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Google Maps Platform

Community Mobility: Google Maps Platform を活用したサービスで、交通空白解消へ

2026年2月3日
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Google Maps Platform Team

少子高齢化社会の到来は、生活のあらゆる部分に影響を及ぼしています。中でも喫緊の課題とされているのが、地方における交通です。公共性の高い交通サービスの需要が高まる中、逆にドライバー不足が深刻化し、社会生活の維持に支障をきたしつつあります。乗合型オンデマンド交通サービスの運営事業とコンサルティングを手掛ける Community Mobility株式会社(以下、Community Mobility)は、Google Maps Platform を活用して、この社会課題の解決に取り組んでいます。今回の記事では、同社の永橋 剛氏と、システム開発に携わった株式会社野村総合研究所(以下、野村総合研究所)の工藤 大樹氏にプロジェクトの概要について伺いました。

増加する「交通空白地帯」と高まる「ラスト ワンマイル」の重要性

Community Mobility は、都市間バスや地方鉄道をはじめとした移動サービスを手掛ける WILLER株式会社(以下、WILLER)と、大手通信会社の KDDI株式会社(以下、KDDI)の合弁会社として 2022 年に誕生。主要な交通拠点と最終目的地を結ぶ「ラスト ワンマイル」の移動手段として、乗合型オンデマンド交通サービス「mobi(モビ)」を開発・運用しています。その背景にあるのが社会的な変化です。同社 Product Div. で執行役員を務める永橋 剛氏は、特に地方において、交通手段の確保が喫緊の課題になっていると指摘します。

「高度経済成長期の日本では地方も含めて人口がどんどん増えていましたし、鉄道以外の交通網として路線バスやタクシーが充実していました。しかし近年は、地域住民の人口減少に伴う、利用者減少やドライバー不足による路線バスの廃線や減便などが起きています。ドライバーの高齢化も進んでいます。公共交通機関による移動手段の確保が困難な「交通空白地帯」の拡大が、ますます懸念されています。」

従来、日本の地方部では一人 1 台と呼ばれるような自家用車の普及が、生活の足を支えてきました。しかし高齢化の進行により、これも難しくなってきています。

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Community Mobility株式会社 永橋 剛 氏 

「高齢化により免許返納が増えると、病院や買い物といった日常的な移動でもタクシーや家族の送迎に頼らざるを得ない状況が発生します。弊社では、従来の公共交通機関や自家用車に代わる移動手段の確保を必要とする人が、今後さらに増加すると予想しています。また、地方では学校外の施設で部活動を行う若い世代にとっても、移動手段の確保が急務となっています。こうしたニーズは、運行本数が十分でない路線バス等の公共交通ではカバーしきれないため、皆で相乗りしながら低価格で利用できるサービスに対する需要が、地域における大きなボリュームゾーンとして存在していると考えられます。」

豊富な人流データと、安全管理のノウハウを B2G2C のモデルに反映

国土交通省は地方部におけるドライバー不足問題を解決すべく、2024 年に「交通空白」解消本部を設置。ライドシェア導入支援(約 600 自治体)、主要交通結節点(約 700 箇所)の二次交通アクセス向上支援、「日本版ライドシェア」や「公共ライドシェア」のバージョンアップと全国普及を目標に掲げています。Community Mobility では、「人とひと、人と街をつなぎ、街に新たな文化を生み出していく」というフィロソフィーのもと、電話やアプリで簡単に呼べる乗合型オンデマンド交通サービスである「mobi」を全国各地に展開してきました。昨今は、日本の交通法令や規制、特に日本市場により適した移動手段を提供すべく、自治体と連携してサービスを立ち上げるプロジェクトに注力しています。 

「弊社は基本的に『B2C』、運賃をお客さまから頂戴し、ドライバーに運行インセンティブを支払って、利益を出すビジネスモデルを展開してきました。しかし、やはり地方部での交通手段は公共性が高くなりますし、多くの自治体が新たな移動手段の確保に迫られていますので、最近は『mobi』と別枠で、自治体にオンデマンドシステムを貸し出す『B2G2C モデル』の取り組みが増えてきています。」

この新たなサービス開発を根底で支えるのが、豊富なデータと蓄積されたノウハウです。

「まず KDDI は、優れた人材を多数擁するだけでなく、さまざまな事業を通して蓄積された、豊富な人流データを持っています。データを活用することで、どこに乗降場所(仮想バス停)を設定すれば、最も利用者の利便性を高められるかという、サービス設計の肝となる分析が可能になります。WILLER は長年、高速バス等のサービス提供を通して、運行管理と安全管理のノウハウを蓄積してきました。」

