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株式会社エムネスの導入事例:診断専門医不足を GCP を活用した遠隔画像診断システムが解決。AI を活用した臨床研究で脳動脈瘤の発見精度 85%~90% を実現

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近年の著しい医師不足を解消するためには、育児休暇中の医師や海外留学中の医師が、いつでも、どこでも画像診断ができる仕組みを実現することが必要です。クラウドサービスと AI を融合した遠隔画像診断システムで、より安定した、質の高い診断サービスの提供を目指す株式会社エムネス。同社の取り組みについて、話を伺ってきました。

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■ 株式会社エムネス

遠隔画像診断を中核に、医療技術と IT を融合させた医療ネットワークを構築。「医師も患者も、最大限の恩恵を受けられる IT を。」という理念に基づき、遠隔画像診断サービス、遠隔病理診断サービス、医療支援クラウドサービス、スマホ診療システム、検診支援サービス、CT レンタルサービスを事業として展開。さまざまな医療機関との関係を強化することで、医療の均てん化や質の向上を目指しています。

■ 写真左から

  • LOOKREC事業部 システムエンジニア 森藤 敏之 氏
  • LOOKREC事業部 統括部長 田岡 昌記 氏
  • 代表取締役(霞クリニック院長) 北村 直幸 氏
  • 取締役(霞クリニック 事務長) 金島 茂則 氏
  • LOOKREC事業部 システムエンジニア 福岡 秀峰 氏
  • 広報部長  登地 敬 氏

エムネスのサービスの中核となる遠隔画像診断システムの基盤に GCP を採用

「放射線診断専門医として、広島市内で一番大きい病院に勤めていたとき、県北の病院からの紹介で 30 代の患者さんが来院しました。診察すると進行性のすい臓がんだったのですが、持参された約半年前の CT 画像を見ると、まだ小さながんが確認できました。半年前に遠隔画像診断ができていれば……。そう思ったのが、エムネスの起業のきっかけでした。」--こう話すのは、同社の代表取締役で、霞クリニック院長でもある北村 直幸さんです。

2000 年に設立されたエムネスは、11 名の放射線診断専門医が常勤する国内最大規模の遠隔画像診断センターです。遠隔画像診断は、CT や MRI などの装置は保有しているものの、放射線診断専門医がいない、あるいは不足している医療機関向けのサービス。医療機関から送られてきた CT や MRI の医療画像を専門医が的確に診断し、迅速に診断書を返信します。2012 年より病理専門医との協働で、放射線診断に加え、病理診断も可能になっています。

同社の遠隔画像診断は、医療支援クラウドサービス「LOOKREC(ルックレック)」により提供されています。契約した医療機関は、パソコンに、Google Chrome ブラウザを導入するだけで、画像診断の依頼をしたり、検査画像を確認、また診断書を参照することができます。この LOOKREC の基盤となるクラウドサービスとして、Google Cloud Platform(GCP)が採用されています。

北村さんは、「LOOKREC を利用することで、子育て中の医師や海外留学中の医師が、自宅や海外から画像診断をすることができます。また大量データの保管は、どこの施設でも困っていますが、GCP は大容量の画像データを低コストで一元管理できます。」と話します。
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GCP のメリットを一言でいえばフルマネージドであるということ

LOOKREC バージョン 1 の提供は 2014 年 7 月より開始。すでに 20 程度の医療機関と契約し、サービスを提供しています。当時すでに安定稼働していたものの、近い将来に向けたデータ量の拡大を見据えてシステムをスケールする実証実験を実施。2016 年に、より一層のパフォーマンス向上によるスムーズな画像診断の実現を目的に、LOOKREC をバージョン 2 に刷新することを決定します。

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LOOKREC / AI 診断 システム構成図

改善点について、システムエンジニアの福岡 秀峰さんは、「バージョン 1 では、検査画像を Google Compute Engine で変換し、Google Cloud Storage(GCS)に蓄積していましたが、バージョン 2 では、Kubernetes Engine のコンテナを使いスケールできるよう改善。また以前は、Google App Engine(GAE)のタスクキューを使って画像処理を振り分けていましたが、流量が増えるとスケールに問題があったので、Cloud Pub/Sub に切り替えました。」と話します。

