほしい時間」をマッチングさせる "スキマバイトサービス"「タイミー」を提供。求職者は空き時間を利用して、企業側は働いてほしい時間や求めるスキルを設定するだけで、単発や短時間のアルバイトをすぐに確保できる「タイミー」は、新世代の仲介業態として大きな注目と支持を集めてきました。 利用者は 2018 年 8 月のサービス開始以来増え続け、登録者数は日本全国で約 900 万人を突破、登録事業所は 29 万 7,000 拠点以上に達しています(2024 年 9 月時点)。

https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/DSC02195final.max-700x700.jpg

この躍進を支えるのがデータの利活用戦略です。同社はサービス開始の約 1 年後から、本格的なデータ基盤の構築をスタート。まずデータ ウェアハウスとして BigQuery の導入に踏み切りました。データ基盤の構築を担当した、エンジニアリング本部 データエンジニアリング部 DREグループマネージャーの土川 稔生氏は、BigQuery を選択した理由を次のように説明します。

「『タイミー』はサービス提供開始と同時に大変な反響があり、社内外で取り扱うデータの量や種類も一気に増えました。当時は私が 1 人でデータ基盤の刷新を担当していましたので、なるべく管理に手間がかからないフル マネージド サービスを導入したいと考えました。また、Google Cloud はデータ分析ツールが充実しており、将来的にデータの量や種類がさらに増えても柔軟にスケーリングできます。BigQuery を軸にデータ基盤の構築を開始したのは、業務の効率化や拡張性を確保するために最適な判断だったと思います。」

BigQuery を軸としたデータ基盤の整備が進むなか、同社は新たな課題に直面します。当初、社内ではデータの分析や可視化を行うために、オープンソースの BI ツール が使用されていました。しかし、このツールは SQL ベースで動作しており、SQL を扱えるスタッフに作業負荷が集中。データの利活用が、専門知識を持っている人に限られてしまうという弊害も生じてきました。そこで分析・可視化ツールを Looker に切り替えます。土川氏によれば、これも合理的な選択でした。

「Looker は SQL のような専門的な知識がなくても使えますし、ダッシュボードやインターフェースもわかりやすいので、ビジネス ユーザー側はゼロスキルでデータを利活用できます。その意味では全社的な "データ利活用の民主化" を推進するうえで、大きなステップになったと思います。 LookML を併用すれば分析指標を明確にし、SSoT(Single Source of Truth: 信頼できる唯一の情報源)も確立できます。データの量や種類が増え続けていただけに、指標を維持することは極めて重要でした。」

https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/taimiYang_shisutemuGouChengTu_RuGaoYong.max-1900x1900.png

カスタマー サクセス施策の充実を支える、詳細なデータ モデリング

同社が BigQuery や Looker でデータ基盤を整備した背景には、別の目的もありました。そもそも「タイミー」は求人業界の一般的なビジネスモデルと異なり、利用企業との契約が成立した時点では売り上げが発生しません。あくまでも各事業所や店舗が募集を行い、実際に求職者からの応募があって初めて売り上げが確定します。加えて、時間のかかる面接を経ずに求職者と企業を直接マッチングさせるため、双方にとっての利便性や安心感、満足度を高めていくことが重要になります。エンジニアリング本部 データエンジニアリング部 部長の木村 豊氏は、この顧客満足度を高めていくプロセス、すなわちカスタマー サクセスの充実においても、データの利活用が鍵になると強調します。

https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/DSC02214final.max-900x900.jpg

「カスタマー サクセス チームの業務内容は、求人の文面作成や時給設定のアドバイス、マニュアル作成のサポート、課題解決に向けたコンサルティングなど多岐にわたります。このような状況できめ細かなサポートを行うためには、お客様のユースケースを事業所や店舗、日時単位で詳細に分析し、PDCA を回していくことが不可欠です。社内では、Looker のダッシュボードでデータを確認できないと、組織全体が止まってしまうとさえ言われますが、カスタマー サクセスの施策検討がデータ利活用の大部分を占めているのは、弊社の顕著な特徴だと思います。」

カスタマー サクセスを支援するためには、データの精度を高めつつ、最適化していく作業も求められます。エンジニアリング本部 データエンジニアリング部 DREグループ アナリティクスエンジニアの大河戸 裕一氏は、営業部やカスタマー サクセス チームが使用している CRM(Customer Relationship Management)ツールと Looker をシームレスに連携させるべく、データモデルを見直し続けてきました。

