Anthos を発表 : マルチクラウド環境に対応した全く新しいアプリケーション管理プラットフォーム
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2019 年 4 月 9 日に Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
エンタープライズ IT はたとえ最良のケースでも、柔軟性が低く、複雑で、コストがかさむことがあります。これは残念ながら事実です。大規模なオンプレミス投資を行っているお客様とお話しすると、「クラウドのスケーラビリティや革新的なサービス、運用拠点の地理的な分散といったメリットを利用したいが、不適切なプロバイダーによる囲い込みが心配」という声を聞きします。「 “Write once, run anywhere”(一度書けば、どこでも動く)は、なぜいまだに実現できないのか」という不満をお客様は抱えているのです。
こうしたお客様のニーズを踏まえ、私たちは本日、Anthos を発表しました。Anthos は、アプリケーションをどこでも、簡単、柔軟、安全に実行できる Google Cloud の新しいオープン プラットフォームです。オープン スタンダードをサポートする Anthos を使用することで、アプリケーションに変更を加えることなく、投資済みの既存オンプレミス ハードウェアや、パブリック クラウドで実行できます。この Anthos は、私たちが 2018 年に発表した Cloud Services Platform をベースとしています。
Anthos のハイブリッド機能は、Google Cloud Platform(GCP)では Google Kubernetes Engine(GKE)を、お客様のデータセンターでは GKE On-Prem を使用して、両方とも一般利用できます。また Anthos では、AWS や Azure のようなサードパーティ クラウドで動作するワークロードも管理できようになります。任意に選択したクラウドでアプリケーションを自由にデプロイ、実行、管理することが可能なため、管理者や開発者は異なる環境や API について学習する必要はありません。
Anthos は、完全に 100 % ソフトウェア ベースのソリューションです。既存のハードウェアを利用してすぐに立ち上げ実行することが可能で、ハードウェアを新しく購入する必要はありません。オープンな API を採用していますので、いつどこでも自社のペースで自由にモダナイズすることができます。また、Anthosは、Google Cloud のマネージド型 Kubernetes サービスである GKE をベースにしているため、自動の最新機能アップデートやセキュリティパッチの取得が可能です。
Anthos Migrate : クラウドへの移行とモダナイゼーションが容易に
また本日、 Anthos Migrate のベータ版も発表しました。Anthos Migrate により、仮想マシン(VM)をオンプレミスや他のクラウドから GKE のコンテナに最小限の労力で直接かつ自動的に移行することができます。このユニークな移行技術を利用すれば、元の VM やアプリケーションに前もって変更を加えることなく、1 回の効率的な操作でインフラストラクチャを移行し、モダナイズすることが可能です。この移行プロセスによって、IT チームは VM のメンテナンスや OS へのパッチ適用といったインフラストラクチャ タスクの管理から解放され、アプリケーションの管理や開発に専念できるようになります。また、移行することで Anthos 内の他の統合機能も利用できます。Anthos をいち早く導入したお客様の成功事例
すでにさまざまな業種のグローバル企業のお客様が、ハイブリッドなマルチクラウド環境を構築できる、柔軟でポータブルなソフトウェア ベースのソリューションとして Anthos を利用しています。世界最大の銀行および金融サービス機関の一つである HSBC のハイブリッド クラウド戦略にとって、ビッグデータ分析の複雑性やコストを低減するマネージドなクラウド環境は必要不可欠なものでした。Anthos の導入について以下のようにコメントしています。
私たち HSBC は、オンプレミスとクラウドの両方へのデプロイを一貫して行えるプラットフォームを必要としていました。ハイブリッド環境の管理を可能にする、Google Cloud によるソフトウェア ベースのアプローチのおかげで、私たちはお客様向けに迅速にデプロイできる革新的で差別化されたソリューションを手に入れることができました。
HSBC のグループ CIO、Darryl West 氏
欧州最大の産業機器メーカーである Siemens は、同社の複雑なハイブリッド環境に GKE On-Prem がもたらす変化を楽しみにしています。
Anthos は私たちにぴったりです。Anthos により、ハイブリッド環境を一元的に管理できるとともに、各種環境でワークロードを一貫して実行できるプラットフォームが得られるからです。
Siemens のリサーチ担当責任者、Martin Lehofer 氏
マルチクラウド エコシステムの構築
私たちのお客様の多くは、既存のソフトウェアとインフラストラクチャに投資していますが、それでも、将来に向けてクラウドに自由に投資したいと考えています。こうしたお客様をサポートするため、私たちはエコシステムのパートナーと緊密に協力し、30 社を超えるハードウェア、ソフトウェア、システム インテグレーションのパートナーと共に、お客様が Anthos を活用できるよう支援する体制を整えました。ハイブリッドやマルチクラウドのアプローチをとることは、多くの大規模なお客様にとって、将来に向けた最良の道であると考えています。我々のお客様は、アプリケーションをどこにでも、つまりオンプレミス、パブリック クラウド、あるいは複数のパブリック クラウドのいずれに対しても、シームレスに安全にデプロイできることを望んでいます。我々は、Anthosと Cisco のデータセンターやネットワーキング、およびセキュリティ技術との連携および Google Cloud との更なる協力体制により、これを実現して参ります。
Cisco の SVP、Kip Compton 氏
