e コマースの移行によりデジタルの迅速化を促進
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2020 年 8 月 27 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
COVID-19(新型コロナウイルス感染症)のパンデミックにより、消費者が店頭での購入からオンライン購入に移行し、小売業各社のデジタル能力に大きな負担となっています。Google はこの期間にビジネス運営をサポートするため小売業の皆様と協力し、デジタル チャネルへの投資、特に Google Cloud で e コマース プラットフォームをモダナイズすることの重要性を強調してきました。
e コマースのモダナイゼーションは複雑な事業で、さまざまな段階に分かれた長期的な目標の一部ですが、小売業の皆様にとって、お客様の期待を満たす、柔軟でアジャイルな e コマース プラットフォームの基盤構築の皮切りとなるいくつかのステップは今すぐにでも始めることができます。
このブログ投稿では、こうしたステップの一つである e コマースの移行について解説します。e コマース移行には何が含まれるか、どのような問題に対処可能かについて解説してから、どのように開始すべきかについての戦術的な推奨事項のいくつか、たとえば Google の e コマース移行の小売ソリューションの使用について説明します。
e コマース移行とは
e コマース移行には、現在の e コマース プラットフォームをクラウドに移行する「リフト&シフト」と呼ばれる作業が含まれます。経験上、すでに e コマース ワークロードの仮想化やコンテナ化を行った小売業の皆様は、クラウドへの移行を最優先で行い、クラウドで後からリファクタリングを行うのを最終目標としているのが一般的です。前に述べたように、これは一般的に、より広範な e コマースの変換作業に向けた最初の手順で、クラウドに移行するための最も手早い方法です。
皮切りのステップであるとはいえ、e コマース移行への取り組みを始めていただくことにより、Google Cloud の順応性、スケーラビリティ、セキュリティ、そしてクラス最高のクラウド プラットフォームの恩恵を小売業の皆様にお届けできるようになります。いくつかの利点を以下に示しましょう。
移行能力: Google Cloud のコンピューティング インスタンスのライブ マイグレーションにより、プロバイダのインフラストラクチャのアップグレードやメンテナンスによるダウンタイムに悩まされることがなくなります。Migrate for Compute Engine で e コマース ワークロードの移行の複雑性と労力を軽減することにより、既存のホストからの移行作業を支援します。移行センターは、Google Cloud のプロフェッショナル サービスや、Google の専門パートナーによる支援を通じて、非常に複雑なワークロードの移行作業迅速化を後押しします。
柔軟なコンピューティング: Google Cloud には広範な Compute Engine のマシンタイプ オプションが用意されており、小売業各社それぞれの e コマース ワークロードに合わせた適切なサイズのコンピューティングにより費用を削減できます。
セキュリティ: Google Cloud は転送中や保管中のデータすべてをデフォルトで暗号化するため、Payment Card Industry(PCI)標準など小売業界に関連するコンプライアンス要件のサポートを支援し、最終消費者のデータのセキュリティを保護できます。
ネットワーク: Google Cloud の負荷分散とプライベート ネットワーキングは複数の地域にまたがっています。Google のロードバランサは複数の地域にわたるトラフィックを消費者に最も近い GCP リソースに自動的に分配し、これによって優れたエクスペリエンスを実現して、コンバージョンを向上させるとともに、地域に障害が発生しても自動的に高可用性や障害復旧を実現します。
AI とデータ分析: Google Cloud への移行により AI の力が利用できるようになり、カスタマー エクスペリエンスを拡張できます。Google の Recommendations AI や他の AI テクノロジーにより、e コマースのフロントエンドで AI ドリブンなレコメンデーションや AI による検索結果を使用してコンバージョンを向上させることが可能です。
その結果、組織のアジリティと革新能力が向上するとともに、消費者の期待の変化に合わせて新しいエクスペリエンスを迅速にリリースできるようになります。これらの利点に加えて、小売業の皆様が直面し、エグゼクティブ レベルでの最優先事項でもある多くの課題が e コマースの移行により解決されます。
