2023 年専門小売店向けユニファイド コマース ベンチマークの重要なポイント
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2023 年 5 月 18 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
新たな消費時代が訪れ、商取引の仕組みが変わってきています。急速に進化する今日のエコシステムにおいて、デジタルと対面でのエンゲージメント全体で真に統一されたエクスペリエンスを提供することが、小売業者の差別化の中心となっています。すべてのチャネルにわたって一貫したショッピング エクスペリエンスを消費者に提供するオムニチャネル コマースによって小売業が強化されていますが、ユニファイド コマースはそのエクスペリエンスをさらに高めるものです。
ユニファイド コマースとは
ユニファイド コマースは、小売業者のフロントエンドとバックエンドのシステムを組み合わせ、すべてのチャネルで顧客、在庫、注文を完全に可視化するものです。これにより適切な意思決定が可能になり、高度にパーソナライズされたカスタマー エクスペリエンスを提供できるようになるため、最終的にロイヤリティが向上し、収益が増加します。
業界初のユニファイド コマース ベンチマークを導入
この度、Google Cloud、Manhattan Associates、Zebra Technologies がIncisiv と共同で、小売業界初のユニファイド コマース ベンチマークを実施しました。この調査の目的は、デジタルおよび物理チャネルにおける顧客の購入、返品、ショッピング ジャーニーから得られた実際のデータに基づいて、どの小売業者が優れたユニファイド コマース エクスペリエンスを提供しているかを調べ、それらの企業が同業他社に対して競争優位性を獲得しているかを確認することでした。
2023 年の Unified Commerce Benchmark for Specialty Retail(専門小売店向けユニファイド コマース ベンチマーク)では、11 の専門小売店セグメントにおける 124 の小売業者を対象に、次の 4 つの主要分野で 286 の主要な属性の実装状況を検証しています。
検索と見つけやすさ
カートと購入手続き
確約と商品発送
サービスとサポート
競合他社を最大 6 倍も上回る収益拡大を実現
ベンチマーク調査による最も重要な結論は、ユニファイド コマースにおいてリーダーと評価されている企業は、同業他社と比較して年間収益が 3~6 倍拡大しているということです。一方、現在チャレンジャーと評価されている専門小売店は、ユニファイド コマースの成熟度をチャレンジャーからリーダーに改善することで、年間収益 10 億ドルあたり約 4,000 万ドルの収益増加が見込まれます。
ほとんどの小売業者は、チャネル全体でカスタマー エクスペリエンスを基本的に統合していますが、ベンチマーク対象の 124 社のうち、よりきめ細かく充実したカスタマー エクスペリエンスを提供することに尽力し、他社と一線を画した小売業者はわずか 15 社です。新たにユニファイド コマースモデルを導入する小売業者に共通の課題として次のようなものが挙げられます。
パーソナライズ - 買い物客の全チャネルでの購入履歴やあとで買うリストに店員がアクセスできるようにしている小売業者はわずか 38% にすぎず、買い物客の購入意欲を見極め、期待に応えるパーソナライズされたエクスペリエンスを提供することが困難になっています。
リアルタイムの在庫の可視化 - 商品詳細ページでリアルタイムの在庫データを提供している小売業者はわずか 29% で、割り当て可能な在庫と販売可能な在庫を十分に可視化できていません。
利便性と支払いの柔軟性 - 注文確定後に、購入品の受け取り方法を変更できるオプションを提供している小売業者は 15% のみで、複数の支払いオプションと配達オプションの提供が制限されています。
以下では、専門小売店がユニファイド コマースのリーダーになるために、データ、AI、専用テクノロジーを活用する方法について、その他の重要なポイントと事例をいくつかご紹介します。
1. 検索と見つけやすさ
小売業者の 95% は、買い物客がニーズに合わせて関連商品を見つけられるよう、高度なフィルタ オプションや並べ替えオプションを提供していますが、買い物客がサステナビリティの観点でフィルタできるのは 40%、画像で商品を検索できるのは 5% にすぎません。
ユニファイド コマースのリーダーは、買い物客が何を求めているかを理解し、最も有意義な商品やサービスを提供することで、高度にパーソナライズされたエクスペリエンスを提供しています。また、最新のスタイル トレンドについての情報を提供して買い物客にインスピレーションを与え、オンラインでのスマートな検索とフィルタ オプションを通じて関連商品を簡単に見つけられるようにしています。一方、買い物客は、商品が品切れでも取り寄せ注文できるなど、店頭でも同様のガイド付きサポートを受けられます。このような小売業者は、使用する素材やサプライ チェーン全体での温室効果ガス排出量など、サステナビリティへの配慮について透明性を高め、何を誰から買っているのかに関して買い物客が納得し、安心して買えるようにしています。
レコメンデーションの改善、検索放棄の減少、検索カテゴリの増加を実現するために、多くの小売業者は Google 品質の検索、ブラウジング、レコメンデーション機能を活用しています。Google Cloud Discovery AI for Retail は、チャネル全体での顧客行動、コンテンツ、SKU の微妙な違いに基づいてパーソナライズした小売検索エクスペリエンスを構築し、エンゲージメントを促進するより適切なレコメンデーションを提示します。また、ML を利用したオブジェクト認識とオブジェクト検索機能により、画像から製品カタログ内の類似アイテムを簡単に検索できるようにし、「検索と見つけやすさ」に関してより充実したエクスペリエンスを顧客に提供します。
2. カートと購入手続き
小売業者の 91% がデバイス間でカートを統合していますが、チャネル全体で統合カートにアクセスできるようにしているのはわずか 6% です。
