ベイシア:BigQuery や Dataplex を活用しデータ分析基盤を刷新、パフォーマンスや運用効率の課題を改善
Google Cloud Japan Team
全国 130 店舗(2023 年 2 月末現在)を展開するショッピングセンター チェーン「ベイシア」を運営する株式会社ベイシア(以下、ベイシア)がデータ分析基盤を刷新し、そのプラットフォームに Google Cloud を採用しました。小売店のデータ活用が高度化・複雑化していく中、同社が新たなデータ分析基盤に求めたものは何なのか。その実現に Google Cloud がどのように貢献しているのか。デジタル推進本部の皆さんに話を伺いました。
利用しているサービス:
BigQuery、Dataplex、Cloud Storage、Cloud Composer、Data Catalog、Firebase、Google アナリティクスなど
利用しているソリューション:
従来のデータ分析基盤が抱えていた課題を BigQuery で解決
2020 年、ベイシアは、顧客とのリレーションシップを深め、ビジネスを安定的に伸長させていくことを目的にマーケティング統括本部を設立。翌年には、そのデジタル戦略をより機動的に運用していくためにデジタル推進本部を立ち上げ、これまで外部に依存していた開発体制の内製化を進めています。
「この数年、デジタル推進本部では、ベイシアの新たなデジタル戦略に向け、2 つのプロダクトの開発に注力してきました。1 つがお客さまの接点となる『ベイシアアプリ』のリニューアル(2023 年 1 月に配信開始)、もう 1 つが、アプリによって顧客情報と紐付けられた約 35 億件にもなる膨大な量の ID-POS 情報を分析するための新たなデータ分析基盤の構築です。今回、そのデータ分析基盤に Google Cloud の採用を決めました。」
今回の取り組みについてそう語るのは、デジタル推進本部 部長としてデータ分析基盤開発をリードしてきた美馬 広輝氏。当初は他のクラウド プラットフォームの採用を想定していたものの、どういった基盤が必要なのか、それをどのように開発・運用していくかを開発チームメンバーとディスカッションしていく中で、Google Cloud こそが今回の取り組みにふさわしいという結論に達したと言います。
なぜ、Google Cloud がベイシアの新たなデータ分析基盤に最適だったのか、その理由を、美馬氏のもとで実際にデータ分析基盤を開発したデジタル推進本部 CoE部データアナリティクスグループ グループマネージャー 太田 広司氏は次のように説明します。
「ベイシアがこれまで使ってきたデータ分析基盤にはいくつもの課題がありました。中でもパフォーマンス不足は深刻で、BI ツールで何かデータを可視化しようとすると数十秒から数分待たされてしまうほど。また、前日分のデータを収集して分析に使えるようにクレンジングやメタ情報付与などを行うバッチ処理を毎朝行っているのですが、これにも 2 ~ 3 時間かかっており、日によっては始業時間に間に合わなくなってしまうことにも悩まされていました。しかも起動している時間はずっと課金される料金体系だったため、費用もかなりの高額に。夜間や休日に使いたい人がいる場合は手動で起動しなければならないことなども運用上の大きな手間になっていました。」
パフォーマンス、費用、そして運用の手間、大きく 3 つの課題があったと太田氏は説明します。
「これらすべての課題を、圧倒的な処理速度を誇り、使った分だけのクエリ課金で、しかもフルマネージドで使える BigQuery を中心としたデータ分析基盤を構築することで解決できると考えました。加えて今回は将来的な利用を促進していく観点から、ガバナンス、セキュリティの点でも複数のプラットフォームを評価。Google Cloud は取り込んだデータの中から個人情報を自動で検知してアラートを出したり、メタ情報の付与や管理が容易だったり、それらの機能を BigQuery と統合したかたちで利用できるなど、DLP (情報漏えい対策)の観点でも明確に他のプラットフォームよりも先進的だと感じました。」(太田氏)
Dataplex をいち早く活用し、運用効率を劇的に向上
