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顧客事例

パナソニック: 世界 70 か国のレビューを翻訳・深層分析し Looker Studio で可視化、エアコン アプリの満足度を大幅に向上

2024年7月11日
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Google Cloud Japan Team

一般消費者向けの家電製品や照明器具の販売・製造、そして企業向けの事業まで幅広く手掛ける大手電機メーカーのパナソニック株式会社(以下、パナソニック)。同社で空調・空質関連の事業を専門に扱う空質空調社では、株式会社イー・エージェンシー(以下、イー・エージェンシー)の支援のもとで、海外市場向けのエアコンを操作するスマートフォン アプリ「Panasonic Comfort Cloud(パナソニック コンフォート クラウド)」の改善を行うためのダッシュボード システムを構築。基盤として Google Cloud および Looker Studio を採用しました。今回はこのシステムの開発および運用に携わる 4 名に話を伺いました。

利用しているサービス:
BigQuery, Looker Studio, Cloud Translation API, Natural Language API, Cloud Functions, Cloud Scheduler, Cloud Storage

世界各国のユーザーの声を集約・分析し、可視化できる仕組みを Google Cloud で構築

パナソニックが提供している Panasonic Comfort Cloud(以下、Comfort Cloud)は、スマートフォンやタブレットを使用して、インターネット経由で空調機器を操作できるアプリです。誰でも簡単にアプリストアからダウンロードし、家庭のエアコンや温水暖房機、オフィス・カフェなどの業務用エアコンの操作やタイマー設定、消費電力量の確認などを行える便利なツールとして、日本を除く世界 70 か国以上で提供されてきました。

Comfort Cloud の開発および運用を手掛けてきた同社の空質空調社では、近年、ユーザー レビューを可視化して効果的に分析し、アプリの改善に活かせるような仕組みづくりに取り組んでいました。パナソニック株式会社 空質空調社 ソリューション事業開発センター カスタマーサクセス部 事業推進課の徳廣 美沙氏は、その背景を次のように説明します。

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「アプリストアのユーザー レビューというのは、本来は私たちにとって宝の山です。お客さまの意見を適切に拾い上げることができれば、アプリの機能改善や、各国の特性に合わせた施策の展開などにつなげられるからです。しかし、かつてはレビューをうまく活用しきれない状態でした。そもそも Comfort Cloud はグローバルに展開しているアプリなので、レビューは多様な言語で投稿されますが、外国語を日本語に正確に翻訳するのは簡単な作業ではありません。レビューの数自体が膨大なので、業務を効率化して運用コストを抑えることが求められていました。」

ユーザー レビューの分析には、もう 1 つの課題もありました。世界規模で多数の国に展開している Comfort Cloud では、国や地域ごとにアプリに対する要望が異なりますが、日本人の感覚では文脈を把握しにくいのが実情です。パナソニック株式会社 CXマーケティングセンター デジタルマーケティング部 プラットフォーム課の北垣 将臣氏は、ユーザーの真意を正確に理解するための取り組みについて、次のように説明しています。

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「アプリに対する要望の違いは国や地域の違いに根ざしているケースも多いのですが、そういった要素は全体を俯瞰して初めて気づくことができたりします。何より、単純な言語の違いの奥に潜む文化の違いがあるため、例えば低い評価が付いたとしても問題の本質を読み解くことが難しいなど、レビューを的確に評価するのに苦労していました。」

これらの壁を乗り越え、Comfort Cloud をより使いやすくしていくために行われたのが、Google Cloud でレビューデータを集約・分析し、可視化できるシステムの開発でした。

Translation API、Natural Language API、Looker Studio で包括的分析を実現

システム開発にあたっては、データの収集や分析のインフラとして Google Cloud を活用しながら、Looker Studio でダッシュボードを構築する方針が定められました。北垣氏によれば、Google Cloud の製品が採用されたのは自然な流れでした。

「もともとパナソニックでは製品の Web サイトで Google Analytics を利用しており、トラフィック データの可視化がしやすいことを認識していました。Looker Studio もデータ可視化のツールとして高く評価されていますし、Google Cloud には自動翻訳用の Cloud Translation API や、キーワードやユーザーのセンチメントを抽出する Natural Language API などが揃っていますので、真っ先に採用候補に挙がりました。ダッシュボードの分析結果は海外のメンバーとも共有する必要があるため、Google アカウントを持っていれば誰でもすぐにシステムを使えることも魅力的でした。」

この方針に基づき、ダッシュボード システムのバックエンドの開発を担当したのがイー・エージェンシーです。同社は Google Cloud と Google マーケティング プラットフォームを利用した、企業のデータ活用支援事業を展開。パナソニックのデジタル マーケティングの支援にも携わり、本事業でも企画段階からコラボレーションを行ってきました。

株式会社イー・エージェンシー データ事業部 データソリューション部 カスタマーサクセス課 カスタマーサクセスの飯島 聡氏は、ダッシュボードの構築において以下の点に注力したと振り返ります。

