COVID-19 の影響を受けている世界各国の小売業界に対する支援

※この投稿は米国時間 2020 年 5  月 5 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

小売業界では長年にわたってデジタルへの移行が着々と進んでいましたが、COVID-19（新型コロナウイルス感染症）への対応が求められる今日、デジタル変革を行う緊急性が新たに高まっています。パンデミックにより小売業界全体が甚大な影響を受けているだけでなく、オムニチャネル機能、事業継続計画、サプライ チェーンの対応などにおいて格差があらわになっています。

今日の状況を予測できた小売業者はほとんどいないでしょう。政府による都市封鎖令、「社会的距離」措置、消費行動の急激な変化、さまざまな商品カテゴリにおける需要の偏りなどにより、世界中の小売業界が困難に直面しています。小売業の危機管理計画では通常、自然災害やその他の理由による停電などが原因で一部の店舗や倉庫が使えなくなるというケースは想定されていますが、全店舗を閉鎖する、あるいは逆に需要が通常の 20 倍にまで急騰するという事態は、多くの小売業者がこれまでに検討すらしたことのないまったく新しい変化です。

また、パンデミックにより小売業者の二極化が進みました。食料品店や量販店では未だかつてないほど需要が急増している一方で、ファッションや美容などの業界は多くの商品カテゴリで需要が減退しています。今後事業の回復には時間がかかり、業種によって違いが出ることが予想されます。

小売業界がこうした課題に取り組めるよう、Google は業界ごとに調整した複数のソリューションをご提供して、お客様やパートナーの皆様をサポートしてまいります。

リモート ワーカー支援と労働力の最適化支援を実現する G Suite コラボレーション ツール

小売業界は、食料品店や量販店に代表される一部の業種で前例のない需要に対応するための雇用の急増に直面するなか、従業員と連携を確立して維持することがどれほど重要であるかを痛感しています。G Suite の提供するビデオ会議、チャット、メール、共有ドキュメントを使えば、リモートのチームがリアルタイムで効率的に共同作業を行えます。

リモートワークとビデオ会議が小売業者にとって必須となっている今、ミズーリ州、イリノイ州、インディアナ州、アイオワ州、ウィスコンシン州に 100 店舗を展開する家族経営のスーパーマーケット Schnucks は、配送を滞りなく行うために、また店舗の従業員向けのヘルプデスクとして Google Meet を活用しています。また英国では、DFS Furniture Company Ltd が Google Meet を利用して、すべての社員を在宅勤務に移行させることに成功しています。

迅速な顧客への対応を支援する Rapid Response Virtual Agent プログラム

Google が新しく発表した Rapid Response Virtual Agent ソリューションを導入することで、小売業者は 2 週間以内に新しいチャットボット ベースのサービスを立ち上げ、COVID-19 に関する重要な情報などを顧客にすばやく効率的に伝達できます。この新しいチャットボットは、営業時間の問い合わせ、在庫に関する質問、各受け渡し方法の説明などをサポートできます。これにより、スタッフの負担は大きく軽減され、さらに複雑なサービスの対応に集中できます。

Albertsons では、COVID-19 の影響で店舗への問い合わせ数が平時の 5 倍に跳ね上がりました。顧客への対応をスピードアップするために、Albertsons は Rapid Response Virtual Agent を導入して大量の電話問い合わせを処理し、営業時間、受け渡しや配達方法、注文状況などについての顧客からの基本的な質問に対処しています。

運用オーバーヘッドの低減を目的とした高速移行と PSO 移行の工場ソリューション

需要の急速な変化に伴い、投資費用に多大な制約が生じています。IT システムの Google Cloud への移行を加速することで、固定費の迅速な削減、運用オーバーヘッドの低減、変化するビジネスニーズに対応するための適切なインフラストラクチャのセットアップを行いながら、不測の事態の中でも事業を継続していけます。

英国を拠点とする美容系小売店 Lush は、2017 年に世界中の e コマースサイトの Google Cloud への移行を済ませたことで、ボクシングデーなどの繁忙期でもオンライン チャネルをスムーズに運営できるようになっています。クラウドに移行したことで、Lush はコストを抑えつつ、COVID-19 の影響下にあっても事業を推進できる革新的なプロジェクトを開発しています。   

