DeNA: Spanner、C4A インスタンスを駆使して世界規模のゲームアプリ『Pokémon TCG Pocket』の安定運用を実現

Google Cloud Japan Team
2024 年 10 月 30 日より、150 の国と地域でサービスを開始した、スマートフォン向けポケモンカードゲーム『Pokémon Trading Card Game Pocket(以下、ポケポケ)』。株式会社ポケモン、株式会社クリーチャーズ、そして 株式会社ディー・エヌ・エー(以下、DeNA )の合同プロジェクトである本アプリに、Google Cloud がどのように貢献しているのか。本プロジェクトでサーバー・アプリ開発を担当した DeNA のお二人に伺います。
利用しているサービス:
Spanner、Google Kubernetes Engine(GKE)、BigQuery など
利用しているソリューション:
データベース
Spanner の存在が Google Cloud を選んだ最大の理由


『ポケポケ』は世界中で楽しまれているポケモンカードを、手軽にコレクションできるアプリです。2025 年 10 月には全世界累計 1.5 億ダウンロードを突破し、世界規模で圧倒的な支持を集めています。
本タイトルは、パブリッシュと全体プロデュースを担う株式会社ポケモン、カードゲーム開発を担う株式会社クリーチャーズ、そしてサーバー・アプリ開発と運用を担う DeNA の 3 社合同プロジェクトとしてスタート。世界中から膨大なアクセスを受け付けるアプリの安定運用は、これまでさまざまなビッグタイトルを手がけてきた DeNA の手腕に委ねられていました。
同社 IT 本部 IT 基盤部 副部長として『ポケポケ』のインフラ周りを統括した天野 知樹氏は、DeNA がかねてより、サービス基盤のほとんどをパブリッククラウド化していることもあり、『ポケポケ』に関しても当初からクラウドで運用されることが決まっていたと話します。
「『ポケポケ』のような世界規模のサービスを展開するには、パブリック クラウドの迅速なリソース調達力が不可欠です。特に、負荷試験やサービス開始直後にドカンとリソースを使い、その後、徐々に落ちついていくゲーム特有の性質はパブリック クラウドに好適。現在では『ポケモンマスターズEX 』など、弊社タイトルの 99.99% が各種パブリック クラウド上で運用されるまでになっています。そこで、今回のプロジェクトにおけるインフラ基盤として、Google Cloud の利用をさらに拡大することにしました。」
天野氏は、 Google Cloud を選んだ最大の理由が Spanner だったと断言。サーバーの開発初期から本プロジェクトに携わり、現在はサーバーチームのリードエンジニアとして活躍する柴田 佳祐氏は、Spanner の価値を次のように説明してくれました。
「『ポケポケ』のような多くのお客様がアクセスする大規模ゲームアプリでは、データベースのシャーディングやデータ整合性の維持などといった技術的課題をどう解決するかが大きな問題になります。従来のデータベース技術では、シャーディングの制御やシャードまたぎのトランザクションの考慮、シャード数の増減などが大変なのですが、Spanner はそれらの難度の高い処理を全て自動化してくれます。さらに、レプリケーション遅延を考慮する必要がなく、トランザクションが強い整合性を持つため、アプリ開発が容易になります。これはゲーム開発において大変魅力的な性質でした。サーバーの開発開始当初、他のパブリック クラウドには類似の機能を持つサービスはありませんでしたし、また、現在においても、トータルでは最も我々の用途に合致した選択肢だと考えています。」
「事前分割(Pre-splitting)」の活用で、ローンチ直後の大規模アクセスにも対応


もちろん、『ポケポケ』ほどの大規模アクセスをさばくのは Spanner であっても容易なことではありません。実際、毎秒 1,000 万クエリを Spanner に発行するなど、膨大なトラフィックを想定して行われた事前の負荷試験ではパフォーマンスの立ち上がりに課題が見つかったと、柴田氏は当時を振り返ります。
「Spanner には内部的にスプリットと呼ばれるシャードのようなものが存在します。これは基本的には自動で増減しますが、急激な負荷のスパイクが発生するとスプリットの増加が間に合わず、ローンチ直後や新しい拡張パックの追加直後にレイテンシの悪化が起こる懸念がありました。ダミーの負荷をかけて分割を促すこともできるのですが、お客様が遊んでいる状態で大きなダミーの負荷をかけるのはリスクを伴います。」
柴田氏がこの問題を Google Cloud に相談したところ、当時はまだプライベートプレビュー段階であった事前分割(Pre-splitting)機能を前倒しで提供(2025 年 4 月 28 日より一般提供開始)。あらかじめスプリットを割っておけるようになったことで、必要な時に必要なパフォーマンスを発揮できるようになったと言います。
「実際、2024 年 10 月のローンチ時も、ほぼ垂直にトラフィックのグラフが上がっていく中、見事に耐えきってくれて感動しました。チームの仲間たちと『恐ろしいほど問題が起きないね』と話していたくらいです(笑)。」(柴田氏)
事前分割機能はその後も、新しい拡張パックの公開時など、トラフィック増大が予想されるケースで活躍しています。
「Spanner があったからこそ、安定した運用ができているのは間違いありません。別のデータベースを使っていたら、もっと大変だったろうと想像しています。」(天野氏)


