現代のマーケターの戦略的アドバンテージ: AI を活用したデータ クリーンルーム
Surya Kunju
Marketing Transformation & Retail Media Lead, Google Cloud
※この投稿は米国時間 2024 年 8 月 27 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
あらゆる業界の企業が、お客様をより深く理解し、売り上げを促進するためのデータを求めています。主に大手小売業者を通して販売している、主要な消費財ブランドを想像してみてください。お客様が購入前に小売業者のウェブサイトで行う重要なアクションや、ウェブサイトで取得する価値の高いアセット(HVA)を理解することで、貴重な分析情報を手に入れられる可能性があります。ビジネス的には理にかなっていますが、小売業者は機密性の高い顧客データの共有に対して慎重で、協力を得るのは困難です。
取締役会や CEO、CFO は、CMO(やマーケティング部門)に解決策を仰ぎます。そこから、現代のマーケターがデータから本当に求めているものは何か、重要なポイントが明らかになります。
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詳細な分析情報を取得する: プライバシーを侵害することなく、さまざまな情報源から取得したデータを安全に分析する
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分析情報をより良い決定のために活用する: AI を活用した便利なツールを利用して、隠れたパターンと機会を発見する
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ビジネスを成功に導く: ターゲットを絞ったマーケティングとパーソナライズされた顧客体験で、成長を促進する
上述の 3 点を結ぶ共通要素はデータ クリーンルームです。安全でプライバシー規定を遵守できるソリューションを提供し、さまざまな業界が共同で行うデータ分析から現代のマーケターが貴重な示唆を得られるよう後押しして、戦略的意思決定とビジネスの成長を促進します。
Google BigQuery データ クリーンルーム: 安全なソリューション
BigQuery データ クリーンルームは、2023 年に導入されて以来、BigQuery のエコシステムの利点を活用すると同時に、機密データを共有、分析し、コラボレーションするための安全な環境を提供しています。


仕組みとアーキテクチャ
BigQuery データ クリーンルームは、データの安全な共有と交換を可能にする BigQuery 内のプラットフォーム、Analytics Hub に特化したアプリケーションです。Analytics Hub は、プロバイダがデータ使用量をコントロールし認識できるようにし、組織がデータセットをその場で共有できるデータのエコシステムを構築します。
BigQuery データ クリーンルームは、Analytics Hub と BigQuery のサーバーレス アーキテクチャを活用して、複数のグループがコラボレーションするために安全な環境を確立します。データは元の場所に保持されるため、データのプライバシーは確保したまま、参加者はクエリを行い集計結果を共有できます。
舞台裏: アーキテクチャ
BigQuery は主に、データ提供者とサブスクライバーがデータセットを保管するデータのプラットフォームとして機能します。Google Cloud の BigQuery はフルマネージドでサーバーレスのデータ ウェアハウスであり、膨大なデータセットをスケーラブルに、優れた費用対効果で分析できるようにします。BigQuery はコンピューティングとストレージを分ける分離アーキテクチャが特徴的です。この分離アーキテクチャによって、最適なパフォーマンスと費用対効果を実現する独立したスケーリングが可能になります。
Analytics Hub の共有データセットのコンセプトを活用することで、データ クリーンルームのオーナーは、分析ルールを適用し、特定の下り(外向き)トラフィックに限定して、データセットを提供できます。ルールによって、データ クリーンルームから得られる出力の種類が決定され、データのプライバシーが確保されます。アーキテクチャの詳細については、Google Cloud のドキュメントを参照ください。
業界でのユースケース
データ クリーンルームはあらゆる業界のビジネスに変化をもたらしています。ユースケースをいくつか見てみましょう。
ユースケース 1: デジタル広告からの新規顧客の獲得を測定する
ある企業が、新規顧客の獲得や一度離れた顧客の再エンゲージメントのために、さまざまなプラットフォームでデジタル広告キャンペーンを行うとします。キャンペーンが終了すると、広告プラットフォームのデータ(インプレッション数、クリック数など)がデータ クリーンルームに追加されます。


安全な環境内で、企業は広告キャンペーンのデータを自社内の顧客データと組み合わせることができ、広告のインタラクション(クリック数など)と実際の顧客コンバージョンの照合が可能になります。データ クリーンルームは、プライベートな顧客情報が非公開となること、集計分析のみに利用されることを保証します。企業は、キャンペーンを通して獲得した新規顧客の数、顧客獲得単価、全体の広告費用対効果などの重要な指標を確認できます。こうした分析情報により、企業はキャンペーンの成功を評価し、将来の広告戦略について適切な判断を下せるようになります。
ユースケース 2: 小売業者と消費財企業とのコラボレーション
リテール メディア ネットワークが消費財(CPG)ブランド パートナーとコラボレーションする際に、BigQuery データ クリーンルームは新しい貴重な分析情報を提供できます。コラボレーションを通して、消費財企業は小売業者のプラットフォームで実施した広告キャンペーンの効果、特に両社に共通するオーディエンスに対する効果を評価できます。消費財企業は、小売業者のプラットフォームでのキャンペーンの影響について情報を得ることで、より情報に基づいた意思決定を行い、マーケティング戦略を最適化できます。


