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顧客事例

株式会社 講談社: データとテクノロジーで出版業界の未来を切り開く、老舗出版社の挑戦

2024年5月30日
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Google Cloud Japan Team

編集者注: Google Cloud を利用する企業のリーダーの皆様にお話を伺い、想いを語っていただく Google Cloud Leader’s Story。連載 14 回目となる本記事では、誰もが知る日本を代表する総合出版社、株式会社 講談社 にお話しを伺いました。

利用しているサービス:BigQuery, BigQuery ML, Looker, Cloud Run, Compute Engine など


講談社における DX の推進:データと AI で出版業界の未来を切り拓く

講談社といえば、誰もが知る日本を代表する総合出版社。その歴史は長く、1909 年の創業以来、数々の名作を生み出してきました。しかし、出版業界も他の業界同様、デジタル化の波に揉まれ、新たな挑戦を求められています。

今回は、講談社のデジタル戦略を支える二人のキーパーソン、IT 戦略企画室 デジタル ソリューション部 副部長 小笠原 傑氏と、同じく IT 戦略企画室 デジタル ソリューション部の塙 一晃氏に講談社における DX について話を伺いました。彼らの情熱と技術力が、どのようにして出版社における DX を推進しているのか、その舞台裏に迫ります。

データビジネス拡大に向けた課題と挑戦

小笠原氏は文学部出身で、IT コンサルティング ファームやビジネス系出版社での経験を経て講談社へ入社。現在はデータ アナリストとして、Web メディアや会員サービスのデータ基盤開発・運用、さらには新規事業の PM まで幅広く活動しています。一方、塙氏は理化学研究所で自然言語処理の研究に従事していた ML エンジニア。講談社では Web 記事のタイトルの良し悪しを判定するスコアリング機能の開発や、関連記事の AI レコメンドなど、編集支援の領域でその技術力を発揮しています。

異なるバックグラウンドを持つ二人ですが、講談社へ入社したきっかけは「本が好き」という共通の想いでした。

講談社のデジタル戦略はどのようなものなのでしょうか。小笠原氏は次のように語ります。

「講談社の強みは、総合出版社として漫画からジャーナリズム、週刊誌まで、幅広いコンテンツを所有している点です。デジタル コンテンツについても、多くのユーザーを抱えるコミックアプリ「マガポケ」を始め、海外向けの電子コミック サービス「K MANGA」、約2億ページビュー/月のウェブメディア「現代ビジネス」、グループ会社のコンテンツデータマーケティング社が運営するIDサービス「Uniikey」を使った会員サービスなどを運営しています。」

このような各種デジタル サービスの価値を高め、ユーザーにより魅力的なサービスを提供するために、データ分析に基づいたサービス改善は必要不可欠な要素です。そのため、講談社では従来より、各サービスごとにデータ分析基盤を構築・運用してきましたが、そこにはいくつかの課題がありました。

「従来から運用していたデータ分析基盤は、各サービスごとのデータ分析に最適化されており、サービスを横断した分析が難しい状況にありました。例えば、販売実績を表す POS データと、コミックアプリから発生するデータはそれぞれ別のデータストアに保存されており、サービス横断的な分析がしづらい状況でした。」

Google Cloud を用いた共通データ基盤の構築と AI を用いた新たな試み

各サービスのデータが分断され、思うようにデータの利活用が進まない状況にどのように対処したのでしょうか。小笠原氏は、Google Cloud のデータ分析関連サービスを活用することで、この課題に対処しました。

「別環境に保存されたデータをシームレスに利用できるよう、BigQuery を中心とした共通データ基盤の構築を推進しました。既存のデータ分析基盤と BigQuery で構築した共通データ基盤の間を専用線で接続し、データをシームレスに分析できる土台を整備中です。BigQuery はデータ規模やユースケースによらず、特段インフラの管理が不要で利用できる点にとても魅力を感じています。」

また、分断したデータの集約だけではなく、データ分析基盤の利用者が増えることを見込んで、データガバナンスについても重視したと小笠原氏は語ります。

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「全社的に統一されたルールのもとでのデータ分析を可能とする、Looker をダッシュボードとして選択しました。これにより、全社的に利用者が拡大しても、十分なガバナンスが効かせられると考えています。」