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統括部長の田岡 昌記さんは、次のように語ります。「バージョン 2 では、ブラウザ上でいかに画像を高速に表示させ、診断のレスポンスを向上させることができるかが最大のポイント。またレポートや診療記録をいかに容易に作成し、履歴を管理して素早く検索できるかにも取り組みました。」

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ブラウザの性能向上について、システムエンジニアの森藤 敏之さんは、「GAE と Java の相性が悪く、ブラウザのレスポンスが悪化していたため、Java を Go 言語に変更。画像のダウンロードなど、1 クリックで数百リクエストが発生することもありますが、スパイクにも柔軟に対応できるようになりました。」と話します。

現在、GCS に蓄積されたデータ量は、25 万検査分の画像 7,250 万枚、ストレージ容量は 50 TB、レポートデータが 7 万 3,000 件分あります。北村さんは、「今後、オンプレミスに蓄積された約 50 TBのデータや契約医療機関からのデータなどもバージョン 2 に移行する予定です。データ量は大幅に増えていますが、コストは変わらないので、GCP のコスト効果は高いと感じています。」と話します。

GCP のメリットを福岡さんは、次のように語ります。「一言でいえば、フルマネージドであることにつきます。GAE をデプロイすれば、サーバー側のメンテナンスは必要なく、サービスの開発に集中できます。また、2 人ともバージョン 1 の開発まで、ウェブアプリ開発の経験がなかったのですが、GCP はインフラ管理も不要で、UI が分かりやすく効率的な開発ができました。」

スマートデバイス対応と AI 活用で大いなる可能性を秘めた GCP

現在、LOOKREC では、「スマートデバイス対応」と「AI の活用」という大きく 2 つの取り組みを推進しています。スマートデバイス対応について北村さんは「これにより、患者さんや医療機関は、いつでも、どこからでも、スマートデバイスを使って医療データを参照することが可能になります。」と話します。

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スマートデバイスで検査画像を閲覧する「シンプルビューワ」

そのためには、撮影時に DICOM フォーマットで蓄積された大容量のデータをスマートデバイス向けに最適化して配信する仕組みが必要です。森藤さんは、次のように語ります。「1 検査あたり 300 枚の画像を配信すると 150 MB 程度の容量になります。このデータをいかに安い通信料で、スムーズにスマートデバイスに配信し、自由に拡大、縮小して見ることができるようにするかが重要になります。」

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また今回、新たにモバイル プラットフォームとして Firebase を導入し、LOOKREC にチャット機能の搭載を予定しています。レポートに画像診断の所見を記載する際、不明な点があった場合、専門医にチャット機能でメッセージを送り、コンサルティングを受けることができます。

一方、同社の AI の活用は、医療・製薬・農業などの領域における画像解析技術を牽引する、東京大学発のベンチャー企業であるエルピクセル株式会社と共同で開発を進めています。LOOKREC に蓄積された検査画像データを、エルピクセル社が TensorFlow を利用して開発した AI エンジンで解析し、独自に開発したアルゴリズムを利用して得た座標情報をもとに、画像の上に解析結果を表示します。まずは、脳動脈瘤、肺結節、肝臓がんを解析する 3 つのアルゴリズムを開発しています。

AI から戻ってくるのは位置座標だけで、画像上に表示した結果の正誤を学習させなければ精度は向上しないため、CAD 研究用評価 / 教育システム(LCEES)を、GAE ベースで開発しています。最初のアルゴリズムを使ったプロトタイプは、発見の精度が 50 %程度でしたが、LCEES を利用した臨床研究では、脳動脈瘤において 85% ~ 90% の精度を実現しています。

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LOOKREC CAD 研究用評価 / 教育システム「LCEES」

北村さんは、「我々が目指しているのは、例えば、タバコをたくさん吸う、家族に肺がんの人がいるなど、画像データ以外の情報を組み合わせることで、がんを発見するための AI の精度を向上させることです。そのためには、多種多様で膨大な情報を一元管理し、高速に検索できる仕組みが不可欠です。今後のスマートデバイス対応や AI の活用において、大いなる可能性を秘めているのは、GCP しかないと思っています」と話しています。

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