一種ドライバーによる公共ライドシェアと、二種ドライバーによる乗合型オンデマンド交通サービスを同時開発

Community Mobility は日本各地で行っている実証実験の成果も踏まえつつ、2024 年 4 月から野村総合研究所とともにサービスの開発に着手。2025 年 1 月には、「第一種免許」を保持するドライバーによるライドシェアサービスがスタートしました。同年 4 月には、「第二種免許」を保持するドライバーによる乗合タクシーサービス(日本でも最大規模の乗合タクシーサービス)にも、Community Mobility が開発した新たな運用基盤が導入されました。

一連の開発作業を、永橋氏は次のように説明します。

「ビジネス的な視点では、各自治体の要望をどう落とし込むかがポイントになりました。自治体にはそれぞれの意向がありますし、交通事情や地域住民の方の居住状況も異なります。また、配車のニーズが多い箇所と少ない箇所でのサービスの棲み分け、相乗りだけでなく、シングルライドにも対応したいという要望、そして既存の公共交通への配慮があります。やはり公共交通事業者の方のご要望も反映するために、公聴会にも参加させていただきました。」

実際的なソリューションの選定においては、安定運用が鍵になりました。

「システム選定では複数のソリューションを検討しましたが、単純に比較検討する方法がないため、定量的な KPI は定めていませんでした。ただしシステムの安定性は、最重要項目に設定しました。利用者の目線で見た場合、予定していた車両に乗れないような状況が生じるのはかなり不便です。特に地方は交通サービスの公共性が強く、生活の問題に直結してきますので、システムの安定性が最重要になります。その点で Google Maps Platform は、比較した他社のソリューションよりも明らかに高い稼働率を誇っていましたので、採用することにしました。」

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株式会社野村総合研究所 工藤 大樹 氏

永橋氏によれば、Google Maps Platform の採用は、サービス開発における副次効果ももたらしています。「Google Maps Platform を採用することで、地図基盤やルート計算の安定性が担保されました。この結果エンジニア チームは、運用基盤のメンテナンスやトラブルシューティングに時間を費やす必要がなくなり、弊社独自の付加価値の向上や利便性の向上といった、本来注力すべき開発に安心して集中できるようになりました。これは、営業サイドにとって大きな安心感につながっていますし、弊社のサービスのセールス ポイントにもなっています。」

きめ細かなパラメータ設定と精度の高さで、サービスの実用性と安心感を確保

現在、Community Mobility が運用する「二種ドライバーによる乗合タクシーサービス」と「一種ドライバーによるライドシェア」では、Google Maps Platform モビリティ サービスをはじめとするさまざまな API が活用されています。特に重要な役割を果たすのは、乗客のオーダーと配車をマッチングさせつつ、予定された時間通りに運行を行っていく Route OptimizationRoutes API です。永橋氏は総合的な機能性の高さに改めて感銘を受けたと述べています。

「Google Maps Platform は、乗降に伴う待ち時間などのパラメータ設定も細かくできるので大変便利でした。例えば高齢者の方は乗り降りに時間がかかるので、マップデータ上では 10 分で到着すると示されていても、弊社では所要時間を 1.2 倍の 12 分に設定したりします。このような作業では、自治体が保有するデータや弊グループが保有するデータを活用しましたが、Google Maps Platform の導入支援を多数手掛けてきた Navagis さんにも、随時サポートいただきました。ルート計算も精度が高いですね。相乗りでは渋滞などによる遅延が発生すると、玉突きのように到着が遅れ、正確な情報の提供が難しくなります。しかし Google Maps Platform は、膨大なユーザーの情報も反映しながら、きわめて正確なデータを表示してくれます。このような精度の高さも、地図データとして世界で最も採用されているサービスならではだと思います。」

永橋氏と共に開発を行った、野村総合研究所の通信・サービスソリューション事業本部 通信プラットフォームビジネス部のシニアアソシエイトである工藤 大樹氏は、次のように振り返ります。

「開発の際にボトルネックは感じませんでした。Google Maps Platform は開発に必要なツールが揃っていますので、パラメータの設定をクリアした後は、順調に開発が進んだと思います。ただしショートスパンの開発で、他のサービスとの性能や精度の評価ができませんでしたので、精度に関する不安は残っていました。PoC などで検証をしたとはいえ、サービスインした直後は、ドライバーさんも、本当に表示された時間で目的に到着できるのかと心配していたと思います。しかし、これは杞憂に終わりました。小さなトラブルはありましたが、全体的に見ればドライバーさんが実際に運行可能な精度でルート案内がされているので安心しました。」