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消費財データ: 消費財企業は既存のオーディエンス データ(1p)を提供します。
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小売業者データ: 小売業者はどの顧客が購入したか示すデータを保有します。
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データ クリーンルーム: データ クリーンルームと呼ばれる、安全でプライバシーが保護された環境内で、消費財企業と小売業者はハッシュされたお客様 ID を照合できるため、ターゲットの顧客が広告商品を実際に購入したかの判別が可能になります。
消費財企業は広告の効果を評価し、キャンペーンを強化できます。同時に、小売業者は消費財パートナーに対して、自社の広告プラットフォームの価値を示せます。
ユースケース 3: 小売業者とパブリッシャーのコラボレーション
小売業者はストリーミング サービスなどのパブリッシャーとコラボレーションできます。小売業者はロイヤルティ データやモバイルデータを提供し、ストリーミング サービスはエンゲージメント データを提供します。データ クリーンルームは安全で中立な環境として機能し、両者が相手の元データにアクセスすることなく、データセットを組み合わせ、分析できるようにします。


小売業者はポイント プログラム メンバーの視聴の傾向を理解し、潜在的な新規顧客を特定できます。一方でストリーミング サービスは、サブスクライバーのショッピング行動に関する分析情報を得て、おすすめコンテンツをカスタマイズできます。組み合わせたデータの分析から両者が利益を得て、競争力をもたらすインテリジェンスを手に入れ、プラットフォームをまたいだマーケット トレンドと顧客の行動を特定できます。
ユースケース 4: 小売業者とメーカーのコラボレーション
小売業者とメーカーは、小売業者が販売と在庫のデータを共有し、メーカーが商品データを共有することで、データ クリーンルーム内でコラボレーションできます。


データを組み合わせることで、両者ともが分析情報を得て、実行可能な推奨事項を見出すことができるようになります。結果として、製品の品揃えの最適化、戦略的な価格設定、ターゲットを絞ったマーケティング キャンペーンの実施が可能となります。
マーケティングの先: 組織内での安全なコラボレーション
データ クリーンルームは、さまざまな組織内コラボレーションのユースケースにも利用可能であり、組織は厳しいプライバシー基準を遵守したまま、組織内のチーム間で機密データを活用できます。情報を匿名化、仮名化することで、チームは個人のプライバシーを侵害することなく、効果的にコラボレーションできます。
ユースケース
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HR 分析: HR 部門はデータ サイエンス チームと協力することで、従業員データを分析し、パフォーマンスや離職に関する傾向を特定して、優秀な人材を維持するための予測モデルを開発できます。データ クリーンルームは、分析のプロセスを通じて、プライベートな従業員情報が確実に保護されるようにします。
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従業員のエンゲージメント: 組織内のコミュニケーション チームは、匿名性を保ちながら、アンケートとソーシャル メディアのデータを通して、従業員の感情を分析できます。組織は個人のプライバシーを侵害せずに、従業員の意見を理解し、改善可能な分野を特定できます。
データ クリーンルームはさまざまな部門間での安全な組織内コラボレーションを促進し、機密情報を保護しながらデータドリブンな意思決定を可能にします。信頼とコンプライアンスの文化が育まれ、組織はプライバシーを侵害せずに、データのポテンシャルを最大限に引き出せます。
現代のマーケターが実行可能な戦略とは何でしょう?
データ クリーンルームは以下の分野でビジネスを支えます。
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分析情報を取得: プライバシーとセキュリティを維持しながら、データから実用的なインテリジェンスを抽出
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イノベーションを促進: データドリブンな意思決定を可能にし、顧客体験を向上させ、成長を後押し
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コラボレーションを促進: サイロを解消し、安全なデータ共有を実現
現代のマーケターにとって、AI を活用したデータ クリーンルームは戦略的なアドバンテージとなります。ユースケースの特定、データ共有契約の締結、AI ツールの活用、結果のモニタリングを通じて、データの力を活用し、ビジネスを推進できます。BigQuery データ クリーンルームの仕組みや、アーキテクチャについて、詳細をご覧ください。データチームは今すぐにBigQuery の無料トライアルをお試しいただけます。