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顧客事例

JALインフォテック: オンプレミス刷新と生成 AI 導入による Lift & Transform で、業務効率化や人材育成などを推進

2025年1月27日
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Google Cloud Japan Team

高い安全性と信頼性が求められる航空運送事業を、 IT やデジタル技術の活用で支える株式会社JALインフォテック(以下、JIT)。同社では、社内の基幹システムをオンプレミス上の仮想マシン(VM)基盤で、開発・運用してきましたが、VM 基盤を Google Cloud に移行。クラウドシフトへの取り組みを進めながら、生成 AI も導入しています。これらの Lift & Transform について、クラウド基盤運営グループの担当者 3 名、および開発プロジェクトをサポートした富士ソフト株式会社(以下、富士ソフト)の責任者に話を伺いました。

利用しているサービス:
Compute EngineVMware EngineVertex AI

利用しているソリューション:
クラウドへのデータセンター移行

運用基盤刷新、マルチクラウドに対応できる人材の育成などを目的に Google Cloud を採用

JAL グループの IT 中核企業である JIT では、社内で利用する購買システムや請求関連システム、認証システムなどの基幹システムを、オンプレミス上の仮想マシン(VM)基盤で運用してきました。

しかし、オンプレミスのハードウェア保守の終了が近づいたことから、既存のハードウェアを刷新するか、パブリック クラウドに移行するという選択が迫られていました。一方、オンプレミスとパブリック クラウドで構成されるハイブリッド クラウドは、維持管理の範囲が広く運用の負荷が大きいため、作業の効率化や負荷軽減、リソースの有効活用などが急務となっていました。これらの課題をクリアすべく、検討されたのが Google Cloud の採用でした。

JIT サービス事業本部 IT基盤事業部 ハイブリッドクラウド基盤部 クラウド基盤運営グループ長の瀬崎 健太郎氏は、プロジェクト開始前の状況を次のように語ります。

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「今日まで培ってきた経験やノウハウをフルに活用すれば、従来と同じ運用体制を維持しても、業務に必要な社内プラットフォームの環境はすぐに構築できたと思います。しかし、私たちが目指したのは新しい技術領域に挑戦すること、クラウド ネイティブの環境を視野に入れ、自由な発想や持続的な成長を可能にする基盤を構築していくことでした。オンプレミスの VM 環境同様、ハイブリッド クラウドの運用方法も Google Cloud で刷新していけば、プラットフォームやネットワーク構成パターンを柔軟に使い分けながら、さまざまな派生効果を生み出すことが期待できます。中期経営計画で『マルチクラウドに対応できる人材を育成する』という方針が決まったことも、Google Cloud を採用した理由の 1 つでした。」

瀬崎氏が率いるプロジェクト チームは、2023 年 10 月からシステム刷新の方向性やタイムライン、担当チーム、利用するプロダクトなどの検討を開始し、11 月に Google Cloud 採用を決定。同時に Google 関係者との共同ワークショップ形式で、現行課題の洗い出しと設計による解決方法をディスカッションしました。2024 年 6 月からは VMware Engine の実装、Compute Engine や Cloud SQL へのデータベースの移行を経て、10 月下旬に本番運用を開始するなど、構想から約 1 年で一連の作業を完了させています。

新たなシステムは運用が始まったばかりですが、JIT サービス事業本部 IT基盤事業部 ハイブリッドクラウド基盤部 クラウド基盤運営グループ チーフの井上 いず美氏は、すでに効果を実感し始めていました。

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「まず印象に残ったのは、オンプレミスで使っていた VM 環境と同じような使い勝手の良さを維持しながら、はるかに効率的にシステム運用ができるようになったことです。Google Cloud が提供するマネージド サービスの恩恵も、日々、実感しています。以前のオンプレミスでは物理環境の保守・運用がかなり大変でしたが、マネージド サービスは設定や一部のメンテナンスをクラウド事業者側がやってくれますので、作業負荷がかなり軽減されました。またクラウド側のポテンシャルをフルに発揮できない、構成変更ができないといった課題がクリアできたのも収穫です。ただし、これはあくまでも通過点にすぎません。次のステップでは VM 基盤を、 Cloud Run や Google Kubernetes Engine(GKE)などを利用したサーバーレスのコンテナ アーキテクチャに移行していきたいと考えています。」

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Vertex AI を導入した Chatbot を活用し、アプリ開発の効率化とナレッジ蓄積を実現

JIT は「JAL グループの実験場となり、イノベーションを創出するためのデジタル スタジオとしての役割を果たす」という指針の実現に向け、技術開発の可能性を模索し続けてきました。 当プロジェクトでは、その一環として Vertex AI も導入。アプリ開発部門とプラットフォーム運営部門の双方を対象にした、社内業務の効率化を図っています。

以前の社内環境では、アプリ開発に必要なガイドラインや設計指針などの情報をすぐに探すのが難しい、運営部門に多くの問い合わせをしなければならない、問題解決までに時間がかかるといった問題が発生していました。これらを解決する方法として採用されたのが、 Vertex AI です。JIT サービス事業本部 IT基盤事業部 ハイブリッドクラウド基盤部 クラウド基盤運営グループ チーフの爰野 寛太氏は、ソリューションの仕組みを説明しています。

