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顧客事例

COMPASS: GKE によるコンテナ開発でクラウドフリーな学習 e ポータル + AI 型教材を構築

2023年6月16日
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Google Cloud Japan Team

「未来の君に会いに行く」というスローガンに基づいて、誰もが予想できない未来を徹底的に考え抜き、子どもたちの「未来を生き抜く力」となる教育を創ることで、全世界の子どもたちの幸せな未来を追い続ける株式会社COMPASS(以下、COMPASS)。主力サービスである学習 e ポータル + AI 型教材「Qubena(キュビナ)」のクラウドフリー化を目的に、開発・ 運用インフラを Google Cloud に移行しています。このプロジェクトについて、プロダクト開発ユニット システム開発部 副組織責任者の玉﨑氏、および SRE(Site Reliability Engineering)チームの古賀氏にお話を伺いました。

利用しているサービス:
Google Kubernetes Engine(GKE), Cloud Armor, Cloud DNS, Cloud CDN, Cloud Load Balancing, Cloud SQL, BigQuery, Binary Authorization

利用しているソリューション:
Application Modernization

学習 e ポータル + AI 型教材「Qubena」には、Kubernetes の利用が最適と判断

「Qubena」 は、AI が生徒一人ひとりの習熟度に合わせて最適な問題を出題するAI型教材です。学習eポータルとして、文部科学省が開発したCBTシステム「MEXCBT(メクビット)」をはじめ、校務支援システム「EDUCOMマネージャーC4th」や「ツムギノ」などと連携し、国際技術標準「OneRoster®」にも対応。今後もデジタル教科書やデジタル教材などと連携することで、公教育における教科書、テスト、ドリルなど、シームレスな学びの環境を提供するとともに、教育データを横断的に利活用することで、子どもたちの主体性を最大限に引き出す、個別最適化された学びの環境を実現することを目指しています。

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 プロダクト開発ユニット システム開発部 SREグループ 副組織責任者の玉﨑 一廣氏は、「2016 年、Qubena は小学校の算数、および中学校の数学向けにサービス提供を開始しました。そこから対応教科や機能を拡張し、2021年の4月より小中5教科に対応しています。当初は大手学習塾に採用され、2018 年に経済産業省の『未来の教室』実証事業に採択されたことで、その後は多くの小中学校や自治体での採用が進みました。自治体での採用が増えてくると、Qubena をクラウドフリーな環境で動かすことが必要になったのです」と話します。

クラウドフリーな Qubena を実現するために Google Cloud を選定し、Kubernetes を利用したコンテナ開発を採用することを決定。Kubernetes を採用した理由を玉﨑氏は、次のように話します。「クラウドフリーな環境を実現するためには、どの事業者のクラウド サービスでも動くアーキテクチャを採用することが必要でした。Kubernetes を利用したコンテナ開発であれば、Qubena を導入する自治体からクラウド サービス事業者を指定されても、指定されたクラウド サービスにコンテナ化されたアプリケーションをデプロイし直すだけで利用できます。」

もう 1 つの決め手を玉﨑氏は、「Kubernetes はもともと Google が設計したシステムなので、Google Cloud を使うのがもっとも効率的かつ効果的で、サポートも含めて最適だと判断したことが最大の理由です。また Google は、シンプルかつ柔軟で安全なツールにより学習を支援する Google for Education を展開しており、ほかのベンダーに比べて教育分野に対する熱量が違うことも大きなプラスとなりました。Google Workspace との相性の良さも評価したポイントの 1 つです。2020 年 4 月より検討を開始したのですが、早い段階から Google Cloud の採用を決めていました。」と話しています。

GKE Autopilot の利用でリソースを管理し、運用コストを削減

Google Cloud を採用した Qubena は、2022 年 9 月より新たにサービスの提供を開始しています。新しい Qubena のシステムは、利用者のモバイル デバイスからのリクエストを Google Kubernetes Engine (GKE) クラスタ内のサービスに振り分ける構成になっています。GKE クラスタでは、Qubena App(QS)、および Qubena Manager(QM)と呼ばれるコンテナ化された各サービスが動いています。データベースには Cloud SQL を利用し、外部のクラウド サービスへの連携も可能です。

また Cloud Armor を導入することで、サービス拒否攻撃やアプリケーション攻撃など、外部からの攻撃を防御し、アプリケーションとウェブサイトを保護しています。玉﨑氏は、「自治体で Qubena の採用を検討されるときに、個人情報保護審議会等から『悪意のある攻撃に対してどのような対策をしていますか』など、セキュリティ上の問題がないかと問い合わせを受けることが多いので、Cloud Armor のような仕組みは不可欠です。加えて、Kubernetes 自体が脆弱なプログラムを勝手に実行できない仕組みになっているので、自治体向けに説明しやすいシステム構成になっています」と話します。