C4A インスタンスはコスパも安定性も優れた理想的な選択肢


『ポケポケ』のサービス安定性を支えているのは Spanner だけではありません。『ポケポケ』ではそのサービスを維持するため、膨大な数のサーバーを動かしており、サービス開始当初は、すでに多くの過去タイトルで採用実績のある Tau T2D インスタンスを採用していました。しかし、いくつかの理由から、当時登場したばかりの C4A インスタンスへ移行することを決断します。
「最大の理由はコストです。ポケポケでは API サーバーとバトルサーバーで合計約 2 万コアものサーバーを動かしており、その料金を削減したいという気持ちがありました。サービス開始前の試算では Tau T2D インスタンスが最も費用対効果に優れた選択肢だったのですが、C4A インスタンスがなんとポケポケのサービス開始と同日に発表され(笑)、すぐに移行を検討し始めました。また、パフォーマンスの安定性という観点からも『さまざまなワークロードに対して一貫して高いパフォーマンスを実現』と謳う C シリーズの方がポケポケのようなゲームタイトルと相性が良いと考えました。」(天野氏)
x86-64 アーキテクチャの Tau T2D インスタンスから、arm64 アーキテクチャの C4A インスタンスへの移行は、マルチ アーキテクチャ イメージを作成することで実現しています。
「クロス コンパイルが容易な Go 言語を使っていたこともあり、マルチ アーキテクチャ イメージのビルドは想定していたよりも苦労なく移行できました。」(柴田氏)
なお、インスタンスの移行は、サービスを中断せずにノー メンテナンスで実施。移行後は大きなチューニングも必要なく、すぐに大きな性能向上があったとのことです。
「特に API サーバーのコストパフォーマンス向上が著しく、Tau T2D インスタンスの時と比べて約 73% もの改善を達成しています。リアルタイム性の高いバトルサーバーは安定性を重視したため API サーバーほどの成果は得られませんでしたが、それでも約 11% の改善ができました。以前はコストパフォーマンス重視なら Tau T2D インスタンス、安定性重視なら C シリーズでしたが、C4A インスタンスは、とりわけ我々の用途においてはコスパも安定性も優れた理想的なインスタンスだと感じました。」(天野氏)
今回の成果は株式会社ポケモン、株式会社クリーチャーズからも高く評価されているとのこと。最後に、天野氏は、Spanner および C4A インスタンスの活用について、今後の展望を語ってくれました。
「『ポケポケ』での成果を踏まえ他のゲームタイトルでも Google Cloud を積極的に活用していくことになっていくでしょう。また、DeNA として AI に ALL IN していくことを表明しており、AI を用いた事業変革の中心にいる Google のポテンシャルにも期待しています。例えば重要性の高くない作業を AI エージェントに代替させていくことでエンジニアがより創造的な仕事に取り組んでいけるようにしたいですね。そのためにもこれからはより一層、コミュニケーションを密接にし、強力な信頼関係のもと、スピード感を高めた開発をしていければと思っています。」


株式会社ディー・エヌ・エー
「一人ひとりに 想像を超えるDelightを」のミッションのもと、ゲーム、ライブコミュニティ、スポーツ・まちづくり、ヘルスケア・メディカルなど幅広い事業を展開。事業価値の最大化と課題解決のためのAI活用と独自のデータ分析手法によって、顧客ニーズを的確に捉えた付加価値の高いサービス開発から運用までを行っている。
株式会社ポケモン
「ポケモン」を永続的なブランドに育てるべく 1998 年に設立。コンテンツや商品づくり、マーケティング、その他あらゆる活動を通じて、ポケモンの個性を引き出し、魅力を引き出すことを目的とする。グループは自社を含め世界に 13 社、オフィスは 14 拠点にあり、それぞれのマーケットで、ポケモンプロデューサーとして取り組んでいる。
株式会社クリーチャーズ
1995 年設立。任天堂株式会社、株式会社ゲームフリークと並ぶポケモン原作著作者企業(株式会社ポケモンはこの 3 社の共同出資により設立)。ポケモンのトレーディングカードゲーム・ビデオゲームの開発、『ポケットモンスター』シリーズなどの CG モデル・モーションの開発事業などを展開し、ますます広がるポケモンの世界を支えている。
インタビュイー(写真右から)
株式会社ディー・エヌ・エー
・IT 本部 IT 基盤部 副部長 天野 知樹 氏
・ゲームサービス事業本部 開発運営統括部 第二技術部サーバー
第一グループ エンジニア 柴田 佳祐 氏
その他の導入事例はこちらをご覧ください。