このように、BigQuery と Looker を軸とした共通データ基盤を構築したことによって、従来はデータ保存場所の違い等により、実現が難しかったユーザーのコミックアプリの利用状況に関するダッシュボードを提供できるようになりました。また、コミックアプリの利用状況を POS データ掛け合わせて分析するダッシュボードを社内の営業担当に提供できるにようになり、社内的にデータに基づいて、より具体的なアクションプランを立てることができるようになりました。と小笠原氏は語ります。

共通データ基盤を利用することで、先に述べたサービスを横断したデータの利活用に止まらず、AI を用いた新たな施策も生まれました。塙氏のリードする AI プロジェクトもその一つです。

「記事の編集業務の効率化といった分野で AI 活用に取り組んでいます。特に、Web 記事については、記事のタイトルや、記事に紐づける関連記事によってユーザーからのインプレッション数(閲覧数)が大きく変動します。こういった状況を踏まえて、AI を用いて効果的な記事のタイトルを特定したり、関連記事のレコメンドを行う編集支援ツールを構築しました。編集支援ツールは社内での反響もよく、実際に Web 記事の編集業務にかかる負荷の削減に繋がっています。」

編集支援ツールに関しては、AI モデルのトレーニングを GPU 設定した Compute Engine 上で行い、トレーニング済みモデルは Cloud Run にデプロイし、Web アプリケーションを介してユーザーにサービス提供しているとのこと。

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Cloud Run はサーバーレスでインフラを意識することなく利用でき、デプロイした Web アプリケーションの監視や運用も特段の考慮をせずに行うことができたこと。また、AI モデルのトレーニングにも、NVIDIA の GPU をオンデマンドで利用できたため、短期間で編集支援ツールを構築できた、と塙氏は語ります。

この他にも、BigQuery に統合された機械学習機能である BigQuery ML を利用したデータ分析や、Google Cloud の提供する大規模言語モデル Gemini の利用にも取り組んでおり、今後も AI を活用した様々な DX の実現にチャレンジしていく予定とのことです。

デジタルソリューション部の挑戦と未来

インタビューの最後に、講談社 デジタル ソリューション部の今後について、話を伺いました。 小笠原氏は、講談社における DX 推進のネクスト ステップについて次のように語ります。

「講談社は、エンター テイメント業界のリーディング カンパニーとして、常に革新的な取り組みを続けています。その中で、DX 推進においては、グローバル × テクノロジーという大きな方針を掲げ、書籍や漫画といったコンテンツを国内外に発信しています。 この方針の実現に向けて、今後もデータ パイプラインの整備や AI 技術の活用など、様々な施策にチャレンジしていきたいと考えています。」

「データ パイプラインの整備に関しては、Dataform を用いたパイプラインの拡張や、Dataplex によるデータリネージを実現することで、さらなるガバナンスの強化を目指しています。また、AI に関しては、営業資料の作成支援やマーケティング支援、ドキュメント検索といった社内業務の効率化に利用していきたいと考えています。」

最後に、お二人から力強い言葉をいただいてインタビューを締めくくりました。

「このような施策をともに推進してくれる方に、ぜひ講談社に入社いただきたいと考えています。書籍や漫画といったエンターテイメント領域の国内外での促進を、テクノロジーの力で推進できることに、とてもやりがいと楽しさを感じられる仕事です。データ分析や AIなどのテクノロジー スキルを活かして、書籍や漫画といったエンターテイメント領域の未来を切り開くことに興味のある方、ぜひ応募してください!」


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株式会社 講談社
https://www.kodansha.co.jp/

講談社は創業以来「おもしろくて、ためになる」を合言葉に、あらゆる「ものがたり」を生み出し世界中に届けている総合出版社です。講談社の歴史は、1909年(明治42年)に野間清治が大日本雄弁会を創立したところからスタートします。1911年『講談倶楽部』、1920年『婦人倶楽部』、1924年『キング』など大衆に親しまれる雑誌を創刊。その後も、現在にいたるまで「おもしろくて、ためになる」という出版理念のもと、人々に親しまれる数多くの雑誌・書籍の出版を続けてきています。2019年12月には創業110周年を迎え、今後は紙媒体だけにとどまらず、電子書籍、映像化、動画配信、海外展開などさらなる進展をめざしています。

インタビュイー

株式会社 講談社
IT戦略企画室 デジタルソリューション部 副部長 小笠原 傑 様
IT戦略企画室 デジタルソリューション部 塙 一晃 様

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