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AI & 機械学習

Vertex AI で ML 導入を加速: 小売、金融から製造、自動車まで

2022年6月17日
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Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2022 年 6 月 9 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

人工知能(AI)と機械学習(ML)は、世界中のさまざまな業界を転換させています。それは、会話型の人間とコンピュータのインタラクションや音声ベースの分析といった先駆的な未開の領域から、小売業における商品検索の改善、AlphaFold などの先進技術による医学研究の進展など、多岐にわたります。

ですが、あらゆる ML の進歩を支えるのは、ML モデルの構築と本番環境でのデプロイの迅速化や、極めて技術的に複雑なプロセスを統合プラットフォームとして抽象化してより多くのユーザーに触れてもらうという共通の課題です。

Google のミッションは、予測可能で、便利な ML を大規模にデプロイする際の障壁をすべて取り除くことです。それこそが、Google が 2021 年 5 月に Vertex AI の一般提供を発表した理由です。Vertex AI は ML モデルのデプロイとメンテナンスの迅速化に特化した設計のマネージド ML プラットフォームです。Vertex AI を活用することで、データ サイエンティストは ML の開発とテストを、必要なコード行を 80% 削減したうえで、5 倍の速さで完了できます。

リリース以降、多種多様な業界のお客様が、Vertex AI により本番環境での機械学習モデルのデプロイの迅速化に成功しています。

実際、2021 年には、Vertex AI と BigQuery を通した機械学習の予測が、前年と比較して 2.5 倍生成されています。加えて、お客様は Vertex AI の統合データと AI のストーリーに大きな価値を見出しています。このことは、過去 6 か月間で Vertex AI Workbench のアクティブなお客様が 25 倍に増加していることからも明白です。

それでは、現在、Vertex AI を活用中の組織をいくつか紹介していきます。

小売業界での ML 導入の加速: Wayfair、Etsy、Lowe’s、Magalu における ML

Google が世界の小売企業の経営幹部 100 人以上を対象に行った調査では、AI および ML 搭載アプリケーションには、2,300~5,150 億ドルのビジネス価値を引き出す潜在的な可能性があることが確認されています。在庫の最適化に関するユースケースや、カスタマー エクスペリエンスの改善に関するユースケースなど、小売はこれまでのところ ML の導入が最も多い業界です。

たとえば、家具や家庭向け商品のオンライン販売店の Wayfair は、Vertex AI を活用することで、大規模なモデル トレーニング ジョブを 5~10 倍の速度で実行できるようになりました。

「ML を大規模に行っているので、処理を簡単にしたいと考えています。これは、新しいモデルの価値創出までの時間を短縮し、定期的に実行する非常に大規模な再トレーニング ジョブの信頼性と速度を向上させるとともに、モデルのビルドとデプロイを大規模に行う際の摩擦を低減することを意味します」と Forbes の記事で話すのは、Wayfair のアドテック / カスタマー インテリジェンス / 機械学習部門責任者の Matt Ferrari 氏です。さらに Ferrari 氏は、Vertex AI のおかげで会社は、「ML を意思決定のプロセスに織り込むことができます」と付け加えました。

一方、Etsy では、アイデアから ML のライブテストまでの時間を約 50% 短縮できると推定しています。

Etsy はブログ投稿の中で以下のように言及しています。「Etsy のトレーニングとプロトタイピングのプラットフォームは、希望の ML フレームワークを自由にテストできる Vertex AI や Dataflow のような Google Cloud のサービスを大いに頼りにしています。「こうしたサービスにより、Jupyter Notebook のような快適なインターフェースを通して、複雑な ML インフラストラクチャ(GPU など)を簡単に活用できるようになります。大量の抽出、変換、読み込み(ETL)ジョブは Dataflow で実行されますが、一方であらゆる種類の複雑なトレーニング ジョブは最適化のために Vertex AI に送信されます。」

小売業界での主要なユースケースと言えるのは予測で、これは ML の力で飛躍的に向上させることができます。Lowe's のイノベーション、データ、サプライ チェーン テクノロジー担当シニア バイス プレジデントである Amaresh Siva 氏によると、すでに同社の 1,700 以上の店舗で Vertex AI Forecast のさまざまなモデルが活用されているということです。

「Vertex AI Forecast を使用することで、Lowe's は SKU レベルと店舗レベルの予測のバランスを保つ、正確な階層型モデルを作成することができるようになりました。このようなモデルでは、店舗レベル、SKU レベル、地域レベルの在庫、プロモーション データ、その他複数のシグナルが考慮されていて、より正確な予測を実現しています」と Siva 氏は語ります。

ブラジルの小売業者である Magalu もまた、在庫の予測エラーを低減するために Vertex AI をデプロイしています。

Vertex AI により、「4 週間のライブ予測では、従来のモデルと比べてエラー(WAPE)が大幅に改善されました」と話すのは、Magalu の分析、戦略企画担当ディレクターである Fernando Nagano 氏です。この高精度な分析情報により、在庫の割り当てと補充をより効率的に計画し、お客様のニーズに合わせて的確な製品を適切な場所に理想的なタイミングで配置して、コストを適切に管理できるようになりました。」