ベイシアの新しいデータ分析基盤は、ID-POS のトランザクション データおよび関連するマスターデータなど、現場から集まってくるさまざまなデータをインターフェース基盤を通して、Google Cloud 上に構築されたデータ分析基盤に格納しています。この際、開発当初はまだプレビューだった Dataplex をいち早く導入したことで運用効率が大きく高まったと太田氏は評価します。
「当初は従来同様、取り込んだデータに対して日次でバッチ処理を回していくことを考えていたのですが、Dataplex でデータレイク上の RAW データをそのまま BigQuery で分析できるようになったため、最新データや蓄積しておく必要のあるデータのみを BigQuery に取り込むかたちに処理を分離することができました。また、Dataplex はまだ新しいサービスということもあって、今の我々に必要な新しい機能が次々と追加されていることにも魅力を感じています。たとえばデータリネージによって、元データからどのような処理を経て、どのようなデータが生成されているのかを総合的に可視化できるようになった点はデータ ガバナンスの運用負荷を軽減してくれました。今後も新機能を積極的に活用して、より運用効率を高めていきたいと考えています。」
そうした新機能の情報収集において、Google Cloud の担当者からの情報提供にとても助けられたと語る太田氏。細かい仕様についてはサポートに確認することで、情報の少ない新プロダクトを使いこなすことができたと言います。
「この際、Google Cloud のサポートのレスポンスがとても早いことに助けられました。また、OSS(オープンソース ソフトウェア)と密接に関わる Cloud Composer のような問題の切り分けが難しいプロダクトでもかなり丁寧に対応してくれたことに感謝しています。」
もちろん、データ分析基盤最大の課題であったパフォーマンス不足についても劇的に改善。現時点ではまだ利用者が限られた状態での運用とのことですが、それでも明確な効果が表れているそうです。
「利用者からはレスポンスがとても速くなったと好評です。遅くとも数秒で結果が返ってくるので、データ分析結果をもとにしたタイムリーな議論ができるなど、使われ方も変わってきているのを感じています。また、我々の側にも、各部署からの依頼で行っているデータマート作成に伴う試行錯誤にかかる時間が大幅に短縮されるというメリットがありました。また、もう1 つの懸念点であったバッチ処理についても 20〜30 分程度に短縮。各ジョブのオーケストレーションも Cloud Composer に任せられるため、運用の負担も軽減されました。もちろん費用もクエリ課金になったことで劇的に低下しています。まだ本格運用は始まっていないのですが、従来環境と比べて半分かそれ以下にコストを抑えられるのではないでしょうか。」(太田氏)
「なお、我々はこの新しいデータ分析基盤の用途を、購買データや『ベイシアアプリ』から取得した行動データの分析だけに限定するつもりはありません。弊社のあらゆる業務システムから上がってくるデータをすべて取り込み、多角的に分析できる分析基盤へと発展的に拡張していく予定です。さらに、BI ツールに加えて Google スプレッドシートなどと連携させることで、今後、より多くの社員がより手軽に BigQuery を用いたデータ分析に触れるような環境を構築し、いわゆる "データの民主化" を実現することにもチャレンジしていきたいと考えています。」(美馬氏)
1959 年、群馬県伊勢崎市にオープンした「いせや」を母体とし、現在では「カインズ」や「ワークマン」など、物販チェーン 7 社を中心とする 31 社で構成されるまでに拡大したベイシアグループの中核企業。「ベイシア」の名称で衣食住を総合的に扱うスーパーセンター、食品特化型のスーパー マーケットを関東中心に 1 都 14 県下に出店。従業員数は 10,914 人(2022 年 2 月末現在。専任・パート社員・アルバイト含む)。
インタビュイー(写真左から)
・デジタル推進本部 部長 美馬 広輝 氏
・デジタル推進本部 CoE部データアナリティクスグループ グループマネージャー 太田 広司 氏
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