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「今回はチャットボットを構築し、誰でも簡単に必要な情報を検索できるようにしました。Vertex AI はデータの取得と検索用の処理をすべて任せられますので、非常にスピーディに立ち上げることができました。さらには BigQuery を組み合わせて不足しているデータをチェックしつつ、承認された情報(記事)を Cloud Storage に格納し、データやナレッジを半自動的に蓄積するシステムも構築しました。Vertex AI はマルチモーダルに対応していますので、システム構成図も取り込み、アプリ開発の際のリスクポイントや改善点も確認できるようにしています。」

本事例は、インフラのエンジニアでも AI チャットボットの利用を推進できることを示す、理想的な参考例になりました。爰野氏は、意欲的な取り組みの根底にあったのは、Google Cloud のアプローチに共通する発想だったと指摘します。

「もともと Google Cloud は、セキュリティをしっかり担保しつつデータを効率的に集約し、誰もが利用できるようにするという発想に立っています。これは組織の壁を乗り越えて情報を活用する、あるいはさまざまな開発者のアイデアを集め、具現化しやすくするうえでも有用です。現在の検索システムはまだプロトタイプ的なものですが、より機能を充実させ、組織横断でデータや生成 AI をどんどん活用できるプラットフォームを構築したり、 Cloud Run で本格的に展開したりすることも計画しています。」

Google Cloud と同じ発想に基づき、さらなる Lift & Transform を推進

今回、ビジネス要件の確認から技術要件の確認、概要設計、移行作業までの一連のプロジェクトをサポートしたのは、Google Cloud の Infrastructure Modernization 支援パートナーである富士ソフトです。JIT のプロジェクト メンバーもサポートを高く評価していました。

「Google Cloud の利用は初めてだったので、わからないことがあると都度相談していましたが、これまでの知見や他社の事例などから的確なアドバイスを提供してもらえたので本当に助かりました。Google Cloud 同様、富士ソフトにも伴走型のサポートを提供してもらえたのは、短期間での移行の実現につながったと思います。」(爰野氏)

富士ソフト ソリューション事業本部 インフラ事業部 インフライノベーション部 部長の清水 歩氏は、JIT や Google との共同作業をこう振り返ります。

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「Google Cloud はコンソールの GUI が使いやすいだけでなく、Cloud Shell によりコマンドベースでも管理できるので、 JIT の開発メンバーにも好評でした。予定通り目的を達成できたことはもちろん、開発に関わるメンバーが団結して一気にプロジェクトを進めることができたのも、Google Cloud のメリットだと感じています。今後も JIT の開発プロジェクトをサポートすべく、開発メンバーに後方支援を提供していく予定です。」

JIT は Google Cloud の導入を通して、新たな価値を生み出すための Lift & Transform を加速させています。瀬崎氏は次の一手、新たな「トランスフォーム(変革)」の目標を見据えていました。

「プロジェクトが実り多いものとなったのは、やはり常に新しい目標に挑戦していくという我が社の姿勢が、Google Cloud のコンセプトに共通していたからでしょう。本事例の取り組みは社内でも非常に評価され、中期経営計画に追加されるようになりました。他の部門からも Google Cloud を使ってみたいという声が数多く寄せられていますので、Google Cloud にさらなる学びの場や知見、ノウハウなどを共有いただきながら、積極的に刷新を進めていきたいと考えています。」


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(本プロジェクトに関わっている、JALインフォテック、富士ソフトの開発メンバー)

株式会社JALインフォテック
1978 年 8 月に設立。「全社員の物心両面の幸福を追求する」という JALグループの企業理念に基づき、IT コンサル、ソリューション・サービス、システム開発、システム運用・保守、フィールド IT サービスなど、システム開発に関連するさまざまな業務を事業として展開。研鑽を積んだ IT 技術で社会に貢献することを目指しています。

富士ソフト株式会社
(Google Cloud パートナー)

1970 年 5 月、独立系 IT ソリューション ベンダーとして設立。自動車や電子機器などの組込系ソフトウェア開発と、金融、製造、流通などの業務系システム構築の 2 本柱を主力事業に、プロダクト事業やアウトソーシング事業などをグローバルに展開。技術とソリューションの融合により、新たな付加価値とビジネスチャンスの創出を目指しています。

インタビュイー

株式会社JALインフォテック

・サービス事業本部 IT基盤事業部 ハイブリッドクラウド基盤部
 クラウド基盤運営グループ長 瀬崎 健太郎 氏

・サービス事業本部 IT基盤事業部 ハイブリッドクラウド基盤部
 クラウド基盤運営グループ チーフ 爰野 寛太 氏

・サービス事業本部 IT基盤事業部 ハイブリッドクラウド基盤部
 クラウド基盤運営グループ チーフ 井上 いず美 氏

富士ソフト株式会社

・ソリューション事業本部 インフラ事業部
 インフライノベーション部 部長 清水 歩 氏


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