オーケー: Google Cloud を用いた開発により、データ ウェアハウス刷新やアプリ開発などを短期間で実現
Google Cloud Japan Team
1 都 3 県にディスカウント・スーパーマーケット「オーケー」を展開するオーケー株式会社(以下、オーケー)は、2020 年に Google Cloud を導入。BigQuery を活用したデータ分析基盤でデータに基づく業務の高度化・効率化を推進しています。その後、2022 年 10 月には顧客向けスマートフォンアプリを Firebase で構築・配信するなど、Google Cloud 活用をさらに推進。そんな同社の Google Cloud 活用とその成果、今後の展望について伺いました。
利用しているサービス:
BigQuery, Firebase, Cloud NAT, Cloud Armor, Identity Platform など
BigQuery を用いたデータ ウェアハウス刷新で分析の高度化・コスト削減に成功
「オーケーは『高品質・Everyday Low Price』を掲げ、品質が良い商品を低価格で販売することを方針としています。商品を安く仕入れるには大量に売る力が求められます。従来は、それをバイヤーの勘と経験に頼っており、幸い、これまではうまくいっていましたが、売上が 10 年で 2 倍以上の 5,000 億円規模にまで拡大し、成長を続けていく中で、さすがにこれ以上の成長を実現するにはデータ活用が不可欠だという結論に到達しました。」
そう語るのは、2020 年 6 月の入社以来、ネットスーパー サービスの立ち上げなど精力的にオーケーの DX を推進してきた IT本部 執行役員 IT本部長 田中覚氏(※)。入社当時は、オーケーではオンプレミスの独自のデータ ウェアハウス(DWH)を使っていましたが、各店舗から上がってくる膨大な量の購買データなどを処理しきれず頻繁に障害が発生することに悩まされていたと言います。こうした状況に危機感を覚えた田中氏は DWH のクラウド移行を決断。Google Cloud が選ばれた理由について、IT本部 DX推進部 部長 荒川健児氏(※)は次のように説明します。
「当時の環境には 100 を超える店舗から毎日届く膨大な購買情報を長期にわたって蓄積しておくだけのストレージがなく、パフォーマンスの点でも心もとないという問題がありました。また、それに加えサーバーやネットワークの保守運用の負荷が大きく、コスト面にも課題を抱えていました。そうした中、データ容量が無制限で、パフォーマンスにも優れ、しかもフルマネージドで使える BigQuery は我々に適した選択肢だと考えました。」
DWH の刷新後、オーケーは蓄積されたデータを用いて、店舗ごと、商品カテゴリーごとの売上分析など、さまざまな分析をスムーズに行う試みが行われています。同社が経営目標として掲げる『借入無しで年率 20% 成長の達成』に向けた武器の 1 つとして活用が進んでいます。
「まず、大量のデータを高速に分析できる BigQuery を導入したことで、従来環境ではとうてい不可能だった半リアルタイムの購買分析が可能になりました。これによって各店舗で作る弁当や惣菜の数をその時の売れ行きに合わせて調整できるようになります。今後は蓄積されたビッグデータを機械学習を用いて売上予測などにも活用していきたいと考えています。また、並行して Looker Studio などの BI ツールを用いたデータの見える化にも取り組んでおり、こちらはすでに一部実用化も始まっています。」(荒川氏)
「Google Cloud への移行は機能面はもちろん、費用的な効果も絶大でした。今、Google Cloud のおかげで実現できていることをオンプレミスでやろうとしたら、トータルで何十倍もの費用がかかっていたのではないでしょうか。」(田中氏)
なお現在、DWH は基幹システムのリプレースに合わせて連携部分を改修中。イベント ドリブンな Cloud Functions を用いて、データが届くと自動的に BigQuery にロードされる仕組みを構築するなど、外部環境の変化にも大きな手間なく対応できているそうです。
Firebase による一気通貫なアプリ開発でスピーディな開発を実現
オーケーが高度 DX を推進しているのは 、DWH のクラウド移行だけではありません。最新の取り組みの 1 つが、会員数 677 万人を突破(2023 年 3 月現在)している人気サービス「オーケークラブ」会員カードのアプリ化です。
「オーケーは低価格化に向けたローコスト オペレーションにフォーカスしてきた一方で、お客さまにお知らせしたいことをきちんと伝え切れていない側面があると感じていました。もっと自由にお客さまに価値を提供し、我々の世界観やこだわりをお伝えできるプラットフォームが欲しいと考えていたのです。」(田中氏)
フルスクラッチから既存パッケージを利用するものまで、さまざまな選択肢を検討した結果、田中氏は「オーケークラブ」会員カードアプリを Firebase を用いて開発することを決意。アイレット株式会社(以下、アイレット)を開発パートナーに迎え、2021 年 7 月に開発をキックオフさせました。