Anthos を活用することで、Cisco は企業のお客様がハイブリッド環境を自由に使いこなせる環境を提供し、お客様は Anthos と Cisco のデータセンターやネットワーキング、およびセキュリティ技術(HyperFlex、Cisco ACI、Cisco Stealthwatch Cloud、Cisco SD-WAN など)との連携機能を利用して、クラウドを迅速に使い始めることができます。この組み合わせは、GKE のようなフルマネージドサービスと Cisco のインフラストラクチャ技術が有する全てのメリットを企業にもたらします。
さらに私たちは、VMware、Dell EMC、HPE、Intel、Lenovo といったパートナーとも緊密に協力しており、彼らは、お客様に自社のハイパーコンバージド インフラストラクチャで Anthos を提供することに尽力しています。各社のソリューション スタック上での Anthos の動作保証により、私たちとパートナー各社のお客様は、ストレージ、メモリ、パフォーマンスのニーズに応じてハードウェアを選択できます。
お客様が Anthos を使ってアプリケーションのモダナイゼーションや拡張を行えるよう支援するべく、システム インテグレーターも準備を整えています。Accenture や Arctiq、Atos、Cognizant、Deloitte、HCL Technologies、NTT Communications、Tata Consultancy Services、Wipro、WWT などのパートナーは、お客様の環境への Anthos の導入を支援するサービスやソリューションを開発、提供します。
また、私たちは Anthos のユニークな機能を自社製品に統合するエンタープライズ ソフトウェア プロバイダーとも緊密に協力しています。これまでに以下の 20 社以上の ISV が、自社ソフトウェアと Anthosを統合することを表明しています。
マルチクラウド管理の効率化
Anthos には、お客様の環境全体にわたってポリシーやセキュリティを大規模に自動化することに役立つ機能も含まれています。この Anthos Config Management を使用すれば、“Single Source of Truth”(信頼できる唯一の情報源)を基に、ロール ベースのアクセス制御とリソースのクォータを設定、強制して名前空間を作るマルチクラスタ ポリシーを作成できます。また Anthos は、オープンソースのサービス メッシュである Istio ともうまく連携します。これにより、ポリシーを徹底させるためのスケーラブルな基盤を提供し、サービスが信頼を確立できるようにして、コードの書き換えを必要とせずにトラフィックを暗号化します。お気に入りの Kubernetes アプリが GCP Marketplace から入手可能
GCP Marketplace は、DevOps、セキュリティ、データベースなどで使用できる Kubernetes アプリケーションを提供しています。Kubernetes アプリケーションのアクティブ インストールは、この四半期で 65 % 増加しました。こうした Kubernetes アプリケーションは、商用およびオープンソース オプションで一般向けに提供されており、事前に構築されたデプロイ テンプレートを備え、シンプルなライセンスと Google Cloud の統合請求機能が組み込まれています。Kubernetes アプリケーションの多くは、クラウド、オンプレミス、マルチクラウドのシナリオで GKE を介して Anthos にデプロイできます。一方、お客様が GCP でアプリケーションを構築する場合を想定し、私たちは新しい Private Catalog の提供を開始しました。Private Catalog は、お客様の IT ソリューションのホステッド ソフトウェア カタログ サービスです。お客様がコンプライアンスとガバナンスを維持し、社内ソリューションを簡単に見つけられるようにして、互換性のある承認済みのアプリケーションを使用するよう自社の開発者に徹底させるのに役立ちます。Private Catalog は現在ベータの段階にあり、これを使えば GCP で作成したアプリケーションを管理できます。
Cloud Build のアップデートで開発者をきめ細かくサポート
カスタム ワーカーは、継続的インテグレーション / 継続的デリバリ(CI/CD)プラットフォームである Cloud Build の新機能です。開発者によるオンプレミスでのワークロードの作成、ビルド、テスト、デプロイと、ワークロードのクラウドへの移行を支援します。カスタム ワーカーを使用することで、オンプレミスのソースコード、アーティファクト(成果物)、他のビルド依存関係を選択し、Anthos で CI/CD パイプラインを作成できます。カスタム ワーカーには、GitHub Enterprise、BitBucket、GitLab、Artifactory といったオンプレミス ツールのサポートが含まれます。お客様が自社のペースでモダナイゼーションを行えるよう支援する Anthos の機能を補完するため、私たちはハイブリッド API 管理の分野でもさまざまな改良を行いました。
あらゆるクラウドにシームレスにアクセス
Anthos のオープンソースのアプローチは企業のクラウド戦略をより安全な選択にします。また、Cisco、Dell EMC、HPE、VMware やその他多くパートナー企業による広範囲なサポート体制も確立しています。Anthos はフルマネージドであるため、オンプレミス上であっても運用のための面倒さを抜きにオープンソースのメリットを享受することができます。IT の複雑性を削減しない限り、企業は迅速に進むことはできません。コンテナ管理からセキュリティ、トラフィック管理やソフトウェア開発に到るまで、Anthos はそれら全てをシンプルします。つまり、運用もセキュリティも、モダナイゼーションもコードも全てシンプルになるのです。
Anthos のアーキテクチャについてもっと知りたい方は、Eric Brewer と Jennifer Lin が執筆したホワイトペーパー『Application Modernization and the Decoupling of Infrastructure, Services and Teams』をご覧ください。Anthos Migrateとの Anthos のマルチクラウド機能に関する詳しい説明を聞きたい方は、こちらからお申し込みください。
- By Urs Holzle, Senior Vice President, Technical Infrastructure and Eyal Manor, Vice President, Engineering