「弊社の営業やカスタマー サクセスが使用しているデータは、基本的に産業ドメイン、地域、企業規模の 3 軸で区分されています。しかし定められている KPI は各ドメインで当然異なりますし、市場やお客様のニーズも絶えず変わり続けています。ファクト(数値)やディメンション(構造)を壊さないようにしながら、さまざまな状況に対応していく。そのうえで最適なかたちで Looker で表示できるようにモデリングをしないと、現場で使いやすいデータは提供できません。」

大河戸氏はデータ モデリングにおいて、いかに精緻な作業が行われているかも明かしています。

https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/DSC02257final.max-1000x1000.jpg

「データを設計する際には、用語の定義にも細心の注意を払う必要があります。例えば『アクティブ』という単語は頻繁に使われますが、業界や部署が異なれば意味合い自体が変わってきます。しかもお客様もあまり厳密に定義されずに、なんとなく使ってしまうケースが多い。用語の定義はデータの正確性と不可分の関係にありますから、社内の営業担当やカスタマー サクセス担当に常にヒアリングを行い、データのドメインや各用語の定義を十全に擦り合わせるようにしています。この作業を行う際にも、Looker のカスタマイズ機能が役立っています。」

先進的なサービスの提供を可能にする、独自のデータ利活用戦略と目標設定

Google Cloud 製品を軸にしたデータドリブンなアプローチは、タイミーに大きな成果をもたらしました。木村氏は事業規模の堅調な拡大だけでなく、同社独自のアドバンテージの確立に寄与したことも挙げています。

「データ基盤を構築し始めた頃は従業員数が 50 人程度でしたが、今では 1,300 人を超えています(2024 年 11 月時点)。これだけ組織の規模が大きくなっても、比較的少人数で高品質なデータを提供できていること自体、Google Cloud を導入した成果の 1 つだと思います。関連して言えるのは、データ利活用の文化が浸透しただけでなく、その方法自体が発展してきたことです。我々は "完全性" と "適時性" という指標でもデータを評価します。しかし最も重視しているのはユースケースとの親和性、お客様や営業担当、カスタマー サクセスにとって本当に役立つデータを提供できているかという問題意識です。『タイミー』は先進的な事業だとお褒めいただくことが多いのですが、データ利活用のアプローチや、全社的にデータ管理に積極的に投資する姿勢こそが、弊社の先進性を支えていると言っても過言ではありません。」

タイミーは求人業界において、新たなビジネスモデルを確立することに成功。データ利活用の重要性と可能性を示すモデルケースにもなっています。最後に土川氏は、さらなる成長に向けた次の目標について語ってくれました。

「現在は生成 AI にも注目しています。弊社では "データ利活用の民主化" を進めてきましたが、自然言語で的確なデータが抽出できるようなシステムを構築できれば、裾野をより広げることができるからです。ただしデータ基盤にアクセスする人数が増えれば増えるほど、指標の維持が難しくなるのも事実です。このジレンマを解決するために、次の段階としてはデータ コントラクト(データのやり取りに関するフォーマットや構造などの定義)を社内で整備し、品質を担保することを検討しています。

今後はデータの利活用をスケールさせ、マッチングの精度向上、サービスの不正利用を防ぐガバナンスなども強化していきたいですね。『タイミー』は成長途中の事業ですし、弊社の組織や求人業界全体の構造もどんどん変わっていくでしょう。Google Cloud で築いたデータ基盤で変化に適応しながら、安心安全で便利に使っていただける弊社ならではのサービスを提供し続けていきたいと考えています。」


https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/DSC02301final.max-800x800.jpg

株式会社タイミー
2017 年 8 月設立。「働きたい時間」と「働いてほしい時間」をマッチングする "スキマバイトサービス"「タイミー」を運営。働き手は、働きたい仕事を選ぶだけで、履歴書・面接なしですぐに働くことができ、勤務後すぐに報酬を受け取ることが可能に。求人を行う事業者にとっては、来てほしい時間や求めるスキルを設定するだけで、条件にあった働き手が自動的にマッチングされるサービスを提供し、大きな注目と支持を集めている。

インタビュイー(写真左から)

・エンジニアリング本部 データエンジニアリング部 DREグループマネージャー 土川 稔生 氏
・エンジニアリング本部 データエンジニアリング部 部長 木村 豊 氏
・エンジニアリング本部 データエンジニアリング部 DREグループ アナリティクスエンジニア 大河戸 裕一 氏


その他の導入事例はこちらをご覧ください。

投稿先