THECOO株式会社の導入事例:少数精鋭のスタートアップにとって GCP は有効なサービス。fanicon の利用者に安定かつ高速なライブ配信を提供
Google Cloud Japan Team
テクノロジーを活かして「できっこない」に挑み続ける THECOO株式会社(以下、THECOO)。社名は、「色即是空・空即是色」を由来とし、「一度きりの人生、思いっきり移り行き、変化していこう!」という思いを持ったチャレンジ精神の旺盛な人たちが集まる会社を目指しています。チャレンジの一環として、2017 年 12 月にローンチされた新たなサービス「fanicon(ファニコン)」を開発したキーマン 3 名に、GCP を採用した開発について話を伺いました。
事業の柱は、インフルエンサー セールス事業と fanicon 事業の 2 つ。インフルエンサー セールス事業では、インフルエンサーの価値を見える化する「iCON Suite」の運営及びインフルエンサー キャスティング代理業。Fanicon 事業では、ファンコミュニティ アプリ fanicon の運用、fanicon 内イベントの企画、ファニスペースでオフ会等のイベント運営。
利用している Google Cloud Platform サービス
Google Compute Engine、Google Cloud Storage、Cloud Firestore(ベータ版)、Google Stackdriver、Cloud SQL、Google BigQuery など写真左から
- 開発部 / エンジニア 太田 健文 氏
- 開発部 / エンジニア 城 弾 氏
- fanicon 事業部 Product Manager 星川 隼一 氏
fanicon の開発にあたりサービスを支えるインフラとして GCP を採用
THECOO が提供する fanicon は、アイコンと呼ばれるタレントやインフルエンサーが、自分のファンコミュニティ アプリを作成できる会員制ファンコミュニティ アプリです。アプリ内のツールでアイコンとファンの双方向のコミュニケーションが可能。月額課金やポイント制のスクラッチなどの機能も搭載し、荒らしやアンチを気にすることなく、安心してファン コミュニティを運営できます。星川さんは、「2017 年 1 月より fanicon の開発を開始して、4 月よりアプリを公開、いくつかのファン コミュニティが軌道に乗った 12 月に正式ローンチしています。すでに、Google Play でトップ 10 に入る人気アプリになっています。」と話します。fanicon の開発にあたり、サービスを支えるインフラとして採用されたのが、Google Cloud Platform(GCP)でした。fanicon のインフラは、Google Compute Engine(GCE)と Google Cloud Storage、Cloud SQL などのサービスをベースにすることで、仮想マシンを追加するだけで新たなサービスを、迅速に立ち上げることができる構成になっています。太田さんは、「スタートアップらしく、シンプルな構成にしてあります。当初は、エンジニアも少なかったので、スモール スタートで構築し、事業やサービスの成長にあわせて、システム自体も拡張できる構成にしたいと考えていました。」と話します。たとえば、ライブ配信が必要な場合、リアルタイム データベースとして Firebase を使い短期間でサービスの提供を開始しています。また、Cloud Firestore により、チャットのリアルタイム化も実現しています。
またデータ分析用に、BigQuery とデータ ポータル(旧名称:Data Studio)も利用しています。「ログやデータベースのデータなどすべてを BigQuery に蓄積し、データ ポータル で可視化して、会議などで共有しています。fanicon では、退会数をいかに少なくするか、いかに利用者を増やしていくかが重要であり、そのための KPI の管理や、サービスの成長のための数字の分析をしています。」(星川さん)
障害検知に関しては、Google Stackdriver で監視しており、もし問題が発生したら、Slack にメッセージが配信される仕組みになっています。「監視自体は、4 クリック程度でできるので、監視に費やしていた時間を、ものづくりに生かせることも GCP のメリットです。GCP はかなり安定稼働しているので、あまり神経質に監視しなくても大丈夫という安心感があります。」(太田さん)
低コストで利用でき、必要なサービスがそろっていることが GCP を選んだ理由
