Gakken LEAP の挑戦:Google Cloud と生成 AI で実現する「学び」の進化
Google Cloud Japan Team
編集者注: Google Cloud を利用する企業のリーダーの皆様にお話を伺い、想いを語っていただく Google Cloud Leader’s Story。本記事では、株式会社 Gakken LEAP(以下、Gakken LEAP )のエンジニアリング部の部長である山下 芳生氏に話を伺いました。
学びたい大人を応援する、資格学習プラットフォーム「Shikaku Pass」。金融、IT、語学など、現代社会で必要とされるスキル習得を支援するこのサービスを開発・運営しているのが、学研グループのスタートアップ企業 Gakken LEAP です。スタートアップのスピード感と大企業の安定感を併せ持つ同社で、エンジニアリング部長を務める山下氏とインフラエンジニアの鄧氏にお話を伺いました。
利用しているサービス:Vertex AI、Gemini Pro、Cloud Storage、Cloud Build、Artifact Registry、Cloud Run、Cloud Functions、Cloud Logging、API Gateway
利用しているソリューション:Generative AI
教育 × IT で社会貢献を目指す、Gakken LEAP
「勉強嫌いな私でも最後までできた!と思えるプロダクトにしたい」と語る山下氏。ビリヤードのプロを目指していたという異色の経歴を持つ山下氏は、様々な経験を経てエンジニアの道へ。複数の企業で経験を積み、新規事業の PdM やテックリードを経て、現在はGakken LEAP でエンジニアリング部長としてチームを率いています。
学研グループといえば、子供向けの教育事業をイメージする方が多いかもしれません。しかし、近年注目を集めるリスキリング、リカレント教育市場への参入を目指し、大人の学びに特化したサービス「Shikaku Pass」が誕生しました。
Shikaku Pass は、金融、IT、語学の 3 つの分野に特化した資格学習プラットフォームです。現代社会で必要とされるスキルを習得できるよう、豊富な講座を提供しています。今後の展望として、士業資格などさらに専門性の高い講座の拡充も視野に入れているとのこと。
Shikaku Pass を開発している Gakken LEAP は、老舗出版社である学研ホールディングス傘下のスタートアップ企業です。スタートアップでありながら、大企業の安定感も併せ持つ、バランスの取れた環境が魅力だと山下氏は語ります。グループ企業にありそうと思われがちな上層部からの過度の干渉もなく、社員一人ひとりの意見や提案を尊重する風土の中で、チーム一丸となってサービス開発に取り組んでいます。
教育分野のサービス開発は、オンライン学習のデファクト スタンダードが確立されていないからこそ、難しさもあるが面白さもあると山下氏は語ります。紙媒体が主流の学習において、オンライン学習の可能性を追求し、テクノロジーを駆使した新しい学習体験の創出を目指しています。
Google Cloud と生成 AI で実現する、Shikaku Pass の進化
Shikaku Pass では、学習サポート機能の一つとして生成 AI を活用した「AI 質問」機能をベータ版として導入。ユーザーは、学習や資格情報について分からない点を AI に質問することで、回答を得ることができます。
Google Cloud を採用した理由について、山下氏は「学習サポートを取り入れたいと考えていた際に、Gemini の性能が魅力的だった」と語ります。動画コンテンツの解釈や文字起こし、さらには動画レコメンド機能の実装など、Gemini の活用により、学習体験の向上を目指していると言います。更に、「Gemini の高いトークン数と、Google Cloud のアカウントチームからの手厚いサポートも決め手の一つになりました。今後は、プロンプト エンジニアリングの専門性向上や、モデルのライフサイクルの早さといった課題にも向き合いながら、生成 AI の活用を展開していきたい」と語ります。
インフラエンジニアの鄧氏は、Google Cloud を初めて利用した感想として「Vertex AI など、機械学習系のサービスが簡単に使えるため、AI を活用した開発のハードルが下がった。加えて、Cloud Logging の ログ エクスプローラー は、ログ検索や分析を効率的に行えるため、開発効率の向上に繋がっている」と言います。
AI 質問機能の開発においては、パラメータ チューニングやプロンプト チューニングなど、技術的な課題もあったと語ります。回答内容に制約を設ける必要があり、試行錯誤を繰り返しながら精度を高めていきました。現在もベータ版として運用しながら、さらなる改善に取り組んでいます。
データ分析基盤の構築と、さらなる事業成長が出来るエンジニア集団を目指して
Shikaku Pass の今後の展望として、山下氏は「パーソナライズされたアダプティブ ラーニングの実現」を掲げています。個々人に最適化された学習プランの作成や、学習進捗に応じた適切なフィードバック、モチベーション維持のための声かけなど、まるで学習コンシェルジュのような機能の実装を目指しています。
生成 AI の活用は、サポート機能の拡充だけでなく、問題やコンテンツ作成の自動化にも期待が寄せられています。コンテンツ作成にかかるコストを削減し、ユーザーのニーズに応じた豊富な問題を提供することで、学習効果の向上に繋げたいと考えています。
鄧氏は、システム基盤の整備、自動化、開発効率化を進めることで、より多くのユーザー獲得を目指したいと語ります。BigQuery や Dataflow など、Google Cloud のデータ分析系サービスにも興味があり、今後の活用に期待を寄せています。
Gakken LEAP は、Shikaku Pass を通して学習における成功体験を提供することで、これまでの学習が得意でない方も継続的に学習ができる様になり、資格取得だけではなく人生をより豊かにできることを目指しています。さらなる事業展開に向けて、教育と IT の両方にパッションを持ち能動的に行動できるエンジニアを求めています。山下氏は「受け身ではなく、自ら提案し、アイデアを形にできる人と一緒に働きたい。教育分野で幅広いコンテンツを内製で開発している Gakken LEAP は、事業と近い距離でエンジニアリングができることが大きな強み」と語ります。鄧氏も「積極的に提案し、自分のアイデアを形にできるような人と働きたい」と言い、共に未来を創造したい方への熱い想いと期待を語りました。
株式会社 Gakken LEAP
学研グループの IT スタートアップとして EdTech に代表される次世代新規ビジネス創出を目的に2021年12月に設立。学研グループがもつ長年の教育を中心としたさまざまなアセットを活用しながら、最先端技術を取り入れて、飛躍的な成長を達成することを目標とする。現在は自社プロダクト「Shikaku Pass」をグロースさせる一方、グループ全体の IT の枠を超えた戦略、またグループ各社の DX をも担う。
インタビュイー
株式会社 Gakken LEAP エンジニアリング部 部長 山下 芳生氏、エンジニア 鄧 文章氏