ベロシティ: デジタル チャネルによる継続的なビジネスをサポートし、より高度で洗練されたサービスへのお客様の期待に適応するアジリティが欠けている。
総所有コスト: ピーク負荷に対応するためのオンプレミス インフラストラクチャや容量に対する初期投資が高く、費用削減策の実施をミッション クリティカルなワークロードのみにしぼる必要性がある。
ビジネスの移行: 店頭からオンラインへの移行が、調達やサプライ チェーンなどオムニチャネルの能力に大きな負担を及ぼす。
レガシーシステム: 既存の e コマース インフラストラクチャの制限(ソフトウェアとハードウェア両方の限界を超過する)により、モダナイゼーションや、お客様の需要の変化に適応する能力が妨げられる。
e コマースを Google Cloud に移行することで、これらの問題点が次のように解決されます。
Google Cloud のスケーラビリティと柔軟性により、どのようなお客様のトラフィック パターンにも対応できます。さらに、Compute Engine の予約 を活用して自社のクラウド リソースを安全に保護できます。これは、プロモーションの日、ブラック フライデー、サイバー マンデー、その他のピークイベントにおいて、クラウド リソースが確実に利用可能なことを保証するために便利です。
ビジネスでのダウンタイムと機会喪失の防止
未使用の容量をスケールダウンしてビジネスの経費を最小化できます。予測可能なワークロードについては、Compute Engine の 継続使用割引と確約利用割引を使用して、さらに費用を低減できます。
e コマース チャネルの高速化とパフォーマンス向上を実現できます。全世界に無数に存在する Google Cloud のリージョンにアクセスできるため、Google Cloud のネットワーキング バックボーンを活用してお客様に最も近い場所でリクエストを処理できます。
移行の開始方法
実際の e コマース移行プロジェクトは複雑ですが、十分なテストが行われた実績のある手法に従うことで複雑性を低減できます。Google Cloud のプロフェッショナル サービスチームは、小売業各社様と協力した経験に基づいて、この作業に役立つ方法論を開発しました。
これは実地経験から導き出されたベスト プラクティスに基づいた方法論による、一般的な移行パスです。
概念実証: Google のプロダクトやサービスを経験し、Google Cloud に習熟します。リスクのないサンドボックス環境で将来の e コマース機能のサブセットをテストし、移行を確実に行えるようにします。
クラウドの基盤: 移行に必要な Google Cloud の基礎的なコンポーネントの最小セット、たとえばIdentity and Access Management、リソース管理、ネットワーキング、Cloud Monitoring と Logging、費用管理などを各分野にわたり定義して構築します。
調査と計画: e コマース アプリケーションの詳細調査を実行し、移行の全体的な複雑性を把握します。移行の以後のステージを計画します。
実施: e コマースのワークロードを移行しますが、この段階でお客様のトラフィックを実際に処理はしません。統合およびスモークテストにより、デプロイを検証します。
テスト: 機能を検証し、最小限のトラフィックの処理を開始します。基本的なルールとして、最初は従来のソリューションと新しいソリューションとの間でトラフィックを分割するようにします。たとえば、最初はトラフィックの 1% 程度を新しいソリューションで処理し、しだいに量を増やしていきます。
最適化: SRE のベスト プラクティスに基づいて、Cloud Monitoring のテレメトリとインストルメンテーションを繰り返し調整します。SLI と SLO の追跡に使用する KPI に基づいて、モニタリング指標を調整します。
デコミッション: 要求されるレベルに到達したら、以前の e コマース ソリューションの使用を終了してデコミッションします。
上述の手法は大変なように見えますが、正しい方法論に従って組織全体で取り組むことにより、移行を正しく行い、柔軟でアジャイルな e コマースの基盤を築くことができます。さらに、Google Cloud のプロフェッショナル サービスチームとパートナーのエコシステムが確実に支援します。
e コマースの移行を開始する方法の詳細については、Google Cloud アカウント担当者にお問い合わせください。
-Google Cloud シニア ソリューション コンサルタント Gustavo Restrepo
-Google Cloud シニア ソリューション コンサルタント Alex Pease