クラウド デプロイのサイズをすばやく適正化する処理能力管理とブラック フライデー / サイバー マンデー（BFCM）支援ソリューション

消費行動が劇的に変化したことで、一部の小売業種に対する需要が変則的に増え、他の業種では大幅に減少しました。さらに、実店舗販売からオンライン販売への突然の変化が相まって、オムニチャネル機能に負担がかかっています。Google は、当初のキャパシティ プランニング、信頼性のテスト、運用指令室を使って、クラウド デプロイのサイズをすばやく適正化し、小売事業の変化するニーズに対応できるようお手伝いします。Google ではまた、e コマースのトラフィックが急増している小売業界向けにピークシーズンに特化したサポート プロトコルをご用意しました。

e コマースのモダナイゼーションにより、オフラインからオンラインへの移行を支援

この期間は顧客のニーズが絶えず変化するため、最良のデジタル環境を整えることがますます重要になってきます。柔軟で俊敏な e コマース プラットフォームを確立することが何よりも重要です。これがあれば、販売チームは新しいショッピング環境をすばやく整えて、刻々と変化する需要に対応できます。Google Cloud では、ビジネスに必要な柔軟性と俊敏性を兼ね備えたコンテナ化されたアーキテクチャを導入して、e コマースのレガシー システムの問題を解決できます。

Ulta Beauty は政府の都市封鎖令に従って店舗営業を一時的に休止している状況下で、オンライン チャネルで買い物客とのつながりを保ち、リモートからデジタルで買い物できる環境を整えています。買い物客が店内をあちこち見て回って本当に欲しいものを探しているときに、Google Cloud 上に構築された Ulta Beauty の Virtual Beauty Advisor ツールは、データから導き出したおすすめ商品を顧客に提案できるので非常に便利です。

消費行動の劇的な変化への対応を支援する Google Cloud の需要予測とモデル作成機能

小売業界では、個人消費の変化とは、対応するサプライ チェーンの短期的なニーズと、消費行動の変化が需要にどの程度影響するかを予測する必要のある長期的なニーズの両方を指します。o9 Solutions と連携する Google Cloud の AI および機械学習を利用することで、小売店は各自のデータとシグナルをベースにしたカスタムモデルを開発できます。これを利用して任意の場所の商品の将来の需要を正確に予測でき、在庫切れ、過度の割引や値引き、在庫過剰、仕損費などによる収益の減少を抑えることができます。また、Google Cloud の天気や交通量などの幅広い公開データセットを使えば、店舗単位の需要まで高い精度で予測できます。

顧客の全体像を把握できる Google Cloud / Looker ソリューション

COVID-19 の影響で事業が混乱を極めている今だからこそ、小売業界にとっては、リアルタイムで信頼性の高いデータをこれまで以上に活用することが不可欠です。Google Cloud と Looker は、小売業のニーズに合わせてあらかじめ構築されたデータモデルと分析パッケージ（通称「Blocks」）を提供します。このように準備されたリソースを使用することで、Looker はレポートやダッシュボードなどの従来のビジネス インテリジェンス関連サービスを超えるソリューションをすばやく提供できます。組織全体の複数のデータセットを統合すれば、店舗の運営を最適化して利益を増加させ、顧客のライフタイム バリューを高めることができるデータ環境を構築できます。

また、Looker は Google Cloud for Marketing ソリューションと完全統合されているので、マーケティングに関する意思決定を情報に基づいてリアルタイムで下すことができます。この統合により、Google から収集したすべてのマーケティング データをまとめて分析して、Google 広告や YouTube、Google アナリティクスでの変更が相互にどのような影響をもたらすのかを確認できます。小売業のあらゆる業種に対応したリアルタイムの分析情報を提供し、進行中のマーケティング プログラム内に直ちに変更を加えます。

Google は、小売業界がこの新しい時代に適応するために必要なテクノロジーを提供すべく今まで以上に尽力しています。Google の目標は、IT の維持作業から生じるストレスを取り除き、小売業界の皆様が最も重要な顧客と従業員に集中できるようにすることです。小売業界支援の取り組みについて詳しくは、こちらをご覧ください。

- By Google Cloud 小売および消費ソリューション部門バイス プレジデント、Carrie Tharp