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顧客事例

三井ホーム: 顧客への価値提供のための BigQuery 活用 - リアルタイムな分析と施策実行、運用負荷の削減を実現

2023年11月7日
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Google Cloud Japan Team

※ 本記事では、Google Cloud のカスタマー エンジニアが、担当したお客様の取り組みについてエンジニア視点でインタビュー、導入前の課題や背景から成果までを、わかりやすくご紹介します。

三井ホーム株式会社(以下、三井ホーム)は、住宅建築、不動産開発、賃貸住宅など幅広い住宅関連サービスを提供しています。同社は、より優れたサービス提供を目指し、社内の営業データや顧客データなどを活用したデータ分析にも積極的に取り組んでいます。この度、Google Cloud の導入により、統合データ分析基盤を構築しました。今回は、三井ホーム、DX 推進部の部長 田中健一氏、山我真之氏、馬淵健氏からのお話を伺い、その取り組みと成果について詳しくご紹介いたします。

利用しているサービス:
Cloud Data Fusion, BigQuery, Dataform, Looker Studio, Cloud Functions, Cloud Scheduler

Google Cloud 導入前の課題(概要)

「私たちは創業以来、優れた住宅を通じてお客様に価値と喜びを届けることに専念してきました。その取り組みの核心には、常にお客様の声に真摯に耳を傾ける姿勢があります。

数十年にわたりアンケートを収集し続け、担当者の経験と知識を活かし、お客様にとって最も心地良い住宅を追求してきましたが、時代とともに、データの力がお客様への更なる価値提供の鍵であることを徐々に実感していました。そのため、これまでの経験や知識という要素に加え、データ分析への取り組みをスタートさせました。とはいえ、初めてのデータ分析はエクセルを主体に行い、各担当者が個別にグラフや帳票を作成。結果、各担当者、それぞれで多くの時間を費やしていました。さらに、データの活用も担当者ごとで閉じられて行われており、全体のマクロ視点での分析はなされていなかったのです。また、分析のタイミングとしては、月末にデータを集計し、翌月にようやく分析に取り掛かるという状況でした。これにより、実施した施策の結果を確認するのは翌々月になり、迅速に対応する施策の実施が難しくなっていました。」(三井ホーム 田中氏)

「つまりは、我々の目指すのは、データをリアルタイムに、そして横断的に分析することです。しかしながら、それを実現するためには、以下のようなシステムの観点で、課題がありました。

  1. データ収集の課題
    各データソースからデータを CSV で取得するなど手動での作業が多く、多大な工数がかかっていました。
  2. データ加工の課題
    データの加工を BI ツール側で実施していたため、加工できる条件に限界がありました。
  3. データ蓄積の課題
    データが複数箇所に分散して管理されており、結果として管理や運用において高い負荷が発生していました。
  4. データ分析の課題
    各事業部のユーザーからはダッシュボードの表示速度向上の要望も寄せられており、そのニーズにも応える必要がありました。

ダッシュボードにデータが表示できてからが、データ活用の一歩目にも関わらず、上記のようにダッシュボード作成までの工程に多くの工数と労力を割いているというのが実情でした。これらの課題に対しての業務改善は、お客様への更なる価値提供を実現するためにも急務でありました。」(三井ホーム 山我氏)

Google Cloud の選定理由

「データ分析といえば BigQuery が良いデータ基盤ということは漠然と噂では聞いていました。実際に調べたり、触ってみたりする中で、クエリ文が非常に早く返ってきたので、システム課題を一気に解決してくれるのでは。と考えたのがきっかけでした。そこで実際に PoC を実施し、データ収集、加工、蓄積、分析といった一連の流れを、そこまで工数を割かずに構築、運用できることがわかったため BigQuery の導入に至りました。それに加えて、弊社では既に Google WorkspaceGoogle ドライブ を使用しており、今後 AI を活用したいという要望にも、非常に親和性の高い製品だということも選定の後押しになりました。また弊社は他社クラウドを既に使用していましたが、昨今、マルチクラウドと謳われている通り、新しいテクノロジーに触れて活用していくという試みでした。」(三井ホーム 山我氏)

Google Cloud アーキテクチャ

データ収集を可能な限り自動化し、ダッシュボードの遅延を解消することを目的に、以下の図のようなアーキテクチャを構築しました。データ分析基盤として、中央に BigQuery を配置する構成を考えましたが、他社クラウドや SaaS のデータの取得方法が課題でした。その解決策として、GUI を使用したノーコードでの開発が可能な Cloud Data Fusion をデータ収集ツールとして選択しました。これにより、コードの記述が不要となり、開発コストを抑えながら効率的なデータ収集の自動化パイプラインを構築できました。非構造化データなどは Google Cloud Storage に一時的に保存し、Python での複雑なデータ加工は、サーバーレス サービスの Cloud Functions を利用して行いました。SQL ベースのデータ加工の際に、スケジュールド クエリや Stored Procedure が増加するのを防ぐ目的で、コード管理が行える ELT ツール、Dataform も採用しました。BigQuery でデータマートを作成し、その結果を Looker Studio のダッシュボードを通じて各組織に提供することで、商品開発の質向上や顧客満足度の向上に寄与する構成を選択しました。今後、Google ドライブに保存されているデータも BigQuery にインポートし、さらに分析の幅を広げる計画です。

