TieUps:Looker の採用でフルスクラッチで半年かかると想定したダッシュボード機能の開発を 1 か月半で実現
Google Cloud Japan Team
「共創をつくり加速させ、世の中に風を起こす」をミッションに、SNS 情報発信者に良質な情報のみ届く仕組みを研究開発する TieUps株式会社(以下、TieUps)。主力サービスであるプロフィール作成ツール lit.link(リットリンク)、およびコミュニティ SNS WeClip(ウィークリップ)のインフラ基盤を Cloud Run をはじめとする Google Cloud で構築。WeClip のビジネス ダッシュボード WeClip Biz を実現する Looker の採用に、Google for Startups クラウド プログラムを活用し、短期開発や運用コスト削減などの効果を上げています。このプロジェクトについて、CTO、ディレクター、およびエンジニアに話を伺いました。
利用しているサービス:
BigQuery、Looker、Cloud SQL、Cloud Spanner、Cloud CDN、Cloud Run、Firebase、Google アナリティクス
利用しているソリューション:
マーケティング分析と AI ソリューション、Google for Startups クラウド プログラムで成長を促進
Looker の採用に Google for Startups を活用し、サービス開発の加速と開発コストの低減を実現
現在、TieUps では、主力サービスとして lit.link、および WeClip の 2 つを展開しています。lit.link は、SNS、ブログ、商品販売ページなどを、写真や動画を使ってビジュアル リッチにまとめることができる無料のプロフィール作成ツールです。タレントやインフルエンサーなど、幅広い層に支持され、リリースから 2 年で登録者数 160 万人、月間 PV 数 8,000 万を実現しています。一方、WeClip は、2021 年 10 月にブラウザ β 版がリリースされたコミュニティ SNS です。2022 年 12 月に、iOS アプリ β 版がリリースされ、2023 年には既存ファンが新規ファンを育てる FRM(Fan Relationship Management)ツールであるビジネス版がリリースされます。リリース前から、すでに 10 社以上がテスト版を検証しています。
WeClip のビジネス ダッシュボード WeClip Biz は、当初はフルスクラッチで開発することを検討していました。しかし、フルスクラッチ開発にかかるコストや難易度、開発リソース不足などの状況を考えた結果、フルスクラッチ開発は現実的ではないと判断。次に、Looker Studio をはじめとする BI ツールの導入を検討した結果、最終的に Looker を採用することを決定しました。
コミュニケーションディレクターの工藤 継太氏は、「BI ツールを検討していたときに、Google Cloud の担当者から Looker を紹介いただきました。BI ツールの採用では、特にコストが大きな問題でしたが、Google for Startups クラウド プログラムが利用できたので助かりました。また SQL の深い知識がない非エンジニアでも使える操作性も重要でした。そこで PoC(概念実証) を実施したのですが、Google Cloud の担当者に伴走してもらいながら、約 1 か月半の実施期間で必要な機能の半分程度ができてしまいました。当初、フルスクラッチの開発期間を半年程度と見積もっていたのですが、基本的なダッシュボード機能を 1 か月半で開発できたのは衝撃でした。これにより、手ごたえが確信に変わりました」と話します。
また Looker を採用したことで、例えば「スタンプ」「いいね」「ポストスタンプ」など、ばらばらだったデータ定義が「スタンプ」に統一されるなど、効率的なデータドリブン コミュニティ マーケティングが可能になりました。さらにデータ ガバナンスが個人に依存しなくなり、データ ガバナンスに対する社内意識も高くなったほか、Looker によるデータの可視化で数字に基づいた議論ができるようになっています。Looker の効果をエンジニア(フロントエンド)の吉廣 あかり氏は、次のように話しています。
「PoC の期間中に、Looker の操作方法を教えてもらい、データを簡単に可視化ができることに驚きました。Google Cloud の担当者との週 1 回のミーティングやチャットによる問い合わせで的確に答えをもらえたので、SQL に詳しくない自分でも、これもできる、あれもできると発想が膨らみ、自分たちが見たいデータを簡単に可視化できるようになりました。Google Cloud を使うのは初めてでしたが、画面も見やすく、操作性も高いので、容易にクラウド サービスを活用できるのは本当に便利です。」
BigQuery を介した Looker 利用でダッシュボードのクオリティが向上
