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顧客事例

広島大学:1 万 5,000 人を超える学生の学びを支える LMS を Google Cloud 上に構築し、新世代の教育のための環境を提供

2022年9月13日
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Google Cloud Japan Team

昨今、さまざまな教育機関で「学修者本位の教育の実現」に向けた DX ソリューションの導入が進んでいます。広島大学も、そうした取り組みに力を入れている大学のひとつ。同学が 10 年後のデジタル技術を活用した教育・研究等のあり方を見据え刷新した LMS(Learning Management System)の狙いと そのプラットフォームに Google Cloud を選んだ理由について、同学情報メディア教育研究センターの皆さんに話を伺いました。

利用しているサービス:

Google Compute EngineCloud SQLオペレーション スイートBigQueryCloud Load BalancingPersistent DiskCloud StorageCloud VPNCloud LoggingCloud MonitoringGoogle Workspace など

利用しているソリューション:

スマートアナリティクス

BigQueryのパフォーマンスに魅力を感じ Google Cloud を選択

2001 年、広島大学は多くの大学に先駆けるかたちで LMS を導入し、全学にむけての運用をスタート。途中、オンプレミスからパブリック クラウドへの移行といった大きな変革を挟みながら、約 20 年に渡って運用を続けてきました。しかし、既存システムでは大量のデータ分析において求められるパフォーマンスが出せなくなっていたこと、昨今のコロナ禍で急増した負荷に耐えうる可用性が求められていたことなどから、国内の多くの大学で利用されているオープンソース LMS「Moodle(ムードル)」を Google Cloud 上で運用する新体制への移行を決意しました。その決断について、情報メディア教育研究センターの教授 隅谷 孝洋氏と准教授 近堂 徹氏は次のように説明します。

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「それまで使い続けてきた LMS を Moodle に変更したのは、文科省『デジタルを活用した大学・高専教育高度化プラン(Plus-DX)』の求める『学修者本位の教育』を実現するためです。特に他大学との共同授業や高大連携授業、公開講座などを行うためには、ライセンス数に縛られないオープンソース LMS の導入がどうしても必要でした。そのプラットフォームに Google Cloud を選んだのは、学習ログの分析に BigQuery を使いたかったから。従来の LMS では集計処理などにかなりの時間を取られていたので、今回の移行を機にその問題も解決したいと考えました。」(隅谷氏)

「広島大学が 2021 年に策定した『広島大学DX 推進基本計画』では、教育・学習データの利活用や教育コンテンツのデジタル化などを全学的に取り組むべき事項と定めています。そのためには、LMS の構築に加えて、高速で必要な情報を分析し、迅速な学習支援や業務支援が可能なログ解析基盤の存在が重要になるため、BigQuery のパフォーマンスには大いに期待しています。そのほか、Google Cloud の導入に際しては、国立情報学研究所が提供する学術情報ネットワーク SINET6 学認クラウドサービスにも対応し、ISMAP(政府情報システムのためのセキュリティ評価制度)でも高い評価を受けたセキュリティ性能の高さや、オペレーション スイートなどによる管理のしやすさなども評価しました。」(近堂氏)

マネージドサービスを積極活用し、本来やるべきことに注力

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上図は、2022 年 3 月から稼働している、新しい「広大 Moodle」のシステム構成図です。Compute Engine 上で Moodle を動かし、学生の提出物や教員がアップロードした教材ファイルなどは Compute Engine のリージョン永続ディスクに保存。学習コースの設定などはフルマネージドな Cloud SQL に記録し、各種ログは BigQuery へという、近堂氏いわく「持続可能性を考慮したシンプルな構成」を採っています。

「これまではどういったサーバー構成にするのかといったところから私たちが見ていかねばならず、少なからずそこでトラブルも起こっていたのですが、今回、そのあたりはとてもスムーズに進みました。本来注力すべき、Moodle の設定などに注力できたのは Google Cloud を導入したメリットのひとつだと感じています。」(隅谷氏)