「技術的観点から Google Cloud の強みの 1 つに挙げられるのが、CloudRun やデータベースの性能面での優秀さです。アプリ開発においてデータベースがボトルネックになることが多い中、データベース周りのプロダクトの先進性も含め、優位性が高いと感じています。特に、2023 年 7 月に正式発表された Cloud SQL のエンタープライズ版などは、今後の運用・開発において大きな助けになってくれそうだと期待しています。こうした機能のアップデートが早いことも Google Cloud を使う大きな魅力でもあります。何か課題が生まれた時に、どうしようか考えているうちにそれを解決する新機能が登場するということが何度もありました。」(アイレット 取締役副社長 平野弘紀氏)
「Firebase を使ったアプリ開発のメリットとしては、開発からテスト配信までワンストップで行えることが大きいですね。テスト配信を自動化できる Firebase App Distribution は非常に有効でした。このメリットを損なわないよう、UI 開発に Google がオープンソースで提供している Flutter を採用、その他は基本的にすべて Google Cloud 内で完結させ、リソースの増大を抑えることを意識しています。」(アイレット第四開発事業部 黒川慎一氏)
<システム構成図>
上図はその後、2022 年 10 月にリリースされた「オーケークラブ会員カードアプリ」のシステム構成図です。顧客情報を取り扱うことから特にセキュリティには気を使っており、Cloud NAT や Cloud Armor、Identity Platform など、Google Cloud のフルマネージドなセキュリティ ソリューションを、ベスト プラクティスにのっとる形で導入することで、効率的かつ脆弱性の発生を抑えた開発を進めていきました。
「リリース後、アプリをインストールしてくださるお客さまには熱烈な "オーケーファン" が多いという印象を持っています。現在は、そうしたお客さまに魅力的な情報をどのように配信していくか、パーソナライズなども含めて試行錯誤しているところです。さらなる UI / UX の改善はもちろん、メモ機能や動画でのコミュニケーションなどさまざまな機能追加を検討中です。この際、特に大切なのが開発のスピード感で、Firebase ならそれを実現できると感じています。」(田中氏)
AI 技術なども駆使して、従業員の生産性をより向上させていきたい
今回紹介した DWH やアプリ以外にも、Retail Search を用いた社内向けの商品検索機能など、オーケーはさまざまなかたちで Google Cloud を活用中。AI 活用も含め、今後さらに利用を拡大していきたいと田中氏は言います。
「食品スーパーは労働集約型のビジネスなので、まず第一に店舗のスタッフら、従業員が売上増や生産性改善のためにやりたいことをいかにテクノロジーで実現していくかを考えています。それが最終的にお客さまの満足度向上につながると信じているからです。先ほど荒川がビッグデータを用いた機械学習の可能性について言及しましたが、はやりの生成 AI は期待値が高いですね。データ分析だけでなく、例えば AI がインタラクティブな UI で従業員のオペレーションを支援してくれるようになったら面白いと思いませんか?そして、AI と言えば Google、今後の AI 関連サービスの強化と拡大にも期待しています。」
オーケー株式会社
経営方針『高品質・Everyday Low Price』を掲げるディスカウント・スーパーマーケット「オーケー」を運営。『万一、他店より高い商品がございましたら、お知らせください。値下げします。』のポスターを掲げ、ナショナルブランド商品については、地域一番の安値を目指す。店舗不動産の多くを自社所有するなど独自の経営方針で知られる。2021 年には「オーケーネットスーパー」も開始。実店舗数は 1 都 3 県に147店(2023年12月現在)、従業員数は 16,284 名(2023 年 3 月末現在)。
アイレット株式会社
先進性の高い IT ソリューションを、企画、システム設計から設計、構築、運用、保守までを「ワンストップ」で提供するシステム開発企業。Google Cloud などパブリック クラウドを用いたスピード感に優れたソリューション開発に定評がある。従業員数は 1,072 名(2023 年 10 月末現在)。
インタビュイー(写真右から)
オーケー株式会社
・IT本部 DX推進部 部長 荒川 健児 氏(2024 年 4 月〜は IT本部副本部長)
・IT本部 執行役員 IT本部長 田中 覚 氏
アイレット株式会社
・取締役副社長 平野 弘紀 氏
・第四開発事業部 黒川 慎一 氏
※ 本記事記載の人物の所属、役職は 2024 年 3 月 1 日時点のものです
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