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GKE を採用した効果を、プロダクト開発ユニット システム開発部 SREグループの古賀 佑輔氏は、次のように話します。「GKE は細かい単位でクラスタ内に機能を構成することができ、容易にチームごとの権限を管理できるため本当に便利です。GKE Autopilot を利用することで、システム運用に必要なリソースを簡単に確保できるのも助かります。例えば Kubernetes は、機能が頻繁に更新されるので、バージョン アップのときにコードの書き方を変えることが必要なことがあります。そのため事前に検証できる環境を GKE で用意し、検証を行ってバージョン アップするといった工夫をしています。この仕組みの一部に GKE Autopilot を使っています。これによりリソースの管理コスト、および運用コストを削減できました。」

データ ウェアハウスを構築して、データを活用するための便利な機能や仕組みがそろっていることも Google Cloud を利用したメリットの 1 つでした。玉﨑氏は、「アクティブ ユーザーが何人いるか、どれだけ繰り返し使っているか、あまりアクティブではない自治体にどのようにアプローチするかなどの利用者データ分析に BigQuery を使用しています。また Ddrive 株式会社との連携では、自社の ETL 基盤も利用していますが、先方 のデータ ウェアハウスに BigQuery を採用していたので容易な連携を実現できました」と話します。

プロジェクトにおける Google Cloud のサポートについて玉﨑氏は、「サポートに関しては、かなり手厚い対応をしてもらっています。チャットで問い合わせをすると、迅速かつ的確に回答してもらえます。特に、自治体特有の問い合わせも、チャットでつないでリアルタイムに、あるいは翌日に回答してもらえるので安心です。また Google Cloud は、ホワイトペーパーが充実しており、データセンターの運用や Google としてセキュリティ チームがどのような構成で、どのような活動をしているのかなどが明文化されているので、自治体向けにも説明がしやすく本当に助かりました」と話しています。

今後も Google Cloud を活用し、さらなる公教育への ICT 普及に貢献

今後、Qubena では、さらなる公教育への ICT 普及に貢献できるサービスの提供を推進していきます。その一環として、より一層の信頼性の向上とセキュリティの強化を追求します。古賀氏は、「Google Cloud は、開発時も、本番稼働後も、本当に安定していて、Google Cloud に起因するトラブルはまったく発生しておらず、安心感があります。現在、直接連携されている GKE の周辺サービスを、Pub/Sub で非同期連携にすることで、もし問題が発生したとしてもサービスが止まらない仕組みを実現できています。また事前に脆弱性をスキャンしたアプリでなければ、Kubernetes クラスタで動かせなくする Binary Authorization を使うことでセキュリティ関連の運用負荷を軽減できます」と話します。

今後の展望について玉﨑氏は、「Qubena の利用者数を増やしていくことを目的に、MEXCBT や名簿システムなどと連携することで、ワンストップの教育プラットフォームに進化させていくことを目指しており、そのための実証実験を実施していきます。一方、システム面の機能強化では、App Engine を利用することで、CPU 使用率や負荷を気にすることなくサーバー環境を利用できるようにすることを検討しています。また手作業や繰り返しによる運用負荷を軽減することを目的に、Cloud Certificate Manager も利用してみたいと思っています。現状では、非常に安定しているクラウド サービスなので、引き続き変わらないサービスレベルを Google Cloud には期待しています」と話しています。


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株式会社COMPASS
2012 年 12 月に設立。2016 年に AI が生徒一人ひとりの習熟度に合わせて最適な問題を出題する AI 型教材「Qubena」を小学校算数と中学校数学向けに開発し、2021 年度に小学校 / 中学校の 5 教科対応版をリリース。2022 年 9 月に MEXCBT と連携し、学習 e ポータル + AI 型教材「Qubena」として新たに展開。全国 170 自治体以上、小中学校約 2,300 校で 100 万人以上にサービスを提供(2022 年 9 月現在)。Qubena により、すべての子どもたちを取り残すことなく、「公正に個別最適化された教育」を届けることで、さらなる公教育への ICT 普及に貢献することを目指す。

インタビュイー(写真左から)
・プロダクト開発ユニット システム開発部 SREグループ 副組織責任者 玉﨑 一廣 氏
・プロダクト開発ユニット システム開発部 SREグループ 古賀 佑輔 氏


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