まだ本格稼働開始から数か月という Moodle と Google Cloud による「広大 Moodle 」ですが、隅谷氏はすでに充分な手応えを感じていると言います。

「まだ数か月の利用ですが、2020 年春にコロナ禍の影響で利用者数が一気に 6 ~ 7 倍になったときに経験したようなひどいトラブルはほとんど起きていません。もちろん、その時と比べて落ち着いているものの、以前と比べたら膨大なアクセスであることには変わりありません。そんな状況でもほとんど負荷が上がっていないのは頼もしいですね。今後、チューニング次第では構成を変更してコストを下げることもできそうだと感じています。また、実際に使っている先生方からも、これまでよりも直観的で使いやすいという声をいただいています。個人的にも授業や研究に使えそうな機能がとても充実していると感じており、管理業務も含め、どのように使いこなしていくかを楽しみながら考えているところです。」

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「技術者視点で見ると、利用者が Moodle へアクセスする際に、HTTP/1.1 や HTTP/2 ではなく QUIC(Quick UDP Internet Connections)をベースとした HTTP/3 プロトコルを使っているところがユニークだなと。これは Google Cloud の Cloud Load Balancing を使っているからこその機能だと思います。利用者はまったく意識していない部分ですが、これによってモバイル通信などでもパフォーマンスの向上が見込め、多様な環境でのユーザー エクスペリエンス向上に寄与していると思います。Google が検索エンジンや YouTube などで使っている技術が LMS にも利用されている面白さを感じました。」(近堂氏)

Google Workspace for Educationとの連携などでさらに活用を深めていきたい

なお、2022 年度は移行期ということで既存 LMS と並行するかたちで運用されている広大 Moodle ですが、2023 年度からは既存 LMS を廃し、Moodle と Google Cloud に完全移行されることが決まっています。

「今後の取り組みはいろいろ考えているのですが、Google Workspace との連携はやってみたいと思っています。広島大学では学内からの要望を受けて 2021 年 8 月に Google Workspace を全学導入しており、現時点で数千人規模の利用者がいます。今後、これを Google Cloud と連携させていくことで、学生のさらなるクラウド活用を促していけるのではないかと考えています。」(近堂氏)

「Google Workspace は私の授業でも使い始めていますが、Google Colaboratory が非常に使いやすく、データサイエンス教育などでとても役立ちました。今後は、学生たちが無料で Compute Engine などを使えるプランも活用できればと思っています。」(隅谷氏)

「広島大学はかなり早い時期からパブリック クラウドを積極的に導入してきています。これまでもさまざまなサービスを利用してきたのですが、それらと比べて Google Cloud は管理コンソールも含めてシンプルにまとまっているなと感じています。そうしたこともあって、今回のシステムもシンプルであることにこだわりました。今後、運用面においてその効果がでてくるのではないかと期待しています。このたび導入した LMS は向こう何年にもわたって運用していくもの。BigQuery を駆使したログ解析の部分も含め、さらに活用を深めていくように取り組んでいきたいですね。」(近堂氏)


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広島大学

1949 年、広島文理科大学ら官立 7 校を併合するかたちで設立され、現在は 12 の学部と 4 つの研究科を設置する国立の総合研究大学。「平和を希求する精神」「新たなる知の創造」などからなる理念 5 原則を掲げる。文部科学省「平成 26 年度スーパーグローバル大学創成支援」タイプ A(トップ型)13 大学の 1 つに、中国四国地方で唯一採択された。学生数は学部学生 10,605 人、大学院生 4,435 人。教職員数は 3,651 人(2021 年 5 月 1 日現在)。

インタビュイー

・情報メディア教育研究センター / 大学院先進理工系科学研究科 教授

隅谷 孝洋 氏

・情報メディア教育研究センター / 大学院先進理工系科学研究科 准教授

近堂 徹 氏


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