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「ダッシュボードでは、異なるデータソースの情報を 1 つの画面で見やすく表示すること、実際の業務に向けた分析をしやすくすることなどに配慮しました。具体的には、ユーザーの居住国、利用されている言語などでフィルタリングできるようにし、アプリのアップデートによる影響なども Looker Studio で細かく分析できるように工夫しています。 単にレビュー情報を見える化するだけでは意味がありませんので、ユーザーが Comfort Cloud や個々の機能をどのように使い、いかなる文脈で評価しているのかといった、一歩踏み込んだ内容まで簡単に把握できるようにしました。」

一方、株式会社イー・エージェンシー データ事業部 データソリューション部 データインテグレーション課 データエンジニアの木村 剛氏は、バックエンド システムにおいて、Google Cloud 製品がいかに有機的に連携されているかを解説します。

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「Comfort Cloud のダッシュボードでは、基幹システムのデータや Web サイトのトラフィック データなども BigQuery に取り込み、アプリストアのダウンロード状況やレビューの点数などと組み合わせながら、一気通貫で Looker Studio で確認できることが強みになっています。Google Cloud はプロダクト同士の連携がしやすく、Cloud Functions がさまざまなライブラリを強力にサポートしているので、ほとんどの機能が API を呼び出すだけで実行できます。リソース管理も任せられるので、運用の負荷も軽減しながらシステム全体をシームレスかつシンプルにまとめることができました。イー・エージェンシーが Google Cloud 製品を活用してきたのは開発のしやすさによるもので、今回のプロジェクトでも実装期間は 2、3 か月のみでした。」

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ダッシュボードの活用で、ユーザーに目を向け継続的にアプリを改善する体制を確立

Google Cloud を基盤にしたダッシュボード システムの導入は、大きな効果をもたらしました。徳廣氏は、Comfort Cloud アプリに対する Google Play ストアでのレビュー スコアがアプリのリリース当初から劇的に向上するなど、カスタマーの満足度を著しく高めることに成功したと胸を張ります。

「Looker Studio でユーザーの声を可視化できたことによって、特にクレームが多い機能については優先的に改善したり、新機能を検討する際にも、レビューを基にして要望に添っているかを確認するといった取り組みが可能になりました。また、データ分析にかかっていた運用コストも、かなり削減できました。ダッシュボードは開発チームや企画チームとも共有しており、社内全体で継続的にユーザーに目を向けてアプリを改善していく体制が整ったと感じています。」

北垣氏は、ダッシュボード システムの採用が、新たなマーケティング施策の展開、部門間の垣根を超えたデータ共有の流れ、ひいてはデータ分析自体に対する社内の意識高揚など、多くの波及効果をもたらしていると指摘。Comfort Cloud 事業で得られた知見を、他の家電製品のサービスや他の事業にも横展開していきたいと締めくくりました。

「現在は、空質空調社の Comfort Cloud をはじめとするアプリと一部の Web データが Looker Studioで可視化されている状態ですが、その他のサービスも巻き込んだ分析と共有ができれば、全社的な顧客価値の向上につながるでしょう。マーケティングの視点では、各国の文化的な要素や、広告をはじめとするさまざまな活動から発生するデータも連携し、顧客ファネル全体の可視化にも取り組んでいきたいと考えています。私自身、データを分析すればするほど、その深さとおもしろさがわかり、特にマーケティングとの連携は大きな可能性を秘めていると日々実感しています。今後もイー・エージェンシーとタッグを組みながら、どんどん新たな可能性を模索していければと考えています。」


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パナソニック株式会社
パナソニック株式会社 空質空調社
1918 年創業。エレクトロニクス、ホームアプライアンス、オートモーティブ、B2B ソリューションなど幅広い事業セグメントを誇り、世界各国で事業を展開するグローバルな電機メーカー。2022 年に持株会社制に移行し、パナソニック ホールディングス株式会社を親会社として、家電事業や空質空調事業、食品流通事業などを担当する現在のパナソニック株式会社が設立された。「私たちは企業人として、社会の発展に貢献するという意識を持って、この使命をたゆみなく実践し続けていく」という経営基本方針に基づき、技術革新と製品開発に取り組んでいる。

株式会社イー・エージェンシー
(Google Cloud パートナー)
1999 年設立。データ ドリブン マーケティング、マーケティング支援プロダクト、E コマース支援事業の 3 つの事業を核として、さまざまな企業のデジタル マーケティングの支援を展開。古来から日本人が持っている他人への配慮や気遣い、心配りといったものにテクノロジーを役立てる / 活用するという意味を込めた「おもてなしを科学する」をビジョンとして掲げ、革新的で心のこもった商品・サービスを提供している。

インタビュイー(写真右から)
・パナソニック株式会社
 CXマーケティングセンター デジタルマーケティング部 プラットフォーム課
 北垣 将臣 氏
・パナソニック株式会社 空質空調社
 ソリューション事業開発センター カスタマーサクセス部 事業推進課
 徳廣 美沙 氏
・株式会社イー・エージェンシー
 データ事業部 データソリューション部 カスタマーサクセス課 カスタマーサクセス
 飯島 聡 氏
・株式会社イー・エージェンシー
 データ事業部 データソリューション部 データインテグレーション課 データエンジニア
 木村 剛 氏


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