メモリから、製造、モバイル決済まで: Seagate、コカ・コーラ ボトラーズジャパン、Cash App における ML

AI と ML の力を享受しているのは、小売業界だけではありません。Google の調査によると、日常業務で AI を使用している製造業者の 66% が、AI への依存度が高まっていると報告しています。

そこで、Google のデータセンターの HDD の相手先ブランド製品製造企業(OEM)パートナーである Seagate と協力して、ディスク障害などの頻繁に発生する HDD の問題の予測の改善に ML を活用することにしました。この取り組みで作成した Vertex AI AutoML モデルの精度は 98% で、リコールは 35% でした。一方、比較対象のカスタム ML モデルの精度は 70~80% で、リコールは 20~25% でした。

コカ・コーラ ボトラーズ ジャパン(CCBJ)も、ML の取り組みを増進させています。Vertex AI と BigQuery を使用して 70 万台の自動販売機からの数十億にのぼるデータレコードを処理することで、いつ、どこに商品を配置するかについての戦略的な意思決定に活用しています。

「自動販売機を、どこに置き、どの商品を並べ、どの値段にすれば、どれだけ売れるといった予測モデルを作り、地図上で分析できる仕組みを実現しています」と、

CCBJ でデータ サイエンティスト マネージャー / Google Developer Expert を務める松田 実法氏はブログ投稿の中で話しています。「プラットフォームの検討から導入、予測モデルのトレーニング、現場での概念実証からロールアウトまで、スピード感をもって、短期間で実現できました。」

次は金融業界の話題に移ります。米国に拠点を置く金融サービス企業の Square のプラットフォームである Cash App は、Google Cloud と NVIDIA のプロダクトを活用して、ML 処理のコア ワークフローの完了までにかかる時間を約 66% 改善しています

2020 年に Cash App によって買収された Dessa のシニア ソフトウェア エンジニアである Kyle De Freitas 氏は、次のように述べています。「Google Cloud は、当社のプロセスに不可欠な管理機能を提供してくれました。NVIDIA A100 Tensor Core GPU を搭載した Compute Engine A2 VM により、処理時間を劇的に短縮し、テストを大幅にスピードアップできることがわかりました。Google Cloud の Vertex AI で NVIDIA A100 GPU を実行することで、革新を継続し、アイデアを実現してお客様にとって効果の大きいサービスを提供するために必要な基盤を獲得できました。」

ML を燃料とする未来に向けて発進: Cruise と SUBARU における ML

自動車業界では、世界中のメーカーが数十億ドルかけて業務をデジタル化し、設計の最適化と新機能の実現のために AI に投資しています。

たとえば、自動運転車サービスの Cruise では、画像認識や状況理解といった重要な機能のための ML モデルの迅速なトレーニングとアップデートを Vertex AI が支えることで、数百万マイルにおよぶ自動運転の経験を積んでいます。

「データを取り込んで分析したら、動的な ML Brain に戻します。これは、収集されたデータからアクティブにマイニングを行い、古いモデルのパフォーマンスを超える新しいモデルを自動的にトレーニングする、継続的な機械学習です」とブログ投稿の中で説明するのは、Cruise のエンジニアリング担当エグゼクティブ バイス プレジデント Mo Elshenawy 氏です。「これは、毎月数百年分の GPU 時間を消費して、数百のモデルを同時にトレーニングできる Vertex AI を使用して行います。」

一方で SUBARU は、自社製乗用車による死亡交通事故ゼロを目指して ML に取り組んでいます。SUBARU Lab では、たとえば、ステレオカメラである SUBARU のアイサイトからの画像の分析に Google Cloud を活用しています。チームは、NVIDIA A100 GPU と Compute Engine の組み合わせを処理能力として使用し、データ サイエンティストやデータ エンジニアによるモデル構築には Vertex AI を活用しています。

「数あるプラットフォームの中から Google Cloud を選んだのは、マネージド ノートブックの選択肢である Vertex AI や Vertex AI Training など、AI 開発を行う上で有用なマネージド サービスが複数展開されていたからです。大規模な機械学習の演算に対応できる高性能なハードウェアが提供されていたのも魅力的でした」と話すのは、SUBARU、AI R&D 課シニア エンジニアの大久保 淑実氏です。

ML デプロイの推進に向けた連携

Google はお客様による Vertex AI の導入にとても励まされています。これからも主要なお客様やパートナーと連携して、ML モデルの本番環境でのデプロイを促進するうえでデータ サイエンティストが直面する課題に対してアイデアを広げていきたいと考えてします。Uber AI でエンジニアリング ディレクターを務める Smi-tha Shyam 氏、Ford で AI およびクラウドのディレクターを務める Bryan Goodman 氏による、Google Cloud Applied ML Summit セッションをご覧いただければ、どのように Google がパートナーやお客様と導入を進めているかを理解していただけることと思っています。

統合データと AI のストーリーについての詳細は、Applied ML Summit での専門家のコメントをさらにご確認いただくか、Vertex AI の最新情報をご覧いただくか、Data Science on Google Cloud のページをご覧ください。


- Vertex AI 担当グループ プロダクト マネージャー Henry Tappen
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