複数のサービスをシームレスに運用し、将来的な交通課題を解決

Google Maps Platform を利用したサービス提供は 2025 年に始まったばかりですが、乗合タクシーサービスはすでに大きな成果を上げています。

「先程お伝えした日本でも最大規模の乗合タクシーサービスは 2025 年 3 月末までは、電話で配車のオーダー処理を行っていたのですが、Google Maps Platform を活用した弊社のシステムを導入したことにより、1 日あたりの平均で 190 件ほどの乗車予約に対応できるようになりました。導入前に比べて、配車効率は格段に向上しています。運用の安定化と配車のキャパシティ増大は、返金などを巡るトラブルの回避にもつながっております。」

一方、「ライドシェア」は、ドライバーの確保やサービス運用の可能性を探るという意味においても、実り多きものとなっています。

「複数自治体が連携したサービスは、行政区の垣根を超えてサービスが提供されるだけでなく、自家用車で公共ライドシェア サービスを提供するドライバーの情報も共有され、より柔軟に運用できるようになっています。例えば、ある自治体は大学生が多いので、隣接する市で乗車予約が増えた際に対応するようなケースもありますし、自身が住んでいる市から隣の市に行く用事がある人は、それに合わせてライドシェアを提供していただくこともできます。つまり安全をしっかり確保しながら、地域住民の方々に交通の便を提供しつつ、空き時間や自身の移動に合わせて運賃を稼ぐ機会が得られる仕組みにもなっています。日本において、同様のサービスが実現しているケースは多くありません。」

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AI オンデマンド プラットフォーム「mobi」の紹介(Community Mobility 様資料を元に編集)

Community Mobility の取り組みは、各自治体から大きな期待を集めています。地域の交通事情や自治体の要請に応じて、従来型の「定時・定路線の運行」から「二種ドライバーによる乗合型オンデマンド交通サービス」、さらには「一種ドライバーによるライドシェアサービス」、最終的には「自動運転によるサービス提供」まで、将来的に移行していくシナリオも視野に入ってくるからです。

日本の地方部で急速に増加する、交通空白を解消するために。永橋氏は、新たな事業展開に向けたネクストステップをすでに見据えていました。

「交通課題を抱える自治体は今後一層、増えていくことが予想されています。日本には約 1,700 の自治体がありますが、特に人口の少ない地方部でサービスを持続可能にするためには、効率化を図るだけでなく、マネタイズの仕組みも必要不可欠になります。そのような点でも自治体と連携しつつ、Google Maps Platform を組み込んだ弊社の運用基盤を活用しながら、便利で安全なラスト ワンマイルの移動手段を、さらに広い地域に提供していきたいと考えています。」

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Community Mobility株式会社
2022 年 1 月、WILLER株式会社と KDDI株式会社の合弁会社として設立。「人とひと、人と街をつなぎ、街に新たな文化を生み出していく」をミッションに掲げ、乗合型オンデマンド交通サービス「mobi(モビ)」を全国で展開してきた。2024 年からは、Google Maps Platform を利用した、新たな公共ライドシェアサービスの開発に着手。地方自治体と連携しながら、安価で便利に利用できるラスト ワンマイルの移動手段の開発・提供・利用普及を促進している。

株式会社野村総合研究所(NRI)
1965 年、日本初の民間総合シンクタンクとして設立。「未来創発」を理念に掲げ、社会や企業の課題を分析し未来を洞察する「コンサルティング」と、それを実行に移すための「IT ソリューション」の提案を組み合わせた、「コンソリューション」を幅広く提供。近年は金融以外に、流通、製造、サービス業など、多様な産業分野において顧客の DX やサービス開発を支援。Community Mobility株式会社とともに、Google Maps Platform を活用したライドシェアサービスや乗合タクシーサービスのシステム開発を行った。

インタビュイー(左から)
株式会社野村総合研究所  
通信・サービスソリューション事業本部 通信プラットフォームビジネス部 シニアアソシエイト 工藤 大樹 氏 

Community Mobility株式会社
Product Div. 執行役員 永橋 剛 氏 

NAVAGIS, Inc
(Google Cloud パートナー)
・シニアビジネスディベロップメントマネージャー 山田 渉氏
・ソリューション アーキテクト  赤澤 臣氏

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