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Media & Entertainment

StreamSight: AI を活用した予測で、音楽著作権使用料の透明性を高める

2025年9月16日
Kiki Ganzemüller

Top Partner Manager, EMEA Music Partnerships, Google

Thomas Heigl

Key Account Director for Media and Entertainment, Germany, Google Cloud

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※この投稿は米国時間 2025 年 9 月 5 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

毎日膨大な量のストリーミング データが生成され続けるこの時代、著作権使用料の追跡の精度、スピード、透明性を確保するという音楽業界の絶対的な使命も進化し続けています。データの明確性がわずかに違うだけで、収益の分配率や分配の時期に影響を与える可能性が避けられない以上、データ処理と異常検出のイノベーションは、音楽クリエイター、レーベル、出版社、そして権利者にとって不可欠な課題となっています。

こうした課題を克服するために BMG が Google Cloud と提携して開発したのが、AI を活用してデジタル ロイヤリティの予測とレポートの異常検出を強化するアプリケーション、StreamSight です。ML モデルを使用して過去のデータを分析し、将来の収益を予測するのに役立つパターンを特定したり、看過されがちな異常を検出したりできます。

このコラボレーションでは、BigQueryVertex AILooker などの Google Cloud のスケーラブルなテクノロジーと、BMG が長年培ってきた業界の専門知識を融合してアプリケーションを共同で構築し、著作権使用料の手続きのモダナイゼーションにクラウドベースの AI が貢献できることを実証し、レーベル、出版社、アーティストにロイヤリティが公平かつ迅速に分配され支払われるようにするという両社のコミットメントを一歩推し進めることができました。

「BMG では、AI その他のテクノロジーの活用を加速させ、アーティスト、ソングライター、パートナーの皆様に最高のサービスを提供するべく、その可能性を常に押し広げています。デジタル レポートと収益化におけるデータの明確性と信頼性の新しい基準を打ち立てた StreamSight は、このコミットメントを反映したものです。Google Cloud とのパートナーシップは、当社の AI とデータ戦略を加速させるうえで重要な役割を果たしています。」 - BMG、最高執行責任者 Sebastian Hentzschel 氏 

データから洞察を導く: StreamSight の仕組み

StreamSight は、Google BigQuery ML 内の複数の ML モデルを基盤として、その分析能力を活用しています。

収益予測では:

  • ARIMA_PLUS: このモデルは、主に収益パターンの予測に使用されます。長期的な売上傾向を把握することに優れており、短期的な変動に対する対応よりも、売上の長期的な推移を見極め解釈するのに適しています。

  • BOOSTED_TREE: このモデルは、過去の販売行動の探索的分析に威力を発揮します。過去のパターン、短期的な変動、季節性を実質的にとらえ、過去の動向や最近の変化に対する販売の対応を理解するのに役立ちます。

異常検出と探索的分析では:

  • k 平均法と ANOMALY_DETECT 関数: これらは、売上の急増、国別偏差、期ずれ、権利不明の販売報告など、データセット内のさまざまな異常タイプを特定するのに非常に効果的です。

これらのモデルを組み合わせることで、ARIMA_PLUS は将来の傾向のロバスト予測に、他のモデルは過去のパフォーマンスの理解と重大な異常検出に活用するという包括的なアプローチが実現し、先を見越した財務計画が可能になり、ロイヤリティ収入の保護を図ることができます。

BigQuery のデータフロー:

https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/1_QSxk1HD.max-2000x2000.jpg

ギャップの発見: よりスマートな異常検出

StreamSight は収益予測だけではなく、異常検知と警告も行います。売上の期ずれ、特定の市場における想定外の販売急増・急減、報告された収益と権利者の不一致など、通常であれば手作業で何時間もかけて確認する必要がある問題を自動的に指摘し、ボタンをクリックするだけで対応できるようにしています。

たとえば、次のような異常を検出できます。

  • 売上の期ずれ: 現金過不足の可能性を意味するデータのズレ。

  • 権利と一致しない販売: 権利が正しく登録されていない地域から報告された収益。

  • グローバルな異常: ストリーミング数や販売数の急増。レポートエラーやプロモーションの異常な影響が考えられます。

StreamSight を活用すると、こうした問題をデータソース全体で自動的に検出できるため、迅速かつ一貫した対応を取ることができます。

StreamSight ダッシュボード:

https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/images/2_388obRz.max-1100x1100.png

Google Cloud に構築された、スケーラブルでシンプルなシステム

StreamSight の使命と同様に、その背後にあるテクノロジーも革新的です。Google Cloud を基盤として開発された以下のテクノロジーが活用されています。

  • BigQuery ML: 大規模なデータセットに対して SQL を使用して ML モデルを直接実行する。

  • Vertex AI と Python: 高度な分析とモデルのトレーニング。

  • Looker Studio: 結果を簡単に解釈し、チーム間で共有できるダッシュボードを作成する。

これらのツールを組み合わせることで、システムの拡張性と費用対効果を維持しながら、コンセプトから実装まで迅速に進めることができました。

未来への礎

StreamSight はまだ概念実証の段階ですが、初期の成功はこのツールが計り知れない可能性を秘めていることを示唆しています。今後は次のような機能強化を予定しています。

  • コンサート ツアーやマーケティング キャンペーンのデータを追加して、予測を改善する。

  • Amazon、Apple Music、Spotify など、デジタル音楽へのアクセスを提供しているデジタル サービス プロバイダ(DSP)をさらに追加して、プラットフォーム間比較の質を高める。

  • ソーシャル メディアのトレンドやファンのエンゲージメントなどの要素を加味する。

  • ジャンル、地域、音楽クリエイターのタイプ、リリース形式別に分析をセグメント化する。

ロイヤリティの手続きに高度なテクノロジーを使用することで、問題の解決だけにとどまらず、レーベルと出版社のロイヤリティからアーティストの取り分をより公平かつ迅速に支払うという両社のコミットメントをサポートする、より透明性の高いエコシステムの構築を目指しています。

音楽業界が高度な技術を活用してデータに基づくスマートな意思決定を促進し、音楽が価値を生み出す場所をより明確に把握して関係者全員が恩恵を受けられる。そのような未来の蓋然性を、BMG と Google Cloud のコラボレーションを通じて担保することができました。

 

-Google、EMEA 音楽パートナーシップ担当トップ パートナー マネージャー Kiki Ganzemüller 

-Google Cloud、ドイツ、メディアおよびエンターテイメント担当主要アカウント ディレクター Thomas Heigl

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