カートと購入手続きに関して言うと、ユニファイド コマースをリードする小売業者は、店舗でのショッピング ジャーニーとオンラインでのショッピング ジャーニーの間をスムーズかつ効率的に行き来できるエクスペリエンスを提供し、最も重要なコンバージョン ポイントにおいて買い物客を導くことに優れています。これには、チャネルやデバイスを問わず、買い物客のカート、オンラインのあとで買うリスト、購入履歴をまとめて表示することや、柔軟な支払い方法を幅広く選択できるようにすることも含まれます。
今日の消費者が期待する高度にカスタマイズされたショッピング エクスペリエンスを提供するには、在庫状況の正確な可視化や、販売中や販売後の柔軟な対応ができなければなりません。Google Cloud での Manhattan Active® Omni や Manhattan Point of Sale Software などのソリューションはそれを実現しています。2023 Forrester Wave™: Order Management Systems(2023 年第 2 四半期)の唯一のリーダーである Manhattan の Distributed Order Management ソリューションは、インテリジェントなアルゴリズムと ML を活用して、注文オーケストレーションの最適化、在庫割り当ての管理、商品発送プロセスの切り替えを行います。つまり、店舗が配送センターと店舗ネットワークをより有効に活用し、オンラインと店舗全体で注文をシームレスに処理できるということです。
3. 確約と商品発送
小売業者の 75% が複数の商品発送オプションを提供している一方で、購入後に注文を変更できるのは 18% のみ、「オンラインで購入し、店舗で受け取り」から「直送」に変更できるのはわずか 6% にすぎません。
ユニファイド コマースのリーダーは、商品の配達方法と日時に関する明確な情報を提供することや、配達と受け取り方法の選択肢を複数用意すること、ショピング ジャーニーの各段階で適切な最新情報を提供することで、買い物客の信頼を獲得し、コンバージョン率を高めています。これには、完全なキャンセルや部分的なキャンセルなど、注文後の柔軟な対応も含まれています。
Zebra と Google Cloud は、エッジでエンタープライズ アセット インテリジェンス(EAI)を提供する可視化ソフトウェアを活用して、最先端の店舗変革を実現しています。IoT、クラウド、コネクテッド モバイル デバイス、モバイルアプリ、位置情報システム、ワイヤレス ローカルエリア ネットワーク(WLAN)、セキュリティ テクノロジーを統合し、小売業者の業務のエッジにあるすべての資産と従業員を可視化してつなげ、完全に最適化できます。小売業者は、ビジネスのあらゆる側面をリアルタイムで可視化し、サプライ チェーン全体で製品を追跡して把握できます。その結果最終的には、ユニファイド コマースの推進、生産性の向上、費用の削減を実現するために必要なリアルタイムの在庫可視化、現場の従業員の能力強化、商品発送に関する柔軟性の向上が可能になります。
4. サービスとサポート
小売業者の 85% がカスタマー サポート専用のライブチャットを用意している一方、テキスト メッセージやソーシャル メディアでサポートを提供しているのはわずか 18% です。
ユニファイド コマースのリーダーは、買い物客の 1 日の自然な流れを妨げることなく、求められるきめ細やかでパーソナライズされたサービスと信頼度の高いインタラクションを提供することで、際立った存在感を示しています。このような企業は、テキスト メッセージや店舗でのサポート、コールセンター、ソーシャル メディアによるサポート、ウェブサイトやモバイルアプリでのライブ対応エージェントなど、セルフサービスとフルサービスの多様なオプションを提供しています。
Google Cloud は、音声入力、テキスト読み上げ、自然言語理解用の事前トレーニング済みモデルを含む最先端の会話型 AI テクノロジーを提供しており、2023 年の Gartner® Magic Quadrant™(エンタープライズ会話型 AI プラットフォーム部門)でリーダーに選出されました。エンドツーエンドのGoogle Cloud コンタクト センター AI プラットフォーム(CCAI)は、高品質な会話エクスペリエンスをオーケストレーションして大規模に提供することを求めている、カスタマー エクスペリエンスとコンタクト センターのリーダーのニーズに対応しています。
小売業者は、Dialogflow を使用することで、ライブ対応のエージェントと同様の自然なセルフサービスの音声やチャット対話用の仮想エージェントを構築でき、費用対効果の高い方法でサービスを拡大できます。正確な応答やリアルタイムの提案 / 推奨が必要な通話の場合、Agent Assist でコンテキストを維持しながら、仮想エージェントから人間のエージェントにシームレスに移行できます。顧客との会話はCCAI Insights で分析され、顧客からの問い合わせ、エージェントのパフォーマンス、感情傾向に関する実用的なデータポイントがリアルタイムで提供されます。これらのクラウドベースのテクノロジーにより、コンタクト センターの運用を効率化し、顧客満足度とエージェントの生産性の向上、および費用削減が可能になります。
ユニファイド コマースをリードする小売業者を見つける
カスタマー エクスペリエンスの一般的な水準が全体的に高まるなか、小売業者は、デジタルと対面でのエクスペリエンス、そしてそれらを可能にするすべてのデータとシステムを接続できるように備える必要があります。Google Cloud は、Manhattan や Zebra などのパートナーとともに、小売業者と協力して小売業務をモダナイズし、顧客にとっての価値を高める新しいクラスのユニファイド コマース エクスペリエンスを提供できるよう熱意をもって取り組んでいます。
調査結果をダウンロードして、この独自のベンチマーク調査の詳細を確認し、ユニファイド コマースをリードしている小売業者を見つけてください。
- Google Cloud、小売ソリューション戦略担当マネージング ディレクター、Amy Eschliman