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導入効果とメリット

「ビジネス的な観点で言うと、拠点ごとに独自の集計方法が存在していましたが、新しいシステムの導入により、共通の指標を用いて分析することが可能になりました。そのため、集計業務に専念していた担当者も、他の有益な業務に時間を割くことができるようになりますし、地域による偏りなく、全国的・マクロな視点での分析が可能となりました。また、データ分析の速度も大幅に向上し、業務改善がリアルタイムで行えるようになった点も特筆すべきです。以前は業績が良好な地域や商品の原因分析に時間がかかっていましたが、今では中旬に原因を特定し、具体的な施策を打つことができるようになってきています。これは、たとえば夏のプロモーション活動など、短期間での施策変更が求められるケースにおいて非常に有益です。」 (三井ホーム 田中氏)

「顧客からのアンケートは、以前は個別に読み解くのが一般的でしたが、今は各拠点からのアンケートを横断的に分析し、ポジティブやネガティブの感情分析も行うことができるようになりました。SDGs の取り組みとしても、国産材の利用率や ZEH 率等をリアルタイムでダッシュボード化できたりと、環境面での貢献も可視化できるようになったのも嬉しい点です。」 (三井ホーム 馬淵氏)

「システム的な観点での導入効果として、ダッシュボードの表示速度が初期の約 4 倍に向上しました。以前、表示速度の遅さがユーザー エクスペリエンスを低下させ、ダッシュボードの利用者が増えない課題がありましたが、今後は利用者の増加が見込まれます。また、Cloud Data Fusion や Cloud Functions のような先進的なツールを活用して、手動でのデータ処理を大幅に自動化することができました。ここにかかっていた工数を減らすことができたのも非常に大きな点です。」(三井ホーム 山我氏)

今後の展望とGoogle Cloud への期待

「上記のような取り組みはすでに実り多いものとなっていますが、まだ始まったばかりとも言えます。これからの目標として、社内でもより多くの人にデータ分析のスキルを浸透させていきたいと思っております。興味深いことに、最近の技術の進歩により、SQL を使わずに、自然言語のみでの分析も可能になりつつあります。Google Cloud が発表した Duet AI in BigQuery はまさにその代表例です。このような生成 AI の活用により、データ分析のアクセシビリティを高め、さらに多くの人々がデータの力を享受できるような環境づくりを期待しています。」 (三井ホーム 田中氏)

「また、データ分析の応用として、AI / ML の分野においても、写真や図面を分析し、お客さまの好み、ニーズ、そしてトレンドを定量的に掴むことで、商品マッチングの質を向上させていく計画です。BigQuery は AI / ML との親和性も高く、BigQuery のデータを移動させずに機械学習モデルの作成ができるため、データを AI / ML で活用していくことにも期待を寄せています。冒頭で申し上げたように、お客様に価値と喜びを届けるために最新テクノロジーを積極的に活用していきたいと考えています。」 (三井ホーム 山我氏)

Google Cloud エンジニアのコメント

「まずは、何よりも三井ホームの課題解決に貢献でき心から嬉しく思います。三井ホームのデータ分析チームは、限られたメンバーの中で質の高い分析を追求しているため、データ分析基盤の構築と運用の負担を最小限に抑えることが求められていました。フルマネージドサービスの BigQuery は、構築や運用の工数がほとんどかからないため少人数でも十分に運用していけるというのが優れた点だと思います。データ加工に関しては、複雑なデータ加工やシンプルな加工など、ユースケースごとに加工の難易度は変わってきます。そのため、どのプラットフォームで加工するのがいいのかを深く議論させていただき、コスト効率、使いやすさ、スキルレベル等、総合的な要件にフィットしそうなアーキテクチャを提案させていただきました。三井ホームのデータ基盤構築プロジェクトは、驚くべきことに、PoC ステージからスタートしましたが、瞬く間に本番環境の整備まで到達してしまいました。

これは Google Cloud の特長を最大限に活かしていただいた結果だと感じています。また、2023 年 5 月にリリースされた Dataform も迅速に導入するなど、三井ホームの機動力は素晴らしいと感嘆しています。今後は三井ホームの中でデータ分析がより浸透していく中で、考えなければならないガバナンスの面などを考慮したアーキテクチャ提案や AI / ML 活用の実現のために尽力してまいります。」

(Google Cloud Data Analytics Customer Engineer: Yutaro Saito)

三井ホーム株式会社
1974 年 10 月設立。三井不動産グループの一員として、 住宅関連の各領域で活躍する「三井ホームグループ」の総合力を活かし、 お客様にご満足いただけるサービスを提供いたします。

インタビュイー
・DX推進部 部長 田中 健一 氏
・DX推進部 システム運用グループ 山我 真之 氏
・コスト改革部 コスト改革グループ 馬淵 健 氏

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