WeClip のシステム構成は、クライアントに Web 環境と iOS 環境があり、クライアントからのデータがサーバーサイドの Cloud SQL に取り込まれます。ビジネス ダッシュボードである WeClip Biz では、コミュニティ全体のトレンドやユーザーごとの傾向を分析し、コミュニティ ポイントなどの報酬を設計して、具体的なアクションを促すためのアナリティクス機能として Looker を活用しています。
CTO の土井 優紀氏は、「当初は、Looker から直接 Cloud SQL のデータを参照し、ダッシュボードを作成していたのですが、重いクエリを実行したときにレイテンシに影響が発生していました。また将来、ユーザー数が増えたときにも影響が顕著に出てくる可能性があります。そこで将来性を考えて、早い段階で Cloud SQL のデータを BigQuery に取り込み、BigQuery のデータを Looker で可視化する仕組みに変更しました」と話します。
BigQuery を採用した理由を工藤氏は、「これまでユーザーがどのページを見たかなどの情報は、Google アナリティクスに収集されていましたが、それを Cloud SQL の生データと統合する仕組みがなかったことも BigQuery を採用した理由でした。BigQuery を介して Looker を使用することで、Google アナリティクスのデータも扱えるようになり、データの幅も広がり、ダッシュボードのクオリティが向上しています。今後、ダッシュボードを拡張する場合も BigQuery は有効になります」と話しています。
Next.js アプリのデプロイを Cloud Run に移行しコストを 10 分の 1 に
2021 年 1 月にリリースされた lit.link は、当初は開発プラットフォームである Firebase、および NoSQL ドキュメント データベースの Firestore をベースに開発されていました。しかしリリースから 2 か月後に、ユーザー数増加の第一波が来たため運用コストが問題になりました。そこで、Firebase 経由で取得していた画像をストレージ経由に変更し、さらに Cloud CDN を導入してデータベースへのアクセスを減らすことでコストの削減を実現しました。また、Next.js アプリケーションをデプロイするために利用していたクラウド サービスを、Cloud Run に移行することで運用コストを 10 分の 1 に削減しています。
土井氏は、「コスト削減に関しては、Google Cloud チームと現行のアーキテクチャや課題について議論して、改善案を決定しました。また、現在サーバーサイドを Firestore から Cloud Spanner に移行しているところですが、そのサポートも的確で助かっています。Firestore は使いやすいのですが、ドメイン変更のときにデータベースのマイグレーションを手作業で行うことが必要なため、ドキュメント数が 100 万件、150 万件になると手作業によるマイグレーションが困難です。Cloud Spanner であれば、処理を自動化することができます。今後、lit.link を進化させていくためにも、この機会にデータベースを NoSQL から NewSQL か RDB にしたいと考えていました。」と話します。
今後、TieUps では、lit.link 自体を API 化して、外部のサービスを容易に連携できるサービスへと拡張する構想を進め、同時にアプリケーション レイヤーのデザインの刷新も検討しています。一方、WeClip では、iOS アプリ β 版の改善を繰り返し、正式リリースを予定しているほか、WeClip Biz の機能追加、および本格展開も計画。そのほかセキュリティ面では、Chronicle Security Operations の導入も検討しています。
土井氏は、「lit.link は、データベースの移行が終われば、今後の機能追加もやりやすくなります。WeClip は、機械学習によるコミュニティのレコメンド機能の実装を検討しています。将来的にはユーザー対ユーザーのレコメンド機能も計画しており、そのための基盤として Vertex AI を検討しています。さらに、MLOps を実現するための人材も採用していく計画です。スタートアップに対する Google Cloud のサポートは、Google Cloud 公式ユーザー会である Jagu'e'r も含め本当に手厚いと思います。イベントなどで発表の場を与えてもらえるのもスタートアップにとって外部露出を増やす大きなメリットで、今後もオフサイトの交流には期待しています」と話しています。
2020 年 4 月、「共創をつくり加速させ、世の中に風を起こす」というミッションを掲げて創立されたスタートアップ企業。SNS 統合サービスの開発と運営、および SNS マーケティング サービスの開発と運営を事業として展開。プロフィール作成ツールの lit.link、およびコミュニティ SNS の WeClip の 2 つのサービスを提供しています。
インタビュイー(写真左から)
・コミュニケーションディレクター 工藤 継太 氏
・CTO 土井 優紀 氏
・エンジニア(フロントエンド) 吉廣 あかり 氏
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