fanicon のインフラとして GCP を採用した理由を、城さんは、「低コストで利用できること、必要なサービスがそろっていることが GCP を選んだ理由でした。G Suite も使っているので、経理に請求を回したり、レポートを共有したりするときに Google アカウントで共有できるので非常に便利です。インフラ部分は、なるべく自分たちで作らずに、GCP のサービスを利用していきたいと思っていました。」と話します。「Google のテクノロジーでまとめたいという思いもありました。データ分析にも利用していますが、BigQuery のような簡単で高速なサービスを使わずにデータ分析を実現するのは難しいと思っていました。BigQuery は、プロダクト的な差別化の意味でも GCP の強みだと思っています。」(星川さん)
GCP を使った開発について太田さんは、次のように語ります。「GCP は、通信やセキュリティなどのレイヤーが作り込んであるので、ポリシーさえ設定しておけば、その部分は信頼してアプリ開発に注力できるので便利です。SDK やライブラリを利用するときに、Google の開発スピードが速いので、知らない機能が増えて戸惑うこともありますが、技術革新に乗り遅れることなくアプリ開発ができます。」
優秀なエンジニアを採用できたのが GCP の想定外の効果
GCP を採用した経営視点の効果を星川さんは、「グロス(売上)の 2% 以下で利用できるコスト感が、GCP の最大のメリットといえます。経営視点では、非常に効果が高いと感じています。」と話します。また 城さんは、次のように語っています。「ローンチまでの期間に、月額 5 万円程度で利用できたので、スタートアップにとっては、本当に有効なサービスだと思います。」開発視点での効果を星川さんは、「ライブ配信のチューニングを行った結果、かなり遅延を抑えられたという効果もあります。ライブ配信の遅延は、fanicon にとって大きな問題ですが、4~5 名のエンジニアで、大手動画配信サービスに負けない低遅延性を実現できていると自負しています。配信動画の遅延に関して、fanicon の利用者からクレームが来たことは一度もありません。」と話します。さらに Firebase を利用したことで、開発工数を削減しています。「チャット機能を 1 から作ると、かなり時間がかかりますが、Firebase を利用することで大幅に工数を削減することができ、その分より価値の高いサービスの開発に注力できています。Firebase によるリアルタイム系のサービスは、利用者が本当に喜んでいます。特に、もともとポーリングで実装していたチャットをリアルタイム化できたのは、利用者のコミュニケーションの円滑化をもたらし、大きな価値を提供できたと思っています。」(城さん)
優秀なエンジニアを採用することができたのは、GCP の想定外の効果でした。城さんは、「スタートアップの会社がエンジニアを採用するのは非常に困難です。今回、太田さんのような優秀なエンジニアを採用できたのは、GCP を採用していたからです。」と話します。
太田さんは、「GCP を使ってみたいと思っていたので THECOO に入社しました。GCP は、機能ごとにサービスが分かれているので、この機能が必要ならこのサービスと瞬時に判断できるため、効率的に開発することができます。」と話します。
「一般的なウェブ サービスでは、問題発生時にウォームアップに時間がかかり、多くの利用者に “ページが見られません” というエラーが返されます。このとき、ウォームアップを待つしか解決策がありませんでしたが、GCP は、常に世界中のトラフィックを処理しており、突然のスパイクにもウォームアップ期間なしで問題なく処理してくれるので、アプリケーションをいかにスケールさせるかに注力できるメリットがあります。」(太田さん)
今後の展望を城さんは、次のように語ります。「現状、シンプルな構成ですが、今後はさらにサービスがスケールしていくはずなので、それを見据えて冗長化をしていきたいと思っています。また現在は、基本的には GCE を使っていますが、Google Kubernetes Engine を使うなど、サービスを支える部分をコンテナ化していきたいと思っています。さらに、Cloud Memorystore が公開されたので、可用性の向上に使ってみたいと思っています。」
星川さんは、「個人的には、VR のライブ配信をやってみたいです。また人気芸能人が fanicon を利用しても耐えられる構成を用意し、しかも少人数で管理できる仕組みを実現したいと思っています。少人数というキーワードは、開発の煩雑さをなくし、開発サイクルを高速化するためにも非常に重要です。インフラ部分はなるべく自分たちで作らずに、GCP のサービスを最大限に有効利用していきたいと思っています。」と話しています。
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